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肝腫瘍の造影ハーモニックイメージング

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肝腫瘍の血流動態・血管構築を画像で表現するカラードプラ、造影ハーモニック法は、今日最も注目を浴びているモダリティである。今後の肝細胞癌の臨床そのものを変える可能性を持ったこの新しい画像診断法を、気鋭の著者が豊富な画像データを用いて解説した。
工藤 正俊
発行 2001年05月判型:B5頁:224
ISBN 978-4-260-13879-6
定価 13,200円 (本体12,000円+税)
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  • 目次
  • 書評

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第1章 動注造影エコー法は静注造影エコー法のFinal Goalである
第2章 動注造影エコー法からみた肝腫瘍の血管構築と血流動態
第3章 肝細胞癌の脱分化進展に伴う血流動態の変化
第4章 肝細胞癌の診療における血流画像の役割
第5章 Levovistの特性
第6章 Levovistの体内動態と水溶性造影剤との相違
第7章 Levovistの投与法と各種造影モード
第8章 ハーモニックイメージングの用語解説
第9章 ハーモニックイメージングの原理
第10章 ハーモニックパワードプラ法(ALOKA ProSound SSD-5500)
第11章 コントラストイメージング(Toshiba PowerVision 8000)
第12章 Pulse Inversion Harmonic Imaging(ATL HDI 5000)
第13章 Coded Harmonic Angio(GE LOGIQ 700 EXPERT Series)
第14章 造影ハーモニックイメージングによる各種肝腫瘍の鑑別診断
第15章 肝細胞癌治療における造影ハーモニックイメージングの役割
第16章 Liver Specific Imagingを利用したLate Phase Sweep Scan
第17章 肝腫瘍の診断と治療における造影エコーの役割(まとめ)
第18章 胆膵腫瘍に対する造影ハーモニックイメージングの応用
第19章 今後の超音波造影剤の開発状況と将来の展望

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肝癌診療戦略の変革をせまる画期的方法
書評者: 松井 修 (金沢大教授・放射線科学)
 工藤正俊教授(近畿大学消化器内科)が肝腫瘍,特に肝細胞癌に関する造影超音波診断法の著書を刊行された。超音波造影剤がわが国で認可され販売が開始されたが,まさにこの時期にこの分野の第一人者による待望の出版である。

◆深い経験に裏打ちされた画像と解説

 一読して美しい画像とその的確かつ簡明な解説に感銘を受ける。深い経験に裏打ちされた画像と解説には無駄がなく,まさに“state of the arts”である。著者が序言で述べられたように,1例1例の詳細な観察から得られる知見を最重要視する姿勢が貫かれている。それは著者と知り合った十数年前からの一貫した姿勢であった。肝細胞癌の多段階発癌と血行支配の変化は,私と工藤教授の共通した研究課題であった。私は主に門脈造影下CTを用いて,工藤教授はCO2動注下超音波診断法を用いて研究したが,門脈と動脈というまさに表裏一体をそれぞれが観察し,ほぼ同じ結論に至ったが,この間に電話や手紙,研究会でいろいろと意見を交換した。工藤教授の常に真摯で科学的な姿勢は,その後の数々の指導的な論文として世に出ているが,まとまった著書としては初めてのものである。まさに待望の著である。
 本書は,まずCO2動注下超音波診断法とその肝腫瘍における所見を簡潔に解説し,レボビスト静注による造影超音波診断法による所見の解釈の基礎としている。その後,造影剤の性状や体内動態の解説を行なった上で,造影超音波撮像法の基礎的理論や特徴を解説し,画像所見の記載へと進んでいる。この領域の初心者でも十分に理解できるように構成されており,入門書としても申し分ない。さらに現在,造影超音波診断が可能な機器のそれぞれについて,実践的な撮像法やコツをその基礎から臨床にわたって解説している点も他に類をみない点である。機種の差異による撮像法や画像の違いは,実際にすべての機種で多くの経験を積まれた著者ならではのものであろう。機種や撮像法による画像の差異や特徴を知ることはきわめて重要であるが,こうした点で興味深い内容が随所に記載されている。造影超音波診断機器の導入に際しても大変参考になるものと思われる。最後に,造影超音波診断法の臨床的役割について現在の著者の考えが述べられているが,「肝腫瘍の診断あるいは治療の戦略を実質的に大きく変える画期的な方法であると思われる」と結んでいる。著者の本法への思い入れの深さと情熱が伝わってくる名著である。

