栄養食事療法 第5版
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- 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に対応しています。
- 栄養食事療法の基礎から疾患ごとの栄養食事療法までを総合的に学習できる内容です。
- 『人体の構造と機能[3] 栄養学』で基礎を固め、本書では臨床場面に役だつ知識を学習できます。
- 各栄養素を多く含む食品をまとめた表などを豊富に掲載しました。臨地実習から卒後までご活用いただける1冊です。
- 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
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序文
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はしがき
人間は,この世に生を受け,死を迎えるまで,生命活動に必要な成分を体外から補給しつづけなければならず,この必須成分を栄養素と名づけた。私たちは,自分たちが生存する環境のなかで獲得した食物から,この栄養素を補給し,生命を維持している。一方,人間は,火や道具を用いて食物を調理・加工し,さらに食物となる動植物の栽培や飼育を行い,多様な食生活を発展させた。食物選択の内容は複雑で,個人や集団により特徴があり,ときとしてエネルギーや栄養素の摂取内容が,必要とする内容とずれを生じることがある。すなわち,生体の必要量と食物からの摂取量との不一致がおこる。このずれが異常に大きくなり,さらに長期に及び,生体がもつ恒常性による調整能力をこえたときに,代謝に異常がおこり,疾病状態へと進展する。
世界保健機関(WHO)は,おもに生活習慣を誘因として発症する慢性疾患を非感染性疾患(NCDs)と総称している。NCDsの予防には,できる限り生体が必要とする内容とずれが少ない適正な食習慣を形成することと,早期にこのずれを見いだし食習慣を改善することが必要である。また,NCDsのような慢性疾患の多くは,不可逆的な疾患であるために,多くの場合,完治することが不可能である。そのため,治療の目標は増悪を防止し,合併症の出現を防ぐことになる。なお,慢性疾患の早期治療においては,食事療法が薬物療法以上の効果をもつこともわかってきた。
一方,医療・福祉の領域においては,傷病者・高齢者にみられる栄養不良が重要な課題になっている。とくに,エネルギー・タンパク質欠乏症やビタミン・ミネラル欠乏症を放置すると,免疫機能が低下し,病気からの回復が遅れ,合併症がおこりやすくなる。その結果,薬物の使用が多くなり,入院日数がのびて,医療費の増大につながる。
このように,現代は栄養過剰と栄養不良状態の人の両方が同じ国の中に混在しており,栄養障害の二重負荷状態にあるといわれる。また,1人の一生においても,中年期にNCDsを患い,老年期に低栄養状態に陥ることもあり,包括的な対策が求められている。
栄養食事療法とチームケア
体内への栄養素の補給法は,いまや食物の経口摂取だけではない。カテーテルを用いて流動食や栄養剤を消化管内に投与する経管・経腸栄養や,静脈から栄養輸液製剤を投与する経静脈栄養が利用されている。摂取するものも日常的な食品だけではなく,特別用途食品・経腸栄養食品・栄養剤などの特殊なものが利用される。栄養補給法がこのように進歩・多様化したために,食事療法は「栄養食事療法」といわれるようになってきた。
栄養食事療法の目的は,傷病者に対して,健康状態や栄養状態をよりよい状態へ改善し疾病の予防・治療および増悪防止につなげ,さらにQOLを向上させることである。効果的な栄養食事療法を進めるためには,対象者の病態や栄養状態を評価・判定し,栄養食事療法の計画を立て,それに従って実施し,さらにその効果を評価するマネジメントが必要になる。そのためには,関連する職種が連携したチームケアが重要である。
看護師は,とくに管理栄養士・栄養士と連携し,患者個々に適正な食事が提供されているかをチェックし,摂食が困難な場合には食事介助をする。さらに,必要に応じて治療食の意義や特徴について患者に指導し,摂食状況や食環境を観察・記録して,その状況が改善するように努める。また,栄養食事療法を実践するには,食生活を医療の監視下におき,その管理を行うことが生涯にわたり必要となるため,自由な食事が困難になる。この不自由さを生活のなかでどのように解決するかも重要な課題であり,看護師の役割は大きい。
改訂の趣旨
本書は,こうした栄養食事療法について学ぶための教科書として,2005年に初版が刊行された。このたびの改訂では,全体の章構成を見直すと同時に,全面カラー化を行った。また,「日本人の食事摂取基準(2025年版)」「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」の内容を反映させるなど,できる限り最新の知見を導入して内容の刷新をはかった。本書をご活用いただき,忌憚のないご意見をいただければ幸いである。
