がん看護コアカリキュラム

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がん看護に求められる専門性の広がりと深さを示す『Core Curriculum for Oncology Nursing,4/e』を翻訳。QOLにはじまり、がん看護の基礎・臨床的諸問題と実践の科学的根拠、がん看護の専門性をめぐる問題まで、49章にわたり「理論」「アセスメント」「看護診断」「期待される成果」「計画立案と実施」などが簡潔に整理されている。がん看護実践・研究における疑問にすぐに答えてくれる1冊。
監訳 小島 操子 / 佐藤 禮子
日本がん看護学会教育研究活動委員会コアカリキュラムグループ委員
発行 2007年02月判型:B5頁:816
ISBN 978-4-260-00396-4
定価 11,000円 (本体10,000円+税)
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第I部 クオリティ・オブ・ライフ

 1 安楽

 2 コーピング:心理社会的問題

 3 コーピング:ボディイメージの変化と脱毛症

 4 コーピング:文化的問題

 5 コーピング:サバイバーシップの問題と経済的な懸念

 6 セクシュアリティ

 7 支持的ケア:死と死にゆくこと

 8 支持的ケア:リハビリテーションと資源

 9 支持的ケア:支持療法と処置

 10 支持的ケア:薬理学的介入

 11 支持的ケア:非薬理学的介入

第II部 予防メカニズム

 12 身体可動性の変化,皮膚統合性の変化,神経学的変化

 13 骨髄抑制

第III部 消化器と泌尿器の機能

 14 栄養状態の変化

 15 排泄の変化

第IV部 循環器・呼吸器の機能

 16 換気の変化

 17 循環の変化

第V部 オンコロジーエマージェンシー

 18 代謝物によるエマージェンシー

 19 構造的要因によるエマージェンシー

第VI部 実践の科学的根拠

 20 がんと発がんの生物学

 21 免疫学

 22 遺伝学

 23 乳がん患者の看護ケア

 24 肺がん患者の看護ケア

 25 消化器系がん患者の看護ケア

 26 生殖器系がん患者の看護ケア

 27 腎尿路系がん患者の看護ケア

 28 皮膚がん患者の看護ケア

 29 頭頸部がん患者の看護ケア

 30 神経系がん患者の看護ケア

 31 白血病患者への看護ケア

 32 リンパ腫・多発性骨髄腫患者の看護ケア

 33 骨・軟部肉腫患者の看護ケア

 34 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に関連したがん患者の看護ケア

 35 外科的治療における看護

 36 放射線療法における看護

 37 バイオセラピーと分子標的療法における看護

 38 抗腫瘍療法における看護

 39 危険薬剤の調剤,投与,廃棄の原則

 40 造血幹細胞移植における看護

 41 補完代替医療

第VII部 ヘルスプロモーション

 42 がんの疫学と予防

 43 がんの早期発見

第VIII部 専門的な働き

 44 “Statement on the Scope and Standards of Oncology Nursing Practice”(がん看護実践の基本)の適用と根拠に基づいた実践

 45 教育課程

 46 がんのケアに影響を与える法的問題

 47 がんのケアにおける倫理的問題

 48 がんの経済とヘルスケア改革

 49 がんのケアにおける専門的課題

索引

 和文索引

 欧文索引

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標準的ながん看護とは何か(雑誌『看護管理』より)
書評者: 山田 雅子 (厚生労働省医政局看護課・健康局総務課がん対策推進室併任)
◆がん医療水準の均てん化に向けて,看護のチカラの結集を
 がんは健康を脅かす代表的な疾患として,多くの国民を苦しめてきた。1981年にがんが死因の第1位になったことをきっかけに,「対がん10か年総合戦略」が,さらにその後「がん克服新10か年戦略」が打ち出され,がんの本体を解明する研究の推進が図られるとともに,早期発見・早期治療に向けた取り組みが進められている。現在は,「第3次対がん10か年総合戦略」として,「がんの予防」と「がん医療の向上とそれを支える社会環境の整備」を柱とした取り組みが行なわれている。特に「がん医療水準の均てん化」は重要な課題の一つとして取り上げられており,がん医療の地域格差を是正するため,「がん専門医等の育成」「医療機関の役割分担とネットワーク」「がん登録制度」「情報の提供・普及」などの取り組みが推進されている。

