成人看護学[10]
運動器 第16版
もっと見る
- 第2〜5章では記述を整理し、運動器疾患の病態が分かりやすくなるよう多数の図版の追加・刷新を行いました。第6章では、動画を中心に、実習にも活かせる内容が充実しています。
- 序章および第6章A節では、骨折と関節リウマチ患者の事例により患者像をイメージできるよう工夫しています。事例をもとに、運動器領域における急性期の看護と、慢性期の看護を学習できるようにしています。
- 第6章B節では、運動器領域の患者の看護で基本となる技術を動画で解説しています。早期離床を目ざす際に重要となる、寝返りから起立、車椅子への移乗の介助のほか、杖による歩行様式についても動画で学習ができます。
- さらに、第6章F節では、人工股関節置換術後の患者や、腰椎椎間板ヘルニア患者、膝関節疾患をもつ患者の看護について、起立・着座動作の介助方法や脱臼肢位を防ぐ介助方法、装具の着用などについて動画で解説をしています。
- 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 序文
- 目次
序文
開く
はしがき
発刊の趣旨
1967年から1968年にかけて行われた看護学校教育課程の改正に伴って,新しく「成人看護学」という科目が設けられた。
本教科のねらいとするところは,「看護の基礎理論としての知識・技術・態度を理解し,これを応用することによって,病気をもつ人の世話あるいは健康の維持・増進を実践・指導し,看護の対象であるあらゆる人の,あらゆる状態に対応していくことができる」という,看護の基本的な理念を土台として,「成人」という枠組みの対象に対する看護を学ぶことにある。
したがって,看護を,従来のように診療における看護といった狭い立場からではなく,保健医療という幅広い視野のなかで健康の保持・増進という視点においてとらえ,一方,疾患をもった患者に対しては,それぞれの患者が最も必要としている援助を行うという看護本来のあり方に立脚して学習しなければならない。
本書「成人看護学」は,以上のような考え方を基礎として編集されたものである。
まず「成人看護学総論」においては,成人各期の特徴を学び,対象である成人が,どのような状態のもとで正常から異常へと移行していくのか,またそれを予防し健康を維持していくためには,いかなる方策が必要であるかを学習し,成人の全体像と成人看護の特質をつかむことをねらいとしている。
以下,「成人看護学」の各巻においては,成人というものの概念を把握したうえで,人間の各臓器に身体的あるいは精神的な障害がおこった場合に,その患者がいかなる状態におかれるかを理解し,そのときの患者のニードを満たすためにはどのようにすればよいかを,それぞれの系統にそって学習することをねらいとしている。
したがって,「成人看護学」の学習にあたっては,従来のように診療科別に疾病に関する知識を断片的に習得するのではなく,種々の障害をあわせ持つ可能性のある1人ひとりの人間,すなわち看護の対象としての人間のあらゆる変化に対応できる知識・技術・態度を学びとっていただきたい。
このような意味において,学習者は対象の健康生活上の目標達成のために,より有効な援助ができるような知識・技術を養い,つねに研鑽を続けていかなければならない。
以上の趣旨のもとに,金子光・小林冨美栄・大塚寛子によって編集された「成人看護学」であるが,日進月歩をとげる医療のなかで,本書が看護学の確立に向けて役だつことを期待するものである。
カリキュラムの改正
わが国の看護・医療を取り巻く環境は,急速な少子高齢化の進展や,慢性疾患の増加などの疾病構造の変化,医療技術の進歩,看護業務の複雑・多様化,医療安全に関する意識の向上など,大きく変化してきた。それに対応するために,看護教育のカリキュラムは,1967年から1968年の改正ののち,1989年に全面的な改正が行われ,1996年には3年課程,1998年には2年課程が改正された。さらに2008年,2020年にも大きく改正され,看護基礎教育の充実がはかられるとともに,臨床実践能力の強化が盛り込まれてきた。
