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胆道外科におけるCチューブ法ハンドブック

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肝・胆道系手術に不可欠の胆汁ドレナージ法として、特に内視鏡下手術に最適なCチューブ法の実践的テキスト。減黄処置から胆石の排出、造影など、手術前後の処置における、合併症も少なく患者のQOLに貢献するテクニックについて、基本的な手技から応用までを実際の手術に即してきめ細やかに解説。
編集 藤村 昌樹
発行 2005年09月判型:B5頁:128
ISBN 978-4-260-00074-1
定価 6,600円 (本体6,000円+税)

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  • 目次
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I. 腹腔鏡下外科手術におけるCチューブ留置法および固定法
 1. Calot三角部の展開,胆嚢管の露出の要点
 2. Cチューブ挿入の要点
 3. Cチューブの挿入が困難な場合の対処法
 4. 術中胆道造影検査
 5. Cチューブの固定法
II. Cチューブを介しての胆道造影法
 1. 術中の胆道造影法
 2. 術後のCチューブ造影法
 3. 術中・術後胆道造影の必要性
III. Cチューブ法の安全性と有用性-Tチューブ法との比較
 1. Cチューブ法の安全性についての検討
 2. Cチューブ法の有用性についての検討
 3. Cチューブ法のまとめと応用について
IV. Cチューブ法の臨床応用と成績
 1. 腹腔鏡下胆管切開切石術におけるCチューブドレナージ
 2. 総胆管結石症とCチューブ法
 3. 肝切除術とCチューブ法-1[術後胆汁漏予防のために]
 4. 肝切除術とCチューブ法-2[術後腹腔内膿瘍予防のために]
 5. 遺残結石の防止と治療
 6. 十二指腸乳頭括約筋の機能評価法
 7. 他のCチューブ法の応用
V. 歴史的考察
 1. 胆道ドレナージ法の変遷
 2. Cチューブ法開発の経緯
索引

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内視鏡外科手術を志す外科医必見の書
書評者: 山川 達郎 (帝京大名誉教授/帝京大溝口病院外科・内視鏡外科センター常勤客員教授)
 この度,第一東和会病院院長,滋賀医科大学臨床教授,藤村昌樹博士が『胆道外科におけるCチューブ法ハンドブック』を刊行されました。藤村昌樹先生は,30年来の胆道外科のエキスパートであり,また本邦において内視鏡外科手術が日常の臨床に登場してからは,それまでの経験を生かして,内視鏡外科手術を推進され,多大の成果を学会で報告されてきました。私も胆道鏡を開発して,Tチューブ瘻孔を介しての遺残結石や肝内結石の治療に情熱を傾けた一時代を経験した関係上,藤村昌樹先生がこのようなご著書を刊行されたことはご同慶にたえません。

 今や,総胆管結石の手術も施設によっては100%内視鏡下に行われるようになって,総胆管結石に対する治療戦略は一変しました。しかし小さな創から内視鏡を挿入して拡大した視野の下に精密な手術を行うことができ,かつ低侵襲である内視鏡外科手術の利点を生かす中で,これまでに培われた総胆管結石の治療に関する基礎的理論は変わるものではありません。今回本著を拝読して思ったことは,Cチューブの応用に関しても著者の胆道外科医としての基本的な根拠に基づく考え方がそこここに窺われ,高く評価できる名著であると考えます。

 内視鏡外科手術の時代を迎えた今も,総胆管結石の治療を考える時大切なことは,昔同様,結石の遺残と再発の問題です。総胆管切開兼結石摘出術,経胆嚢管的結石摘出術に続くTチューブドレナージ術,Cチューブドレナージ術や術前・術後乳頭切開術(EST),内視鏡的逆行性乳頭バルーン拡張術(ERBD)などの位置付けを慎重に考える必要があります。すなわち病態にかなった治療法を選択する必要がありますが,最近はCチューブを留置することが確実に多くなってきていることを,私も実感として感じています。私にとってCチューブを腹腔鏡下に留置して問題に思ってきたことは,その固定法でした。固定が甘く,Cチューブが自然抜去してしまうことがよくあったからですが,本書では,そういった技術的なことが詳しくきれいな図を示して解説されていますので,勉強になりました。

 総胆管結石の治療は実に奥が深いものがあります。藤村昌樹先生は,胆道外科に永く携わり,磨いてこられた理論の上にたって,Cチューブ留置法手技を確立されました。本書は,これから内視鏡外科手術を志す外科医には必見の教材であるばかりでなく,総胆管結石の内視鏡外科手術を日常,頻繁に行っておられる内視鏡外科医にも,大変,見て役に立つハンドブックであると思いました。ここにご推薦申し上げる次第です。

若い消化器外科医へ実践的なテクニックを解説
書評者: 谷村 弘 (和歌山労災病院・病院長)
 Cチューブの開発普及に尽力された編者は,京都大学の外科に勤務されていた頃より,非常に独創的な感覚を持って一途に問題解決にのめり込む臨床医であった。滋賀医科大学に赴任されてからも,胆道外科の手術をしながら,コツコツとCチューブ法の工夫を重ねられ,その成果がこの本に結実した。本書はまさに真の臨床医の手になる力作である。

 編者らは,1970年初頭よりTチューブの代わりに,胆嚢管から総胆管に挿入した細いチューブを術後も留置する方法について考え,1980年にCチューブの第1例目の臨床応用を行った。当初は胆嚢管チューブCDT(Cystic Duct Tube)と命名していたのを,1990年以降はCチューブと呼ぶことにしたという。その後,解説書などが出版されることはなく,名称のみが一人歩きしている感が否めないということで,この本が出版されることになった。

