OMU印 呼吸器ドリル

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「印ドリル」シリーズ、第5弾は呼吸器! 胸部画像と病歴・身体所見・検査から、呼吸器内科医=プロはどのように診断に至るのか? 画像診断世界チャンピオン・下野太郎先生のワンポイントアドバイスも必見!

編集 川口 知哉 / 下野 太郎
編集協力 浅井 一久 / 山田 一宏
発行 2026年11月判型:B5頁:192
ISBN 978-4-260-06667-9
定価 4,950円 (本体4,500円+税)

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はじめに

 呼吸器病学の醍醐味の一つは,ダイナミックな診断プロセスにあると考える.限られた臨床情報から仮説を立て,検証し,時に修正しながら真の診断へと到達していく過程は,まさに知的探究の連続であり,臨床医にとって尽きることのない魅力である.
 OMU Chest Forumは,1980年代に栗原直嗣先生(現・育和会記念病院 名誉顧問)により立ち上げられた,大阪公立大学呼吸器グループの伝統ある勉強会・研究会である.その後,本フォーラムは平田一人先生(現・石切生喜病院 院長)へと受け継がれ,さらに私がその流れを引き継ぐ形で現在に至っている.このように,世代を超えて継承されてきたこと自体が,本フォーラムの価値と意義を物語っている.以来,年に複数回開催され,数十年にわたり本学および関連施設の呼吸器診療の質を支えてきた.当初は若手医師の教育および発表訓練の場を主な目的としていたが,現在ではその枠を超え,世代を超えた知の交流と研鑽の場となっている.
 本フォーラムの特徴は,各回に提示される数例の症例がクイズ形式で提示される点にある.提示症例はいずれも大学および各関連病院が厳選したものであり,呼吸器診療に潜むピットフォールや思考の盲点を巧みに突く内容が多い.したがって,単なる知識の確認にとどまらず,診断推論の本質を深く掘り下げる機会となっている.
 討論の過程では,司会者が参加者に対し逐次問いを投げかけ,診断に至る思考過程が丁寧に紐解かれる.その中で,最新の知見や文献に裏打ちされた鋭い推論が提示される場面にしばしば遭遇する.私自身,そのような発表に触れるたびに,思わず感嘆の声を上げた記憶がある.しかしながら,どれほど熟達した臨床医であっても,常に完全な正解に到達するとは限らない.むしろ重要なのは,いかに先入観や認知バイアスを排し,柔軟に思考を更新し続けるかという姿勢である.その意味で,本フォーラムは診断学の奥深さと厳しさ,そしてその魅力を実感させる場でもあった.
 本書『OMU印 呼吸器ドリル』は,これまでの本フォーラムで培われた症例と診断思考のエッセンスをもとに構成されている.提示された情報から仮説を組み立て,鑑別を絞り込み,最終診断へと至るプロセスは,まるでかの名探偵シャーロック・ホームズが謎を解き明かす過程にも通じる.読者にはぜひ,その思考の軌跡を追体験しながら,診断の醍醐味と呼吸器病学の奥行きを味わっていただきたい.
 また,放射線診断学の専門家であり,画像診断世界チャンピオンとしても名高い下野太郎先生にも不定期ながら本フォーラムにご参加いただき,画像診断の観点から貴重な示唆を賜ってきた.臨床所見と画像所見を統合した多角的な議論は,呼吸器診療の理解をさらに深化させるものであり,本フォーラムの大きな財産である.さらに本書においては,各症例へ示唆に富むコメントをご寄稿いただいており,その卓見は本書の学術的価値を一段と高めている.
 なお,本書の編纂にあたっては,浅井一久先生が編集・取りまとめの中心となり,多大なる尽力をされた.多数の症例の整理,構成の検討,執筆者間の調整に至るまで,その労はけっして小さくない.本書がこのような形で結実したのは,ひとえに浅井先生の献身的な努力によるところが大きく,ここに深甚なる謝意を表したい.なお,OMU Chest Forum は,帝人ヘルスケア株式会社の協力のもと継続的に開催されてきた.ここにその支援に対し感謝の意を表する.
 最後に,シャーロック・ホームズの言葉を引きたい.

「不可能なものをすべて除外していけば,最後に残ったものが,どれほどあり得なく思えても真実である.」
“When you have eliminated the impossible whatever remains, however improbable, must be the truth.”
──“The Sign of the Four”Arthur Conan Doyle

 本書が,読者にとって診断思考を磨き,日常診療に新たな視座をもたらす一助となることを願ってやまない.

 編者を代表して
 2026年9月
 川口知哉

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本書の構成

間質性陰影
  case 1 1年前からの労作時呼吸困難を認めた間質性陰影の1例
  case 2 無症状で経過観察され,4年間で徐々に陰影が増悪した間質性陰影の1例
  case 3 慢性経過の特発性非特異性間質性肺炎として経過観察されていた間質性陰影の1例
  case 4 急速に病態が悪化したびまん性肺疾患の1例
  case 5 体位性低酸素血症を呈した慢性肝疾患合併呼吸不全の1例

浸潤影
  case 6 乳癌に合併した肺病変の1例
  case 7 乳癌抗がん剤治療中に呼吸困難,酸素飽和度低下が発生した1例
  case 8 CT上,S6に異常陰影を認めた2例
  case 9 多発性硬化症の治療中に発症した両側肺のすりガラス陰影,浸潤影の1例
  case 10 多彩な陰影を認めたびまん性肺炎の1例
  case 11 内服開始後1年経過して出現したびまん性間質性陰影の1例
  case 12 クライオバイオプシーで診断に至らなかった空洞を伴う浸潤影の1例

粒状影・結節影
  case 13 診断に苦慮した両肺野びまん性の粒状影・結節影の1例
  case 14 胸膜直下優位の多発結節影を認め,多彩な臨床像を呈した1例
  case 15 肺野に多発するすりガラス陰影を伴う結節を呈した80歳代女性の1例
  case 16 呼吸困難で来院した,びまん性粒状影を呈した1例

腫瘤影
  case 17 肺がん検診で発見された左胸部異常陰影の1例
  case 18 健診で発見された短期間で消退・出現する多発肺結節の1例

囊胞
  case 19 胸水を主訴に来院し,胸腔内に囊胞性病変を認めた1例
  case 20 気胸を発症したびまん性肺疾患の1例

その他(気道・胸壁・胸膜)
  case 21 発熱および喘鳴を伴う呼吸困難を主訴に受診した1例
  case 22 CABG後13年で発症した胸膜・胸壁病変の1例
  case 23 両上肺野優位の気管支拡張像を呈した1例

逆引き疾患目次

column
 症例報告の重要性
 昭和の蛇口,令和の悩み
 「自宅」に答えがあった過敏性肺炎
 医師の成績表
 肺だけではいけません
 問診は推理の始まり
 統計学的有意差あり
 重症喘息の真のゴール

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