肝癌診療A to Z
国立がんセンター東病院の治療戦略
肝癌診療のすべてをまとめたテキスト
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国立がんセンター東病院の肝臓グループによる肝癌診療のノウハウのすべてを開陳。診断から治療法の選択,follow upまで,患者の病態とQOLに最大限配慮した診療とはいかなるものか,現場のスタッフが細大漏らさず解説。巻末のカンファレンスはその思考過程まで明らかにする。日夜,肝癌患者と取り組む第一線のアクティブドクター必携のテキスト。
編著 | 国立がんセンター東病院肝臓グループ |
---|---|
発行 | 2001年08月判型:B5頁:216 |
ISBN | 978-4-260-12462-1 |
定価 | 9,350円 (本体8,500円+税) |
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- 目次
- 書評
目次
開く
I. 外来で
II. 精査入院
III. 治療法を選択するに際して
IV. 肝細胞癌治療の実際
V. 治療決定の過程-カンファレンスから
II. 精査入院
III. 治療法を選択するに際して
IV. 肝細胞癌治療の実際
V. 治療決定の過程-カンファレンスから
書評
開く
きわめて要領よくまとめられている肝癌診療上の問題点
書評者: 山岡 義生 (京大教授・消化器外科学)
◆ここまでマスターすれば,研修医合格
国立がんセンター東病院肝臓グループによる『肝癌診療A to Z』が,刊行された。
本書の各頁に占める図と表のスペースはかなり多いが,それぞれの図表が無秩序でなく意図を持ってならべられていることが,一瞥してわかる。それは,頭だけで考えた構成でなく,実際に診療の上で直面した問題点を研修医にわからせるためには,どのような順序で図表を使って説明するかの答えを出しているからである。外来レベルでの問題点,診断に至るまでの検査の進め方と,つい上医に聞いてしまいそうなところが,これを読んでいれば順序だてて対応できる。しかも,一番大切な「どんな所見の時に治療が必要か」まで,きわめて要領よくまとめられている。ここまでマスターすれば,研修医合格である。
◆EBMに基づく肝癌診療
「治療法の選択」においても,各種治療法の概論と各治療法に期待できる範囲を,自分のデータを根拠に述べた後,国立がんセンター東病院としての基準が出されている。最近,患者さんへの説明について,「担当医はEBMが実行できているのか?」との疑問が出されているが,まさにこの基準は施設としての良識というべきである。
最後に,カンファレンスが掲載されているが,読者はこの姿勢をよく学ぶべきである。多くの施設で,最初の治療選択は単一の科で方針を決め実行し,その結果が,経過とともに複雑化した時点で共通のカンファレンスに出して,良策を聞きたいとするものがよく見られる。ここに出されている4症例は,読者に理解しやすい症例が選ばれていると考えるが,雰囲気は十分伝わっている。誰が見ても外科適応でないと言えそうなものでも,「外科的なら?」と一旦は振られている点に外科に対する信頼と,それぞれの科の良識を強く感じさせられる。このような病院で治療を受けられる患者さんは,幸せである。
文献も過不足なくあり,根拠となるところを,研修医が調べることが可能なていねいな編集である。準備から発行までに少し時間がかかったせいか,直近の文献がないのが残念である。この世界も日進月歩なので,すぐに改訂の準備に着手されることをお勧めしたい。
◆肝癌チーム医療の結実
わが国においては,将来的構想として,肝臓学会を中心に,肝臓癌の撲滅運動,発癌予防対策などが着実に運動として盛りあがってきており,その成果が期待されている。しかし,日常の診療においては,現にたくさんの患者さんが闘病しておられ,一線の病院では,毎日が目の前の肝臓癌との戦いであると言っても過言ではない。まさに,国立がんセンター東病院もその最前線の1つであり,また,専門家集団として認知されているだけに多くの患者さんが押しかけている。その中にあって,肝臓グループとしてカンファレンスを重ねて,1人の患者さんへの対応の仕方を決定していく仕組みを作り上げられたことに敬意を表したい。ここに至るまでに,内科,放射線科,外科の個々の努力,そしてその成果の上に立って,お互いの信頼関係を持てる状態に至るまでの基礎づくりが並大抵のものではなかったことは想像に難くない。このようにグループができてしまうと,あたり前のような毎日の診療であっても,出発時は必ずしも関係が円滑にいかないものである。その時点でお互いにずいぶんと譲り合いの気持ちがあったこと,そして,単に医師団の努力だけでなく,コメディカル,秘書,事務の方々の協力もあったことが推察される。
