病院経営のための
在院日数短縮戦略
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- 目次
- 書評
目次
開く
○理論編
第1章 総論-どうして,どのように,どこまで短縮できるのか
第2章 分析-平均在院日数とは何か
○実践編
第3章 対策-どうすれば短縮できるのか
○資料編
第4章 事例-どうやって短くしているのか
第5章 資料
第1章 総論-どうして,どのように,どこまで短縮できるのか
第2章 分析-平均在院日数とは何か
○実践編
第3章 対策-どうすれば短縮できるのか
○資料編
第4章 事例-どうやって短くしているのか
第5章 資料
書評
開く
病院経営幹部になったら,まず目を通しておくべき本
書評者: 信友 浩一 (九大教授・医療システム学)
◆病院経営示標としての「在院日数」
病院経営の幹部になった人が,まず目を通しておくべきガイド本である。病院経営の示標として定着していた病床利用率ではなく,なぜ「在院日数」なのか,には言及されていないが,十二分に「在院日数」短縮化の背景にある疾病構造・健康変革の流れとそれに対応した医療法・診療報酬の改正・改定の流れなどがコンパクトにまとめられている。したがって,「在院日数」短縮化の政策的背景への理解が容易に進み,戦略的位置づけも容易にできるであろう。
この本の柳眉を飾るのは,著者らは「第2,3章の分析・対策」にあるとの思いがあるようだが,むしろ事例化された28病院の紹介編であろう。日々の生々しい医療現場のトップにいる者は,この事例を読み込むことで,多くの共鳴できるテーマに出会うことになるであろう。これらを出発点にして,著者らの思いのこもった第2,3章に戻り,出発点となったテーマの経営上の位置づけが明確になり,次にどのように取り組んだらよいのかの分析方針作りとプロセスがわかり,最後に短縮化計画作りに着手できる,という次第である。
◆「在院日数」と医療の質
以上のように,この本の「第4章 事例」,「第2,3章 分析・対策」がスケルトンであるが,これらだけをマスターしてしまうと少々気になるところが出てくるであろう。最大の気がかりは「在院日数=医療の質」との前提でこの本が作られていることである。この前提については,「第5章資料」にある疾病別の在院期間別割合などの表をみることで,各読者の判断で,在院期間のバラツキから医療の質を意味づけてほしい。その点で,退院後の経過と連携させての「在院日数」の意味づけをしないといけない,という著者らの留保は正しい。医療文化の違いを意識して読んでほしいとの著者らの気持ちは,コラム「日本人の病院観」から伝わってくる。
最後に,この本のガイド本としての良質さに甘えるわけであるが,事例病院の属している2次医療圏あるいは当該病院が想定している診療圏の疾病構造と競合している病院の特性なども付記してあれば,「ベンチマーク」ツールをベースにしているこの本の特徴が,一層引き立つと思われる。改訂時の加筆を期待したい。
病院管理者にとってきわめて使い勝手のよい労作
書評者: 池上 直己 (慶大教授・医療政策管理学)
医療環境は,日増しに厳しさを増している。病院管理者にとっては,自院の将来の方向性を見出すことが最大の課題となっており,急性期型病院をめざすなら,その最も重要な指標は,「在院日数の短縮」である。こうした観点から,本書は誠に時宜を得ており,「理論編」,「実践編」,具体的な事例を含めた「資料編」を1冊の本にまとめて,きわめて使い勝手のよい労作である。
◆「在院日数の短縮」は重要な指標
まず「理論編」では,在院日数をなぜ短縮するべきかがマクロ的な健康変革や医療環境の変化の中で解説される。その中で,いかに「新入院患者」を増やせるかが大きなポイントであり,地域における疾患の発生率は大きく変わらないことから,限られた患者をいかに自院に確保するかが課題となる。そして,それが困難であったらダウンサイジングの必要性を指摘している。
つぎに,「実践編」では,トップダウン式に経営戦略を練り,ベンチマーキングによる具体的な数値目標をかかげて経営者として取り組む必要性,およびそのための手段としてクリティカルパスおよび連携があげられている。
最後に「資料編」として,28の公私の様々な病院における短縮の実践例が,院長などのコメントと短縮のポイントとともに掲載されている。また,現場として短縮化に取り組む上で不可欠な,疾患ごとの在院日数の全国値が示されており,編者らの研究実績が大いに役立っている。
筆者の研究者の立場からは,国際比較をする際には,「看護職員」の定義や役割が国によって異なるので,職員全体で比較したほうが適切であった可能性がある点,クリティカルパスを導入しない(あるいはできない疾患)でも,作成しない限り減点の対象となる入院診療計画によって入院時より退院計画が可能である点などを指摘したい。また,例えば図3・12(本文57頁)で「長期ケア」に対応して「福祉施設」,「末期ケア」に対応して「緩和ケア病棟」にみられるように,施設ケアとしての取り組みに重きが置かれているので,改訂時には,在院日数短縮のための亜急性期在宅ケアの必要性についても頁が割かれることを期待する。しかしながら,病院経営の立場からすれば,本書は現在最も知りたい内容を網羅しており,医療にかかわる者全員に本書を勧めたい。
