米国内科学会アレルギー診療ガイド
プライマリケア医のために
プライマリケア医のためのアレルギー疾患診療実践ガイド
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本書は一般診療でもよく遭遇する鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患を扱った、米国内科学会のエキスパートによるプライマリケア医向け実践ガイドである。発症機構の解説から、ケーススタディも適宜挿入され、治療プロトコールも豊富に示されている。翻訳にあたっては、日本の実状に合わせた改変と豊富な訳注を施した。
原著 | Raymond G. Slavin / Robert E. Reisman |
---|---|
訳 | 岡田 正人 |
発行 | 2000年12月判型:A5頁:256 |
ISBN | 978-4-260-11964-1 |
定価 | 4,180円 (本体3,800円+税) |
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- 書評
目次
開く
第1章 アレルギー検査
第2章 鼻炎
第3章 副鼻腔炎
第4章 喘息
第5章 アレルギー性皮膚疾患
第6章 アナフィラキシー(ハチ毒アレルギーを含む)
第7章 薬物アレルギー
第8章 免疫学的肺疾患
第9章 減感作療法
第2章 鼻炎
第3章 副鼻腔炎
第4章 喘息
第5章 アレルギー性皮膚疾患
第6章 アナフィラキシー(ハチ毒アレルギーを含む)
第7章 薬物アレルギー
第8章 免疫学的肺疾患
第9章 減感作療法
書評
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米国アレルギー診療ガイドの日本バージョン
書評者: 古阪 徹 (日大・耳鼻咽喉科/頭頸部外科)
◆単なる翻訳書でなく「日本版」に努力
本書は,米国内科学会がプライマリケア医のために作成したアレルギーエキスパート診療ガイドの「日本版」である。「日本版」というのは単なる翻訳書という意味ではない。
原書の優れたところは,各章に典型的な症例がまずあり,実地的に理解していけるようになっていること,理解しながら知識が増えるようにEBMに則って理由づけがされていること,プライマリケアにおいて頻度の多い疾患に絞ってあること,プライマリケア医がどこまで専門医同様のケアが可能で,どのような場合は専門医に紹介することが望ましいかなどが示されていることである。
しかしながら,原著はあくまで教科書的で,各々のセクションが非常に長くなっており,検索しにくい。また疾患によっては日本と米国との慣習や治療方針が異なるため,単なる翻訳書であったならば日本においてそのまま使用できない欠点があった。
本書を翻訳版ではなく「日本版」と位置づける理由として,小段落をつけ検索しやすくしている点,日本の慣習と大きく治療方針が異なる場合は,論文を引いて丹念に解説がなされている点,日本で使用される薬剤に直して(近々日本でも発売になる薬剤に対しても),適応,用法,用量などが親切に記述されている点,また,各分野でもっとも信頼のある雑誌を加え重要な最新知見を盛り込んだまさにup-to-dateな日本バージョンとなっている点があげられる。それでいて,大綱はもちろん原著に忠実で世界標準となっているところが訳者の努力の大変さをうかがわせるところとなっている。
これらの基礎となっているのが訳者の経験であろう。岡田正人先生は,日本の大学医学部を卒業後,米国海軍病院でのインターンを経験し,母校ではない大学病院で内科学を研鑽された。その後ニューヨークで内科専門医となり,さらにエール大学ニューヘブン病院でアレルギー,膠原病,リウマチ学の専門医となられた方である。当時エール大学医学部外科学教室に癌専門医として勤務していた小生は,研究面では癌免疫をライフワークとしていることもあり,免疫学教室にも出入りしていたことから岡田先生と知遇を得るに至った。当時から先生は,臨床だけでなく研究面にも秀でておられ,スタッフとなられた後は,エール大学からPhysician-Scientist Awardを,さらにAmerican College of RheumatologyからはSenior Scholar Awardなど大変名誉ある賞を授与されている。つねに先端をいかれ,活躍の場を世界に求められる先生は,現在,パリ・アメリカン病院のチーフとして,主に在仏日本人の治療に貢献されている。
◆日米間の慣習の違いを配慮した充実した内容
医学を修めることは大変なことであるが,このような訳者の経歴により本書は,日米間の慣習の違いにも十分配慮した上で,まことに充実した内容で,読みやすく,しかも理解しやすくなっている。訳者のご努力は大変なものであったに違いない。
本書は,プライマリケアをめざす内科医だけでなく,アレルギー疾患が,内科,耳鼻咽喉科・頭頸部外科,皮膚科,小児科にまたがる疾患のため,どの分野の医師にとってもアレルギー症状を呈した患者さんを診察する時に役立つものと確信する。本書では症状別,程度別などに対する治療がクリアに表示されている。また,鼻炎用ステロイドスプレーの投与方法に至っては常用量だけでなく,最大投与量,成人にふさわしい薬剤,小児には避けたい薬剤などが実に適切に簡潔に,わかりやすく表示されているように,専門医から見ても実用的かつ高度な内容となっており驚かされる。