肝癌に取り組むすべての臨床医とチームに本書を推薦するとともに,このグループのさらなる発展から得られたデータに基づく改訂版を期待する。
徹底したディスカッションに基づく肝癌診療の方策を開陳
書評者: 小俣 政男 (東大教授・消化器内科学)
本書は,長年肝癌の治療の現場で携わってこられた竜崇正氏,吉野正曠氏ならびに森山紀之氏の責任編集(国立がんセンター東病院肝臓グループ)による『肝癌診療A to Z-国立がんセンター東病院の治療戦略』と題された参考書であります。
◆まさしく肝癌治療のすべてを記載
内容はまさしくタイトルに示されたごとく,肝癌診療のA to Z,すなわち高危険群の設定から肝癌の診断治療までが20名の執筆陣によって分担執筆されています。その特徴は,肝臓内科医,肝臓外科医および放射線科医の3者の徹底したディスカッションに基づく第一線での肝癌治療のための方策が,書かれていることであります。
責任編集者の竜氏は,外科医として長らく肝癌を切除されてきており,きわめて豊富な臨床経験を有しておられます。私どもの先達であり,学生時代から尊敬している外科医であります。一方,執筆陣の中には若手の内科医も含まれています。
先端医療施設(国立がんセンター東病院)としての特徴を生かして,すでに癌になられた患者さんに対する治療法について詳細に記載されており,これは大変重要なことであると思います。
また,肝臓癌の治療対策を考える際の重要な点は,他の癌と比し前駆する疾病ならびにその高危険群が明確になっているところであります。C型ならびにB型肝炎ウイルスを病因とし,肝の線維化の進展により癌が発生した際の肝癌の結節の治療は,他の領域の癌とやや趣きを異にします。すなわち癌結節に対する根治的療法のみならず,その癌の発生をも考慮した肝癌治療,つまり背景肝をも含む2つの疾患に対する治療がよりよき肝癌治療であることが,私は大変重要であると考えております。
その観点から考えますと,本書はその高危険群の設定から精査,入院,治療法の選択につき,豊富なスタッフによってシステマティックに記載されています。
また画像診断の分野においても,森山氏を中心としてこの執筆グループは,十二分な経験を有しておられます。
◆到来した肝癌が治る時代
現在肝癌切除による5年生存率は,約6割と推定されます。しかしながら非切除例を含める5年生存率は,約4割前後と考えられます。前述の2つの疾病を治すという視点から,肝癌治療は今後5年生存率は,7割あるいは8割をめざしうる疾患と考えられます。その意味から本書は肝細胞癌のみならず,背景肝をもいかに見るか基本的な考え方に貫かれており,推薦に値します。
その自然史から見ても,実に肝癌が治る時代がまさしく到来していると考えられます。
書評者: 山岡 義生 (京大教授・消化器外科学)
◆ここまでマスターすれば,研修医合格
国立がんセンター東病院肝臓グループによる『肝癌診療A to Z』が,刊行された。
本書の各頁に占める図と表のスペースはかなり多いが,それぞれの図表が無秩序でなく意図を持ってならべられていることが,一瞥してわかる。それは,頭だけで考えた構成でなく,実際に診療の上で直面した問題点を研修医にわからせるためには,どのような順序で図表を使って説明するかの答えを出しているからである。外来レベルでの問題点,診断に至るまでの検査の進め方と,つい上医に聞いてしまいそうなところが,これを読んでいれば順序だてて対応できる。しかも,一番大切な「どんな所見の時に治療が必要か」まで,きわめて要領よくまとめられている。ここまでマスターすれば,研修医合格である。
◆EBMに基づく肝癌診療
「治療法の選択」においても,各種治療法の概論と各治療法に期待できる範囲を,自分のデータを根拠に述べた後,国立がんセンター東病院としての基準が出されている。最近,患者さんへの説明について,「担当医はEBMが実行できているのか?」との疑問が出されているが,まさにこの基準は施設としての良識というべきである。
最後に,カンファレンスが掲載されているが,読者はこの姿勢をよく学ぶべきである。多くの施設で,最初の治療選択は単一の科で方針を決め実行し,その結果が,経過とともに複雑化した時点で共通のカンファレンスに出して,良策を聞きたいとするものがよく見られる。ここに出されている4症例は,読者に理解しやすい症例が選ばれていると考えるが,雰囲気は十分伝わっている。誰が見ても外科適応でないと言えそうなものでも,「外科的なら?」と一旦は振られている点に外科に対する信頼と,それぞれの科の良識を強く感じさせられる。このような病院で治療を受けられる患者さんは,幸せである。
