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困ったときの呼吸器疾患患者の看護

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呼吸器疾患患者の看護を行うなかで,(1)治療や診断時,(2)患者の疾病や障害,(3)日常生活上,(4)患者指導の場面で,しばしば遭遇する問題や,困ったと感じるケースを取り上げ,看護上の問題を解決するための具体的方策を解説している。事例に基づきベテラン看護師の行ってきた臨床の知を紹介。困った場面ですぐに役立つ実地書。
編集 花田 妙子
発行 2002年03月判型:A5頁:216
ISBN 978-4-260-33188-3
定価 2,530円 (本体2,300円+税)
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第1章 患者の苦痛に対する援助
 A. 片肺全摘出後の排痰困難な患者
 B. 肺癌による癌性疼痛のある患者
 C. 人工呼吸器離脱困難な患者
 D. 肺癌を告知されず進行する症状に苦悩し続ける患者
第2章 重篤な呼吸症状に対する援助
 A. 呼吸介助の必要な気管支喘息患者
 B. 換気不全に陥る胸腔鏡下肺切除後の患者
 C. 手術後に肺塞栓を発症する患者
 D. 特発性間質性肺炎で呼吸困難に陥る患者
 E. 合併症をおこしやすい気腫性嚢胞症患者
第3章 合併症に対する援助
 A. 無気肺を合併する肺切除術後の患者
 B. 化学療法・放射線療法により食道炎症状を呈する肺癌患者
第4章 退院に向けた指導・援助
 A. 病状を認識できない嚥下性肺炎患者
 B. 退院前に不安を訴える肺癌術後の高齢患者
 C. 在宅酸素療法が大きな負担となった高齢患者
第5章 在宅療養中の患者への援助
 A. 自己管理が困難な難治性喘息患者
 B. 在宅酸素療法を継続できない独居・高齢患者
 C. 在宅鎮痛療法を受ける苦痛の強い末期肺癌患者

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「あっ,困った!」そのときの臨床看護の知がイッパイ
書評者: 勝 京子 (順大浦安病院)
熊本大学の花田教授の編集による『困ったときの呼吸器疾患患者の看護』が出版された。日々の忙しい勤務を終えてから,厚い難しい書籍は読みにくいものである。その点,本書はわかりやすい表現で,コンパクトで読みやすい。
 臨床のベテランナースによる執筆のため,書かれている内容は,具体的で,臨床の場面が容易にイメージでき,魅力的である。日常生活の援助や患者への指導場面が取り上げられており,家で本書を読んでいるのに,自然と病室で患者様と接している感覚がよみがえってくる。
 私は,呼吸器,消化器疾患の内科病棟で勤務している。呼吸器疾患では肺癌,間質性肺炎,気胸,慢性閉塞性肺疾患,肺結核,喘息などのさまざまな患者様が入院されている。私が呼吸器疾患患者の看護を行なう中で大切にしていることは,(1)呼吸困難による肉体的苦痛をいかに迅速に軽減できるか(2)生命危機への不安に対する援助(3)呼吸器特有の器械・器具の技術習得(4)肺理学療法・日常生活指導である。本書には,これらの呼吸器疾患看護の基本となる内容がすべて網羅されている。「肺癌を告知されず進行する症状に苦悩し続ける患者」や「在宅鎮痛療法を受ける苦痛の強い末期肺癌患者」では,従来の堅苦しい書籍とは異なり,患者様のありのままの言動,それに対する看護師の実際の言動が随所に記述されている。つまり臨床での看護過程が,ベテランナースにより再構成された1冊となっている。