 他方,わが国で胆石手術の先駆的業績のある九州大学では,早くからTチューブの代わりに細いネラトンチューブを総胆管の別の部位から挿入して胆道ドレナージを行っていたことは,関係者にはよく知られていた。

 評者も,1982年,バルーン付きTチューブの開発による胆汁完全体外誘導法を開発した際に,シリコン製のチューブは瘻孔形成が起こりにくいので,わざと天然ゴム製のものを特注した経験がある。

 胆道に関する内視鏡技術の進歩により,総胆管内に遺残結石を見落とすことは少なくなり,不必要な総胆管切開術を避けるためにも,胆汁ドレナージだけの意味なら太いチューブはもはや必要なくなった。内径の細いチューブでも,十分に胆汁のドレナージ効果が得られるのがCチューブの「ミソ」である。

 また,胆嚢管の処理において,胆道内圧が5~10cm H2Oであるのに,動脈と同様に二重結紮を行うことを編者は疑問に思い,弾力性のある3―0エラスチック縫合糸でチューブをループ型に結紮するのみにとどめ,腸管運動が回復すれば,たとえ胆嚢管が完全に閉鎖されていなくても,再手術を要するような胆汁漏に進展しないことから,弾性糸によるCチューブの固定法を考えついた。これにより,腹腔鏡下手術においても挿入や留置が容易で,抜去時の安全性も向上し,自然抜去がなく,胆道ドレナージも良好であるCチューブ法が完成されたのである。

 その他,Cチューブ法は胆道ドレナージ以外でも,肝切除術や成人生体肝移植時においても,術中・術後の処置・管理に大変に有用なテクニックである。

 こうして編者は,安全確実な手技として開発された本法について,東北労災病院の徳村弘実氏や明和病院の山中若樹氏らによる追試経験とさらなる工夫を加えて,本書を実践的なテクニックの解説書に仕上げている。

 若い消化器外科医に,臨床医としての哲学を学ぶためにもお薦めの1冊である。
Cチューブ法についての優れた臨床ハンドブック
書評者: 邉見 公雄 (赤穂市民病院・病院長)
 このたび,医学書院より『胆道外科におけるCチューブ法ハンドブック』が刊行された。症例中心の非常に実践的な書である。DPCやコストパフォーマンス全盛の現在の医療現場にあって,up-to-dateな優れた臨床ハンドブックとなっており,研修医にとっても必携の書となっている。

 編者の藤村昌樹先生はノイエヘレン(Neue Herren)と呼ばれた新米医師以来の畏友であり,奈良県のはずれにある市立病院や京都大学外科研究室とずっと苦楽を共にしてきた仲間である。滋賀医大に移られてからも公私共に助けていただき,学年は私の方が一年上だが心の中では彼が私の師である。消化管ホルモンの研究では,ガルベストンのThompsonの弟子でもあり優秀な研究者であるのはもちろん,常に患者を中心に考え,自己犠牲とも思える日常生活を送っている臨床外科医である。このような歴史から,私はこのCチューブという方法が考案された過程をよく知る者の1人として,書評を書かせていただくことは身に余る喜びである。

 彼は必要に応じて道具やルールを作る名人でもあった。病院や研究班のグループで山や海へキャンプに行くと,野外料理用の便利な道具を色々と作ったものである。研究室の実験でも同じであった。特に動物実験では犬のギプスやコルセットなども作成し,静脈ルートの保護に役立てたりした。当然,臨床医学,とりわけ外科手術や術後管理にも新しい工夫を次々と採り入れ,保守的な部長や上級医師からは少し白い眼で見られたことも度々であった。

 私たちが勤めていた病院は,胆石を専門とする外科部長が奈良県南部の多数の症例を集めていた。当時,胆管結石の術後はTチューブ造設が定番で,自然脱落による胆汁性腹膜炎などに悩まされていた。また再開腹時には周囲組織との強固な癒着があり,稀には腸閉塞を起こす寸前のこともあった。チューブの性状も当時は,炎症を起こすものほど瘻孔を強固にするのに好都合と考えられていた。そのような経験が内視鏡外科やIVRの発達と相俟って,今回のCチューブ法の出版の底流にあったと確信している。Tチューブでは必要であった長期の入院期間や管理の難雑さ,生活の制限などがこの方法で随分と楽になった。特筆すべきは合併症,特に再開腹がほとんどないという安全性であり,当院でもCチューブ法を初期から採用させていただいている。

 本書の内容は,豊富な症例の術中カラー写真と図解,造影写真で構成されており,読まなくても一目瞭然となっている。また共同執筆者の多くは彼自身が育てた臨床医であり,彼の教育者としての力量もうかがえる一冊である。現に彼の仲間のかなりの数の若手医師をお預かりしたが,心・技・体の揃った医師が多かったことを特記しておきたい。また,若い読者に対しては臨床の現場で自分が疑問を感じたこと,新しく考えたことを実現するためには情熱と実行力,緻密なデータ集積が必要であることを再認識させてくれるよい一冊であると強く感じている。少し発刊が遅れた感はあるが,使用している者には総まとめと再考察の一助として,また未だCチューブ法を採用していない方には採用の契機として,ぜひとも一読をお勧めしたい。

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