成人看護学[8]
腎・泌尿器 第16版

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  • 体液調整機能・排泄機能を担う腎・泌尿器の構造と機能から、疾患によってそれらが障害された際の検査・治療そして看護まで、必要十分な内容をカラーの紙面でわかりやすくまとめています。
  • 序章「この本で学ぶこと」は、本書の対象とする患者像と学習内容をより具体的にイメージできるよう配慮しました。
  • 第1章「看護を学ぶにあたって」では、腎・泌尿器疾患に関する医療の動向と看護、患者の特徴と看護の役割について、簡潔にふれています。
  • 第2章から第5章では、腎・泌尿器疾患をもつ患者の看護の展開に必要とされる医学的な知識をわかりやすく解説しました。最新のガイドラインや診療指針にも対応して、全体的に記述を刷新しています。
  • 第6章では、まず「疾患をもつ患者の経過と看護」において事例をもとに経過別の看護の基礎を学んだのち、看護過程の流れにそった実際的な記述で、腎・泌尿器領域の「症状に対する看護」「検査を受ける患者の看護」および「内科的治療」と「泌尿器科的治療」を受ける患者の看護について学びます。さらに第7章では、事例をもとにより具体的な患者像を対象とした看護過程の展開を学びます。
  • 第5章の冒頭に、腎・泌尿器疾患の全体像の概説を、第6章に腎・泌尿器領域における看護技術とセルフケア指導の動画を新たに加えました。
  • 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。

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  • 序文
  • 目次

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はしがき

発刊の趣旨
 1967年から1968年にかけて行われた看護学校教育課程の改正に伴って,新しく「成人看護学」という科目が設けられた。
 本教科のねらいとするところは,「看護の基礎理論としての知識・技術・態度を理解し,これを応用することによって,病気をもつ人の世話あるいは健康の維持・増進を実践・指導し,看護の対象であるあらゆる人の,あらゆる状態に対応していくことができる」という,看護の基本的な理念を土台として,「成人」という枠組みの対象に対する看護を学ぶことにある。
 したがって,看護を,従来のように診療における看護といった狭い立場からではなく,保健医療という幅広い視野のなかで健康の保持・増進という視点においてとらえ,一方,疾患をもった患者に対しては,それぞれの患者が最も必要としている援助を行うという看護本来のあり方に立脚して学習しなければならない。
 本書「成人看護学」は,以上のような考え方を基礎として編集されたものである。
 まず「成人看護学総論」においては,成人各期の特徴を学び,対象である成人が,どのような状態のもとで正常から異常へと移行していくのか,またそれを予防し健康を維持していくためには,いかなる方策が必要であるかを学習し,成人の全体像と成人看護の特質をつかむことをねらいとしている。
 以下,「成人看護学」の各巻においては,成人というものの概念を把握したうえで,人間の各臓器に身体的あるいは精神的な障害がおこった場合に,その患者がいかなる状態におかれるかを理解し,そのときの患者のニーズを満たすためにはどのようにすればよいかを,それぞれの系統にそって学習することをねらいとしている。
 したがって,「成人看護学」の学習にあたっては,従来のように診療科別に疾病に関する知識を断片的に習得するのではなく,種々の障害をあわせもつ可能性のある1人ひとりの人間,すなわち看護の対象としての人間のあらゆる変化に対応できる知識・技術・態度を学びとっていただきたい。
 このような意味において,学習者は対象の健康生活上の目標達成のために,より有効な援助ができるような知識・技術を養い,つねに研鑽を続けていかなければならない。
 以上の趣旨のもとに,金子光・小林冨美栄・大塚寛子によって編集された「成人看護学」であるが,日進月歩をとげる医療のなかで,本書が看護学の確立に向けて役だつことを期待するものである。

カリキュラムの改正
 わが国の看護・医療を取り巻く環境は,急速な少子高齢化の進展や,慢性疾患の増加などの疾病構造の変化,医療技術の進歩,看護業務の複雑・多様化,医療安全に関する意識の向上など,大きく変化してきた。それに対応するために,看護教育のカリキュラムは,1967年から1968年の改正ののち,1989年に全面的な改正が行われ,1996年には3年課程,1998年には2年課程が改正された。さらに2008年,2020年にも大きく改正され,看護基礎教育の充実がはかられるとともに,臨床実践能力の強化が盛り込まれてきた。

