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成人看護学[11]
アレルギー 膠原病 感染症 第16版

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  • アレルギー領域では、成人の食物アレルギーの特徴などついて、最新の動向やガイドラインをもとに加筆しました。
  • 膠原病領域では、具体的な看護活動の充実した記述により、慢性期疾患の看護が理解できるようになっています。
  • 感染症領域では、最新の医療の動向をふまえて、現代の感染症患者の看護に必要な医学的知識をわかりやすく整理し、患者個人の看護から感染予防まで、広く学べる構成となっています。
  • 各領域の序章では、学習の導入として、対象とする患者像をイメージできる事例をとりあげています。
  • 各領域の第5章の冒頭には、本書で取りあげるアレルギー疾患・膠原病・感染症の全体像の概説を新設しました。
  • 各領域の第6章の冒頭では、事例を用いて患者の状態と看護を経過別に展開し、健康レベルの変化に応じた看護のポイントをまとめてあります。
  • 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。

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はしがき

発刊の趣旨
 1967年から1968年にかけて行われた看護学校教育課程の改正に伴って,新しく「成人看護学」という科目が設けられた。
 本教科のねらいとするところは,「看護の基礎理論としての知識・技術・態度を理解し,これを応用することによって,病気をもつ人の世話あるいは健康の維持・増進を実践・指導し,看護の対象であるあらゆる人の,あらゆる状態に対応していくことができる」という,看護の基本的な理念を土台として,「成人」という枠組みの対象に対する看護を学ぶことにある。
 したがって,看護を,従来のように診療における看護といった狭い立場からではなく,保健医療という幅広い視野のなかで健康の保持・増進という視点においてとらえ,一方,疾患をもった患者に対しては,それぞれの患者が最も必要としている援助を行うという看護本来のあり方に立脚して学習しなければならない。
 本書「成人看護学」は,以上のような考え方を基礎として編集されたものである。
 まず「成人看護学総論」においては,成人各期の特徴を学び,対象である成人が,どのような状態のもとで正常から異常へと移行していくのか,またそれを予防し健康を維持していくためには,いかなる方策が必要であるかを学習し,成人の全体像と成人看護の特質をつかむことをねらいとしている。
 以下,「成人看護学」の各巻においては,成人というものの概念を把握したうえで,人間の各臓器の身体的あるいは精神的な障害がおこった場合に,その患者がいかなる状態におかれるかを理解し,そのときの患者のニーズを満たすためにはどのようにすればよいかを,それぞれの系統にそって学習することをねらいとしている。
 したがって,「成人看護学」の学習にあたっては,従来のように診療科別に疾病に関する知識を断片的に習得するのではなく,種々の障害をあわせもつ可能性のある1人ひとりの人間,すなわち看護の対象としての人間のあらゆる変化に対応できる知識・技術・態度を学びとっていただきたい。
 このような意味において,学習者は対象の健康生活上の目標達成のために,より有効な援助ができるような知識・技術を養い,つねに研鑽を続けていかなければならない。
 以上の趣旨のもとに,金子光・小林冨美栄・大塚寛子によって編集された「成人看護学」であるが,日進月歩をとげる医療のなかで,本書が看護学の確立に向けて役だつことを期待するものである。

カリキュラムの改正
 わが国の看護・医療を取り巻く環境は,急速な少子高齢化の進展や,慢性疾患の増加などの疾病構造の変化,医療技術の進歩,看護業務の複雑・多様化,医療安全に関する意識の向上など,大きく変化してきた。それに対応するために,看護教育のカリキュラムは,1967年から1968年の改正ののち,1989年に全面的な改正が行われ,1996年には3年課程,1998年には2年課程が改正された。さらに2008年,2020年にも大きく改正され,看護基礎教育の充実がはかられるとともに,臨床実践能力の強化が盛り込まれてきた。

