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CT造影理論NEO
臨床を変えるCT造影理論 可変注入法

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可変注入法は、造影剤の注入速度を連続的に増減させる造影剤注入法である。本法を用いることにより造影剤の投与量および注入時間が固定された条件下においても、血管や実質臓器の造影効果や造影タイミングを変化させることができる。本書は、可変注入法の入門書として、症例ベースでわかりやすく解説している。放射線科医、診療放射線技師必読の1冊。

編集 市川 智章 / 室賀 浩二
発行 2025年10月判型:B5頁:192
ISBN 978-4-260-06245-9
定価 4,950円 (本体4,500円+税)

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 『CT造影理論』(2004年,医学書院)は,21年という長い間,ただの一度も改訂されることがなかったにもかかわらず,絶版になることなく読み継がれてきた.これは,進歩変革が著しい医学分野において異例ともいえる.そのような当該書を,満を持して改訂するという決断に至った.『CT造影理論』は,現在,改訂作業を進めており,決断に至った理由については発行の暁に述べようと思うが,その端緒が本書で取り上げる「可変注入法」であったことは疑いようがない.可変注入法は別段新しい造影剤注入法ではない.本法は故八町淳氏が考案し,『CT造影理論』の中で自ら解説を担当していることからもわかるように,その歴史は今我々が使用している標準法(注入時間・注入速度一定法)と変わらない.実際,市販の造影剤注入器(根本杏林堂製)は20年近く前から可変注入に対応しており,CT担当の放射線技師であれば知らない人はいないだろうし,昔から可変注入法を臨床で実践している方も少なくない.そんな可変注入法が,“なぜ今さら”強調されるのか? “なぜ今”『CT造影理論』を改訂しようと思うほどの引き金になったのであろうか?
 どのような技術も開発後すぐに認められ実用化されるわけではない.すぐれた技術ほど時代を先取りしているため,スポットライトが当たるのに最も大事なことは,その技術に“時代が追いつく”ことである.可変注入法はそれがまさに今なのである.コンピューターシミュレーションソフトの開発や低管電圧/dual-energy撮像の実用化,ピンポイント撮影を可能にするさらなるCTの高速化などの周辺環境の進歩に加え,オーダーメイド検査の必要性,被ばく低減の重要性の高まりといった時代の要求は,まさに可変注入法がもたらす利点の本質そのものに他ならない.加えて,可変注入法は確実に臨床を変えるインパクトを有する.ぜひ本書からこれらのことを感じ取っていただきたい.
 なお,本書は,上述した『CT造影理論』の改訂版に先行しての出版になるものの,改訂版からのスピンオフ的な立ち位置にあるため,書名に「CT造影理論NEO」の名を冠している.
 『CT造影理論』の序文でも述べたが,我が国の診療放射線技師の優秀さは他国に類をみない.私が意味する“優秀”とは,5教科テストの総合点ではなく,知的好奇心の強さ+それを解決・実現しようとする勤勉さである.本書も,八町氏のマインドをそのまま今に受け継いでいる室賀浩二氏(長野赤十字病院)の“優秀さ”がその根底を盤石なものにしている.一方,私が思う(期待する)放射線画像診断医の“優秀さ”は,そのような放射線技師が開発した技術を臨床に落とし込む能力+実臨床に普及させようとする熱意だと常々思っている.両者が揃ってはじめて我々の努力は医学に貢献できる.そのためには,お互いが今何を必要とし,何を知って何を知らないのかわからなければ話にならない.今はまだ構想の域をでないが,そう遠くない将来,放射線技師と医師が一堂に会して,CTを議論できる場(CT学会)が開催できればと切に願っている.放射線技師と医師の連携は放射線科学の進歩において不可欠なものである.室賀氏(および全国の“優秀”な放射線技師の皆さん)と私との深い連携でできあがった本書が,可変注入法のスタートガイドに留まらず,放射線技師・医師連携のロールモデルになれば,それ以上うれしいことはない.
 なお,本書を刊行するに当たり,多忙な臨床業務の傍らデータ取得・解析を引き受けてくれた横田貴之先生,高山裕章先生,福島康宏先生をはじめとする群馬大学医学部放射線診断核医学科の皆様,プロトコルの頻回の変更など煩雑な業務を快く受け入れてくれた福田淳也氏,酒井義行氏をはじめとする中央放射線部診療放射線技師の皆様,『CT造影理論』同様,今回も企画から出版までわずか数か月という無理難題を見事成し遂げてくれた医学書院の天野貴洋氏,本書を共に編集した室賀氏をはじめ依頼から締め切りまで極めて短期間のなかで執筆していただいた執筆担当者各位に深謝申し上げる次第である.

