一般医のための
睡眠臨床ガイドブック
睡眠医学の基礎知識から睡眠障害の診療・予防までを平易に解説
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睡眠障害に悩んでいる人は人口の20%近くに達し、仕事や勉強の能率低下、交通事故、労働災害、身体疾患や老化との関連、QOLの低下など、睡眠問題は国民衛生の焦眉の課題である。本書は、最前線で活躍する一般臨床医を主対象に、睡眠医学の基礎知識と、日常診療で遭遇することの多い睡眠障害の診療と予防の実際をわかりやすく解説した。
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- 目次
- 書評
目次
開く
〔総論〕
A. わが国における睡眠障害の実態
B. 睡眠障害診断の進め方
C. 睡眠薬の特性とその使い方
〔各論〕
A. 不眠症とその治療-原発性不眠症を中心に
B. 小児の睡眠障害
C. 睡眠覚醒リズム障害の臨床
D. 交代制勤務と睡眠障害
E. ナルコレプシー、特発性過眠症とその周辺
F. うつ病と睡眠障害
G. 睡眠時呼吸障害-睡眠時無呼吸症候群を中心に
H. Restless Legs症候群、睡眠中の周期性四肢運動
I. REM睡眠行動障害
J. 老化、痴呆とサーカディアンリズム
K. 睡眠障害を予防するための生活習慣の工夫
L. 睡眠障害専門医療
A. わが国における睡眠障害の実態
B. 睡眠障害診断の進め方
C. 睡眠薬の特性とその使い方
〔各論〕
A. 不眠症とその治療-原発性不眠症を中心に
B. 小児の睡眠障害
C. 睡眠覚醒リズム障害の臨床
D. 交代制勤務と睡眠障害
E. ナルコレプシー、特発性過眠症とその周辺
F. うつ病と睡眠障害
G. 睡眠時呼吸障害-睡眠時無呼吸症候群を中心に
H. Restless Legs症候群、睡眠中の周期性四肢運動
I. REM睡眠行動障害
J. 老化、痴呆とサーカディアンリズム
K. 睡眠障害を予防するための生活習慣の工夫
L. 睡眠障害専門医療
書評
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睡眠障害の診療と予防の実際をわかりやすく解説
書評者: 樋口 輝彦 (国立精神・神経センター総長)
◆成人の5人に1人が睡眠障害
今日,わが国では成人の5人に1人が睡眠障害に悩んでいるという。そして,このうち2人に1人が睡眠薬を服用している。睡眠障害はこのように,今や国民病と呼んでもおかしくない病気である。正確な疫学調査の研究があるわけではないが,これらの睡眠障害に悩む方の大半はプライマリ・ケアの医師によって治療されていると考えて間違いない。しかし,これまでわが国の医学教育で睡眠障害は,どの程度教育されてきただろうか。せいぜい学部の系統講義が1コマあればよいほうで,卒後教育にはまったく組み込まれていない。あとはプライマリ・ケアの医師の自発的な勉強に頼るしかないのである。このような状況下で今回出版された『一般医のための睡眠臨床ガイドブック』は,まことに時宜を得たものと思う。
本書は,総論と各論の2部構成である。総論では睡眠障害の実態が明らかにされ,続いて睡眠障害の診断と鑑別診断が解説され,さらに睡眠薬の種類と治療の実態が述べられている。この約50頁を読むだけでも大変勉強になる。
◆充実し,実践向きの内容構成
