不整脈判読トレーニング

もっと見る

心停止時や救急心臓ケア時に状態を把握し、適切に対処するためには、迅速で正確な不整脈診断が不可欠である。本書は100以上の心電図で、不整脈の基礎的知識と判読法を学ぶことができる。専門知識と臨床経験の異なるあらゆる読者が理解を深めるのに役立つ。特に各科研修医・ICU、CCUおよび救急部の看護婦(士)・救急救命士に最適の1冊。
Ken Grauer / Daniel Cavallaro
高尾 信廣
発行 2001年03月判型:B5頁:224
ISBN 978-4-260-11968-9
定価 3,850円 (本体3,500円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 目次
  • 書評
  • 正誤表

開く

I 基本的な不整脈の理解
 セクション1A 不整脈を理解するのに必要な概念
 セクション1B 系統的アプローチ
 セクション1C 上室性リズム
 セクション1D 期外収縮/心室頻拍
 セクション1E 晩発性収縮/補充調律
 セクション1F 心停止のリズム
 セクション1G 房室ブロックの基本概念 

II 不整脈の解説:Beyond the Core
 セクション2A より高等な概念
 セクション2B 変行伝導
 セクション2C 小児のリズム

開く

救急現場での不整脈診断が学習できる実用書
書評者: 山科 章 (東医大教授・内科学)
 先日,5年生にOSCE(オスキーと読む)を施行した。OSCEとは客観的臨床能力試験のことで,筆者の大学では,BSL(ポリクリ)を行なう5年生の最終評価として施行している。いくつかのブースを設け,それぞれのブースで医療面接,心肺蘇生術,眼底検査,神経診察などなどの課題を学生に与え,その臨床能力を評価するのである。今回,循環器は心電図と胸部X線写真の系統的判読と心音聴診を課題にした。系統講義やBSLで心電図についてはそれなりに教えてきたつもりであったが,心電図判読はさんざんであった。系統的判読,すなわち所見を正確にとり,その所見に意味づけをし,鑑別診断していくアプローチができないのである。講義による一方的な教育では,知識は付いても臨床能力,問題解決能力は身に付かないことを実感した。

◆臨場感のある翻訳

 そう感じていた時に,『不整脈判読トレーニング』と名づけられた訳書が出版された。『Arrhythmia Interpretation: ACLS Preparation and Clinical Approach』という原著タイトル通り,素早い判断と適切な処置が要求される救急の現場で,的確に不整脈診断ができるように学習するために書かれた実用に徹した書である。心電図とディバイダーと系統的アプローチさえあれば,ほとんどの不整脈が解決できるという信念のもとに書かれている。
 4つの質問((1)リズムは整か,(2)P波はあるか,(3)QRS幅は広いか狭いか,(4)P波とQRSに関係はあるか)に対する答えを出すべく所見をとることにより診断へと導く方法を徹底して繰り返している。そうすることによって,自然に不整脈判読法が身に付くようにデザインされている。難解な不整脈理論は避け,できるだけやさしく解説されており,繰り返していくうちに次第にレベルを上げ,難解な不整脈も診断できるような仕組みになっている。また,訳者も日頃,研修医教育をされている先生だけに,臨場感のある翻訳になっている。

◆高めてくれる問題解決能力

 臨床能力を身に付けるコツは,まず最低限の知識をつけたのち,系統的アプローチに基づいて実践をする。そこで疑問が生じれば,また基礎に戻って学ぶ。こういった知的エクササイズが問題解決能力を高めてくれる。筆者もこれからこういう教育法をできるだけ導入したいと思っている。
 そういった方法を体験したい,あるいは少しは心電図が読めるようになりたいと思っている方々に,ぜひお薦めしたい1冊である。

ACLSの実践的トレーニングに最適の1冊
書評者: 大野 博司 (飯塚病院研修医1年・千葉大卒)
 昨年から,『ACLSマニュアル』(青木重憲著,医学書院刊)をテキストにして,同級生や下級生と一緒に学生主体のACLS勉強会を続けてきた。そして,ACLSを学んでいく中で,心停止や救急時においては,心臓の状態を適切に把握することが適切な治療につなげるために必須であることに気づいていった。その中でも心電図の解釈は重要な位置を占めている。
 そのようなACLSを学ぶ学生や,将来循環器を必ずしも専門としないであろう学生のために,救命救急の現場での心電図の評価や不整脈の判読について,実践的にトレーニングできる適切な本をずっと探していた。
 しかし,今まで出版されている書籍の中で,心電図・不整脈といえば,循環器専門医のために書かれた詳解な本か,学生向きの基本的な本が大多数だったように思う。そしてそれらの本は実践向きというよりも,むしろ調べるための本という性格のものが多かったのではないだろうか。そのため,少しでも実践的な不整脈のトレーニングができるよう,ACLSをともに学んでいた学生有志で,自分たちなりの不整脈判読のトレーニングテキストなどをまとめたりしながら,少しでも救命救急における不整脈トレーニングができるように工夫していた。

◆日常臨床に活かすことを目的とした実践的な書

 そのような中,今回出版された『不整脈判読トレーニング』は,日常臨床の現場でよく直面する不整脈に対して,すばやく認識・解釈し,対処する方法を,短期間でマスターできるように意図されている本である。
 原著タイトルである“ARRYTHMIA INTERPRETATION-ACLS Preparation and Clinical Approach”の名前が示すように,この本は米国でのACLSコースに携わる著者によるものであり,不整脈判読を日常臨床・救命救急に生かすことを目的とした実践的な本である。
 本書は,以下の2点でとても優れた本であることがわかる。まず,心電図が示す「心臓の電気的活動」は,バイタルサインが示す「心臓のポンプとしての機械的活動」を評価してはじめて臨床の現場では意味がある,ということをきちんと教えてくれる。また,不整脈理解のための,簡潔でありかつ系統的な4段階のアプローチ方法((1)リズムは整か?,(2)P波はあるか?,(3)QRS幅は広いか狭いか?,(4)P波とQRS群に関係はあるか?)を用いることで,一見すると難解そうにみえる不整脈に対しても,判読を十分可能にしてくれる点である。

◆どのようなレベルの読者にも有用

 系統的にアプローチでき,どのようなレベルの読者にとっても有用で,そして何よりも日常臨床・救命救急の現場での実践的な不整脈判断に対処することを可能にしてくれる,非常に有用な1冊であることを,読んでいく中で何度となく実感した。本書を用いて不整脈判読をトレーニングし,致死的な不整脈や危険な不整脈をすばやく認識して,適切な治療につなげることで,今後患者の利益につながっていく助けになればと感じている。
 最後に,この本を読むにあたって,ディバイダー(キャリパー)を常にもつことを奨めたい。

開く

本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

正誤表はこちら

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。