成人看護学[5]
消化器 第16版

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  • 最新の知見を反映するとともに、図表や構成を見直し、初学者にも理解しやすいテキストを目ざしました。腹部膨満感、吐きけ・嘔吐、便秘のある患者の看護、開腹手術後の患者の看護やストーマ装具交換など、実践につながる動画も新規収載しています。
  • 序章では肝硬変と食道静脈瘤のある患者を取りあげ、第1章では消化器疾患に関する医療の動向と患者の特徴、看護の役割について俯瞰。学習の導入として本書の対象とする患者像をイメージできるようにしています。
  • 第2章では各消化器官の構造と機能を、わかりやすい図を用いて示しています。また第3章では各消化器症状のおこるメカニズムをチャート図などにより可視化し、視覚的に理解できるようにしています。
  • 第4章・第5章では、消化器疾患をもつ患者の看護の展開に必要とされる、検査・治療・処置、疾患についての最新知識をわかりやすく解説。最新のガイドラインや診療指針にも対応し、記述を刷新しています。
  • 第6章では、冒頭で大腸がん患者の事例を用いて経過ごとに求められる看護のポイントをおさえ、そこからさまざまな消化器疾患患者の看護について看護過程の流れに沿った実践的な記述で学ぶことができます。
  • 第7章では「胃がんで手術を受ける患者の看護」と「肝硬変症患者の看護」の事例をもとに、より具体的な患者像を対象とした看護過程の展開を学びます。
  • 特論「ストーマケア」では、ストーマケアに関する看護について詳述しています。
  • 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 系統看護学講座-専門分野
執筆 南川 雅子 / 正岡 建洋 / 宮島 伸宜 / 齋藤 英胤 / 金田 智 / 塩見 英佑 / 渡邊 千登世 / 中村 威 / 古畑 智久 / 海老沼 浩利 / 河地 茂行 / 宮澤 光男 / 三ッ井 圭子 / 角田 こずえ / 棟久 恭子
発行 2024年01月判型:B5頁:512
ISBN 978-4-260-05300-6
定価 3,080円 (本体2,800円+税)

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はしがき

発刊の趣旨
 1967年から1968年にかけて行われた看護学校教育課程の改正に伴って,新しく「成人看護学」という科目が設けられた。
 本教科のねらいとするところは,「看護の基礎理論としての知識・技術・態度を理解し,これを応用することによって,病気をもつ人の世話あるいは健康の維持・増進を実践・指導し,看護の対象であるあらゆる人の,あらゆる状態に対応していくことができる」という,看護の基本的な理念を土台として,「成人」という枠組みの対象に対する看護を学ぶことにある。
 したがって,看護を,従来のように診療における看護といった狭い立場からではなく,保健医療という幅広い視野のなかで健康の保持・増進という視点においてとらえ,一方,疾患をもった患者に対しては,それぞれの患者が最も必要としている援助を行うという看護本来のあり方に立脚して学習しなければならない。
 本書「成人看護学」は,以上のような考え方を基礎として編集されたものである。
 まず「成人看護学総論」においては,成人各期の特徴を学び,対象である成人が,どのような状態のもとで正常から異常へと移行していくのか,またそれを予防し健康を維持していくためには,いかなる方策が必要であるかを学習し,成人の全体像と成人看護の特質をつかむことをねらいとしている。
 以下,「成人看護学」の各巻においては,成人というものの概念を把握したうえで,人間の各臓器に身体的あるいは精神的な障害がおこった場合に,その患者がいかなる状態におかれるかを理解し,そのときの患者のニーズを満たすためにはどのようにすればよいかを,それぞれの系統にそって学習することをねらいとしている。
 したがって,「成人看護学」の学習にあたっては,従来のように診療科別に疾病に関する知識を断片的に習得するのではなく,種々の障害をあわせもつ可能性のある1人ひとりの人間,すなわち看護の対象としての人間のあらゆる変化に対応できる知識・技術・態度を学びとっていただきたい。
 このような意味において,学習者は対象の健康生活上の目標達成のために,より有効な援助ができるような知識・技術を養い,つねに研鑽を続けていかなければならない。
 以上の趣旨のもとに,金子光・小林冨美栄・大塚寛子によって編集された「成人看護学」であるが,日進月歩をとげる医療のなかで,本書が看護学の確立に向けて役だつことを期待するものである。

カリキュラムの改正
 わが国の看護・医療を取り巻く環境は,急速な少子高齢化の進展や,慢性疾患の増加などの疾病構造の変化,医療技術の進歩,看護業務の複雑・多様化,医療安全に関する意識の向上など,大きく変化してきた。それに対応するために,看護教育のカリキュラムは,1967年から1968年の改正ののち,1989年に全面的な改正が行われ,1996年には3年課程,1998年には2年課程が改正された。さらに2008年,2020年にも大きく改正され,看護基礎教育の充実がはかられるとともに,臨床実践能力の強化が盛り込まれてきた。