文献も過不足なくあり,根拠となるところを,研修医が調べることが可能なていねいな編集である。準備から発行までに少し時間がかかったせいか,直近の文献がないのが残念である。この世界も日進月歩なので,すぐに改訂の準備に着手されることをお勧めしたい。
◆肝癌チーム医療の結実
わが国においては,将来的構想として,肝臓学会を中心に,肝臓癌の撲滅運動,発癌予防対策などが着実に運動として盛りあがってきており,その成果が期待されている。しかし,日常の診療においては,現にたくさんの患者さんが闘病しておられ,一線の病院では,毎日が目の前の肝臓癌との戦いであると言っても過言ではない。まさに,国立がんセンター東病院もその最前線の1つであり,また,専門家集団として認知されているだけに多くの患者さんが押しかけている。その中にあって,肝臓グループとしてカンファレンスを重ねて,1人の患者さんへの対応の仕方を決定していく仕組みを作り上げられたことに敬意を表したい。ここに至るまでに,内科,放射線科,外科の個々の努力,そしてその成果の上に立って,お互いの信頼関係を持てる状態に至るまでの基礎づくりが並大抵のものではなかったことは想像に難くない。このようにグループができてしまうと,あたり前のような毎日の診療であっても,出発時は必ずしも関係が円滑にいかないものである。その時点でお互いにずいぶんと譲り合いの気持ちがあったこと,そして,単に医師団の努力だけでなく,コメディカル,秘書,事務の方々の協力もあったことが推察される。
肝癌に取り組むすべての臨床医とチームに本書を推薦するとともに,このグループのさらなる発展から得られたデータに基づく改訂版を期待する。
徹底したディスカッションに基づく肝癌診療の方策を開陳
書評者: 小俣 政男 (東大教授・消化器内科学)
本書は,長年肝癌の治療の現場で携わってこられた竜崇正氏,吉野正曠氏ならびに森山紀之氏の責任編集(国立がんセンター東病院肝臓グループ)による『肝癌診療A to Z-国立がんセンター東病院の治療戦略』と題された参考書であります。
◆まさしく肝癌治療のすべてを記載
内容はまさしくタイトルに示されたごとく,肝癌診療のA to Z,すなわち高危険群の設定から肝癌の診断治療までが20名の執筆陣によって分担執筆されています。その特徴は,肝臓内科医,肝臓外科医および放射線科医の3者の徹底したディスカッションに基づく第一線での肝癌治療のための方策が,書かれていることであります。
責任編集者の竜氏は,外科医として長らく肝癌を切除されてきており,きわめて豊富な臨床経験を有しておられます。私どもの先達であり,学生時代から尊敬している外科医であります。一方,執筆陣の中には若手の内科医も含まれています。
先端医療施設(国立がんセンター東病院)としての特徴を生かして,すでに癌になられた患者さんに対する治療法について詳細に記載されており,これは大変重要なことであると思います。
また,肝臓癌の治療対策を考える際の重要な点は,他の癌と比し前駆する疾病ならびにその高危険群が明確になっているところであります。C型ならびにB型肝炎ウイルスを病因とし,肝の線維化の進展により癌が発生した際の肝癌の結節の治療は,他の領域の癌とやや趣きを異にします。すなわち癌結節に対する根治的療法のみならず,その癌の発生をも考慮した肝癌治療,つまり背景肝をも含む2つの疾患に対する治療がよりよき肝癌治療であることが,私は大変重要であると考えております。
その観点から考えますと,本書はその高危険群の設定から精査,入院,治療法の選択につき,豊富なスタッフによってシステマティックに記載されています。
また画像診断の分野においても,森山氏を中心としてこの執筆グループは,十二分な経験を有しておられます。
◆到来した肝癌が治る時代
現在肝癌切除による5年生存率は,約6割と推定されます。しかしながら非切除例を含める5年生存率は,約4割前後と考えられます。前述の2つの疾病を治すという視点から,肝癌治療は今後5年生存率は,7割あるいは8割をめざしうる疾患と考えられます。その意味から本書は肝細胞癌のみならず,背景肝をもいかに見るか基本的な考え方に貫かれており,推薦に値します。
その自然史から見ても,実に肝癌が治る時代がまさしく到来していると考えられます。
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