改訂の趣旨
今回の「成人看護学」の改訂では,カリキュラム改正の意図を吟味するとともに,1999年に発表され,直近では2022年に改定された「看護師国家試験出題基準」の内容をも視野に入れ,内容の刷新・強化をはかった。また,日々変化する実際の臨床に即し,各系統において統合的・発展的な学習がともに可能となるように配慮した。
序章「この本で学ぶこと」では,事例を用いて,これから学ぶ疾患をかかえた患者の姿を示した。また,本書で扱われている内容およびそれぞれの項目どうしの関係性が一見して把握できるように,「本書の構成マップ」を設けている。
第1章「運動器の看護を学ぶにあたって」では,系統別の医療の動向と看護を概観したあと,患者の身体的,心理・社会的特徴を明確にし,看護上の問題とその特質に基づいて,看護の目的と機能が具体的に示されている。
第2~5章では,疾患とその医学的対応という視点から,看護の展開に必要とされる医学的な基礎知識が選択的に示されている。既習知識の統合化と臨床医学の系統的な学習のために,最新の知見に基づいて解説されている。今改訂では第5章の冒頭に「A.本章で学ぶ運動器疾患」を新設し,第5章で学習する疾患の全体像をつかめるように工夫をこらした。
第6章「患者の看護」では,第1~5章の学習に基づいて,経過別,症状別,検査および治療・処置別,疾患別に看護の実際が提示されている。これらを看護過程に基づいて展開することにより,患者の有する問題が論理的・総合的に理解できるように配慮されている。とくに経過別については「A.疾患をもつ患者の経過と看護」として,事例を用いて患者の姿と看護を経過別に示すとともに,それらの看護と,疾患別の看護などとの関係を示してある。
第7章「事例による看護過程の展開」では,1~3つの事例を取り上げ,看護過程に基づいて看護の実際を展開している。患者の有するさまざまな問題を提示し,看護の広がりと問題解決の過程を具体的に学習できるようにしている。
また,昨今の学習環境の変化に対応するために,成人看護学においても積極的に動画教材を用意し,理解を促すようにした。
巻末には適宜付録を設け,各系統別に必要となる知識を整理し,学習の利便性の向上をはかっている。
今回の改訂によって看護の学習がより効果的に行われ,看護実践能力の向上,ひいては看護の質的向上に資することをせつに望むものである。ご活用いただき,読者の皆さんの忌憚のないご意見をいただければ幸いである。
2024年11月
著者ら
目次
開く
序章 この本で学ぶこと (横井郁子)
運動器疾患をもつ患者の姿
本書の構成マップ
第1章 運動器の看護を学ぶにあたって (横井郁子)
A 医療の動向と看護
1 医療の動向
2 運動器疾患患者の概況と看護
B 患者の特徴と看護の役割
1 身体的な問題とその援助
2 心理・社会的な問題とその援助
第2章 運動器の構造と機能 (田中栄・松本卓巳)
A 骨
1 骨の機能および形態・種類
2 骨の構造と組成
3 骨の形成と再生
4 骨形成と骨吸収,骨の再造形(リモデリング)
B 関節
1 関節の構造
2 関節の機能
C 神経と筋
1 神経の構造と機能
2 筋の構造と機能
D 腱と靱帯
1 腱の構造と機能
2 靱帯の構造と機能
第3章 症状とその病態生理 (田中栄・松本卓巳)
A 疼痛
1 疼痛の種類
2 疼痛の評価法
3 器官による疼痛の分類
4 疼痛のおこり方
B 形態の異常
1 形態異常の分類
2 機能的要因別にみた変形
3 部位別にみた変形
C 関節運動の異常
1 関節拘縮
2 強直
3 動揺関節
D 神経の障害
1 運動麻痺
2 感覚障害
E 跛行(異常歩行)
F 筋の障害
G その他の障害
第4章 診断・検査と治療・処置 (田中栄・松本卓巳)
A 診察・診断の流れ
1 問診
2 視診・触診
3 神経診察
B 検査
1 画像検査
2 電気生理学的検査
3 その他の検査
C 治療・処置
1 保存療法(非観血的治療)
2 リハビリテーション医療
3 手術療法
4 義肢と装具
