精神科リハビリテーション・ケースブック
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今こそ求められる精神医療を新しい視点から体感できる書
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開かれた社会では,問題を「外部とシェアする」ことが不可欠だと村上龍に言わしめた東京武蔵野病院における“長期在院者の脱施設化プロジェクト”を読者参加型ケースブックという画期的スタイルで紹介。クライアントの人生の時間軸に沿ったケアとは? 医療の継続性・一貫性とは? 今こそ求められる精神医療を新しい視点から体感できる書。
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- 目次
- 書評
目次
開く
序
第1章 この本の使い方
第2章 私たち専門職は何をしようとしているのか
第3章 MPRS(東京武蔵野病院精神科リハビリテーション・サービス)とは
第4章 ケースへのかかわり(概説)
第5章 ケースにふれて精神科リハビリテーションを考えてみよう
第6章 評価の問題
参考文献
付録
おわりに
第1章 この本の使い方
第2章 私たち専門職は何をしようとしているのか
第3章 MPRS(東京武蔵野病院精神科リハビリテーション・サービス)とは
第4章 ケースへのかかわり(概説)
第5章 ケースにふれて精神科リハビリテーションを考えてみよう
第6章 評価の問題
参考文献
付録
おわりに
書評
開く
精神科リハビリテーションの世界はここまで進んだ!
書評者: 神庭 重信 (山梨大教授/九州大教授・精神神経医学)
◆豊富な事例研究で読者を引き込む
読者は,精神科リハビリテーションの世界がこれほどまでに深まりと広がりを見せていることに驚きを隠せないに違いない。しかも,至る所に見て取れる,筆者らの工夫の跡や精神科リハビリテーションのなんたるかを伝えようとする熱い意気込みからは,本書が単なる真新しいテキストではなく,心憎いばかりの愛着が塗り込められた作品であることを感じるだろう。
まず目を引くのはその構成である。全体の7割が事例研究で占められている。しかもその事例は,著者らが東京武蔵野病院社会復帰病棟において出会った幾多の患者さんの記憶を断片化し,組み合わせ,合成した創作事例である。事例が同定される可能性を完全に払拭するために,彼らはあえてそうしたのである。事例に目を通すと,次に読者は,「あなたならどう考えるか」と問いかけられる。患者の持つ資源,適応能力,心理的・社会的機能度,精神科リハビリテーション診断,そもそも今この患者にリハビリテーションが必要あるいは可能なのか,などについて読者の臨床能力が試される。その後で彼らが用意した解答を読むことになる。さらに事例の経過が記述され,再び「あなたならどう考えるか」,「私たちはこう考えた」と進む,という段取りである。
そのとき担当医師はどう動いたのか,ナースは,PSWは,OTは,CPは何を感じ取ったのか,それぞれの立場の動きがリズミカルに記述され,その巧みな筆致は,読む者をして彼らのチーム・カンファレンスに参加しているかのごとき錯覚に誘ってくれる。
◆リハビリテーションの目的を定義
筆者らは,精神科リハビリテーション・サービスを「その結果として,クライアントに最も暮らしやすい空間を提供すること」と考えている。それは,自己実現の満足感や希望や可能性を抱けるような生活である。また「周囲が満足しない処遇は,結局は本人のためにならない」ともいう。とかく形式的で画一なサービスに流れがちなリハビリテーションという治療行為に,実に明快で,臨床的な定義を与えている。このように目的を定めることで,リハビリテーション・サービスは具体性を帯び,チームは必要な準備を整えることができる。しかもその計画は1年以上先の目標に向かって進められていたりもする。ここでもチームのスピリットには脱帽である。
著者らの強調するもう1つのこと,それは,チーム医療としてのリハビリテーションである。患者の人生の再設計ともいえる,この途方もなく遠大で責任の重い取り組みは,各領域のプロフェッショナルの持つ経験と知識を縦横に活用することが不可欠である。そのためにチームは統合されなければならない。統合されたチームの力で,患者―家族―社会の関係の底流が読み解かれ,それぞれの豊かな経験が共鳴しあう時,チームは,患者や家族にとって心強い援軍へと変身する。
かように,あとがきを読み終えた時,評者は,精神科リハビリテーションの進化を垣間見れたことに率直な感激を覚えた。本書の誕生は,この医療に関わるすべての者にとっての記念碑となるに違いない。
書評者: 神庭 重信 (山梨大教授/九州大教授・精神神経医学)
◆豊富な事例研究で読者を引き込む
読者は,精神科リハビリテーションの世界がこれほどまでに深まりと広がりを見せていることに驚きを隠せないに違いない。しかも,至る所に見て取れる,筆者らの工夫の跡や精神科リハビリテーションのなんたるかを伝えようとする熱い意気込みからは,本書が単なる真新しいテキストではなく,心憎いばかりの愛着が塗り込められた作品であることを感じるだろう。
まず目を引くのはその構成である。全体の7割が事例研究で占められている。しかもその事例は,著者らが東京武蔵野病院社会復帰病棟において出会った幾多の患者さんの記憶を断片化し,組み合わせ,合成した創作事例である。事例が同定される可能性を完全に払拭するために,彼らはあえてそうしたのである。事例に目を通すと,次に読者は,「あなたならどう考えるか」と問いかけられる。患者の持つ資源,適応能力,心理的・社会的機能度,精神科リハビリテーション診断,そもそも今この患者にリハビリテーションが必要あるいは可能なのか,などについて読者の臨床能力が試される。その後で彼らが用意した解答を読むことになる。さらに事例の経過が記述され,再び「あなたならどう考えるか」,「私たちはこう考えた」と進む,という段取りである。
そのとき担当医師はどう動いたのか,ナースは,PSWは,OTは,CPは何を感じ取ったのか,それぞれの立場の動きがリズミカルに記述され,その巧みな筆致は,読む者をして彼らのチーム・カンファレンスに参加しているかのごとき錯覚に誘ってくれる。
◆リハビリテーションの目的を定義
筆者らは,精神科リハビリテーション・サービスを「その結果として,クライアントに最も暮らしやすい空間を提供すること」と考えている。それは,自己実現の満足感や希望や可能性を抱けるような生活である。また「周囲が満足しない処遇は,結局は本人のためにならない」ともいう。とかく形式的で画一なサービスに流れがちなリハビリテーションという治療行為に,実に明快で,臨床的な定義を与えている。このように目的を定めることで,リハビリテーション・サービスは具体性を帯び,チームは必要な準備を整えることができる。しかもその計画は1年以上先の目標に向かって進められていたりもする。ここでもチームのスピリットには脱帽である。
著者らの強調するもう1つのこと,それは,チーム医療としてのリハビリテーションである。患者の人生の再設計ともいえる,この途方もなく遠大で責任の重い取り組みは,各領域のプロフェッショナルの持つ経験と知識を縦横に活用することが不可欠である。そのためにチームは統合されなければならない。統合されたチームの力で,患者―家族―社会の関係の底流が読み解かれ,それぞれの豊かな経験が共鳴しあう時,チームは,患者や家族にとって心強い援軍へと変身する。
かように,あとがきを読み終えた時,評者は,精神科リハビリテーションの進化を垣間見れたことに率直な感激を覚えた。本書の誕生は,この医療に関わるすべての者にとっての記念碑となるに違いない。
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