婦人科がんの緩和ケア
がん患者の苦しみを緩和するために何ができるのか
もっと見る
婦人科がんの進行によって生ずる諸問題に対し、緩和ケアの視点から、EBMに基づいた対処法を丁寧に解説。がん患者の苦しみを緩和する方策が学べる好書。オクスフォードPalliative Care Consultations Seriesの1冊。
編集 | Sara Booth / Eduardo Bruera |
---|---|
監訳 | 後明 郁男 / 中村 隆文 |
翻訳 | 沈沢 欣恵 |
発行 | 2011年08月判型:A5頁:228 |
ISBN | 978-4-260-01120-4 |
定価 | 3,850円 (本体3,500円+税) |
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 序文
- 目次
序文
開く
監訳者まえがき(後明郁男・中村隆文)/まえがき(M.A.Richards)
監訳者まえがき
進行がんを患っている人とその家族をケアするとき,がんの種類とは関係なく問題となる諸症状や事象,たとえば食欲不振,嘔気や嘔吐,下痢や便秘,疼痛,息苦しさ,全身倦怠感や複雑な家族関係,経済的な困難などを見抜いてこれらに対処できる技量を身につけるのは基本的に大切なことである。
一方,各種のがんにはそれぞれのがんに特徴的な問題があり,本書で扱う婦人科領域の進行がんも同様である。それは主として,婦人科がんが重要な神経や血管,消化管,尿路が狭い場所にぎっしりとつまっている小骨盤腔内で発育することによる。初期の婦人科がん(子宮頸がん,子宮体がん,卵巣がん)は妊孕性を考慮しなければならないが,臓器すべてを手術で積極的に摘出できる。また化学療法や放射線治療がよく奏効するので比較的長期間担がん状態で生活できる。しかしながら,子宮頸がんや子宮体がんは進行すると全身状態は比較的良好にもかかわらず,多量性器出血や瘻孔に伴う悪臭帯下の増量に悩み,引き続き骨盤内感染を併発する。さらに進行すると下肢の浮腫が悪化して壊死や感染を発症して患者のQOLを下げる。また卵巣がんは早期からがん性腹膜炎になり化学療法と腫瘍減量手術を繰り返して,腹水のコントロールや栄養状態の改善に難渋しているうちに腸閉塞を発症して全身状態が悪化する特徴がある。
本書は英国での経験にもとづいているが,本邦でもそのまま役に立つことばかりである。
訳者の沈沢欣恵氏は英国留学の準備中にこの本に接し,邦訳を決意した。本書が緩和医療の現場のみならず,婦人科がんを扱う部署で広く読まれることを望む。
2011年8月
後明郁男・中村隆文
まえがき
Professor M.A.Richards
National Cancer Director, England
ここ数十年にわたり,診断および治療の大きな進歩があったにもかかわらず,がんは先進国のすべてにおいて主たる死亡原因であり続けている。ゆえに基本方針として,がん患者のケアに携わる医療関係専門職すべてが,苦しみを緩和するために何ができるのかを知っておかねばならない。
過去30年あまりを通じて,がん患者とその家族および介護者のために,身体的症状を和らげること,そして心理的,社会的,かつスピリチュアルなケアを提供するよう働きかけることについては,大きな進歩があった。しかしながら,全人的なケアを提供する難しさは,決して過小評価されるべきではない。これは特に,多忙をきわめる急性期総合病院およびがんセンターにおいては,まさしく事実なのである。物理的な環境は死にゆく患者のケアの助けにはなっていないであろうし,根治目的の治療がもはや患者の最大の関心事ではなくなり,緩和を意図したケアに重点が移されるべき時期に,スタッフが気づくのが難しいかもしれない。
がん治療の進歩により,多くの患者が治らないまでも,病気と共に何年も生きるようになった。彼らは何コースもの治療を繰り返しており,中には最高レベルの症状コントロールを要するほどの重篤な症状に苦しむ人もいるであろう。
近年において最も重要な進歩の1つは,がん患者に対するケアにおいて,多職種的(multidisciplinary)または多専門的(multiprofessional)なアプローチが有益であるという認識がなされたことである。これにより,内科医,外科医,放射線科医,血液内科医,病理医,腫瘍医,緩和専門職,看護専門職,その他広い範囲の医療専門職すべてが大きく貢献することとなり,これら専門家はチームとして共に働くことが必要である。
効率のよいチームワークのための必要条件の1つとして挙げられるのは,メンバー1人ひとりが,他のメンバーが貢献した内容を認識すべきだということである。The Palliative Care Consultationsシリーズは,これを実現する手助けとなる。世界のあらゆるところから,がんおよび緩和ケアの著名な専門家たちを招集できたことは,編者にとって喜ばしいことである。個々の巻は,特定のがん(例えば乳がんや肺がん)または一連のがん(例えば血液悪性疾患や婦人科悪性腫瘍)の患者が直面している問題に主な焦点を合わせている。各巻の章では,がん治療と緩和ケアを用いることによって何が達成できるのかを提示している。
私はこのシリーズを温かく迎え,各巻が質の高いケアを提供することに関わっている幅広い臨床家にとって貴重なものになると信じている。
監訳者まえがき
