緑内障診療のための
自動静的視野計測

もっと見る

ゴールドマンに代表される動的視野計測から,近年は静的視野計測(自動視野計)に変わりつつある。本書では,その測定原理やアーティファクトの原因など,測定にあたっての注意事項を詳細に述べるとともに,視野図を解釈する上で必要な基礎知識を,豊富な症例を駆使しつつ解説。緑内障視野検査に従事する眼科医必携の1冊。
原著 Douglas R. Anderson / Vincent Michael Patella
監訳 北澤 克明 / 山本 哲也
岐阜大学医学部眼科学教室
発行 2001年10月判型:B5頁:192
ISBN 978-4-260-13775-1
定価 8,800円 (本体8,000円+税)
  • 販売終了

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 目次
  • 書評

開く

第1章 量的視野測定の基本 
第2章 緑内障による視野欠損 
第3章 静的視野計測の臨床 
第4章 単一視野のプリントアウト 
第5章 単一視野の解釈 
第6章 自動視野計の検査法の選択 
第7章 視野検査による経過観察

開く

静的視野測定のすべてを網羅した名著
書評者: 松本 長太 (近畿大助教授・眼科学)
 本書は,D. R. Anderson,V. M. Patella両氏の共著である『Automated Static Perimetry』(Mosby)第2版を岐阜大学医学部北澤克明名誉教授,山本哲也教授ならびに同眼科学教室のスタッフの多大なる努力により日本語訳されたものである。

◆実践に即した緑内障診療のための視野検査

 視野検査に関しては,古くから教科書的に書かれた洋書が多く発行されてきた。特にこの10年間,自動視野計の普及に伴い視野検査は,その理論,測定方法,結果の評価法のすべてにおいて大きく変化し,それに伴い自動視野計を対象とした多くの洋書が発行,改版されてきた。視野検査は,眼科医のみならず多くの眼科スタッフが日々行なう重要な検査であるにもかかわらず,残念ながらこれら最新の視野検査に関する洋書の翻訳はなかなか行なわれてこなかった。
 今回翻訳された『Automated Static Perimetry』は,Humphrey視野計を中心に自動視野計の基本的な理論を徹底的に理解し,自動視野計を臨床的に使用する際のガイドとなることをめざした書籍であり,視野に関する視覚心理物理学の基礎,視野検査の基本理論にはじまり,視覚系の解剖学的特徴と視野異常の関係,閾値検査におけるいろいろの測定アルゴリズム,実際の臨床における検査法の選択,測定結果の解釈に至るまで静的視野測定のすべてを網羅した名著である。

◆視野検査の疑問を解消

 今回の日本語版の発行にあたっては,あえて全訳ではなく,特に緑内障診療に必須と考えられる項目に対し重点をおいて翻訳されており,よりコンパクトで実践に即したスタイルとなっている。しかしながら,本著の大きな特徴でもある非常に多くの実際の臨床症例の視野は,ふんだんに取り入れられており,自動視野計による静的視野の測定結果の読み方を理解する上で,たいへんわかりやすい構成となっている。また各章それぞれにおいて,豊富に参考文献が引用されていることも本著の特記すべき特徴であり,視野に関してより知識を深めるさいの大きな手助けとなる。
 この『Automated Static Perimetry』第2版の日本語訳は,日ごろから視野はなかなか難しいと感じているわれわれ眼科医にとって,待望の1冊となるであろう。さらに,眼科医以外の視野検査に従事する多くのスタッフにとっても,本書はたいへん読みやすい構成となっており,日々行なっている視野検査に対する多くの疑問が解決すると思う。ぜひ一読をお勧めしたい。

待望の訳書,まさに必読の視野計測の教科書
書評者: 白土 城照 (東医大八王子医療センター教授・眼科学)
◆眼科診療に不可欠な自動静的視野計測

 「待望の訳書が出た」。本書を手にしての最初の感想である。
 自動静的視野計が,1970年代半ばに登場して以来急速に普及し,わが国では現在までに,推定でのべ6000台以上が発売され,まさに眼科診療に不可欠な検査装置の1つとなっている。しかし,自動静的視野計測結果に対する理解は,必ずしも十分とは言えず,多くの検査員,眼科医がグレースケール表示を眺めて診断し,経過判定を行なっているのが現状であろう。
 自動視野計普及の要因が,従来のゴールドマン視野測定には不可欠であった熟達した検査員を要しないという利点にあったことは事実であるが,自動静的視野計の価値は,検査の自動化以上に網膜感度の定量的測定を可能にしたことで,従来にない統計に基づいた客観的な正常,異常の判定,経過の評価を可能としたことである。しかし,わが国ではその意義と有用性を理解せしめるのに教科書と呼べる書籍はなく,その知識は定期刊行物の特集や各所の講演会で得るしかなかったと言える。しかもそれは自動視野計登場の当初に多く,自動視野計による計測が普及した現在では,測定結果の解釈は自明のこととして,教育が不十分なままの眼科医や検査員が増加している。そのような不満,あるいは不安が増していたところに本書の登場である。まさに「待望の訳書」が出たと感じた。
 本書は,D. R. Anderson,V. M. Patella両氏による名著『Automated Static Perimetry』(2nd edition, 1999, Mosby)の訳書であるが,原著の抄訳書ではなく,360頁余の原著から自動静的視野計測の理解に必要な章が巧みに選択・翻訳され,集合されて1冊の教科書として完成している。
 原著は,永く視野学の教科書であった『Perimetry』(1982, 1987, Anderson D. R. 著,Mosby)をAnderson博士自身が自動視野計の普及に伴い新たに上梓した『Automated Static Perimetry』(1992, Mosby)の第2版であるが,自動視野計の権威であるPatella博士を共著者に迎えたことによってGaze Track,SITA,SWAP,そして視野障害進行判定の考え方など,最新の自動静的視野計測の情報が盛り込まれ,まさに現代の視野計測の教科書として必読の書として知られている。しかし,何分にも大部であるため通読することも困難であったが,本訳書では,原著にある類似した内容の視野図を一部削除するなどして全体の軽量化が計られ,手軽に通読できる配慮がなされている。完成された原著の全容を損ねることなく,章を選択して書籍として完成させることは,単なる原著の全訳以上に労力のいることであり,監訳者の苦労が察せられる。

◆一読でなく,再読,再々読すべき訳書

 監訳者である北澤克明岐阜大学名誉教授,山本哲也岐阜大学教授は,言うまでもなくわが国を代表する緑内障の泰斗であり,本書のタイトルも原著の『自動静的視野計測』ではなく『緑内障診療のための自動静的視野計測』と前書きがつけられている。むろん,量的視野計測の基本的考え方や検査結果の解釈など,視野計測に必要な章はもれなく採用されている。原著を全訳とせず,章を絞ったことによってむしろ原著以上に充実した,わかりやすい内容の教科書となっている。眼科医のみならず,視機能検査に携わる者にとって必読で,一読ではなく再読,再々読すべき訳書であるが,多くの読者にとっては掲載された多数の視野図とその説明を読むだけでも,自動視野計に対する理解が深まり,それまでの考え方が変わることは間違いない。

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。