改訂の趣旨
 今回の「成人看護学」の改訂では,カリキュラム改正の意図を吟味するとともに,1999年に発表され,直近では2022年に改定された「看護師国家試験出題基準」の内容をも視野に入れ,内容の刷新・強化をはかった。また,日々変化する実際の臨床に即し,各系統において統合的・発展的な学習がともに可能となるように配慮した。
 序章「この本で学ぶこと」では,事例を用いて,これから学ぶ疾患をかかえた患者の姿を示した。また,本書で扱われている内容およびそれぞれの項目どうしの関係性が一見して把握できるように,「本書の構成マップ」を設けている。
 第1章では,系統別の医療の動向と看護を概観したあと,患者の身体的,心理・社会的特徴を明確にし,看護上の問題とその特質に基づいて,看護の目的と機能が具体的に示されている。
 第2~5章では,疾患とその医学的対応という視点から,看護の展開に必要とされる医学的な基礎知識が選択的に示されている。既習知識の統合化と臨床医学の系統的な学習のために,最新の知見に基づいて解説されている。今改訂では第5章の冒頭に各系統で学ぶ疾患の概要を新設し,疾患の全体像をつかめるように工夫をこらした。
 第6章「患者の看護」では,第1~5章の学習に基づいて,経過別,症状別,検査および治療・処置別,疾患別に看護の実際が提示されている。これらを看護過程に基づいて展開することにより,患者の有する問題が論理的・総合的に理解できるように配慮されている。とくに経過別については「A.疾患をもつ患者の経過と看護」として,事例を用いて患者の姿と看護を経過別に示すとともに,それらの看護と,疾患別の看護などとの関係を示してある。
 第7章「事例による看護過程の展開」では,1~3つの事例を取り上げ,看護過程に基づいて看護の実際を展開している。患者の有するさまざまな問題を提示し,看護の広がりと問題解決の過程を具体的に学習できるようにしている。
 また,昨今の学習環境の変化に対応するために,成人看護学においても積極的に動画教材を用意し,理解を促すようにした。
 巻末には適宜付録を設け,各系統別に必要となる知識を整理し,学習の利便性の向上をはかっている。
 今回の改訂によって看護の学習がより効果的に行われ,看護実践能力の向上,ひいては看護の質的向上に資することをせつに望むものである。ご活用いただき,読者の皆さんの忌憚のないご意見をいただければ幸いである。

 2024年11月
 著者ら

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●アレルギー
 序章 この本で学ぶこと (山本未央・南川雅子)
  アレルギー疾患をもつ患者の姿
  本書の構成マップ

 第1章 アレルギー疾患患者の看護を学ぶにあたって (古屋洋子)
  A 医療の動向と看護
   1 医療の動向
   2 看護の目標
  B 患者の特徴と看護の役割
   1 身体的な問題とその援助
   2 心理・社会的な問題とその援助
   3 家族への援助

 第2章 免疫のしくみ (山口正雄)
  A 免疫反応と疾患
   1 生体防御のしくみ
   2 免疫と疾患
  B 免疫担当細胞と伝達物質
   1 免疫担当細胞
   2 化学伝達物質とサイトカイン

 第3章 アレルギーのしくみと症状 (山口正雄)
  A アレルギーのしくみ
   1 アレルギー反応の分類
   2 アレルゲン
  B アレルギーの症状と経過
   1 アレルギーの症状と病態生理
   2 アレルギーの経過

 第4章 診察と検査・治療 (山口正雄)
  A 診察の流れ
   1 問診
   2 診察・検査
  B 検査
   1 抗原特異的IgEおよび総IgE
   2 白血球検査
   3 リンパ球刺激試験(LST)
   4 皮膚テスト
   5 その他の検査
  C 治療
   1 生活習慣の改善
   2 薬物療法
   3 アレルゲン免疫療法

 第5章 疾患の理解 (山口正雄)
  A 本章で学ぶアレルギー疾患
  B 気管支喘息
  C アレルギー性鼻炎・結膜炎
  D 食物アレルギー
  E アナフィラキシー
  F アトピー性皮膚炎
  G 蕁麻疹
  H 接触皮膚炎
  I 薬物アレルギー
  J ラテックスアレルギー
  K 職業性アレルギー
  L ペット・昆虫アレルギー
  M 化学物質過敏症
  N 血清病