改訂の趣旨
 今回の「成人看護学」の改訂では,カリキュラム改正の意図を吟味するとともに,1999年に発表され,直近では2022年に改定された「看護師国家試験出題基準」の内容をも視野に入れ,内容の刷新・強化をはかった。また,日々変化する実際の臨床に即し,各系統において統合的・発展的な学習がともに可能となるように配慮した。
 序章「この本で学ぶこと」では,事例を用いて,これから学ぶ疾患をかかえた患者の姿を示した。また,本書で扱われている内容およびそれぞれの項目どうしの関係性が一見して把握できるように「本書の構成マップ」を設けている。
 第1章「腎・泌尿器の看護を学ぶにあたって」では,系統別の医療の動向と看護を概観したあと,患者の身体的,心理・社会的特徴を明確にし,看護上の問題とその特質に基づいて,看護の目的と機能が具体的に示されている。
 第2~5章では,疾患とその医学的対応という視点から,看護の展開に必要とされる医学的な基礎知識が選択的に示されている。既習知識の統合化と臨床医学の系統的な学習のために,最新の知見に基づいて解説されている。今改訂では第5章の冒頭に「A.本章で学ぶ腎・泌尿器疾患」を新設し,第5章で学習する疾患の全体像をつかめるように工夫をこらした。
 第6章「患者の看護」では,第1~5章の学習に基づいて,経過別,症状別,検査および治療・処置別,疾患別に看護の実際が提示されている。これらを看護過程に基づいて展開することにより,患者の有する問題が論理的・総合的に理解できるように配慮されている。とくに経過別については「A.疾患をもつ患者の経過と看護」として,事例を用いて患者の姿と看護を経過別に示すとともに,それらの看護と,疾患別の看護などとの関係を示してある。
 第7章「事例による看護過程の展開」では,1~3つの事例を取り上げ,看護過程に基づいて看護の実際を展開している。患者の有するさまざまな問題を提示し,看護の広がりと問題解決の過程を具体的に学習できるようにしている。
 また,昨今の学習環境の変化に対応するために,成人看護学においても積極的に動画教材を用意し,理解を促すようにした。
 巻末には適宜付録を設け,各系統別に必要となる知識を整理し,学習の利便性の向上をはかっている。
 今回の改訂によって看護の学習がより効果的に行われ,看護実践能力の向上,ひいては看護の質的向上に資することをせつに望むものである。ご活用いただき,読者の皆さんの忌憚のないご意見をいただければ幸いである。

 2023年11月
 著者ら

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序章 この本で学ぶこと (加藤恵里子)
 腎・泌尿器疾患をもつ患者の姿
 本書の構成マップ

第1章 腎・泌尿器の看護を学ぶにあたって (加藤恵里子)
 A 医療の動向と看護
  1 医療環境の変化と看護
  2 医療技術の進歩と課題
  3 腎移植の動向
 B 患者の特徴と看護の役割
  1 身体的な問題とその援助
  2 心理・社会的な問題とその援助
  3 セルフケア獲得に向けた患者・家族の支援

第2章 腎・泌尿器の構造と機能 (菅野義彦・大東貴志)
 A 腎臓の構造と機能
  1 腎臓の位置・構造
  2 腎臓の機能
 B 尿管の構造と機能
 C 膀胱の構造と機能
  1 膀胱の構造
  2 膀胱の機能
 D 尿道の構造と機能
 E 男性生殖器の構造と機能
  1 精巣の構造と機能
  2 精巣上体の構造と機能
  3 精管・精囊の構造と機能
  4 前立腺の構造と機能
  5 陰茎の構造と機能
  6 陰囊の構造と機能

第3章 症状とその病態生理 (徳山博文・宮嶋哲・武田利和)
 A 尿の異常
  1 尿量の異常
  2 色調の異常と混濁
  3 尿比重・尿浸透圧の異常
  4 尿のpHの異常
  5 タンパク尿
  6 尿糖
 B 排尿に関連した症状
  1 蓄尿症状
  2 排尿症状
  3 排尿後症状
  4 尿閉
 C 脱水
 D 尿毒症
 E 浮腫
 F 循環器系の異常
  高血圧
 G 血液の異常
  1 ネフローゼ症候群による血液の異常
  2 腎不全による血液の異常
  3 その他の腎疾患における血液の異常
 H 視力障害と眼底の変化
 I 疼痛
  1 病態からみた疼痛
  2 部位からみた疼痛
  3 動作に伴う疼痛
 J 腫脹・腫瘤
  1 腹部の腫脹・腫瘤
  2 陰囊部の腫瘤
  3 前立腺の腫瘤
 K 発熱
 L 精巣および性機能障害

第4章 検査と治療・処置 (武田利和・菅野義彦・宮嶋哲)
 A 診察
  1 病歴聴取
  2 診察法
 B 検査
  1 尿の検査
  2 分泌物検査
  3 腎機能検査
  4 画像検査
  5 経尿道的操作および内視鏡検査
  6 尿流動態検査(ウロダイナミックスタディ)
  7 生検
  8 性・生殖機能の検査
 C 治療と処置
  1 腎疾患の内科的治療の基本
  2 尿路感染症の治療
  3 手術療法
  4 腎・泌尿器がんの治療
 D 排尿管理
  1 清潔間欠導尿(CIC)
  2 排尿の自立訓練
 E 透析療法
  1 血液透析(HD)
  2 腹膜透析(PD)
  3 その他の血液浄化療法
 F 腎移植
  1 組織適合性試験
  2 手術と免疫抑制療法