各論は,12の章で構成されている。それぞれの章をその領域のエキスパートが執筆しているだけあって,内容は大変充実している。この各論の各章の構成は,実践向きにできており,診断と治療の仕方に力点が置かれている。編者の井上があとがきで「睡眠障害の臨床を行なう上で,確実に必要な知識を重点的に網羅することを意図した」と述べているが,まさにその意図が実現されている。確かに睡眠の生理学や病態生理あるいは最近の遺伝子の話題などはほとんど登場しないので,専門の医師にはややもの足りないかも知れないが,本書があくまでも「一般医」あるいはコメディカル,学生を対象とする姿勢を貫いた結果であり,目的は十分達成されているように思う。
各論の各章すべてを紹介したいところだが,紙数に限りもあるので,ここでは1,2を紹介するにとどめたい。
その1つは,「睡眠時呼吸障害」である。この領域は睡眠覚醒リズム障害と並んで,最近診断と治療法の進歩が著しい領域である。特に睡眠時無呼吸症候群に関しては,一般人口の1%以上を占める病気であることと,睡眠障害のみでなく,生命予後に関係する病気であることから,最近注目されている。おそらく一般医を別な主訴(高血圧,不整脈など)で受診する可能性も高く,その意味では,ぜひ一般科の医師に認知してもらう必要のある障害である。大変,要領よく簡潔に診断,病態,検査,臨床症状,治療が述べられており,日常診療に役立つこと間違いなしである。
次に「睡眠障害を予防するための生活習慣の工夫」である。睡眠障害のもたらす弊害は脳機能の低下のみでなく,免疫系や循環器系機能の低下をも含んでいる。今日のような都市型の生活パターンは容易に睡眠障害を引き起こす。であるがゆえに睡眠障害を予防する視点が重要とされる。この章では,筆者らの長年にわたる研究成果をもとに睡眠障害の予防の方策がわかりやすく述べられている。一般医やコメディカルを介して睡眠障害の予備群の方への啓蒙にも役立てられる内容と思われる。
このガイドブックが活用され,わが国の睡眠障害の適切な診断と治療が推進されることを願って,書評の締めくくりとさせていただく。
英知を結集した睡眠臨床の力作
書評者: 堀口 淳 (島根医大教授・精神医学)
◆増加する睡眠覚醒障害
およそどの領域の第一線の臨床医にとっても,睡眠覚醒障害への適切な対応が求められることは周知の事実である。睡眠覚醒障害は,あらゆる身体疾患や精神疾患に随伴すると言っても過言ではない。ましてやわが国の国民の生活環境は,ますますストレスフルな状況となっており,睡眠覚醒障害は増加の一途をたどっている。睡眠覚醒障害を有する患者が睡眠を専門とする医療機関を受診することはまれであり,その大半には一般臨床医が対応している。日常の診療の中で,一般医が睡眠薬を投与しない日は皆無であろう。しかしながら,わが国の医学教育の中に占める睡眠臨床に関する講義や実習の割合は,決して十分なものとは言えない。一般臨床医は多忙な日々の臨床の中で不眠患者に対峙し,不十分な知識の中で悪戦苦闘しているのが実状かもしれない。しかしこれまでに発刊されている睡眠関連の成書は,これから睡眠を研究しようとする者や,睡眠専門医のために発刊されたものが大部分であり,一般臨床医にとっては難解で,とっつきにくかった感は否めない。
◆診察室で「虎の巻」として活用
本書は,睡眠臨床におけるわが国を代表する執筆陣が,英知を結集した力作である。一般臨床医の日常診療にただちに役立つ実践的な内容がまとめられており,一般臨床医が診察室のかたわらに置いて,「虎の巻」として活用するにふさわしいものである。総論では睡眠臨床に必要な基本的な知識を整理し,各論では臨床場面で遭遇することの多い睡眠障害から,比較的特殊な睡眠障害まで,それらの病態や最新の治療法を平易に示している。また睡眠覚醒障害の予防や日常生活の工夫まで網羅してあり,一般臨床医にとっては即戦力となる実践者向きの成書である。一度概略を短時間で通読したうえで利用されることをお勧めする。
増加する睡眠障害に対応
書評者: 大川 匡子 (滋賀医大教授・精神医学)
◆一般医が扱う機会が多くなった睡眠障害