 第6章 患者の看護 (古屋洋子・角田こずえ)
  A 疾患をもつ患者の経過と看護
  B 症状に対する看護
   1 呼吸器症状がある患者の看護
   2 消化器症状がある患者の看護
   3 皮膚症状がある患者の看護
   4 眼症状がある患者の看護
   5 アナフィラキシーショックの患者の看護
  C 診察・検査を受ける患者の看護
   1 診察を受ける患者の看護
   2 検査を受ける患者の看護
  D 治療を受ける患者の看護
   1 アレルゲンの回避・除去のための日常生活の改善
   2 薬物療法を受ける患者の看護
   3 アレルゲン免疫療法を受ける患者の看護
  E 疾患をもつ患者の看護
   1 気管支喘息患者の看護
   2 アレルギー性鼻炎患者の看護
   3 アトピー性皮膚炎患者の看護
   4 アナフィラキシー患者の看護
   5 食物アレルギー患者の看護
   6 薬物アレルギー患者の看護
   7 ラテックスアレルギー患者の看護

 第7章 事例による看護過程の展開 (山本未央)
  A 気管支喘息患者の看護
   1 患者についての情報
   2 看護過程の展開
   3 事例のふり返り

●膠原病
 序章 この本で学ぶこと (石渡由貴)
  膠原病をもつ患者の姿
  本書の構成マップ

 第1章 膠原病患者の看護を学ぶにあたって (石渡由貴)
  A 医療の動向と看護
   1 医療の動向
   2 看護の目標
  B 患者の特徴と看護の役割
   1 身体的な問題とその援助
   2 心理・社会的な問題とその援助
   3 家族への援助

 第2章 自己免疫疾患とその機序 (川口鎮司)
  A 膠原病と自己免疫疾患
  B 自己免疫と免疫トレランス
   1 自己と非自己の区別
   2 免疫トレランス
  C 自己免疫疾患の分類
   1 臓器特異的自己免疫疾患と臓器非特異的自己免疫疾患
   2 自己抗体関連自己免疫疾患と細胞性自己免疫疾患

 第3章 症状とその病態生理 (川口鎮司)
  A 関節痛・関節炎
  B レイノー現象
  C 皮膚・粘膜症状
  D 発熱
  E 呼吸器症状
  F 精神神経症状
  G 筋痛・筋力低下

 第4章 検査と治療 (川口鎮司)
  A 膠原病の診断の流れ
  B 検査
   1 一般検査
   2 血清・免疫学的検査
   3 その他の検査
  C 治療
   1 膠原病の治療の目標
   2 生活習慣の改善
   3 薬物療法
   4 膠原病治療と妊娠

 第5章 疾患の理解 (川口鎮司)
  A 本章で学ぶ膠原病
  B 関節リウマチ(RA)
  C 全身性エリテマトーデス(SLE)
  D 抗リン脂質抗体症候群
  E シェーグレン症候群
  F 全身性強皮症
  G 多発筋炎・皮膚筋炎
  H 混合性結合組織病
  I ベーチェット病
  J 血管炎症候群
  K リウマチ性多発筋痛症
  L 成人発症スチル病

 第6章 患者の看護 (石渡由貴)
  A 疾患をもつ患者の経過と看護
  B 症状に対する看護
   1 発熱のある患者の看護
   2 関節症状のある患者の看護
   3 皮膚・粘膜症状のある患者の看護
   4 筋症状のある患者の看護
  C 検査を受ける患者の看護
  D 薬物療法を受ける患者の看護
  E 疾患をもつ患者の看護
   1 関節リウマチ患者の看護
   2 全身性エリテマトーデス(SLE)患者の看護
   3 全身性強皮症患者の看護
   4 多発筋炎・皮膚筋炎患者の看護
   5 血管炎症候群患者の看護