書評者: 信友 浩一 (九大教授・医療システム学)
◆病院経営示標としての「在院日数」
病院経営の幹部になった人が,まず目を通しておくべきガイド本である。病院経営の示標として定着していた病床利用率ではなく,なぜ「在院日数」なのか,には言及されていないが,十二分に「在院日数」短縮化の背景にある疾病構造・健康変革の流れとそれに対応した医療法・診療報酬の改正・改定の流れなどがコンパクトにまとめられている。したがって,「在院日数」短縮化の政策的背景への理解が容易に進み,戦略的位置づけも容易にできるであろう。
この本の柳眉を飾るのは,著者らは「第2,3章の分析・対策」にあるとの思いがあるようだが,むしろ事例化された28病院の紹介編であろう。日々の生々しい医療現場のトップにいる者は,この事例を読み込むことで,多くの共鳴できるテーマに出会うことになるであろう。これらを出発点にして,著者らの思いのこもった第2,3章に戻り,出発点となったテーマの経営上の位置づけが明確になり,次にどのように取り組んだらよいのかの分析方針作りとプロセスがわかり,最後に短縮化計画作りに着手できる,という次第である。
◆「在院日数」と医療の質
以上のように,この本の「第4章 事例」,「第2,3章 分析・対策」がスケルトンであるが,これらだけをマスターしてしまうと少々気になるところが出てくるであろう。最大の気がかりは「在院日数=医療の質」との前提でこの本が作られていることである。この前提については,「第5章資料」にある疾病別の在院期間別割合などの表をみることで,各読者の判断で,在院期間のバラツキから医療の質を意味づけてほしい。その点で,退院後の経過と連携させての「在院日数」の意味づけをしないといけない,という著者らの留保は正しい。医療文化の違いを意識して読んでほしいとの著者らの気持ちは,コラム「日本人の病院観」から伝わってくる。
最後に,この本のガイド本としての良質さに甘えるわけであるが,事例病院の属している2次医療圏あるいは当該病院が想定している診療圏の疾病構造と競合している病院の特性なども付記してあれば,「ベンチマーク」ツールをベースにしているこの本の特徴が,一層引き立つと思われる。改訂時の加筆を期待したい。
病院管理者にとってきわめて使い勝手のよい労作
書評者: 池上 直己 (慶大教授・医療政策管理学)
医療環境は,日増しに厳しさを増している。病院管理者にとっては,自院の将来の方向性を見出すことが最大の課題となっており,急性期型病院をめざすなら,その最も重要な指標は,「在院日数の短縮」である。こうした観点から,本書は誠に時宜を得ており,「理論編」,「実践編」,具体的な事例を含めた「資料編」を1冊の本にまとめて,きわめて使い勝手のよい労作である。
◆「在院日数の短縮」は重要な指標
まず「理論編」では,在院日数をなぜ短縮するべきかがマクロ的な健康変革や医療環境の変化の中で解説される。その中で,いかに「新入院患者」を増やせるかが大きなポイントであり,地域における疾患の発生率は大きく変わらないことから,限られた患者をいかに自院に確保するかが課題となる。そして,それが困難であったらダウンサイジングの必要性を指摘している。
つぎに,「実践編」では,トップダウン式に経営戦略を練り,ベンチマーキングによる具体的な数値目標をかかげて経営者として取り組む必要性,およびそのための手段としてクリティカルパスおよび連携があげられている。
最後に「資料編」として,28の公私の様々な病院における短縮の実践例が,院長などのコメントと短縮のポイントとともに掲載されている。また,現場として短縮化に取り組む上で不可欠な,疾患ごとの在院日数の全国値が示されており,編者らの研究実績が大いに役立っている。
筆者の研究者の立場からは,国際比較をする際には,「看護職員」の定義や役割が国によって異なるので,職員全体で比較したほうが適切であった可能性がある点,クリティカルパスを導入しない(あるいはできない疾患)でも,作成しない限り減点の対象となる入院診療計画によって入院時より退院計画が可能である点などを指摘したい。また,例えば図3・12(本文57頁)で「長期ケア」に対応して「福祉施設」,「末期ケア」に対応して「緩和ケア病棟」にみられるように,施設ケアとしての取り組みに重きが置かれているので,改訂時には,在院日数短縮のための亜急性期在宅ケアの必要性についても頁が割かれることを期待する。しかしながら,病院経営の立場からすれば,本書は現在最も知りたい内容を網羅しており,医療にかかわる者全員に本書を勧めたい。
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