最近のわが国の疫学調査によると,欧米の先進諸国と同様に,不眠など睡眠に問題を持つ人は人口の20%近くにも達しており,特に高齢者ではさらに多くなっている。また何らかの病気を持って受診する患者には,25%にも睡眠障害がみられる。このような数字は,一般診療医が睡眠障害を扱う機会はかなり多いことを示している。
不眠は,さまざまな原因によって生じる1つの症状あるいは状態であり,1つの診断名ではない。不眠症状を示す多くの病気があり,また睡眠障害は多くの生活習慣病とも関連し,よい睡眠は生活習慣病の予防にもつながる。患者が不眠や睡眠障害を訴える時に,それに対する適切な診断・治療を行なうこと,あるいは睡眠障害の専門医に紹介することは臨床医の必修任務と言える。
睡眠障害に悩む多くの患者が最初に診療を求め,相談を持ちかけるのは第一線で活躍している臨床医,薬剤師,看護婦,その他多くの医療関係者である。本書はそれらの方々と医療を志す研修医,学生を対象とする睡眠医学への入門書である。
◆アップデイトな睡眠医学の入門書
本書の特徴は,入門書としているが第一線の各診療科の睡眠専門医がそれぞれの領域の病気を病態,診断,治療について,症例呈示も併せて最先端のレベルまでを簡潔,明快に紹介した,アップデイトのガイドブックとなっている。総論では睡眠障害診断の進め方が問診票,質問紙などを含め実践的に紹介されている。図表も多く,またそれぞれの項についてまとめがつけられ,さらに詳細に勉強したい人にとって適切な文献紹介が加えられており,親切な内容である。
本書で取り上げられている疾患は,一般臨床で遭遇することの多い精神生理性不眠,交代制勤務,ナルコレプシー,過眠症,うつ病,レストレスレッグ症候群などが中心となっている。本邦では,まだ少ないとされているレストレスレッグ症候群やREM関連異常行動なども一般臨床医を受診する場合が多く,医師は病気の発見と治療への導入など本書を参考に積極的になってほしいと思う。
人口の高齢化に伴って,睡眠障害はますます増加する傾向にある。また,今後多くの人が24時間社会での生活を余儀なくされ,心身の健康を保つために睡眠の問題が重視される。このような状況の中で,睡眠障害をいかにとらえ,健康問題として取り組んでいくか,いくつかの手がかりが得られるだろう。健康問題や睡眠に関心のある方々にも読んでほしい本である。
臨床睡眠学の知識を,平易に理解しやすく
書評者: 挾間 秀文 (安来第一病院長)
◆30年間に集積された臨床睡眠学の知識
本書は,本格的な睡眠研究が開始されて以来30年間に集積された臨床睡眠学の知識を,平易に理解しやすく,また一般臨床で役立つように仕組んだ実用書である。すなわち,睡眠専門医でない一般医がPSG(睡眠ポリグラフィ検査)などの面倒な検査法を必ずしも用いることなしに,睡眠障害のかなりの領域にわたり,的確に診断し,適切に治療が実施できるように作られたガイドブックと言える。
◆睡眠障害に対して,要を得た解説
本書では,難解な睡眠機構や病態発生に関する仮説の詳細な記載にあまりこだわらず,一般医が実地臨床で数多く対象とする睡眠障害に対して,要を得た解説がなされている。本書を臨床場面で生かすためには,個々の症例について,睡眠日誌などを用いた十分な問診を行なったうえでの臨床像の的確な把握が不可欠であると思われる。
書評としてあえて2,3の問題点をあげてみることにする。
睡眠障害国際分類の中で,現在病因の把握が十分でなく,適切な治療手段が確立されていないものの多くは睡眠随伴症に分類される各種障害である。本書で取りあげられた睡眠随伴症の項目は少なく,レム睡眠行動障害以外は,小児の睡眠障害の中で幾つかがまとめて触れられているに過ぎない。せん妄,錯乱性覚醒,睡眠・覚醒移行障害などは高齢者に多いのであるから,高齢者うつ病,痴呆,パーキンソン病,脳血管障害など高齢者介護でてこずる各種睡眠障害を高齢者の睡眠障害の項目として解説してほしかった。