 第7章 事例による看護過程の展開 (石渡由貴)
  A 全身性エリテマトーデス患者の看護
   1 患者についての情報
   2 看護過程の展開
   3 事例のふり返り

●感染症
 序章 この本で学ぶこと (松浦江美・寺坂陽子)
  感染症をもつ患者の姿
  本書の構成マップ

 第1章 感染症患者の看護を学ぶにあたって (寺坂陽子)
  A 医療の動向と看護
   1 医療の動向
   2 看護の目標
  B 患者の特徴と看護の役割
   1 身体的な問題とその援助
   2 心理・社会的な問題とその援助

 第2章 感染の成立と感染予防 (泉川公一・芦澤信之・井手昇太郎・古本朗嗣)
  A 感染症の成立
   1 感染の原因と成立
   2 感染症の経過
   3 感染症による組織障害
  B 市中感染と医療関連感染
   1 市中感染と感染流行
   2 医療関連感染(院内感染),医療器具関連感染,職業感染
   3 感染症サーベイランス
   4 感染管理
  C 新興・再興感染症と輸入感染症
   1 新興・再興感染症
   2 輸入感染症
  D 感染症に関する法律
   1 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)
   2 予防接種法
   3 学校保健安全法
   4 検疫法
  E 感染予防と予防接種
   1 予防接種総論
   2 予防接種各論

 第3章 症状・所見 (田中健之)
  A 発熱・不明熱
  B 各臓器にみられる特徴的な症状・所見
   1 咳嗽・喀痰
   2 腹痛
   3 下痢
   4 意識障害
   5 頭痛
   6 皮膚症状

 第4章 検査と治療 (田中健之・田代将人)
  A 感染症の診療の流れ
   1 感染症の診断・治療の原則
   2 問診・検査・診断・治療の流れ
   3 薬剤耐性菌と抗微生物薬の適正使用
  B 検査
   1 塗抹・培養検査,薬剤感受性検査
   2 抗原検査
   3 抗体検査
   4 毒素検査
   5 寄生虫検査
   6 核酸増幅検査
   7 画像検査
   8 感染症の検査における偽陽性と偽陰性
  C 治療
   1 抗菌薬
   2 抗真菌薬
   3 抗ウイルス薬
   4 抗寄生虫薬
   5 その他の治療法

 第5章 疾患の理解 (井手昇太郎・古本朗嗣・田中健之・田代将人・芦澤信之・柿内聡志・泉川公一)
  A 本章で学ぶ感染症
  B 感染症総論
   1 呼吸器感染症の特徴
   2 頭頸部にみられる感染症の特徴
   3 消化器感染症の特徴
   4 尿路・生殖器の感染症の特徴
   5 脳・神経系の感染症の特徴
   6 菌血症・敗血症
   7 日和見感染症
   8 動物由来感染症
   9 医療関連感染
  C 感染症各論
   1 ウイルス感染症
   2 細菌感染症
   3 真菌感染症
   4 寄生虫感染症

 第6章 患者の看護 (松浦江美・寺坂陽子・黒田裕美)
  A 疾患をもつ患者の経過と看護
  B 症状に対する看護
   1 発熱のある患者の看護
   2 咳嗽・喀痰のある患者の看護
   3 嘔吐・下痢のある患者の看護
   4 尿に異常がみられる患者の看護
  C 検査を受ける患者の看護
  D 治療を受ける患者の看護
   1 抗菌薬投与中の患者の看護
   2 デバイスによる治療を受けている患者の看護と感染予防
   3 疾患に伴い隔離が必要な患者の看護
  E 疾患をもつ患者の看護
   1 カテーテル関連尿路感染(CAUTI)患者の看護
   2 敗血症患者の看護
   3 肺結核患者の看護
   4 HIV感染症患者の看護

 第7章 事例による看護過程の展開 (黒田裕美・寺坂陽子)
  A 肺結核により隔離入院となった患者の看護
   1 患者についての情報
   2 看護過程の展開
   3 事例のふり返り

巻末資料 定期予防接種スケジュール (古本朗嗣)
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