進行がんを患っている人とその家族をケアするとき,がんの種類とは関係なく問題となる諸症状や事象,たとえば食欲不振,嘔気や嘔吐,下痢や便秘,疼痛,息苦しさ,全身倦怠感や複雑な家族関係,経済的な困難などを見抜いてこれらに対処できる技量を身につけるのは基本的に大切なことである。
一方,各種のがんにはそれぞれのがんに特徴的な問題があり,本書で扱う婦人科領域の進行がんも同様である。それは主として,婦人科がんが重要な神経や血管,消化管,尿路が狭い場所にぎっしりとつまっている小骨盤腔内で発育することによる。初期の婦人科がん(子宮頸がん,子宮体がん,卵巣がん)は妊孕性を考慮しなければならないが,臓器すべてを手術で積極的に摘出できる。また化学療法や放射線治療がよく奏効するので比較的長期間担がん状態で生活できる。しかしながら,子宮頸がんや子宮体がんは進行すると全身状態は比較的良好にもかかわらず,多量性器出血や瘻孔に伴う悪臭帯下の増量に悩み,引き続き骨盤内感染を併発する。さらに進行すると下肢の浮腫が悪化して壊死や感染を発症して患者のQOLを下げる。また卵巣がんは早期からがん性腹膜炎になり化学療法と腫瘍減量手術を繰り返して,腹水のコントロールや栄養状態の改善に難渋しているうちに腸閉塞を発症して全身状態が悪化する特徴がある。
本書は英国での経験にもとづいているが,本邦でもそのまま役に立つことばかりである。
訳者の沈沢欣恵氏は英国留学の準備中にこの本に接し,邦訳を決意した。本書が緩和医療の現場のみならず,婦人科がんを扱う部署で広く読まれることを望む。
2011年8月
後明郁男・中村隆文
まえがき
Professor M.A.Richards
National Cancer Director, England
ここ数十年にわたり,診断および治療の大きな進歩があったにもかかわらず,がんは先進国のすべてにおいて主たる死亡原因であり続けている。ゆえに基本方針として,がん患者のケアに携わる医療関係専門職すべてが,苦しみを緩和するために何ができるのかを知っておかねばならない。
過去30年あまりを通じて,がん患者とその家族および介護者のために,身体的症状を和らげること,そして心理的,社会的,かつスピリチュアルなケアを提供するよう働きかけることについては,大きな進歩があった。しかしながら,全人的なケアを提供する難しさは,決して過小評価されるべきではない。これは特に,多忙をきわめる急性期総合病院およびがんセンターにおいては,まさしく事実なのである。物理的な環境は死にゆく患者のケアの助けにはなっていないであろうし,根治目的の治療がもはや患者の最大の関心事ではなくなり,緩和を意図したケアに重点が移されるべき時期に,スタッフが気づくのが難しいかもしれない。
がん治療の進歩により,多くの患者が治らないまでも,病気と共に何年も生きるようになった。彼らは何コースもの治療を繰り返しており,中には最高レベルの症状コントロールを要するほどの重篤な症状に苦しむ人もいるであろう。
近年において最も重要な進歩の1つは,がん患者に対するケアにおいて,多職種的(multidisciplinary)または多専門的(multiprofessional)なアプローチが有益であるという認識がなされたことである。これにより,内科医,外科医,放射線科医,血液内科医,病理医,腫瘍医,緩和専門職,看護専門職,その他広い範囲の医療専門職すべてが大きく貢献することとなり,これら専門家はチームとして共に働くことが必要である。
効率のよいチームワークのための必要条件の1つとして挙げられるのは,メンバー1人ひとりが,他のメンバーが貢献した内容を認識すべきだということである。The Palliative Care Consultationsシリーズは,これを実現する手助けとなる。世界のあらゆるところから,がんおよび緩和ケアの著名な専門家たちを招集できたことは,編者にとって喜ばしいことである。個々の巻は,特定のがん(例えば乳がんや肺がん)または一連のがん(例えば血液悪性疾患や婦人科悪性腫瘍)の患者が直面している問題に主な焦点を合わせている。各巻の章では,がん治療と緩和ケアを用いることによって何が達成できるのかを提示している。
私はこのシリーズを温かく迎え,各巻が質の高いケアを提供することに関わっている幅広い臨床家にとって貴重なものになると信じている。
目次
開く
1 進行子宮頸がんのアセスメントとマネジメント
はじめに
初回治療後の再発パターン
感情面でのサポート
2 進行卵巣がんの評価とマネジメント
はじめに
初期に提示する進行卵巣がんの治療
再発病変
QOLのアセスメントと患者の持つ期待
症例呈示
3 子宮内膜がん:基本的取り扱いと進行がん
疫学
症状の発現
診断法
組織学的所見
治療前評価
手術
進行期の決定
治療
放射線療法
ホルモン療法
化学療法
緩和ケア関連事項
おわりに
4 婦人科進行がんにおける骨盤痛症候群とそのマネジメント
はじめに
解剖
痛みのメカニズム
治療
鎮痛補助薬
侵襲的処置
まとめ
5 婦人科がんにおける悪臭と帯下のマネジメント
はじめに
エビデンス
悪臭をきたすリスクのある患者
アセスメント
マネジメント
6 瘻孔のマネジメント
はじめに
背景
術後に生じる瘻孔
放射線療法により生じる瘻孔
緩和ケア患者における瘻孔
進行した卵巣がん患者における瘻孔
経過
診察
考えられる検査
評価
手助けができるのは誰か?