睡眠障害の中で最も多いのが不眠症,その代表的なものが原発性不眠症と言われるものであろう。それらは精神生理性不眠,特発性不眠,睡眠状態誤認などと言われるが本態不明である。一般医が数多くの「不眠症者」を対象として説明に苦労する一群であり,安易な眠剤の使用に至ってしまう。すなわち投与量も投与期間にも一定方式を欠いたまま各種眠剤の漫然とした使用の結果,常用量依存と言われる状態や,睡眠覚醒リズム障害,睡眠覚醒移行障害,睡眠呼吸障害の増悪,あるいは不適切な睡眠衛生など,さまざまな二次的睡眠障害を起こすことにもなる。このあたりの事項について専門家からの厳重な警告をしてほしかったと思っている。
最後に,各論全般にわたり治療に関する記載が公式的で,ややもの足りない印象をもった。経験豊かな専門家でないと言えぬ治療法のノウハウの披露があれば,一般医にはありがたかったのではあるまいか。
書評者: 樋口 輝彦 (国立精神・神経センター総長)
◆成人の5人に1人が睡眠障害
今日,わが国では成人の5人に1人が睡眠障害に悩んでいるという。そして,このうち2人に1人が睡眠薬を服用している。睡眠障害はこのように,今や国民病と呼んでもおかしくない病気である。正確な疫学調査の研究があるわけではないが,これらの睡眠障害に悩む方の大半はプライマリ・ケアの医師によって治療されていると考えて間違いない。しかし,これまでわが国の医学教育で睡眠障害は,どの程度教育されてきただろうか。せいぜい学部の系統講義が1コマあればよいほうで,卒後教育にはまったく組み込まれていない。あとはプライマリ・ケアの医師の自発的な勉強に頼るしかないのである。このような状況下で今回出版された『一般医のための睡眠臨床ガイドブック』は,まことに時宜を得たものと思う。
本書は,総論と各論の2部構成である。総論では睡眠障害の実態が明らかにされ,続いて睡眠障害の診断と鑑別診断が解説され,さらに睡眠薬の種類と治療の実態が述べられている。この約50頁を読むだけでも大変勉強になる。
◆充実し,実践向きの内容構成
各論は,12の章で構成されている。それぞれの章をその領域のエキスパートが執筆しているだけあって,内容は大変充実している。この各論の各章の構成は,実践向きにできており,診断と治療の仕方に力点が置かれている。編者の井上があとがきで「睡眠障害の臨床を行なう上で,確実に必要な知識を重点的に網羅することを意図した」と述べているが,まさにその意図が実現されている。確かに睡眠の生理学や病態生理あるいは最近の遺伝子の話題などはほとんど登場しないので,専門の医師にはややもの足りないかも知れないが,本書があくまでも「一般医」あるいはコメディカル,学生を対象とする姿勢を貫いた結果であり,目的は十分達成されているように思う。
各論の各章すべてを紹介したいところだが,紙数に限りもあるので,ここでは1,2を紹介するにとどめたい。
その1つは,「睡眠時呼吸障害」である。この領域は睡眠覚醒リズム障害と並んで,最近診断と治療法の進歩が著しい領域である。特に睡眠時無呼吸症候群に関しては,一般人口の1%以上を占める病気であることと,睡眠障害のみでなく,生命予後に関係する病気であることから,最近注目されている。おそらく一般医を別な主訴(高血圧,不整脈など)で受診する可能性も高く,その意味では,ぜひ一般科の医師に認知してもらう必要のある障害である。大変,要領よく簡潔に診断,病態,検査,臨床症状,治療が述べられており,日常診療に役立つこと間違いなしである。
