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入退院を繰り返す慢性心不全の臨床

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近年,すでに心臓救急の現場では,NYHA心機能分類IV度の慢性心不全患者は,急性心筋梗塞数を上回っており,その特徴は,(1)高齢,(2)繰り返し,(3)虚血性心臓病である。この切実な課題を“入退院を繰り返す慢性心不全”として,種々の問題提起を試みたのが,本書である。今なお未解決な課題の残る本領域の,今後の糧となる好書。
編集 和泉 徹 / 麻野井 英次 / 小玉 誠
発行 2002年04月判型:B5頁:224
ISBN 978-4-260-10257-5
定価 5,500円 (本体5,000円+税)

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  • 目次
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第I章 入退院を繰り返す慢性心不全の病態生理
 A 臨床像について
 B 疫学と自然歴
 C 老人心について-加齢に伴う心不全の病態とミトコンドリア
 D 慢性心不全における代償破綻と悪化サイクル
 E 慢性心不全時のCaハンドリングとCa感受性
 F 慢性心不全患者の自律神経活動
 G 慢性心不全と交互脈
第II章 難治性心不全の臨床
 A 難治性慢性心不全を診断する
 B 難治性心不全の内科治療
 C 難治性心不全の基本的外科治療
第III章 具体例で示す対処法
 A 非薬物療法
 B 合併症を伴う慢性心不全患者の治療
 C 高齢者における治療
 D 慢性心不全患者の家庭管理
第IV章 新しい治療への胎動
 A 慢性心不全患者への新しい試み
 B 根治療法を創成する

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増加する慢性心不全患者への確かな指針
書評者: 木全 心一 (東京厚生年金病院長)
◆変化する心不全患者のイメージ

 心不全の診断や治療は,近年急速に進歩した。このため,心疾患の終末像であり,きわめて予後不良と考えられていた心不全患者の予後・心機能・運動耐容能が改善され,心不全患者に持つイメージが変わってきている。この進歩にもかかわらず取り残された問題があり,その中の最大が「入退院を繰り返す慢性心不全」患者である。本書は,この問題点に焦点を定めて記載している。
 第I章は,「入退院を繰り返す慢性心不全の病態生理」である。この中の「臨床像について」を,和泉徹先生が自分のデータを基に記述している。日本の心不全の治験のデータから,日本人では基礎心疾患として虚血性心疾患が少なく,拡張型心筋症が多く,予後がよいのではないかと言われていた。この疑問に対して,欧米と基礎疾患の比率には差はないが,死亡率や心事故率は低いかもしれないと述べている。ただ,日本では大規模の統計がなされておらず,答えを出すために関係者の今後の努力が望まれる。
 診断の分野で特に重要な進歩は,BNPが高値の患者では病態が悪く,予後も不良なことが明確になり,日常臨床に取り入れられたことがあげられる。この分野で最も活躍している,蔦本尚慶,木之下正彦先生が自分のデータでこれらの事実を明確に示している。BNPの血中濃度を200pg/ml以下に保つように治療することが,慢性心不全の患者が入退院を繰り返さないための1つの指標と考えられる。

◆急進展が予感される心不全の治療

 第II章は,「難治性心不全の臨床」であり,第III章の「具体例で示す対処法」で具体的な重要問題を個々に取り上げ詳細に記載している。例えば,左室縮小形成術についての須磨久善先生の記載がある。左室が大きくなりすぎると,左室壁にかかる応力が大きくして,このため病態が悪化し死亡に至るのが心不全の経過である。これに対して,左室を縮小して悪循環を断ち切ろうとする手術が,BatistaやDorの手術である。日本でも試みられたが,施設間で成績が異なり,効果が疑問視されていた。ところが須磨先生が,左室は一様に障害されるのではないため,障害が強い部位を切除するとよくなることを示してから評価がよくなった。
 また補助循環・補助心臓について,長年この分野で研究を続けてきた中谷武嗣先生が記述している。われら内科医にとっても,自分で操作できるIABP(大動脈内バルーンパンピング)やPCPS(経皮的心肺補助法)が導入されたことは,急性期を乗り切る大きな手段として,そのありがたさを身にしみて感じている。
 さらに,「慢性心不全における不整脈治療」は難しい問題で,多くの大規模臨床試験で抗不整脈薬を用いると,かえって予後が悪くなることが示されている。この問題について川名正敏先生らは,自験例を基に見解を述べている。特に,心室性不整脈については,アミオダロンや植込み型除細動器の有効性を述べている。
 「具体例で示す対処法」は,この他にもいろいろと役に立つ記載が多くみられるが,ACE阻害薬,ARB,β遮断薬など広く使われている薬物療法の使用法や効果についても,個別の記載があったほうがよかったのではと思う。
 最後の第IV章の「新しい治療への胎動」では,永井良三先生らが細胞移植法を紹介している。遠い将来の話のようだが,Isner先生らの開発した血管内皮増殖因子(VEGF)を,血行再建のできない心臓にカテーテルを用いて注入し,小血管を再生する試みがなされ,よい結果が得られている。日本でも阪大などで,HGFを閉塞性動脈硬化症などに用いて有効性が証明されており,近い将来に心不全の治療が急進展する予感を感じる。

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