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循環器疾患と自律神経機能 第2版

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自律神経系は日常の循環動態の調節のほか,さまざまな循環器疾患の発生,病態,治療,予後に密接に関係している。第2版では,好評を博した初版の方針を踏襲しつつ,内容をupdate。MIBGシンチグラフィの項を新設し,2色刷とした。この領域での現時点におけるスタンダードかつ最新・最高のテキストである。
編集 井上 博
発行 2001年09月判型:B5頁:312
ISBN 978-4-260-11985-6
定価 9,020円 (本体8,200円+税)

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  • 目次
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□Introduction
 循環器疾患と自律神経機能
 
□総論
 自律神経系による循環調節
 自律神経の電気生理学的作用
 心拍変動による自律神経機能解析
 123I-MIBG心臓交感神経機能イメージング
 
□各種病態と自律神経
 冠動脈疾患
 心不全における循環調節異常
 徐脈性不整脈
 上室性不整脈
 心室性不整脈
 不整脈による自律神経活動の修飾
 神経調節性失神
 高血圧と自律神経機能

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研究成果を集積-循環器疾患と自律神経機能
書評者: 杉本 恒明 (公立学校共済組合関東中央病院長)
◆なぜ,循環器疾患における自律神経機能を学ぶか

 生体が置かれた状況・環境にしたがって,循環機能は刻々と変化する。これを調節しているのが,神経・体液性因子である。神経・体液性因子は中枢性,末梢性そして反射性の機転によって発動される。ただし,この働きは,生体を生理的な状況・環境の中で適応させることを目的とする。循環系に病的状態がある時,この調節目標は病的な状態において望ましい目標からはいささか逸れたものとなり,生体の負担をかえって増加し,循環不全を悪化させる。自然界の法則とは,病的となった生体を淘汰し,排除しようとするものなのである。われわれが,循環器疾患における自律神経機能を学ばなければならないのは,こうした自然界の法則に対して戦うためである。
 本書は,病的過程にある循環系における神経・体液性因子のこのような意味での役割の解説である。すなわち,循環器疾患がある状態で,自律神経機能がそれをいかに補い,あるいはいかに悪化させて,さらに新しい病態を作りだしていくかを述べている。

◆魅力的な青刷りの囲み

 本書を拝見していて気づいたことがあった。各章,各節の見出しの下にある青刷りの囲みである。旧版にもあったのであるが,あまり目につかなかった。各章を担当する執筆者の強調したいことを凝縮させた短文であり,この部分を追ってみるだけでも楽しかった。以下にその中から,魅力的と思われた語句を拾ってみた。
 交感神経と迷走神経は,それぞれ独自の細胞内情報伝達系によって作用を発揮するが,互いの情報伝達系はその間で影響し合っている。受容体の機能や密度は,状況に応じて変動する。生体は,循環系の構造的要因に加え,応答の速い反射性調節,持続の長いホルモンおよび腎による体液貯留を動員して血圧変動を防いでいる。運動時に動員される神経調節系には,中枢活動,圧反射,運動筋代謝が重要な役割を持つ。心筋の健常部と虚血部の自律神経に対する反応性の差も不整脈発生に結びつく。除神経と過剰反応は,不整脈発生に関係している可能性がある。長時間心拍変動解析による予後予測には時間領域の分析法が,短時間心拍変動解析による自律神経機能評価には,周波数領域の分析法が用いられる。心筋123I-MIBGシンチグラムにみる洗い出し亢進は,交感神経活動の亢進状態を反映する。心臓迷走神経機能が障害されると,致命的不整脈発生に対する抑止力が減弱する。循環システムの主要な目的は,血圧の維持にある。心不全時の交感神経活動の亢進は,圧受容器反射の障害だけでは説明できない。心不全では,交感神経末端でのノルエピネフリンの取り込み効率も低下している。心不全では,腎交感神経活動の亢進の意義が大きい。洞不全症候群では,重症化するほど自律神経の影響を受けにくくなる。発作性心房細動には,交感神経,迷走神経のそれぞれの関与の大きいタイプがある。心室頻拍における自律神経指標の関係は,特発性と拡張型心筋症とで異なる。不整脈の発生は,血行動態の変化を介して交感神経活動に影響し,不整脈の増悪に関与する可能性がある。神経調節性失神の機序の1つとして,静脈収縮反応低下がある。交感神経活動亢進によりインスリン抵抗性が増悪する。
 一部に表現を言い換えたので,正確ではないところがあるかもしれない。しかし,これには多くの方々が興味を持たれるのではなかろうか。
 本書の8人の執筆者のうち,4人が編者井上教授が主宰する富山医薬大の教室の方々である。本書のテーマが,教授の個人的なライフワークとしてばかりでなく,教室の重点的な研究課題の1つとなっているように思った。本書の成功は,教室活動を大きく評価することでもある。心からお慶びし,今後の一層の発展を期待したいと考える。