第5章 疾患の理解 (菅野義彦・大東貴志・徳山博文・宮嶋哲・武田利和)
 A 本書で学ぶ腎・泌尿器疾患
  1 腎臓内科的疾患
  2 泌尿器科的疾患
 B 腎不全とAKI・CKD
  1 急性腎不全(ARF)
  2 急性腎障害(AKI)
  3 慢性腎不全(CRF)
  4 慢性腎臓病(CKD)
 C ネフローゼ症候群
 D 糸球体腎炎
  1 急性糸球体腎炎
  2 急速進行性糸球体腎炎(RPGN)
  3 慢性糸球体腎炎
 E 全身性疾患による腎障害
  1 糖尿病性腎症
  2 膠原病および近縁疾患による腎障害
  3 高尿酸血症に続発する腎障害,痛風腎
  4 アミロイド腎症
  5 多発性骨髄腫
  6 全身性感染症による糸球体障害
 F 尿細管間質性腎炎
 G 腎血管性病変
  1 高血圧性腎硬化症
  2 腎血管性高血圧
  3 腎梗塞
  4 腎静脈血栓症(RVT)
 H 尿細管機能異常
  1 ファンコーニ症候群
  2 腎性尿崩症
  3 遺伝性低尿酸血症による運動後急性腎不全
 I 妊娠高血圧症候群
 J 尿路・性器の感染症
  1 腎盂腎炎
  2 膿腎症
  3 腎周囲炎,腎周囲膿瘍
  4 膀胱炎
  5 尿道炎
  6 前立腺炎
  7 精巣上体炎
  8 精巣炎
  9 結核
  10 性感染症(STI)
 K 尿管の通過障害
  1 水腎症,水尿管症
  2 膀胱尿管逆流(VUR)
 L 排尿・蓄尿障害
  1 神経因性膀胱
  2 尿失禁
  3 前立腺肥大症(BPH)
 M 尿路損傷および異物
  1 腎損傷
  2 尿管損傷
  3 膀胱損傷
  4 尿道損傷
  5 膀胱・尿道異物
  6 陰茎折症
 N 尿路結石症
  1 腎結石症,尿管結石症
  2 膀胱結石症
  3 尿道結石症
 O 尿路・性器の腫瘍
  1 腎実質腫瘍
  2 腎盂および尿管がん
  3 膀胱がん
  4 尿道がん
  5 前立腺がん
  6 精巣腫瘍
  7 陰茎がん
 P 男性不妊症,男性性機能障害,その他の男性生殖器疾患
  1 男性不妊症
  2 男性性機能障害
  3 その他の男性生殖器疾患
 Q 発生・発育の異常
  1 先天性腎尿路異常(CAKUT)
  2 性分化疾患(DSD)

第6章 患者の看護 (内田智栄・杉本友紀・相良麻由・清瀧良子・菅原慈和子・山口伸子・富樫真利子・伊澤由香・佐藤篤史・平島麻衣子)
 A 疾患をもつ患者の経過と看護
  1 慢性腎不全をもつ患者の経過と看護
  2 前立腺がんをもつ患者の経過と看護
 B 症状に対する看護
  1 浮腫のある患者の看護
  2 高血圧のある患者の看護
  3 下部尿路症状のある患者の看護
  4 尿の性状異常のある患者の看護
  5 疼痛のある患者の看護
 C 検査を受ける患者の看護
  1 尿検査を受ける患者の看護
  2 残尿測定検査を受ける患者の看護
  3 膀胱鏡検査を受ける患者の看護
  4 画像検査を受ける患者の看護
  5 生検を受ける患者の看護
  6 尿流動態検査を受ける患者の看護
 D 治療・処置を受ける患者の看護
  1 食事療法・運動療法を受ける患者の看護
  2 薬物療法を受ける患者の看護
  3 導尿を受ける患者の看護
  4 カテーテルを留置する患者の看護
  5 放射線療法を受ける患者の看護
 E 疾患をもつ患者の看護
  1 IgA腎症患者の看護
  2 糖尿病性腎症患者の看護
  3 ネフローゼ症候群患者の看護
  4 腎硬化症患者の看護
  5 アミロイド腎症患者の看護
  6 炎症性疾患患者の看護
  7 多発性囊胞腎患者の看護
  8 急性腎障害患者の看護
  9 慢性腎臓病患者の看護
  10 腎がん患者の看護
  11 膀胱がん患者の看護
  12 前立腺がん患者の看護
  13 精巣がん患者の看護
  14 前立腺肥大症患者の看護
  15 尿路結石患者の看護
  16 性・生殖機能障害のある患者の看護
 F 透析療法を受ける患者の看護
  1 保存期から透析導入前(治療選択期)の患者の看護
  2 血液透析患者の看護
  3 腹膜透析患者の看護
  4 カテーテルによる血液透析を受ける患者の看護
  5 持続血液透析濾過を受ける患者の看護
 G 腎移植におけるドナーとレシピエントの看護
  1 ドナーの看護
  2 レシピエントの看護

第7章 事例による看護過程の展開 (平島麻衣子・今井亜矢子)
 A 糖尿病性腎症から透析導入となった患者の看護
  1 患者についての情報
  2 看護過程の展開
  3 まとめ
 B 前立腺全摘除術を受けた患者の看護
  1 患者についての情報
  2 看護過程の展開
  3 まとめ

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