次に「睡眠障害を予防するための生活習慣の工夫」である。睡眠障害のもたらす弊害は脳機能の低下のみでなく,免疫系や循環器系機能の低下をも含んでいる。今日のような都市型の生活パターンは容易に睡眠障害を引き起こす。であるがゆえに睡眠障害を予防する視点が重要とされる。この章では,筆者らの長年にわたる研究成果をもとに睡眠障害の予防の方策がわかりやすく述べられている。一般医やコメディカルを介して睡眠障害の予備群の方への啓蒙にも役立てられる内容と思われる。
このガイドブックが活用され,わが国の睡眠障害の適切な診断と治療が推進されることを願って,書評の締めくくりとさせていただく。
英知を結集した睡眠臨床の力作
書評者: 堀口 淳 (島根医大教授・精神医学)
◆増加する睡眠覚醒障害
およそどの領域の第一線の臨床医にとっても,睡眠覚醒障害への適切な対応が求められることは周知の事実である。睡眠覚醒障害は,あらゆる身体疾患や精神疾患に随伴すると言っても過言ではない。ましてやわが国の国民の生活環境は,ますますストレスフルな状況となっており,睡眠覚醒障害は増加の一途をたどっている。睡眠覚醒障害を有する患者が睡眠を専門とする医療機関を受診することはまれであり,その大半には一般臨床医が対応している。日常の診療の中で,一般医が睡眠薬を投与しない日は皆無であろう。しかしながら,わが国の医学教育の中に占める睡眠臨床に関する講義や実習の割合は,決して十分なものとは言えない。一般臨床医は多忙な日々の臨床の中で不眠患者に対峙し,不十分な知識の中で悪戦苦闘しているのが実状かもしれない。しかしこれまでに発刊されている睡眠関連の成書は,これから睡眠を研究しようとする者や,睡眠専門医のために発刊されたものが大部分であり,一般臨床医にとっては難解で,とっつきにくかった感は否めない。
◆診察室で「虎の巻」として活用
本書は,睡眠臨床におけるわが国を代表する執筆陣が,英知を結集した力作である。一般臨床医の日常診療にただちに役立つ実践的な内容がまとめられており,一般臨床医が診察室のかたわらに置いて,「虎の巻」として活用するにふさわしいものである。総論では睡眠臨床に必要な基本的な知識を整理し,各論では臨床場面で遭遇することの多い睡眠障害から,比較的特殊な睡眠障害まで,それらの病態や最新の治療法を平易に示している。また睡眠覚醒障害の予防や日常生活の工夫まで網羅してあり,一般臨床医にとっては即戦力となる実践者向きの成書である。一度概略を短時間で通読したうえで利用されることをお勧めする。
増加する睡眠障害に対応
書評者: 大川 匡子 (滋賀医大教授・精神医学)
◆一般医が扱う機会が多くなった睡眠障害
最近のわが国の疫学調査によると,欧米の先進諸国と同様に,不眠など睡眠に問題を持つ人は人口の20%近くにも達しており,特に高齢者ではさらに多くなっている。また何らかの病気を持って受診する患者には,25%にも睡眠障害がみられる。このような数字は,一般診療医が睡眠障害を扱う機会はかなり多いことを示している。
不眠は,さまざまな原因によって生じる1つの症状あるいは状態であり,1つの診断名ではない。不眠症状を示す多くの病気があり,また睡眠障害は多くの生活習慣病とも関連し,よい睡眠は生活習慣病の予防にもつながる。患者が不眠や睡眠障害を訴える時に,それに対する適切な診断・治療を行なうこと,あるいは睡眠障害の専門医に紹介することは臨床医の必修任務と言える。
睡眠障害に悩む多くの患者が最初に診療を求め,相談を持ちかけるのは第一線で活躍している臨床医,薬剤師,看護婦,その他多くの医療関係者である。本書はそれらの方々と医療を志す研修医,学生を対象とする睡眠医学への入門書である。
◆アップデイトな睡眠医学の入門書