◆造影超音波診断法への熱い思い

 工藤教授は,CO2動注下超音波診断法で肝腫瘍の血行動態の解析を行ない,その臨床的重要性を報告されてきたが,これらの知見が非侵襲的診断法で明らかにできる日を夢みておられたことと思う。超音波造影剤の出現,またそれを画像化する新しい装置の出現は,まさに工藤教授のためにあったような気さえする。工藤教授がいち早くこれらを導入し,これまでの知見にさらに新しい知見を加えて本書を出版されたが,そこには工藤教授の造影超音波診断法への熱い思いと一般への普及への願い,そしてその結果としての肝癌診療への大きな貢献への切望が凝縮されているように思う。肝疾患の診療に携わる内科医,放射線科医,外科医にとって必読の書としてお勧めする。
肝癌撲滅運動の有力戦力
書評者: 沖田 極 (山口大教授・消化器病態内科学/日本肝臓学会理事長)
 医師国家試験の合格者発表も終わり,5月も末ともなると病院内には,ついこのあいだまで学生であった連中が白衣の裾を翻し威勢よく飛び回っている。そういう彼らに紹介する本の1つに『インフォームド・コンセント』(ニール・ラヴィン著,李啓充訳,学会出版センター)がある。漫画に代表されるように絵物語が本という時代に育った彼らに「インフォームド・コンセントとは」と大上段に構えたテキストを与えてもまず読まれまいと考え,ラブ・ストーリーも適度に挿入され,そして一気に読み終わればインフォームド・コンセントが何たるかを十分に理解できるのではという配慮からである。斯様に本というものは,時代に即応した形で出版されなければ,たとえ内容がすばらしくても死書同然の扱いを受ける。

◆わかりやすく解説された原理と手技の実際

 このたび,畏友工藤正俊教授が『肝腫瘍の造影ハーモニックイメージング』という本を出版されたが,本書は活字離れの時代に育った若き医師たちにとっても,挿入された多彩な症例からの鮮明で説得性のある超音波画像と解説図を見終われば,造影ハーモニックイメージングの肝腫瘍の質的診断における重要性を十分理解できるように工夫されている。特に,第1章から第13章までは,ハーモニックイメージングそのものの原理や検査手技の実際がわかりやすく解説されており,本書を読めばすぐにでも検査が始められるという心配りである。加えて,何よりもありがたいのは,この領域で汎用される用語について章を設けて解説されていることで,これは読者にとっては大変便利である。
 かつて,科学の進歩は世界大戦とともに加速されると言われてきたが,平和な時代は必要性が技術革命を興し科学を進歩させる。わが国では,年間3万人を超す患者が肝細胞癌で命を落とし,その予備軍とも言えるC型肝炎ウイルス・キャリアは,200万人を超えると推測されている。つまり,われわれは,“War on HCC”の真っ只中におり,目下肝癌“撲滅”に向け基礎研究者をも巻き込み内科,放射線科,外科,それぞれの“持ち場”で熾烈な戦いを継続中なのである。そして,この取り組みは,日本肝臓学会の肝癌撲滅運動に集約され,必要性は必然性を生み,肝癌の診療に革命的な進歩がもたらされる環境は整えられつつある。
 肝腫瘍の血流動態を造影ハーモニックイメージで把握し,肝腫瘍の質的診断を行なう戦略もこの戦いの中で生まれ,工藤氏がこの分野の旗手であることは,この本を読めば一目瞭然である。コンピュータを駆使したME産業とIT産業の進歩は,驚くようなスピードで超音波診断法そのものを進化させるものと思われる。彼には,日本肝臓学会の若きエースとして今後ともこの領域で獅子奮迅のご活躍をいただき,1人でも多くの患者に福音がもたらされる新しい診断法や治療法の開発に寄与されんことを切にお願いし,この書評の結びとさせていただく。

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