さらに本書は,プライマリケア医のためのアレルギー教科書として非常に優れているばかりでなく,教育に携わる者としては,学生,研修医にもわかりやすい教材として勧められる。また日常臨床に携わる者としては,up-to-dateな実用書としてぜひとも手元に置きたい1冊である。
臨床医のためのアレルギー診療の教科書
書評者: 野口 善令 (京大附属病院・総合診療部)
あなたは次の質問に答えられますか。もし,すらすらと解答が浮かんでこないようであればこの本を読む価値があります。
(1)血清総IgE値が診断に有用な疾患は何か
(2)肝障害や薬物相互作用により,致死的な不整脈を起こす可能性がある抗ヒスタミン薬は何か
(3)重大な疾患の部分症ではなく,対照的に観察してよい良性の慢性じんま疹を示唆する特徴は何か
(4)抗生剤投与に先立つ皮内反応(ペニシリン皮膚検査)は誰に施行されるべきか
◆実際の臨床に役立つ構成
岡田正人訳『米国内科学会アレルギー診療ガイド-プライマリケア医のために』が刊行された。原書はACP Expert Guide seriesの“Allergy and Immunology”である。米国の学会が出版する実践書は,忙しい臨床医に読ませて損をさせないという意気にあふれていて好感が持てる。本書の原著も,各章のはじめに典型的な症例が呈示してあり,実地臨床に即して理解していけるようになっている,EBMに則って理由づけがされている,プライマリケアにおいて頻度の多い疾患に絞ってある,どこまでプライマリケア医がケア可能で,どのような場合に専門医に紹介することが望ましいかが示されているなど,実際的で臨床に役立つ構成になっている。
また通常の翻訳書では,(1)日本語に翻訳された時点で最新の情報から遅れてしまっている,(2)欧米のスタンダードな治療法が日本で伝統的に行なわれている医療と大きく異なる場合,そのまま翻訳しても医療現場に受け入れられない,(3)わが国で市販されない薬物に言及されている場合にわざわざ同効薬を調べるのが煩わしい,などの問題があることが多いが,本書では訳者が丁寧な注釈と補追を行ない,これらの問題点には下記のような対応がなされている。
(1)各分野の主要雑誌(NEJM,Pediatrics,LANCET,Ann Im,Allergy,J All Cin Immu)から2000年8月(一部10月)までの重要な最新知見が補足されupdateされている
(2)喘息に対するテオフィリン,吸入ステロイドなど,日本の慣習と大きく治療方針が異なる場合は論文を引いて解説してある
(3)大綱は原著に忠実に世界標準になっているが,単なる翻訳ではなくわが国で使用可能な同効薬があげられ,投与量,適応も日本で使うことを念頭に翻訳されている
また,他にもPOINTSを各章のはじめにつけるなど,読みやすくするための工夫が凝らされている。
アレルギー疾患はプライマリケアで遭遇する頻度が高いにもかかわらず,わが国では系統的な臨床教育がなされることが少なく,いわば専門の谷間にあたる領域である。筆者も何となくいいかげんに理解している内容が多かったが,本書を通読して随分知識を整理することができた。EBMの方法論に従って臨床的疑問についての追求ばかりを行なっていると,どうしても知識の谷間ができるため,時にはsurveillanceとして広く知識を仕入れることも必要であると痛感した。本書は,アレルギー疾患の知識を整理するためには最適であり,プライマリケア医のためのアレルギー診療の教科書として一読をお薦めする。
書評者: 古阪 徹 (日大・耳鼻咽喉科/頭頸部外科)
◆単なる翻訳書でなく「日本版」に努力
本書は,米国内科学会がプライマリケア医のために作成したアレルギーエキスパート診療ガイドの「日本版」である。「日本版」というのは単なる翻訳書という意味ではない。
原書の優れたところは,各章に典型的な症例がまずあり,実地的に理解していけるようになっていること,理解しながら知識が増えるようにEBMに則って理由づけがされていること,プライマリケアにおいて頻度の多い疾患に絞ってあること,プライマリケア医がどこまで専門医同様のケアが可能で,どのような場合は専門医に紹介することが望ましいかなどが示されていることである。
しかしながら,原著はあくまで教科書的で,各々のセクションが非常に長くなっており,検索しにくい。また疾患によっては日本と米国との慣習や治療方針が異なるため,単なる翻訳書であったならば日本においてそのまま使用できない欠点があった。
本書を翻訳版ではなく「日本版」と位置づける理由として,小段落をつけ検索しやすくしている点,日本の慣習と大きく治療方針が異なる場合は,論文を引いて丹念に解説がなされている点,日本で使用される薬剤に直して(近々日本でも発売になる薬剤に対しても),適応,用法,用量などが親切に記述されている点,また,各分野でもっとも信頼のある雑誌を加え重要な最新知見を盛り込んだまさにup-to-dateな日本バージョンとなっている点があげられる。それでいて,大綱はもちろん原著に忠実で世界標準となっているところが訳者の努力の大変さをうかがわせるところとなっている。