 2025年9月吉日 CT学会の発足を夢見つつ
 市川 智章

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第1章 総論
 造影剤注入法の基礎
   造影剤の体内循環および大動脈のTECの変化
   標準法(速度一定注入法)の造影理論
 可変注入法
   可変注入法の特徴(標準法との比較)
   逆可変注入法の特徴(標準法との比較)
   部分可変注入法の特徴(可変注入法との比較)
   split-bolus法
   V可変注入法
   標準法と可変注入法における生理食塩水による後押し
   生理食塩水による後押しにおける可変注入法の応用〔台形クロス注入法(trapezoidal-cross)〕
  腹部(肝臓)
   造影・撮像のポイント
   造影剤注入・撮像プロトコル
  腹部(膵臓)
   造影・撮像のポイント
   膵造影CT検査への応用
   造影剤注入・撮像プロトコル
  腹部(その他)
   造影・撮像のポイント
  大動脈・下肢動脈
   造影・撮像のポイント
 造影シミュレーション
   全身循環モデル
   造影シミュレーション
   さまざまな造影剤注入プロトコル

第2章 症例
 腹部1(肝臓・膵臓:診断におけるポイント)
  症例1 HCC:可変注入法の利点
  症例2 HCC:可変注入法と標準法との比較
  症例3 HCC:可変注入法によるAP画像の腫瘍-肝コントラスト
  症例4 HCC:HAP撮像のタイミングが遅すぎる症例
  症例5 HCC:HAP撮像のタイミングが早すぎる症例
  症例6 HCC:早期濃染の弱い多血性病変(1)
  症例7 HCC:早期濃染の弱い多血性病変(2)
  症例8 HCC:肝細胞癌の特徴的所見(1)──腫瘍被膜とコロナ濃染
  症例9 HCC:肝細胞癌の特徴的所見(2)──thread and streaks sign
  症例10 HCC:可変定数0.5の特徴
  症例11 HCC:部分可変注入法の特徴
  症例12 HCC:可変注入法による一相性AP撮像(1)
  症例13 HCC:可変注入法による一相性AP撮像(2)
  症例14 HCC:可変注入法による一相性AP撮像──20秒注入(1)
  症例15 HCC:可変注入法による一相性AP撮像──20秒注入(2)
  症例16 HCC(多発性):病変検出におけるA-P shunt(HCCの門脈浸潤による)の影響
  症例17 肝転移:病変検出における A-P shunt(転移の門脈浸潤による)の影響
  症例18 肝転移:LMCC診断における可変注入法の有用性(1)──標準法撮像との比較
  症例19 肝転移:LMCC診断における可変注入法の有用性(2)──多血性病変とリング状濃染を示す病変
  症例20 肝転移:LMCC診断における可変注入法の有用性(3)──微小多血性病変
  症例21 膵癌:可変注入法によるHPAP──HAPとの比較
  症例22 膵癌:可変注入法による膵癌診断(1)
  症例23 膵癌:可変注入法による膵癌診断(2)
  症例24 膵癌:可変注入法による一相性膵動脈相撮像の撮像タイミング
  症例25 膵癌:可変注入法における造影剤注入法の違いによる腫瘍-膵コントラストの比較
  症例26 膵癌:逆可変注入法による膵癌診断の“one-stop shopping imaging”
  症例27 膵癌:逆可変注入法における問題点
  症例28 IPMN:逆可変注入法における工夫(注入時間の延長)
  症例29 膵癌:V可変注入法の利点
  症例30 胆管癌:V可変注入法を用いた一相撮像からの動脈・門脈3D画像作成
  症例31 膵癌:V可変注入法を用いた膵癌診断における“one-stop shopping imaging”(1)
  症例32 膵癌:V可変注入法を用いた膵癌診断における“one-stop shopping imaging”(2)
  症例33 膵癌:V可変注入法を用いた小膵癌診断
  症例34 SCN:V可変注入法と標準法を用いたHPPの比較
  症例35 膵癌:V可変注入法と逆可変注入法との比較
  症例36 膵多血性病変(転移):V可変注入法を用いた多血性病変の診断
  症例37 NET:V可変注入法を用いた多血性病変の診断(1)
  症例38 NET:V可変注入法を用いた多血性病変の診断(2)
  症例39 十二指腸乳頭部癌:V可変注入法を用いた多血性病変の診断
 腹部2(肝臓・膵臓・消化管:腹部術前検査における応用)
  症例40 HCC:標準的な可変注入法
  症例41 HCC:部分可変注入法
  症例42 肝転移
  症例43 膵癌
  症例44 膵癌:部分可変注入法
  症例45 膵癌:可変注入法と血管拡張薬の併用
  症例46 膵癌:術後合併症の評価
  症例47 胃癌:√可変注入法(可変注入法+標準法)
  症例48 上行結腸癌:√可変注入法
  症例49 S状結腸穿孔:低体重患者における可変注入法の応用
 腹部3(可変注入法の汎用性:偶発的所見の拾い上げ)
  症例50 直腸癌術前検査にて偶発的に発見された膵癌:√可変注入法
  症例51 偶発的に発見され術前VR画像を提供した胃癌:可変注入法
  症例52 IPMN術前CTで偶発的に見つかったMALS:V可変注入法(生理食塩水による後押しあり)
  症例53 IPMNの経過観察中に認めた大動脈ステント留置後のエンドリーク:V可変注入法
 大動脈・主要動脈・心臓
  症例54 腹部-下肢CTA
  症例55 頭部-骨盤CTA:タイミングが予測できない症例における応用
  症例56 頸部-下肢CTA
  症例57 下肢CTA:造影剤減量下・左右血流差を有する症例における応用
  症例58 冠動脈CTA:V可変注入法の応用──左室心筋内の灌流異常から責任病変を特定できた症例
 生理食塩水による後押しにおける可変注入法の応用(台形クロス注入法)
  症例59 頸部-大動脈弓部CTA
  症例60 頸部-上腕動脈CTA
  症例61 上肢CTA:造影剤の停滞を抑制し,両側の病態が確認された症例
  症例62 上肢CTA
  症例63 気管支動脈CTA
  症例64 肺動脈・気管支動脈CTA
  症例65 冠動脈CTA
  症例66 心腔内評価:二次孔欠損型

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