改訂の趣旨
 今回の「成人看護学」の改訂では,カリキュラム改正の意図を吟味するとともに,1999年に発表され,直近では2022年に改定された「看護師国家試験出題基準」の内容をも視野に入れ,内容の刷新・強化をはかった。また,日々変化する実際の臨床に即し,各系統において統合的・発展的な学習がともに可能となるように配慮した。
 序章「この本で学ぶこと」では,事例を用いて,これから学ぶ疾患をかかえた患者の姿を示した。また,本書で扱われている内容およびそれぞれの項目どうしの関係性が一見して把握できるように,「本書の構成マップ」を設けている。
 第1章「消化器の看護を学ぶにあたって」では,系統別の医療の動向と看護を概観したあと,患者の身体的,心理・社会的特徴を明確にし,看護上の問題とその特質に基づいて,看護の目的と機能が具体的に示されている。
 第2~5章では,疾患とその医学的対応という視点から,看護の展開に必要とされる医学的な基礎知識が選択的に示されている。既習知識の統合化と臨床医学の系統的な学習のために,最新の知見に基づいて解説されている。今改訂では第5章の冒頭に「A.本章で学ぶ消化器疾患」を新設し,第5章で学習する疾患の全体像をつかめるように工夫をこらした。
 第6章「患者の看護」では,第1~5章の学習に基づいて,経過別,症状別,検査および治療・処置別,疾患別に看護の実際が提示されている。これらを看護過程に基づいて展開することにより,患者の有する問題が論理的・総合的に理解できるように配慮されている。とくに経過別については「A.疾患をもつ患者の経過と看護」として,事例を用いて患者の姿と看護を経過別に示すとともに,それらの看護と,疾患別の看護などとの関係を示してある。
 第7章「事例による看護過程の展開」では,1~3つの事例を取り上げ,看護過程に基づいて看護の実際を展開している。患者の有するさまざまな問題を提示し,看護の広がりと問題解決の過程を具体的に学習できるようにしている。
 また,昨今の学習環境の変化に対応するために,成人看護学においても積極的に動画教材を用意し,理解を促すようにした。
 巻末には適宜付録を設け,各系統別に必要となる知識を整理し,学習の利便性の向上をはかっている。
 今回の改訂によって看護の学習がより効果的に行われ,看護実践能力の向上,ひいては看護の質的向上に資することをせつに望むものである。ご活用いただき,読者の皆さんの忌憚のないご意見をいただければ幸いである。

 2023年11月
 著者ら

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序章 この本で学ぶこと (南川雅子)
 消化器疾患をもつ患者の姿
 本書の構成マップ

第1章 消化器の看護を学ぶにあたって (南川雅子)
  A 医療の動向と看護
   1 患者の動向と看護
   2 治療の動向と看護
  B 患者の特徴と看護の役割
   1 身体的な特徴とその援助
   2 心理・社会的な特徴とその援助
   3 患者・家族への援助

第2章 消化器の構造と機能 (正岡建洋・宮島伸宜・齋藤英胤)
  A 食道の構造と機能
   1 食道の構造
   2 食道の機能
  B 胃・十二指腸の構造と機能
   1 胃・十二指腸の構造
   2 胃・十二指腸の機能
  C 小腸・大腸の構造と機能
   1 小腸の構造
   2 大腸の構造
   3 小腸・大腸の機能
  D 直腸・肛門の構造と機能
   1 直腸・肛門管の構造
   2 直腸・肛門の機能
  E 肝臓の構造と機能
   1 肝臓の構造
   2 肝臓の機能
   3 胆汁の組成とビリルビン代謝
  F 胆道系の構造と機能
   1 胆道の構造と機能
   2 胆嚢の構造と機能
  G 膵臓の構造と機能
   1 膵臓の構造
   2 膵臓の機能

第3章 症状とその病態生理 (正岡建洋・齋藤英胤)
  A 嚥下困難
  B おくび・胸焼け
  C 吐きけ・嘔吐
  D 腹痛
  E 吐血・下血
  F 下痢
  G 便秘
  H 腹部膨満
  I 食欲不振と体重減少
  J 腹水
  K 黄疸
  L 肝性脳症

第4章 検査と治療 (正岡建洋・齋藤英胤・金田智・塩見英佑・渡邊千登世・中村威)
  A 診察と診断の流れ
   1 視診
   2 聴診
   3 打診
   4 触診
   5 直腸診
  B 検査
   1 食道内圧測定検査
   2 糞便検査
   3 肝機能検査
   4 膵外分泌機能検査
   5 超音波検査
   6 内視鏡検査
   7 肝生検
   8 放射線検査
   9 X線コンピュータ断層像(X線CT)
   10 磁気共鳴画像(MRI)
   11 シンチグラフィー
   12 陽電子放射断層撮影(PET)
  C 治療
   1 薬物療法
   2 栄養療法・食事療法
   3 手術療法
   4 放射線療法
   5 放射線カテーテル治療

