成人看護学[9]
女性生殖器 第16版

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  • 女性生殖器疾患の基礎知識から、疾患別の具体的な看護、事例に即した看護過程の展開までを、患者の身体的問題および心理・社会的問題とともに学ぶことができます。
  • 序章では、子宮筋腫患者の事例を取り上げ、講義の導入に使いやすくするとともに、読者が女性生殖器疾患における看護の視点について関心がもてるようにしました。
  • 第6章A節では、卵巣悪性腫瘍患者の事例を用いて、経過ごとに共通する看護のポイントを解説しました。経過ごとの視点をおさえたうえで、B節以降で症状・治療・疾患ごとの看護を学ぶことができます。
  • 女性生殖器疾患の患者の看護でとくに求められる検査・治療を受ける際の心理面への配慮や、疾患・治療などが生殖機能に及ぼす影響について丁寧に説明し、求められる看護を初学者にもわかりやすく解説しています。
  • 新たに、術後の患者へのリンパドレナージの指導場面の動画を収載しました。
  • 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。

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  • 序文
  • 目次

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はしがき

発刊の趣旨
 1967年から1968年にかけて行われた看護学校教育課程の改正に伴って,新しく「成人看護学」という科目が設けられた。
 本教科のねらいとするところは,「看護の基礎理論としての知識・技術・態度を理解し,これを応用することによって,病気をもつ人の世話あるいは健康の維持・増進を実践・指導し,看護の対象であるあらゆる人の,あらゆる状態に対応していくことができる」という,看護の基本的な理念を土台として,「成人」という枠組みの対象に対する看護を学ぶことにある。
 したがって,看護を,従来のように診療における看護といった狭い立場からではなく,保健医療という幅広い視野のなかで健康の保持・増進という視点においてとらえ,一方,疾患をもった患者に対しては,それぞれの患者が最も必要としている援助を行うという看護本来のあり方に立脚して学習しなければならない。
 本書「成人看護学」は,以上のような考え方を基礎として編集されたものである。
 まず「成人看護学総論」においては,成人各期の特徴を学び,対象である成人が,どのような状態のもとで正常から異常へと移行していくのか,またそれを予防し健康を維持していくためには,いかなる方策が必要であるかを学習し,成人の全体像と成人看護の特質をつかむことをねらいとしている。
 以下,「成人看護学」の各巻においては,成人というものの概念を把握したうえで,人間の各臓器に身体的あるいは精神的な障害がおこった場合に,その患者がいかなる状態におかれるかを理解し,そのときの患者のニーズを満たすためにはどのようにすればよいかを,それぞれの系統にそって学習することをねらいとしている。
 したがって,「成人看護学」の学習にあたっては,従来のように診療科別に疾病に関する知識を断片的に習得するのではなく,種々の障害をあわせもつ可能性のある1人ひとりの人間,すなわち看護の対象としての人間のあらゆる変化に対応できる知識・技術・態度を学びとっていただきたい。
 このような意味において,学習者は対象の健康生活上の目標達成のために,より有効な援助ができるような知識・技術を養い,つねに研鑽を続けていかなければならない。
 以上の趣旨のもとに,金子光・小林冨美栄・大塚寛子によって編集された「成人看護学」であるが,日進月歩をとげる医療のなかで,本書が看護学の確立に向けて役だつことを期待するものである。

カリキュラムの改正
 わが国の看護・医療を取り巻く環境は,急速な少子高齢化の進展や,慢性疾患の増加などの疾病構造の変化,医療技術の進歩,看護業務の複雑・多様化,医療安全に関する意識の向上など,大きく変化してきた。それに対応するために,看護教育のカリキュラムは,1967年から1968年の改正ののち,1989年に全面的な改正が行われ,1996年には3年課程,1998年には2年課程が改正された。さらに2008年,2020年にも大きく改正され,看護基礎教育の充実がはかられるとともに,臨床実践能力の強化が盛り込まれてきた。

改訂の趣旨
 今回の「成人看護学」の改訂では,カリキュラム改正の意図を吟味するとともに,1999年に発表され,直近では2022年に改定された「看護師国家試験出題基準」の内容をも視野に入れ,内容の刷新・強化をはかった。また,日々変化する実際の臨床に即し,各系統において統合的・発展的な学習がともに可能となるように配慮した。
 序章「この本で学ぶこと」では,事例を用いて,これから学ぶ疾患をかかえた患者の姿を示した。また,本書で扱われている内容およびそれぞれの項目どうしの関係性が一見して把握できるように,「本書の構成マップ」を設けている。
 第1章「女性生殖器の看護を学ぶにあたって」では,系統別の医療の動向と看護を概観したあと,患者の身体的,心理・社会的特徴を明確にし,看護上の問題とその特質に基づいて,看護の目的と機能が具体的に示されている。
 第2~5章では,疾患とその医学的対応という視点から,看護の展開に必要とされる医学的な基礎知識が選択的に示されている。既習知識の統合化と臨床医学の系統的な学習のために,最新の知見に基づいて解説されている。今改訂では第5章の冒頭に「A.本章で学ぶ女性生殖器疾患」を新設し,第5章で学習する疾患の全体像をつかめるように工夫をこらした。
 第6章「患者の看護」では,第1~5章の学習に基づいて,経過別,症状別,検査および治療・処置別,疾患別に看護の実際が提示されている。これらを看護過程に基づいて展開することにより,患者の有する問題が論理的・総合的に理解できるように配慮されている。とくに経過別については「A.疾患をもつ患者の経過と看護」として,事例を用いて患者の姿と看護を経過別に示すとともに,それらの看護と,疾患別の看護などとの関係を示してある。
 第7章「事例による看護過程の展開」では,1~3つの事例を取り上げ,看護過程に基づいて看護の実際を展開している。患者の有するさまざまな問題を提示し,看護の広がりと問題解決の過程を具体的に学習できるようにしている。
 また,昨今の学習環境の変化に対応するために,成人看護学においても積極的に動画教材を用意し,理解を促すようにした。
 巻末には適宜付録を設け,各系統別に必要となる知識を整理し,学習の利便性の向上をはかっている。
 今回の改訂によって看護の学習がより効果的に行われ,看護実践能力の向上,ひいては看護の質的向上に資することをせつに望むものである。ご活用いただき,読者の皆さんの忌憚のないご意見をいただければ幸いである。