これらの基礎となっているのが訳者の経験であろう。岡田正人先生は,日本の大学医学部を卒業後,米国海軍病院でのインターンを経験し,母校ではない大学病院で内科学を研鑽された。その後ニューヨークで内科専門医となり,さらにエール大学ニューヘブン病院でアレルギー,膠原病,リウマチ学の専門医となられた方である。当時エール大学医学部外科学教室に癌専門医として勤務していた小生は,研究面では癌免疫をライフワークとしていることもあり,免疫学教室にも出入りしていたことから岡田先生と知遇を得るに至った。当時から先生は,臨床だけでなく研究面にも秀でておられ,スタッフとなられた後は,エール大学からPhysician-Scientist Awardを,さらにAmerican College of RheumatologyからはSenior Scholar Awardなど大変名誉ある賞を授与されている。つねに先端をいかれ,活躍の場を世界に求められる先生は,現在,パリ・アメリカン病院のチーフとして,主に在仏日本人の治療に貢献されている。
◆日米間の慣習の違いを配慮した充実した内容
医学を修めることは大変なことであるが,このような訳者の経歴により本書は,日米間の慣習の違いにも十分配慮した上で,まことに充実した内容で,読みやすく,しかも理解しやすくなっている。訳者のご努力は大変なものであったに違いない。
本書は,プライマリケアをめざす内科医だけでなく,アレルギー疾患が,内科,耳鼻咽喉科・頭頸部外科,皮膚科,小児科にまたがる疾患のため,どの分野の医師にとってもアレルギー症状を呈した患者さんを診察する時に役立つものと確信する。本書では症状別,程度別などに対する治療がクリアに表示されている。また,鼻炎用ステロイドスプレーの投与方法に至っては常用量だけでなく,最大投与量,成人にふさわしい薬剤,小児には避けたい薬剤などが実に適切に簡潔に,わかりやすく表示されているように,専門医から見ても実用的かつ高度な内容となっており驚かされる。
さらに本書は,プライマリケア医のためのアレルギー教科書として非常に優れているばかりでなく,教育に携わる者としては,学生,研修医にもわかりやすい教材として勧められる。また日常臨床に携わる者としては,up-to-dateな実用書としてぜひとも手元に置きたい1冊である。
臨床医のためのアレルギー診療の教科書
書評者: 野口 善令 (京大附属病院・総合診療部)
あなたは次の質問に答えられますか。もし,すらすらと解答が浮かんでこないようであればこの本を読む価値があります。
(1)血清総IgE値が診断に有用な疾患は何か
(2)肝障害や薬物相互作用により,致死的な不整脈を起こす可能性がある抗ヒスタミン薬は何か
(3)重大な疾患の部分症ではなく,対照的に観察してよい良性の慢性じんま疹を示唆する特徴は何か
(4)抗生剤投与に先立つ皮内反応(ペニシリン皮膚検査)は誰に施行されるべきか
◆実際の臨床に役立つ構成
岡田正人訳『米国内科学会アレルギー診療ガイド-プライマリケア医のために』が刊行された。原書はACP Expert Guide seriesの“Allergy and Immunology”である。米国の学会が出版する実践書は,忙しい臨床医に読ませて損をさせないという意気にあふれていて好感が持てる。本書の原著も,各章のはじめに典型的な症例が呈示してあり,実地臨床に即して理解していけるようになっている,EBMに則って理由づけがされている,プライマリケアにおいて頻度の多い疾患に絞ってある,どこまでプライマリケア医がケア可能で,どのような場合に専門医に紹介することが望ましいかが示されているなど,実際的で臨床に役立つ構成になっている。
また通常の翻訳書では,(1)日本語に翻訳された時点で最新の情報から遅れてしまっている,(2)欧米のスタンダードな治療法が日本で伝統的に行なわれている医療と大きく異なる場合,そのまま翻訳しても医療現場に受け入れられない,(3)わが国で市販されない薬物に言及されている場合にわざわざ同効薬を調べるのが煩わしい,などの問題があることが多いが,本書では訳者が丁寧な注釈と補追を行ない,これらの問題点には下記のような対応がなされている。
(1)各分野の主要雑誌(NEJM,Pediatrics,LANCET,Ann Im,Allergy,J All Cin Immu)から2000年8月(一部10月)までの重要な最新知見が補足されupdateされている
(2)喘息に対するテオフィリン,吸入ステロイドなど,日本の慣習と大きく治療方針が異なる場合は論文を引いて解説してある
(3)大綱は原著に忠実に世界標準になっているが,単なる翻訳ではなくわが国で使用可能な同効薬があげられ,投与量,適応も日本で使うことを念頭に翻訳されている
また,他にもPOINTSを各章のはじめにつけるなど,読みやすくするための工夫が凝らされている。
アレルギー疾患はプライマリケアで遭遇する頻度が高いにもかかわらず,わが国では系統的な臨床教育がなされることが少なく,いわば専門の谷間にあたる領域である。筆者も何となくいいかげんに理解している内容が多かったが,本書を通読して随分知識を整理することができた。EBMの方法論に従って臨床的疑問についての追求ばかりを行なっていると,どうしても知識の谷間ができるため,時にはsurveillanceとして広く知識を仕入れることも必要であると痛感した。本書は,アレルギー疾患の知識を整理するためには最適であり,プライマリケア医のためのアレルギー診療の教科書として一読をお薦めする。
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