循環器疾患と自律神経機能の最新テキスト
書評者: 早川 弘一 (日本医大名誉教授/久我山病院長)
 循環器疾患と自律神経の関係は昔からの大きなテーマであったが,最近の方法論の進歩と応用によって新しい概念が芽生え,診断治療に大きく寄与しはじめているのが現在の状況である。したがって,これらの新しい知識を身につけることが現代の医師にとって不可欠と言える。

◆現状の問題点と将来の研究の方向が随所にみえる

 本書は,このテーマに関し日本での第一人者のみならず世界的にも有名な井上博氏が,本人を含め8人の専門家の分担論文を編集した最新の教科書である。内容は3つの章から構成されており,初めの章は「循環器疾患と自律神経」の基礎的概念および自律神経といろいろの循環器疾患の関連が大変わかりやすく解説されている。15頁のこの初章を読了すると,本書のテーマの大要が理解できる。
 次の総論では,「自律神経系による循環調節」,「自律神経の電気生理学的作用」さらには臨床的診断法として位置づけが確定しつつある「心拍変動」および「MIBGイメージング」の方法論と応用がかなり詳しく紹介されている。
 最後の章は,「冠動脈疾患」,「心不全」,「徐脈性不整脈」,「上室性不整脈」,「心室性不整脈」,「不整脈と筋交感神経活動記録の関連」,「神経調節性失神」,「高血圧」といった具合に,われわれが日常しばしば遭遇する循環器疾患との関連が詳細に解説されている。
 いずれの章も,各分担執筆者の研究のみならず最新の文献情報も十分取り入れられ,読者を十分満足させるであろう。また現状の問題点や将来の研究の方向などに関する示唆も随所にみられ,このテーマを研究する者にとって得るところが多いと思われる。
 この最新かつ良質のテキストが,多くの医師や医学研究者に読まれ,これに触発されて,よりよい医療やさらなる研究がわが国において隆盛になることを心から望むものである。

循環器疾患における自律神経機能に関する最新知見を詳述
書評者: 小川 聡 (慶大教授・内科学)
◆循環器疾患の診療に必要な自律神経系の正しい理解

 本書は,1996年に出版された初版の改訂版である。自律神経との関連が注目される病態としては,心筋梗塞の発症,心不全での循環調節,不整脈,特に突然死や心房細動の発症,血圧調節,神経調節性失神なとがあげられ,自律神経系の正しい理解なくして循環器疾患の診療はありえなくなっている。特に,心不全例での血中カテコールアミン濃度と予後の関係が明らかにされ,さらにβ受容体遮断薬療法により心機能や生命予後改善効果が証明されたのと並行して,自律神経系の関与に関する研究が急速に展開してきたと言えよう。同時に,心拍変動解析,圧受容体反射,MIBG心筋シンチ,筋交感神経活動記録など,新しい自律神経機能の臨床的評価法の進歩が,この領域の研究の進展に大きく役立ってきた。
 本書はこうした最近の知見を集約したもので,「総論」では,自律神経系による循環調節,電気生理に関する基礎的研究から自律神経機能評価法までが網羅的に記載され,「各論」では,各種疾患における自律神経の関わりが詳しく記載されている。急速に展開してきたこの領域の研究を反映して,本改訂版は内容的に大幅に改変され,引用文献もアップデートされている。中でも,近年の発展著しいMIBGによる心臓交感神経イメージング法の種々の病態への応用が新たに追加されたことが特徴の1つで,国立循環器病センターでの豊富な症例を元にした新知見が,石田良雄博士によって紹介されている。これらの改訂によって,この領域の専門書としてきわめてよくまとまったものになったと評価したい。