本書の特徴は,入門書としているが第一線の各診療科の睡眠専門医がそれぞれの領域の病気を病態,診断,治療について,症例呈示も併せて最先端のレベルまでを簡潔,明快に紹介した,アップデイトのガイドブックとなっている。総論では睡眠障害診断の進め方が問診票,質問紙などを含め実践的に紹介されている。図表も多く,またそれぞれの項についてまとめがつけられ,さらに詳細に勉強したい人にとって適切な文献紹介が加えられており,親切な内容である。
本書で取り上げられている疾患は,一般臨床で遭遇することの多い精神生理性不眠,交代制勤務,ナルコレプシー,過眠症,うつ病,レストレスレッグ症候群などが中心となっている。本邦では,まだ少ないとされているレストレスレッグ症候群やREM関連異常行動なども一般臨床医を受診する場合が多く,医師は病気の発見と治療への導入など本書を参考に積極的になってほしいと思う。
人口の高齢化に伴って,睡眠障害はますます増加する傾向にある。また,今後多くの人が24時間社会での生活を余儀なくされ,心身の健康を保つために睡眠の問題が重視される。このような状況の中で,睡眠障害をいかにとらえ,健康問題として取り組んでいくか,いくつかの手がかりが得られるだろう。健康問題や睡眠に関心のある方々にも読んでほしい本である。
臨床睡眠学の知識を,平易に理解しやすく
書評者: 挾間 秀文 (安来第一病院長)
◆30年間に集積された臨床睡眠学の知識
本書は,本格的な睡眠研究が開始されて以来30年間に集積された臨床睡眠学の知識を,平易に理解しやすく,また一般臨床で役立つように仕組んだ実用書である。すなわち,睡眠専門医でない一般医がPSG(睡眠ポリグラフィ検査)などの面倒な検査法を必ずしも用いることなしに,睡眠障害のかなりの領域にわたり,的確に診断し,適切に治療が実施できるように作られたガイドブックと言える。
◆睡眠障害に対して,要を得た解説
本書では,難解な睡眠機構や病態発生に関する仮説の詳細な記載にあまりこだわらず,一般医が実地臨床で数多く対象とする睡眠障害に対して,要を得た解説がなされている。本書を臨床場面で生かすためには,個々の症例について,睡眠日誌などを用いた十分な問診を行なったうえでの臨床像の的確な把握が不可欠であると思われる。
書評としてあえて2,3の問題点をあげてみることにする。
睡眠障害国際分類の中で,現在病因の把握が十分でなく,適切な治療手段が確立されていないものの多くは睡眠随伴症に分類される各種障害である。本書で取りあげられた睡眠随伴症の項目は少なく,レム睡眠行動障害以外は,小児の睡眠障害の中で幾つかがまとめて触れられているに過ぎない。せん妄,錯乱性覚醒,睡眠・覚醒移行障害などは高齢者に多いのであるから,高齢者うつ病,痴呆,パーキンソン病,脳血管障害など高齢者介護でてこずる各種睡眠障害を高齢者の睡眠障害の項目として解説してほしかった。
睡眠障害の中で最も多いのが不眠症,その代表的なものが原発性不眠症と言われるものであろう。それらは精神生理性不眠,特発性不眠,睡眠状態誤認などと言われるが本態不明である。一般医が数多くの「不眠症者」を対象として説明に苦労する一群であり,安易な眠剤の使用に至ってしまう。すなわち投与量も投与期間にも一定方式を欠いたまま各種眠剤の漫然とした使用の結果,常用量依存と言われる状態や,睡眠覚醒リズム障害,睡眠覚醒移行障害,睡眠呼吸障害の増悪,あるいは不適切な睡眠衛生など,さまざまな二次的睡眠障害を起こすことにもなる。このあたりの事項について専門家からの厳重な警告をしてほしかったと思っている。
最後に,各論全般にわたり治療に関する記載が公式的で,ややもの足りない印象をもった。経験豊かな専門家でないと言えぬ治療法のノウハウの披露があれば,一般医にはありがたかったのではあるまいか。
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