 2024年11月
 著者ら

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序章 この本で学ぶこと (加藤恵里子)
 女性生殖器疾患をもつ患者の姿
 本書の構成マップ

第1章 女性生殖器の看護を学ぶにあたって (阿部典子・佐々木麻子・櫻庭くみ)
 A 医療の動向と看護
  1 患者の動向と看護
  2 治療の動向と看護
 B 患者の特徴と看護の役割
  1 身体的問題とその援助
  2 心理・社会的問題とその援助
  3 発達段階別の看護と役割
   a 乳児期・幼児期の特徴と看護
   b 学童期の特徴と看護
   c 思春期の特徴と看護
   d 成熟期の特徴と看護
   e 更年期の特徴と看護
   f 高齢期の特徴と看護
  4 家族への援助

第2章 女性生殖器の構造と機能 (鈴木直)
 A 外性器・内性器の構造と機能
  1 外性器
  2 内性器
 B 乳房の構造と機能
 C 生殖機能の発達と調節
  1 性の分化と性腺の発生
  2 女性の性機能とライフサイクル
  3 性ホルモンの機能とその調節
  4 月経周期と卵巣周期・子宮内膜周期
  5 妊娠の成立

第3章 症状とその病態生理 (鈴木直)
  1 性器出血
  2 帯下
  3 外陰部瘙痒感
  4 下腹部痛,下腹部膨満感・腫瘤感
  5 自律神経症状・不定愁訴
  6 リンパ浮腫
  7 排尿障害

第4章 診察・検査と治療・処置 (野上侑哉・山上亘・坂井健良)
 A 診察・検査
  1 診察・検査に共通する注意点
  2 診察・治療に用いる器具
  3 理学的検査
  4 病理検査
  5 細菌・ウイルス・真菌・原虫検査
  6 画像検査
  7 腫瘍マーカー検査
  8 妊娠検査
  9 内視鏡検査
  10 染色体検査・遺伝子検査
 B 治療・処置
  1 薬物療法
  2 手術
  3 放射線療法
  4 外来などで行われる処置・治療
  5 避妊

第5章 疾患の理解 (鈴木直・神野浩光・末岡浩・大原樹・野口靖之)
 A 本章で学ぶ女性生殖器疾患
 B 性分化疾患
  1 性分化疾患の定義と分類
  2 おもな疾患
  3 診断と治療
 C 臓器別疾患
  1 外陰の疾患
  2 腟の疾患
  3 子宮の疾患
  4 卵管の疾患
  5 卵巣の疾患
  6 骨盤内炎症性疾患(PID)
  7 乳房の疾患
 D 機能的疾患
  1 月経異常・月経随伴症状
  2 更年期障害
  3 不妊症
  4 不育症
 E 性感染症

第6章 患者の看護 (佐久間玲奈・藤野萌美・内藤幸子・宮崎敬子・黒澤真紀・大沼恵里奈・白倉美凡)
 A 疾患をもつ患者の経過と看護
 B 症状に対する看護
  1 性器出血のある患者の看護
   a 多量出血の場合
   b 少量出血の場合
  2 帯下・外陰部瘙痒感のある患者の看護
  3 下腹部膨満感・腫瘤感のある患者の看護
  4 自律神経症状・不定愁訴のある患者の看護
  5 リンパ浮腫のある患者の看護
  6 排尿障害のある患者の看護
 C 診察・検査を受ける患者の看護
  1 問診を受ける患者の看護
  2 外診を受ける患者の看護
  3 内診を受ける患者の看護
  4 検査を受ける患者の看護
 D 治療・処置を受ける患者の看護
  1 ホルモン療法を受ける患者の看護
  2 がん薬物療法を受ける患者の看護
  3 内性器・外性器の手術を受ける患者の看護
   a 手術前の看護
   b 手術当日の入室までの看護
   c 手術後の看護
  4 乳房の手術を受ける患者の看護
   a 手術前の看護
   b 手術後の看護
   c 退院に向けた看護
  5 放射線療法を受ける患者の看護
  6 腟洗浄を受ける患者の看護
  7 ダグラス窩穿刺を受ける患者の看護
 E 疾患をもつ患者の看護
  1 性分化疾患患者の看護
  2 生殖器の発生・発育・発達の異常をもつ患者の看護
  3 子宮内膜症患者の看護
  4 子宮筋腫患者の看護
  5 子宮悪性腫瘍患者の看護
  6 異所性妊娠患者の看護
  7 卵巣腫瘍患者の看護
  8 乳がん患者の看護
  9 月経異常・月経随伴症状のある患者の看護
  10 更年期障害患者の看護
  11 萎縮性腟炎患者の看護
  12 性感染症患者の看護

第7章 事例による看護過程の展開 (渡邉真紀子・中田帆南・佐々木さな枝・神山桂子)
 A 子宮頸がん患者の看護
  1 患者についての情報
  2 看護過程の展開
  3 事例のふり返り
 B 乳房全切除術を受けた患者の看護
  1 患者についての情報
  2 看護過程の展開
  3 事例のふり返り

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