◆循環器の臨床に携わる医師の必読書

 編者の井上博博士は,自律神経と不整脈の領域の世界的権威で,現在American College of CardiologyのPresidentでもあるDouglas P. Zipes博士のもとへの留学中に,心臓自律神経支配と不整脈・突然死の関連を研究する動物モデルを確立され,さらに現在に至るまでさまざまな手法で,心房細動を中心にした不整脈を研究してこられた自律神経関連でわが国の第1人者である。各章の執筆者にもそれぞれの領域で活躍中の最適任者が選ばれており,内容的にも充実している。そうした点からも本書は,完成された教科書として,循環器の臨床に携わる医師必読の1冊と言えよう。

自律神経の病態と循環器疾患の関係を追究した好書
書評者: 春見 建一 (昭和大藤が丘病院客員教授・循環器内科学)
◆世に受け入れられた初版

 富山医科薬科大学の井上博教授の編集による『循環器疾患と自律神経機能』の第2版が医学書院から出版された。初版が出版されたのが1996年であるから,わずかの間に在庫がなくなり改訂版を出すことになったということで,本書の初版がいかに世に受け入れられ重要視されたかの証しであろう。
 井上教授は,Zipes教授(インディアナ大)の下に留学され,1988年にKulbertusの『Neurocardiology』(Futura)の成書の中にZipes,Inoueの連名で「Autonomic neural control of cardiac excitable properties」を書いておられる。Zipes教授は,現在ACC(American College of Cardiology)の会長で世界の循環器学をリードしている循環器学者であり,本邦にも何回か諸学会に招待されて来日されている。彼はまた迷走神経支配が,心室に及んでいることを証明したことでも知られている。その彼が,井上教授と連名でレビューを書いたということは,井上教授がいかに高くZipes教授に評価されていたかを物語るものであり,本書の編集者として井上教授は,最も適している学者と言えよう。

◆新しい知見も加え,面目を一新

 第2版は,80頁も増加し多くの新しい知見が各章に加えられ,「MIBGイメージング」の章が新たに加えられた。文献も1999年までのものが所載されており,面目を一新したと言えよう。
 本書は,元来井上教授の同門,また同学の方々を筆者に選んでおられ,井上教授の目が十分届いている編集になっていると思える。井上教授が表題どおりの「緒言」と「総論」における「自律神経の電気生理作用」を担当,本書の全体の構成は「総論」と,各種病態と自律神経と題した「各論」とからなる。
 「総論」では,「自律神経系による循環調節」,「心拍変動による自律神経機能解析」,「MIBG」について各著者が得意とする部門を担当し,「各論」では,「冠動脈疾患」,「心不全」,「徐脈」,「上室性,心室性不整脈」,「失神」,「高血圧」など自律神経と関連のある疾患が神経調節の立場から詳しく述べられている。
 自律神経と循環器疾患の関係を追究しようとされる方々,特に心拍変動から自律神経の病態の分析を試みられる方,心不全,不整脈,高血圧などの病態と自律神経の関連を研究しようとされる方など,この方面に関心を持ち,これから研究を始めようとされる方は,まず本書を一読されることをお勧めする。その上で,各自の研究がどの位置にあるかを把握してから研究をスタートするのがよいであろうと思う。

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