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PCI治療戦略に活かす
PTCA・ステントの病理カラーアトラス

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冠動脈インターベンショナリストのための画期的カラーアトラス。冠動脈造影と病理所見を常に対比させながら,知悉すべきPTCA後の経時的変化と長期予後,ステント植え込み術後の経時的変化と血管壁組織反応の特性,臨床現場で重視されているステント植え込み術の問題点,頸動脈ステントの病理像などを供覧する珠玉の労作。
監修 延吉 正清
井上 勝美
発行 2002年02月判型:A4頁:100
ISBN 978-4-260-11993-1
定価 10,450円 (本体9,500円+税)
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  • 目次
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I. PTCAの病理
 A. PTCA施行後の冠動脈病理像の経時的変化
 B. 病理像からみたPTCA施行部位の長期予後
II. ステントの病理
 A. Palmaz-Schatzステント植え込み後の冠動脈病理像の経時的変化
 B. ステント植え込み後の血管壁組織反応の特性-PTCAとの比較において
 C. 病理像からみた冠動脈ステント植え込み術における問題点
 D. 特殊なステント植え込み術-頸動脈ステントの病理像

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PCI治療のための画期的病理アトラス
書評者: 光藤 和明 (倉敷中央病院主任部長・循環器内科)
◆冠動脈インターベンションの最前線の内容

 著者の井上勝美氏は,冠動脈インターベンションの最前線で実際の手技を行なっている現役のインターベンショナリストでありながら,かつ国際的にも活躍している臨床病理学者である。この希有なる存在の筆者が物したこの書物は,他には得難い表現方法と内容とを持っている。
 例えば,冠動脈の輪切りを並べてあたかも冠動脈造影で観察されるかのごとくの図は,一見古代の宝石を並べたかのごとくに見えるが,横に示された冠動脈造影の写真と比べてみると,なるほどその部位の同定がわれわれ読者にも一目瞭然であり,右に示された顕微鏡写真でその部位の詳細を一気にとらえることができる。躍動感あふれるコンピュータグラフィックを見ているような臨場感があるのである。病理学者である著者のインターベンションに対する動的な姿勢そのものを表現しているようで興味深い。
 内容においても標本を冷静に観察するとともに臨床家の疑問に応えるべく沈着な分析を行なっている。しかも一般臨床家にもよく理解できるように平易に説明されている。われわれも著者に検体を送って検討していただいたことが何度かあるが,その結果のレポートたるやすさまじく,数百枚に及ぶスライドとその1枚1枚に対する微に入り細を穿つ詳細緻密なコメントであった。臨床活動を行ないながらそれだけのことをする,その才能と努力と誠意に対して畏れに似た敬意は抱くものの,素人の悲しい消化不良を味わった記憶がある。しかし,この書物ではずいぶんと我慢をしてやさしく書いてくれたものだと感心しているし,消化不良を解消してもらって感謝もしている。

◆インターベンショナリストのための座右書

 インターベンショナリストにとって,自らが行なった治療の帰結を日常的には,冠動脈造影法という動的な方法で確認する。病理学的にメカニズムを含めて示されることは,日ごろの疑問を解くための決定的な意味を持つことが多いが,自らの症例のみではその数は限られており,一定の結論は出しにくい。この書物のように多くの症例を背景にしたアトラスは,大きな重みを持っている。
 この書物は,これからインターベンションを始めようかという初心の医師からベテランのインターベンショナリストまで,広く座右におくべき本であると思う。またインターベンションにかかわる技術や看護師,さらには臨床病理(心臓に限らず)を志す医師や技師にも幅広く読んでほしい本である。
冠動脈インターベンショナリストのための画期的アトラス
書評者: 堀江 俊伸 (埼玉県立循環器・呼吸器病センター院長)
◆世界に誇りうる豊富な症例の検討結果

 このたび,医学書院から井上勝美先生による『PCI治療戦略に活かすPTCA・ステントの病理カラーアトラス』が出版された。井上勝美先生は病理学の基礎を学んだ後,臨床医として心臓カテーテルにも携わってきた,本邦では非常に貴重な循環器内科医でもある。冠血管インターベンションについては,小倉記念病院という本邦だけでなく世界にも誇りうる豊富な症例を活かし,冠動脈造影と冠動脈の病理組織像が,詳細に対比検討されている。
 本書は,「PTCAの病理」と「ステントの病理」の2章に分かれている。「PTCAの病理」の項では,PTCA施行後の冠動脈病理像の経時的変化と題し,「なぜPTCA後1年を経過すると再狭窄は減少するのか」という疑問に対して,PTCA施行後1年以上経過しても内腔がよく開存している例では,平滑筋細胞がむしろ小型化し,これがPTCA後1年以上経過すると,むしろ再狭窄が減少することを病理学的立場から実例で示している。病理像からみたPTCA施行部位の長期予後の項では,「症状発現を伴わない再狭窄部にインターベンションは必要か」との問題に対して,病理組織像からみて特に症状発現を伴わない程度の再狭窄病変は,しだいに退縮傾向を示し,さらにインターベンションの追加を行なわなくても,重篤な心血管イベントには至らないという臨床報告の裏づけをしている。

◆他に類をみないステントの病理の症例

 現在では,虚血性心疾患の治療としてステントが,非常に大きな役割を果たしていることは言うまでもない。しかし,ステント挿入例に対して,臨床的な立場からみた疑問点に答えてくれる成書は,ほとんどないと言っても過言ではない。しかし,本書では,臨床における疑問点・問題点を少しずつ明らかにしてくれる。おそらくステントの病理についての豊富な症例は,他には類をみないだろう。特に「ステント植え込み後の長期予後はどうなるのか」との疑問に対しては,ステント植え込み後3年を経過した例を呈示し,新生内膜においては平滑筋細胞は著明に減少するが,ステントストラット周囲の異物巨細胞の反応が明瞭に観察され,その周囲に泡沫細胞群が集まっている像を認めている。これらの所見は,PTCAとは異なり,マクロファージをはじめとする炎症細胞が長期にわたって認められ,異物反応は持続して生じるという。
 以上のように本書では,臨床の現場で遭遇するいろいろの疑問点を実際の症例を呈示しながら,詳細に検討された病理学的所見とともに解説がなされている。PTCAやステント植え込み後にどのような病変が起こっているのか,参考になると思われる。冠血管インターベンションに従事する循環器内科医はもちろんのこと,放射線技師や臨床工学技士の方々にもぜひ参考にしていただきたい。しかし,本書でもっとすばらしいことは,ステント挿入部の病理組織像を詳細に検討することは,並大抵の努力では到底できない。この成書の裏に隠れた何十倍もの多大の労力に対して,敬意を表するとともに読者にもその努力を読みとっていただきたい。

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