膝MRI

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整形外科疾患は,MRI検査の最もよい検査対象の1つであるが,とりわけ健康ブームの到来で膝の受診者が増加している。著者は将来を嘱望されている放射線科医で,この領域における豊富な症例数と業績を誇っている。膝関節の微細病変を描出するに足る鮮明な画像と,箇条書きでわかりやすい本文,見やすいレイアウトが特徴的な1冊。
新津 守
発行 2002年03月判型:B5頁:160
ISBN 978-4-260-13889-5
定価 5,720円 (本体5,200円+税)
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  • 目次
  • 書評

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第1章 膝の解剖
第2章 MRI撮像法
第3章 前十字靱帯
第4章 後十字靱帯
第5章 内側側副靱帯
第6章 外側側副靱帯を含む外側支持組織
第7章 半月板
第8章 骨折と脱臼
第9章 若年者の膝
第10章 変性と壊死
第11章 滑膜病変とタナ障害
第12章 膝内外の液体貯留腔

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実地医家向け膝関節疾患ガイドの誕生
書評者: 史野 根生 (大阪府立看護大医療技術短大教授/阪大整形外科学(スポーツクリニック))
筆者が,膝関節を中心としたスポーツ整形の分野を志して,早や20余年の歳月が流れてしまった。その間,どのような進歩があったであろうか。骨損傷を伴わない外傷性膝関節傷害は膝内障と総称され,「よくわからないもの」と考えられていた。十字靭帯や半月など関節内軟部組織がよく損傷をきたすのに,その傷害部位を特定できる非侵襲的診断法が確立されていなかったからである。「関節切開手術より痛い」と言われた関節造影は,余りに診断的価値が低く,関節鏡は小手術とも言うべきものであり,到底非侵襲的診断法とは言えなかった。
 1980年代の中頃であろうか,米国の学会でみたMRI画像は,衝撃以外の何者でもなかった。あの,関節切開や関節鏡を施行しなければわからないと言われた十字靭帯や半月が,見事に描写されているではないか。やがて,ようやく本邦でもMRI画像が撮れるようになり,筆者は造影をやめてしまった。つまり,MRIは膝の構造体を描写する,最高の非侵襲的手段と断言できる。

◆うかがい知る著者のスポーツ障害に対する造詣の重さ

 さて,本書『膝MRI』である。まず,書名の単刀直入さ通り,画像,シェーマ,箇条書きの本文からなり,非常にわかりやすく整理されている。つぎに,表紙の写真である。前十字靭帯の矢状断スライスが大きく掲載されている。これで,著者の前十字靭帯損傷を中心とするスポーツ傷害に対する造詣の深さがうかがい知れる。
 第1,2章では,解剖,撮像の具体的方法,注意点や,描写しがたい軟骨の撮影法などが要領よく述べられている。しかし,白眉は,第3章であろう。単に前十字靭帯損傷の診断法のみならず,再建術の基本,移植靱帯の再構築過程,再建靭帯のMRI評価にまで言及されている。つまり,診断のプロとしての放射線科医師としてでなく,MRIを通じて患者治療やその予後に関心を寄せる“熱い心”を持った医療チームの医師の1人としての姿勢で,記載が貫かれている。したがって,随所に疫学,病因論,治療の原則などが要領よくちりばめられている。以下の最終章まで,この姿勢はずっと貫かれている。
 また,めずらしいBlount病や,アミロイド関節症なども記載され,本書はMRIを中心とした膝関節疾患図譜としても,秀逸と言える。さらに,特筆すべきは,掲載されている画像の鮮烈さであろう。これは,表紙に始まり,最終の頁までずっと一貫している。
 本邦にこのような実地医家向けのすばらしい膝関節疾患ガイドが誕生したことを,心から喜びたい。
待望の膝MRI診断学テキストの完成
書評者: 福田 国彦 (慈恵医大教授・放射線医学)
 MRIの出現は,骨関節領域の画像診断アルゴリズムに大きな変革をもたらした。現在では,MRIなしにこの領域の診療は成り立たない,と言っても過言ではない。骨関節の中では,膝は脊椎についでMRI検査の依頼が多いにもかかわらず,本邦では膝MRIのテキストはなかった。待望の膝MRI診断学テキストの完成と言える。

◆膝MRI診断の格好の入門書

 本書には,いくつか特徴がある。
 まず第1に,非常に読みやすいレイアウトで構成されていることが目を引く。質の高いMR画像と,適切に描かれた図が多用されており視覚的な理解を容易にしている。文章は,すべて箇条書きである。また,参考文献は章末一括でなく該当部位に挿入されている。短時間に内容を理解し,必要に応じて頁をめくることなく引用文献が確認できるように工夫されている。
 第2は,MRI検査と診断のポイントが,簡潔かつ明確に示されていることである。MRIの原理は,臨床的に必要な点に絞っており,むしろ撮像時の膝の固定法,撮像断面の決め方,ACLの描出能をあげるための工夫など,いかにしたら良質な画像を得られるかを具体的に解説している。また,読影にあたっての注意点についても,誤りやすい点など具体的な指摘がある。
 第3は,筆者の膝MRI診断に対する考えが,コラム覧を中心に随所に示されていることである。例えば,半月板内部の高信号に対するgrading分類については,その分類自体を知らなければ臨床現場では役に立たないので,このような実態のないgradingは,もう使うことはよそうと提案している。
 このように,本書は膝のMRI診断にこだわりながらこれまで診療されてきた著者の,いわばシークレット診療メモの集大成と言える。
 本書は,整形外科医と放射線診断医にとって,膝MRI診断の格好の入門書であると同時に,すでに膝を専門とする医師にとっても,あいまいであったMRI診断の知識を短時間で系統的に整理するのに大いに役立つと考える。また,リファレンスブックとして診察室や読影室に,必ず常備すべき本として本書を推奨する。

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