 がん医療水準の均てん化に向け,がん医療を実践している医療機関を中心とした基盤整備を行なうことはもちろん,がん医療に携わる個々の医療者が力をつけていくことは極めて重要な課題である。患者にとってはどこの医療機関であっても,一定の水準以上の治療を受けたいと考えるのは当然であろう。標準的な治療(手術,抗がん剤治療,放射線治療などの組み合わせや,緩和医療を含む複数診療科間における相互診療支援など)を必要としている患者に対して,必要な情報を伝え,自己決定を支援し,適切な服薬管理や処置を実施する立場にある看護職員には,幅広いがん医療の最新の知識に裏付けられた質の高い看護を提供することのできる技術が必要である。


◆日本版がん看護コアカリキュラム作成への期待

 では,標準的ながん看護とは何か。本書は米国のOncology Nursing Societyが2005年に出版したテキストであり,すべてのがん看護に携わる看護職が知っておくべきこと,そして実践する力を備えておくべき技術が網羅されており,がん医療の均てん化を進めていくためには貴重な役割を果たす1冊となると考えられる。また,翻訳協力者が110名にも上り,日本がん看護学会が会員の力を結集した力作である。

 本書の特徴は,がん看護を幅広く,いくつもの切り口から解説している点である。発生メカニズムから治療の原則,予防に関する根拠にもとづいた知識,消化・循環・呼吸機能などにおける変化,根拠にもとづく治療に関する知識,QOLを支援するための多角的な視点と看護技術などなど,いずれも簡潔に整理されている。ぜひ看護診断の知識をもって読み解いていただきたい。

 注意すべきは,本書があくまでも米国でのテキストであること,そしてがん医療は日進月歩であるという点である。近い将来,日本の治療環境におけるがん看護のための標準テキストが,日本語で編纂されることを期待している。2007年4月に施行されるがん対策基本法では,「医師等の責務」とし「がん患者の置かれている状況を深く認識し,良質かつ適切ながん医療を行なうよう努めなければならない」とされた。「良質」「適切」とした言葉にこだわりをもって,自己研鑽に励んでいかなければならない。
がん患者のあらゆる面に触れた臨床レベル向上につながる書
書評者: 日野原 重明 (聖路加看護大名誉学長)
 今般,『がん看護コアカリキュラム』がB5版の816頁の本として医学書院から翻訳出版されることになった。

 がんは今日,死亡率からいっても最も高率な疾患であり,治療を受けて治るもの,完全には治らなくても日常生活が保たれる程度に進行を阻止できるものなど,さまざまである。また,がんの種類は全身の各臓器にわたり,小児にも成人も老人にも多い病気であり,患者数は膨大なものがある。

 そのため,何を専門にするナースであっても,がんのケアに参与するナースは多いはずである。すなわち,幅広く看護を担当するナースは,がんが分からないと,あるいはがん患者のケアができないと,ジェネラリストとは言えない。したがって,がん患者のあらゆる面に触れ,心理的,社会的,病理学的,治療的,予防的各方面にわたって看護において研修すべきカリキュラムが明快に示されている本書は,看護の広い基盤を扱った近代的ナーシングの本ともいえよう。

 構成は大きくは8部に分けられ,第1部では「クオリティ・オブ・ライフ」としてコーピングや支持的ケアのカリキュラム,第2部には「予防的メカニズム」として身体的変化や神経学的変化,皮膚系全体の変化に及ぶカリキュラムが取り上げられている。第3部は栄養や排泄の変化,第4部は換気や循環の変化,第5部は代謝や構造面での救急,第6部はがん発生の生物学,免疫学,遺伝学,乳がんや肺がんといったさまざまながん患者の看護ケアについての科学的根拠について記述されている。そして第7部にがんの疫学と予防,早期発見,第8部に専門的な働きについてまとめられている。

 これらのコアカリキュラムの下に学習がよくなされ,その学習の効果の評価が正しくなされれば,日本のナースの臨床レベルアップにつながり,本書の貢献するところが非常に大きいと思う。本書を,各方面の看護を担当する多くのナースによって,広く活用されることを望んで止まない。

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