第5章 疾患の理解 (正岡建洋・中村威・古畑智久・宮島伸宜・海老沼浩利・河地茂行・宮澤光男)
  A 本章で学ぶ消化器疾患
  B 食道の疾患
   1 胃食道逆流症(GERD)
   2 食道アカラシア
   3 食道がん
  C 胃・十二指腸疾患
   1 機能性ディスペプシア
   2 胃炎
   3 胃・十二指腸潰瘍
   4 胃がん
  D 腸および腹膜疾患
   1 過敏性腸症候群(IBS)
   2 慢性便秘症
   3 腸炎
   4 腹膜炎
   5 虫垂炎
   6 ヘルニア
   7 腸閉塞症,イレウス
   8 消化管憩室
   9 大腸ポリープおよびポリポーシス
   10 大腸がん
   11 肛門疾患
  E 肝臓・胆囊の疾患
   1 肝炎
   2 肝硬変症
   3 自己免疫性肝疾患
   4 門脈圧亢進症
   5 肝不全
   6 肝(臓)がん
   7 胆石症
   8 急性胆囊炎および胆管炎
   9 胆囊ポリープ
   10 胆道がん
  F 膵臓の疾患
   1 膵(臓)炎
   2 膵(臓)がん
  G 急性腹症
  H 腹部外傷
  I 寄生虫疾患

第6章 患者の看護 (南川雅子・三ツ井圭子・角田こずえ・棟久恭子・渡邊千登世)
 I 疾患をもつ患者の経過と看護
 II 症状に対する看護
   1 嚥下困難のある患者の看護
   2 おくび・胸焼けのある患者の看護
   3 吐きけ・嘔吐のある患者の看護
   4 腹痛のある患者の看護
   5 吐血・下血のある患者の看護
   6 下痢のある患者の看護
   7 便秘のある患者の看護
   8 腹部膨満のある患者の看護
   9 食欲不振と体重減少のある患者の看護
   10 黄疸のある患者の看護
   11 肝性脳症のある患者の看護
 III 検査を受ける患者の看護
   1 腹部超音波検査を受ける患者の看護
   2 CT・MRI検査を受ける患者の看護
   3 肝生検を受ける患者の看護
   4 消化器内視鏡検査を受ける患者の看護
   5 造影検査を受ける患者の看護
 IV 治療を受ける患者の看護
  A 薬物療法を受ける患者の看護
  B 化学療法を受ける患者の看護
  C 栄養療法・食事療法を受ける患者の看護
  D 手術療法を受ける患者の看護
   1 内視鏡手術を受ける患者の看護
   2 開腹手術を受ける患者の看護
  E 胃瘻・空腸瘻造設患者の看護
  F 放射線療法を受ける患者の看護
 V 疾患をもつ患者の看護
  A 食道疾患患者の看護
   1 胃食道逆流症患者の看護
   2 食道がん患者の看護
  B 胃・十二指腸疾患患者の看護
   1 胃・十二指腸潰瘍患者の看護
   2 胃がん患者の看護
  C 腸・腹膜疾患患者の看護
   1 潰瘍性大腸炎患者の看護
   2 クローン病患者の看護
   3 急性腹膜炎患者の看護
   4 虫垂炎患者の看護
   5 ヘルニアで手術を受ける患者の看護
   6 腸閉塞症・イレウスで保存的治療を受ける患者の看護
   7 腸閉塞症で手術を受ける患者の看護
   8 大腸がん(結腸がん・直腸がん)患者の看護
  D 肝臓・胆囊疾患患者の看護
   1 急性肝炎患者の看護
   2 慢性肝炎患者の看護
   3 肝硬変症患者の看護
   4 食道静脈瘤の破裂した患者の看護
   5 肝(臓)がん患者の看護
   6 肝臓の手術を受ける患者の看護
   7 胆囊炎患者の看護
   8 胆石発作が生じている患者の看護
   9 胆道の手術を受ける患者の看護
   10 胆汁ドレナージを受ける患者の看護
  E 膵臓疾患患者の看護
   1 急性膵炎患者の看護
   2 慢性膵炎患者の看護
   3 膵(臓)がん患者の看護
   4 膵臓の手術を受ける患者の看護

第7章 事例による看護過程の展開 (三ツ井圭子・棟久恭子)
  A 胃がんで手術を受ける患者の看護
   1 患者についての情報
   2 看護過程の展開
   3 事例のふり返り
  B 肝硬変症患者の看護
   1 患者についての情報
   2 看護過程の展開
   3 事例のふり返り

特論 ストーマケア (渡邊千登世)
  A ストーマ造設術の概要
   1 消化管ストーマの分類
   2 ストーマ造設を必要とする疾患
  B 手術前の看護
   1 術前の心理的支援
   2 術前のアセスメント
   3 術前オリエンテーション
   4 ストーマサイト-マーキング
   5 パッチテスト
  C 手術後の看護
   1 術後の心理的支援
   2 術後の看護と術後合併症
   3 ストーマとストーマ周囲皮膚の観察
   4 ストーマ周囲の皮膚障害とスキンケア
   5 ストーマ装具の選択
  D 回復期の看護
   1 情報収集とアセスメント
   2 ストーマ装具交換のセルフケア指導
   3 排尿障害への援助
   4 ストーマ造設術後の日常生活についての援助

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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