2024年12月
著者ら
目次
開く
第1章 栄養食事療法とは (中村丁次)
A 栄養食事療法の概要
1 食生活と栄養食事療法
2 傷病者の状態と栄養食事療法
3 おもな栄養関連疾患
B 医療・福祉の場における栄養食事療法
1 チーム医療と栄養食事療法
2 医療保険制度と栄養食事療法
3 福祉ならびに介護保険制度と栄養食事療法
第2章 栄養食事療法の基礎 (中村丁次)
A 治療食の分類と特徴
1 治療食の形態的分類
2 治療食の成分的分類
3 疾患名に対応する治療食
4 治療食と食品選択
B 栄養補給法
1 経口栄養法
2 経管・経腸栄養法
3 経静脈栄養法
C 栄養アセスメントの基本
1 履歴
2 栄養素摂取量
3 身体計測
4 臨床検査値
5 身体診査
第3章 疾患・症状別の栄養食事療法 (宇夫方直子・有本正子・奥村仙示・斎藤恵子・宮島功・金居理恵子・塚原丘美・杉山真規子・柴田みち・柿崎祥子・倉貫早智)
A 呼吸器疾患患者の栄養食事療法
a 肺炎
b 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
c 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
B 循環器疾患患者の栄養食事療法
a 高血圧症
b 動脈硬化症
c 虚血性心疾患
d 心不全
e 脳血管障害
C 消化器疾患患者の栄養食事療法
1 消化器症状
a 便秘
b 下痢
2 上部消化管疾患
a 急性胃炎
b 過酸性胃炎
c 無酸性(低酸性)胃炎
d 胃・十二指腸潰瘍
e 胃食道逆流症(GERD)
f 機能性ディスペプシア
3 下部消化管疾患
a 過敏性腸症候群(IBS)
b 潰瘍性大腸炎
c クローン病
d 短腸症候群
4 消化管全般にわたる疾患
a 吸収不良症候群
b タンパク漏出性胃腸症
5 肝・胆・膵疾患
a 急性肝炎・慢性肝炎
b 肝硬変症
c 脂肪性肝疾患
d 代謝異常関連脂肪肝炎(MASH)
e 胆石症・胆嚢炎
f 急性膵炎
g 慢性膵炎
D 腎・泌尿器疾患患者の栄養食事療法
1 腎疾患
a 慢性腎臓病(CKD)
b 血液透析・腹膜透析
c ネフローゼ症候群
d 急性腎障害(AKI)
2 泌尿器疾患(尿路結石症)
E 栄養代謝性疾患患者の栄養食事療法
a 肥満
b やせ
c エネルギー・タンパク質欠乏症
d ビタミン欠乏症
e ミネラル欠乏症
f 糖尿病
g 脂質異常症
h 高尿酸血症・痛風
F 血液疾患患者の栄養食事療法
1 貧血
a 鉄欠乏性貧血
b 巨赤芽球性貧血
2 白血病
G がん患者の栄養食事療法
1 がんの発症と食事・栄養
2 がん患者と栄養
3 がん治療における栄養食事療法
a 手術療法の場合
b 薬物療法の場合
c 放射線療法の場合
H 食物アレルギー患者の栄養食事療法
I 熱傷・褥瘡患者の栄養食事療法
a 熱傷
b 褥瘡
J 精神・神経疾患患者の食事療法
1 食行動症および摂食症群
a 神経性やせ症
b 神経性過食症
c むちゃ食い症
d 回避・制限性食物摂取症
2 アルコール依存症
第4章 術前・術後の栄養管理 (林純平)
A 術前・術後の栄養管理の原則
1 多職種による術前管理
2 術前の栄養管理の原則
3 術後の栄養管理の原則
B 消化器の手術
1 食道の摘出手術
2 胃の摘出手術
3 大腸の摘出手術
4 人工肛門造設患者
C 循環器の手術
▪ 冠動脈バイパス術,弁置換術,大動脈瘤に対する手術
第5章 ライフステージに応じた栄養食事療法 (柴田みち・倉貫早智・柿崎祥子)
A 小児の栄養食事療法
1 小児の栄養管理の基本
2 低出生体重児
3 先天性代謝異常
a フェニルケトン尿症
b メープルシロップ尿症
c ホモシスチン尿症
d ガラクトース血症
e 糖原病
4 周期性嘔吐症(アセトン血性嘔吐症)
5 乳幼児下痢症
6 小児肥満
B 妊産婦の栄養と食事
1 妊産婦の栄養管理の基本
2 つわり・妊娠悪阻
3 妊娠高血圧症候群
4 妊娠糖尿病および糖尿病合併妊娠
C 更年期の栄養食事療法
1 更年期の栄養管理の基本
2 骨粗鬆症
D 高齢者の栄養食事療法
1 高齢者の栄養管理の基本
2 フレイル・サルコペニア
第6章 医療保険制度・介護保険制度と食事 (齋藤長徳)
A 医療保険と食事
1 入院時食事療養費制度
2 栄養管理
3 栄養食事指導料
B 介護保険と食事
1 施設サービス
2 居宅サービス
巻末資料
基礎代謝量と推定エネルギー必要量
血液検査項目と基準範囲
索引
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