◆日常の看護実践からベテランナースが臨床の知を言語化

 特に,本書の第1章「肺癌を告知されず進行する症状に苦悩し続ける患者」の場面は,「あっ,こういう場面があった。患者様から言われて困ったけれど,この本のような対応のほうがよかったかな」と素直に感じた。日頃,私達が行なっている看護が患者様の欲求に十分に応えられているのか,また効果的な看護サービスが提供できているのか,と本書によって振り返ることもできた。
 新人からさまざまな経験年数の看護師がいる中で,患者様に同じ質の良い看護を提供することは,重要な課題である。本書は17の症例それぞれに,患者様の状況と問題点,対策につづき看護の実践場面が事例紹介されているため,看護過程の展開が明確になっている。臨床で看護上の問題に直面し困ったときは,本書を開けばベテランナースの言語化された看護実践から,どのようなケアや患者指導が必要かを導き出すことができ,とても有効な参考書である。
 新人教育での指標として,また自分の看護の振り返りなど,あらゆる経験年数の看護師,そして看護学生と幅広く,呼吸器疾患患者の看護に携わる人々に活用できる待望の書籍と考える。

事例から学ぶ臨床看護の知
書評者: 冨重 佐智子 (日本看護研究支援センター所長)
◆ベテラン看護師の「臨床の知」

 本年度より日本看護研究支援センターを開設し,今まで以上に臨床看護師と看護や研究について語る機会を得た。そんな中,最も活気があるはずのベテラン看護師にいまひとつ活気がないことに一抹の不安を抱いた。どうも彼らは,看護研究や看護理論といった昨今の看護の趨勢に,日常的な看護の重要性を実感できなくなっているようであった。
 しかし実際に彼らの看護を垣間見ると,コミュニケーションを駆使しながら,細やかに観察し,知識と勘を総動員して瞬時に問題の本質に迫ってしまう。彼らのほとんどがこのようなすばらしい能力(臨床の知)を持っているのである。また,この能力の背景には,「患者の回復を心より願うねばり強さ」など,看護師自身の強い信念や意気込みが感じられる。そしてこの信念や意気込みこそが,真に患者を癒すものではないかとさえ思われた。残念なことにベテラン看護師の多くは,この「臨床の知」を当たり前のこととして扱い,特別なこととして他者に論じてこなかった。「臨床の知」の中にこそ,看護理論では表現しきれない,生き生きとした「看護の原点」が存在するといっても過言ではないのに。

◆「臨床の知」を言語化したシリーズ

 『困ったときの○○看護』シリーズの最大の特徴は,これまであまり論じられてこなかった看護師の「臨床の知」を,事例を通して余すことなく言語化した点にある。「困ったときの○○」のタイトルにあるように,事例はどれも1度は病棟カンファレンスで取り上げられるような身近なものばかりである。これらの事例の1つひとつをみると,どれもが科学的であり,情熱的である。すなわち看護師たちが,科学的かつ丹念な情報収集をもとに問題の本質を絞り込み,他職種や患者の家族と連携をとりながらねばり強く看護を繰り返していった様子がありありと示されているのである。紹介されている事例は,「問題解決」に到達したものばかりではない。「問題解決」をめざしながら,患者の死によって終わってしまった事例もある。しかしどちらの事例も,同じような事例に悩む看護師に,さまざまな課題を提起する力強い余韻を持っている。
 このシリーズの第2の特徴は,事例を理解する上での病態生理や各病期の患者の問題点・看護の基本原則など,基礎知識に関わる資料が充実していることである。それらは,すぐにでも実践に役立つように整理されており,学校で教えられる内容とは性質を異にする。これらの基礎知識は,ケースカンファレンスや学習会で活用されることによって,個々の看護師の臨床判断を鍛えるのに大いに役立つことだろう。現在のところ,シリーズは,『消化器疾患患者の看護』,『心疾患患者の看護』,『呼吸器疾患患者の看護』,『糖尿病患者の看護』,『リハビリテーション看護』の5つが出版され,いずれも好評である。
 このシリーズを特に読んでほしい対象に,経験の浅い看護師があげられる。最近はローテーションの影響で,特定領域のベテラン看護師が少なくなり,経験の浅い看護師が,彼らから「臨床の知」を継承する機会が激減してしまった。しかしこのシリーズが,その機会を補う役割を果たしてくれるのではないかと考える。また,ベテラン看護師にもぜひ読むことを勧めたい。このシリーズは,ベテラン看護師たちの日頃の実践に自信と価値を与え,自らの「臨床の知」を生き生きと表現するきっかけを与えてくれることだろう。

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