マネジメント
おわりに
7 婦人科進行悪性疾患における腸管通過障害のマネジメント
発生率および一般的な特徴
エビデンスの出典
病態生理
アセスメントと臨床像
マネジメント
薬物療法
薬物療法以外のマネジメント
おわりに
8 婦人科悪性疾患における性心理学的な諸問題
はじめに
性機能障害の発生率
正常の性機能
がんの診断後に発生する性機能障害
手術に関連した体の変化
化学療法に関連した体の変化
放射線療法に関連した体の変化
閉経
性機能障害への取り組み
おわりに
9 婦人科悪性疾患における血栓症と異常出血
はじめに
婦人科悪性疾患の進行例における血栓症
進行がん患者における出血の問題
10 腹水のマネジメント
はじめに
がん性腹水の全体像について
アセスメント
マネジメント
11 骨盤内進行がんにおける尿路閉塞のマネジメント
はじめに
尿路閉塞の病態生理
患者のアセスメント
問題への対処
予後
12 人生最後の日々
臨死期の診断
臨死期の所見と症状-臨死期の診断
臨終を迎える場所
予後予測のプランニング
身体的ケア
心理的ケア
社会的ケア
スピリチュアル・ケア
遺族ケア
ケアの仕組みを整える
おわりに
訳者あとがき
索引
はじめに
初回治療後の再発パターン
感情面でのサポート
2 進行卵巣がんの評価とマネジメント
はじめに
初期に提示する進行卵巣がんの治療
再発病変
QOLのアセスメントと患者の持つ期待
症例呈示
3 子宮内膜がん:基本的取り扱いと進行がん
疫学
症状の発現
診断法
組織学的所見
治療前評価
手術
進行期の決定
治療
放射線療法
ホルモン療法
化学療法
緩和ケア関連事項
おわりに
4 婦人科進行がんにおける骨盤痛症候群とそのマネジメント
はじめに
解剖
痛みのメカニズム
治療
鎮痛補助薬
侵襲的処置
まとめ
5 婦人科がんにおける悪臭と帯下のマネジメント
はじめに
エビデンス
悪臭をきたすリスクのある患者
アセスメント
マネジメント
6 瘻孔のマネジメント
はじめに
背景
術後に生じる瘻孔
放射線療法により生じる瘻孔
緩和ケア患者における瘻孔
進行した卵巣がん患者における瘻孔
経過
診察
考えられる検査
評価
手助けができるのは誰か?
マネジメント
おわりに
7 婦人科進行悪性疾患における腸管通過障害のマネジメント
発生率および一般的な特徴
エビデンスの出典
病態生理
アセスメントと臨床像
マネジメント
薬物療法
薬物療法以外のマネジメント
おわりに
8 婦人科悪性疾患における性心理学的な諸問題
はじめに
性機能障害の発生率
正常の性機能
がんの診断後に発生する性機能障害
手術に関連した体の変化
化学療法に関連した体の変化
放射線療法に関連した体の変化
閉経
性機能障害への取り組み
おわりに
9 婦人科悪性疾患における血栓症と異常出血
はじめに
婦人科悪性疾患の進行例における血栓症
進行がん患者における出血の問題
10 腹水のマネジメント
はじめに
がん性腹水の全体像について
アセスメント
マネジメント
11 骨盤内進行がんにおける尿路閉塞のマネジメント
はじめに
尿路閉塞の病態生理
患者のアセスメント
問題への対処
予後
12 人生最後の日々
臨死期の診断
臨死期の所見と症状-臨死期の診断
臨終を迎える場所
予後予測のプランニング
身体的ケア
心理的ケア
社会的ケア
スピリチュアル・ケア
遺族ケア
ケアの仕組みを整える
おわりに
訳者あとがき
索引
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。