第5章 疾患の理解 (田中栄・松本卓巳)
A 本章で学ぶ運動器疾患
B 骨折
1 骨折の分類
2 骨折による転位
3 骨折治癒の病態生理
4 骨折のもたらす症状
5 骨折の診断
6 骨折の治療
7 各種の骨折
C 脱臼
1 脱臼の概要
2 各種の脱臼
D 捻挫および打撲
1 捻挫
2 打撲
E 神経の損傷
1 脊髄損傷
2 末梢神経損傷
F 筋・腱・靱帯などの損傷
1 筋断裂
2 アキレス腱断裂
3 手の外傷
4 手指の腱断裂
5 膝内障
6 筋区画症候群
G 先天性疾患
1 先天性筋性斜頸
2 発育性股関節形成不全
3 先天性内反足
4 骨系統疾患
5 その他の先天性疾患
H 骨と関節の炎症性疾患・変性疾患
1 骨・関節の感染症
2 関節リウマチとその類縁疾患
3 変形性関節症
I 骨腫瘍および軟部腫瘍
1 良性骨腫瘍
2 悪性骨腫瘍
3 良性軟部腫瘍
4 悪性軟部腫瘍
5 滑膜骨軟骨腫症
J 代謝性骨疾患
1 骨粗鬆症
2 くる病・骨軟化症
3 副甲状腺機能亢進症
4 骨パジェット病
5 慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常
K 腱の疾患
1 ばね指
2 腱鞘炎
3 デュピュイトラン拘縮
4 上腕骨上顆炎
5 アキレス腱周囲炎
6 ガングリオン
L 神経・筋疾患
1 脳性麻痺
2 急性脊髄前角炎(急性灰白髄炎,ポリオ)
3 末梢性ニューロパチー
4 複合性局所疼痛症候群(CRPS)
5 進行性神経障害
6 筋ジストロフィー
M 上肢および上肢帯の疾患
1 頸肩腕症候群
2 胸郭出口症候群
3 肩関節周囲炎
4 離断性骨軟骨炎
5 腱板断裂
6 月状骨軟化症
N 脊椎の疾患
1 変形性脊椎症
2 頸椎症性神経根症,頸椎症性脊髄症
3 腰部脊柱管狭窄症
4 脊柱靱帯骨化症
5 椎間板ヘルニア
6 脊椎分離症および脊椎すべり症
7 骨粗鬆症性椎体骨折
8 二分脊椎(脊椎披裂)
9 脊髄腫瘍
10 脊椎の姿勢異常
11 腰痛
O 下肢および下肢帯の疾患
1 骨端症(骨端炎)
2 大腿骨頭壊死症
4 大腿骨頭すべり症
5 滑液包炎
6 扁平足
7 外反母趾
P 運動器不安定症とロコモティブシンドローム
Q フレイルとサルコペニア
第6章 患者の看護 (横井郁子・藤野秀美・草刈由美子・熊木晴美・小林優子・若命真裕子・髙橋雅人・中平有)
A 疾患をもつ患者の経過と看護
1 大腿骨骨幹部骨折患者の経過と看護
2 関節リウマチ患者の経過と看護
B 症状に対する看護
1 疼痛のある患者の看護
2 循環・神経障害のある患者の看護
3 脱臼をおこした患者の看護
4 捻挫をおこした患者の看護
5 骨折を伴う外傷により出血性ショックをおこした患者の看護
6 運動器に感染をおこした患者の看護
C 検査を受ける患者の看護
1 単純X線検査を受ける患者の看護
2 CT検査を受ける患者の看護
3 MRIを受ける患者の看護
4 脊髄造影検査を受ける患者の看護
5 関節造影検査を受ける患者の看護
6 超音波検査を受ける患者の看護
D 治療を受ける患者の看護
1 保存療法を受ける患者の看護
2 手術を受ける患者の看護
3 義肢・装具を使用する患者の看護
E 疾患をもつ患者の看護
1 変形性股関節症患者の看護
2 腰椎椎間板ヘルニア患者の看護
3 脊髄損傷患者の看護
4 骨腫瘍患者の看護
5 関節リウマチ患者の看護
6 前十字靱帯断裂患者の看護
7 変形性膝関節症患者の看護
F ADLの自立を目ざすための術後の援助
1 手術部位の関節可動域の維持・拡大と筋力訓練
2 ADLの自立に向けた,残存機能をいかした援助
第7章 事例による看護過程の展開 (小林優子・熊木晴美)
A 変形性股関節症患者の看護
1 患者についての情報
2 看護過程の展開
3 退院指導
4 事例のふり返り
B 脊髄損傷患者の退院支援・調整
1 患者についての情報
2 看護過程の展開
3 事例の振り返り
動画一覧
索引
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。