臨床化学 第3版

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1998年の第2版からわずか3年目の改訂であるが、その間、臨床化学領域では標準化の達成が著しい。その背景には、標準物質の供給、測定体系に従った測定手法の確立が挙げられる。本書は、基準範囲を求める過程とその背景となる測定体系について概念から習得できるよう、測定の臨床的意義を踏まえ丁寧に解説した。
編集 菅野 剛史 / 松田 信義
菅野 剛史 / 仁科 甫啓 / 安部 彰
発行 2000年12月判型:B5頁:328
ISBN 978-4-260-27439-5
定価 6,600円 (本体6,000円+税)
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  • 目次
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1 総論
 A. 臨床化学とは
 B. 検査計画からデータの管理まで
 C. 定量分析
 D. 分離分析
 E. 酵素的測定法
 F. 免疫測定法
 G. ドライケミストリー
 H. 自動分析法と検査システム
 I. 超微量分析と臨床分析の将来
 J. 臨床化学で必要な統計計算
 K. 基準範囲(いわゆる正常域)
2 各論
 A. 電解質
 B. 蛋白質
 C. 非蛋白窒素化合物
 D. 糖質および代謝産物
 E. 脂質
 F. その他の有機化合物
 G. 酵素とアイソエンザイム
 H. 内分泌と情報伝達
 I. 血中薬剤濃度測定
3 機能検査
 A. 内分泌機能検査
 B. 腎機能検査
 C. 肝機能検査
 D. 膵機能検査
4 臨床化学実験
 A. 臨床化学実習の基本
 B. 電解質ならびに微量金属
 C. 蛋白
 D. 非蛋白性窒素化合物
 E. 糖質
 F. 脂質
 G. その他の有機物
 H. 酵素
 I. ホルモン

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将来を着目した臨床化学の教科書
書評者: 小川 善資 (北里大助教授・医療衛生学部)
◆明確化された教育目標

 この教科書で最もインパクトを受けた点は,「キーワード」,「学習の要点」,「理解度の点検と問題」が各セクションに明記されていることである。「学習の要点」は何を教えたいのか,何を理解させたかったのかをまず明確にし,それから,教科書に取り組むことを推薦している。「理解度の点検と問題」ではどこまで理解しているか,どこがポイントであるかをきわめてわかりやすい形式で提供し,教育目標を示している。
 これからの教育は,今までの知識を詰め込む教育から,基礎知識の伝達と,応用性,自発思考の推奨を惹起させる教育でなければならないと思う。このため,教育目標と達成目標を明確にし,その上で,応用性と思考の目標を与え,柔軟な頭脳を養成することが重要であると思う。将来を着目したすばらしい形式の教科書である。

◆立体的思考能力を養う

 また,従来の教育では,ややもすると平面的知識を提供しがちであった。臨床化学は,臨床化学,臨床免疫,血液学との接点がどこにあるかはわかりにくかった。臨床化学の中でも脂質と酵素の関わり合いや項目間の関係は,なかなか理解できなかったと思う。しかし,生体内では,すべての反応や物質が混ざり合って共存共栄している。また,病気という観点から見ても,単純なただ1つの病気だけの患者はむしろ少なく,いくつもの病気に罹患した患者のほうが多く,絡まり合った病状を科学の力を借りて解きほぐしていかなければならない。
 今,患者に必要なことは何か,何から改善していかなければならないのかを科学的に証明していく必要がある。このためには知識を立体的に組み立て,学科目の壁をうち破って思考できる能力を持った学生に成長してもらわなくてはならない。
 これは学生1人ひとりが自発的に思考し,身につけてもらわなければならない能力かもしれない。しかし,本書では「キーワード」を明確にしたことで,立体的思考の重要な糸口になるように思う。別の項で,同じキーワードがあったとすれば,まさに,関連性が明確になるだろうし,関連性をいやでも感じると思う。
 近年の科学技術の進歩は,目を見張るものがある。このため,教育しなくてはならないと感じることが否応なしに増加し,どれもこれもが重要な問題のように思える。しかし,この教科書はコンパクトにまとめられていながら,学習する方に大きな未来を与えてくれそうな立派な本であると思う。知識の拡張性や思考の方向性を指し示してくれているように思う。精読,読破し,この教科書の裏まで読み取り,大きく躍進する礎として,活用できる教科書である。

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