コロナビを用いた
新 大腸内視鏡テクニック

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このたび考案された「挿入形状観測装置(通称コロナビ)」は、修得の難しい大腸内視鏡技術を普遍的な検査法とする可能性を秘めている。これによって多くの大腸内視鏡挿入のビギナーが救われるだろう。本書は、コロナビを用いた挿入テクニックを詳述。大腸内視鏡検査の修得を目指すすべての人に。
多田 正大
発行 2000年10月判型:B5頁:104
ISBN 978-4-260-11961-0
定価 4,400円 (本体4,000円+税)
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大腸内視鏡挿入法を変えた1冊
書評者: 酒井 義浩 (東邦大大橋病院教授・消化器診断部)
 何をおいても,まずは著者多田正大氏の旺盛な執筆活動に敬意を表すべきであろう。狭いわが家の書棚にも,氏の著書や編書が5冊ある。職場にはこれと異なる氏の書がほぼ同数あるから,おそらく膨大な著書が上梓されているに違いない。
 本書は最新の1冊(そう願っているが)で,スコープ内に組み込まれた複数の磁性体から発信される電磁波を,近傍に設置したアンテナで磁界を計測し,個々の磁性体の位置と相互関係をTVモニター上にスコープの形状に加工して表示する装置(スコープ形状観測装置,著者はこれを「コロナビ」と呼称)をいち早く臨床に用いて,その使用経験から有用性を具体的に紹介している。

◆大腸内視鏡の新しい視点を提供

 そのために,冒頭で大腸内視鏡の挿入法の変遷や本装置の概略を簡単に説明し,本書の核心とも言える挿入技法を本装置のモニター上で示される像を用いて解説を加える構成になっている。本書の「新」は新しい大腸内視鏡テクニックの紹介ではなく,むしろ形状を常時表示できるようになったことで,「新」しい視点を提供したと考えてよいであろう。スコープの改良と被検者数の増加とから,いつのまにかX線透視の行なえない内視鏡室での大腸内視鏡が常態となっているが,それでも途方に暮れることもある。本装置を併設すれば,X線は不要となり,X線透視と同じ像だけでなく,被検者の体位に関わらず正面と側面,希望するならどのような角度でも,2方向表示が可能であり,しかもスコープの形態だけでなく,X線像では単一平面でしか表せなかったスコープに濃淡をつけて3次元表示されているために,容易に立体認識できることが示されている。困った時にチラッと見ればよいことになり,経験者にとっても心強い装置と言えよう。
 これらの豊富な像に加えて,おそらく著者の手になるイラストが適宜挿入され,文字数を少なくして理解を深める工夫がされている。さらに要所要所に「note」と「ワンポイント・アドバイス」が配置され,前者はエピソードが主体で,後者はチョットまじめな本音が述べられ息抜きも与えながら,単調になりがちな技術解説を一気に読ませる工夫がされている。さらに挿入困難を解決するために,「ケース」として10例が各部位の通過法の最後に加えられて,特殊な事例への助言が示されており,著者の並々ならぬ気配りが読みとれる。
 「コロナビ」を語るあまり無理を感じる箇所もないわけではないが,総じて体内でスコープの形状が挿入の難易に関連していることを示す好著であり,本文104頁と手頃なことから,ぜひ読んでほしい1冊である。
 ただ印刷の具合か背景が青すぎるのはおくとして,「コロナビ」が用語として適切であるのか気になる。著者の本意は本装置が安全で,円滑な,苦痛の少ない方法への提案を馴染みやすくする便法とは思われるが,進むべき内腔が示されているのではなく,あくまでも被検者の体内でのスコープの走行を示しているだけであり,経験の多い術者にはそれから先が予見できても,どちらかを指し示すわけではないので,著者の愛用している呼称であっても,その語の醸しだす期待が一人歩きしないようもっと警告が必要であろう。

大腸内視鏡の新たな展開を1冊に
書評者: 長廻 紘 (群馬県立がんセンター院長)
◆難渋な大腸内視鏡を普遍的検査に

 大腸内視鏡は1960年代末に開発されたが,当初はもちろん,今に至るまで使いこなすのが難しい内視鏡であり続けている。生産者・使用者とも,何とか使いやすいものにしようと,努力が重ねられた。使用者側においてはすでにあるこのスコープをうまく使うという挿入技術の向上と,スコープの欠点を明らかにしてメーカーに改良を求めるという2つの方向があった。そういうコロノスコープ・コロノスコピーの世界で,最初からたくさんのアイディアを出し,メーカーを叱咤激励し続けてきたのが本書の著者,多田正大博士である。スコープの硬さ,太さの検討に事のほか意を用い,数々の論文とともに,実際に硬度可変式スコープ,細径スコープなどにその検討結果は生かされた。高い診断能を有する一流の内視鏡医であり続けるとともに,誰よりも機種の改良に意を注ぐ姿を,常に感嘆しつつ眺めてきた。
 多田博士のもうひとつのまねのできないことは,後進の指導に大変熱心だということである。それらの諸々の歴史が本書に流れ込んで,類をみない成書となった。100頁ほどの本であるが,「本は厚きをもって尊しとせず,内容の豊さをもって……」をまさに地でいく本である。DDWでも即日完売したのもうなずける。

◆コロナビ:挿入形状観測装置

 「コロナビ」とは耳慣れない術語であるが,カーナビと同じく電磁波を利用して,挿入されたスコープの形状を知る「挿入形状観測装置」である(詳しくは本書をお読みください)。序文に「私がこの装置を最初に使用した瞬間から,これを用いれば大腸鏡挿入に難渋している多くのビギナーが救われる,多くの内視鏡医が育つと確信した。そして大腸内視鏡は一部のベテランだけの世界ではなく,普遍的な検査法になる予感に酔いしれた」とある。多田正大がそう言うのだから,間違いない。名は体を表すは例外もあるが多田博士にはあてはまる。いい本の書評を書くのはうれしいものだ。
 多くの学術書を上梓し続けてこられた師である川井啓市顧問(JR大阪鉄道病院)の,出版点数を上回ることを目標にしていると聞いたことがあるが,この本あたりで並んだのではないでしょうか。これを新たなスタート地点として,経験と努力がマッチしたユニークな本を出し続けられることを切に望むものです。大腸鏡の世界にも,多田正大博士個人にも新しい境地を拓いた記念すべきこの出版に対して,心から「おめでとう」と申し上げます。
 おめでとう。

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