臨床外科看護各論 第10版

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  • 本講座の専門分野「成人看護学」では、各臓器の疾患とその看護を系統別に記述しています。しかし、個々の疾患の病態像は同じでも、適用される治療は内科的治療と外科的治療で著しく異なります。外科看護は、手術という非常に厳しい手段を治療の主体とするため、十分な知識と技術が求められます。本書は、このような視点から外科看護の各論として発行されたものです。
  • 第10版では、臓器ごとに手術方法の記述を追加しました。イラストや術中写真を用いながら、手術の実際がわかるようにていねいに記述しています。看護面では、胃瘻造設術、ヘルニアの手術、脾臓摘出術、脊髄腫瘍摘出術、甲状腺がんの手術の患者の看護の項を新たに設けました。また、近年増えているロボット支援下手術の看護については、コラムで取り上げています。
  • 豊富な症例写真とイラストを掲載し、ビジュアル的にもよりわかりやすくなるよう工夫しています。
  • 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。

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はしがき

本書のねらい
 既存の「系統看護学講座」の多くは,「成人看護学」として,各臓器の疾患とその看護について系統的に詳しく解説されているのが一般的である。また,それらは1つの系統の疾患に対する病態生理,およびその治療および看護を,内科・外科の区別なく一貫して学習できるように記述されている。もちろん,これは学習方法としては,合理的な記載であると言える。個々の疾患の内科的な観点・外科的な観点からみた病態像や診断法はほぼ共通している。しかし適用される治療法については,内科的治療と外科的治療とでは,その内容は著しく異なってくることも稀ではない。とくに外科的治療においては,手術という侵襲的な方法を治療の主体とするために,これらの治療による合併症への不安や術後の苦痛をもたらし,患者にとって大きな負担となることは周知の事実である。さらに,手術によって引きおこされる生体反応は短期間に身体的に大きな変化を示すために,その処置と看護には適切な外科学の知識・技術,および豊富な経験が要求される。
 とくに近年,外科の各領域においてそれぞれが専門細分化して,低侵襲・個別化が手術の基本概念になっている。それゆえに各分野においてロボット支援手術を含む内視鏡下手術が主流となっている。その結果,医工・産学連携が推進され,各種の新しい手術器具が取り入れられている。
 現在の外科看護学では,個々の疾患の病態生理に対する深い理解と知識や,麻酔および手術による影響についての知識が要求される。さらに術後合併症の対応や患者の心理面・生活面の変化も十分に理解・認識し,それに迅速に対応できるよう必要な知識・技術を習得しておかなければならない。こうした姿勢が外科看護において極めて重要であると考えている。
 このような観点にたって編集したのが本書である。
 本書の執筆にあたった各筆者は,いずれも看護教育に対して豊富な経験をもち,前述のごとく現代における先進的外科看護学の必要性を十分に理解し,現代の外科診療に対応できる外科看護学書がぜひとも必要であると認識している医療者ばかりである。期せずして,これに賛同してくださった執筆者が集まり,本書の編集に着手した次第である。まさに時代のニーズにあった,先進的外科看護における需要と要求が本書を生み出したといってよいと思う。
 今日,看護に携わる者1人ひとりが,人々のヘルスニーズや健康問題,さらには健康問題に対する人間の反応を的確に判断する能力をもち,さらに倫理的態度,チーム医療・チームケアの質を高めていく職業的アイデンティティを確立することが,ますます求められてきている。
 外科看護を学ぶうえでの参考書あるいはテキストとして,別巻「臨床外科看護総論」と合わせてこの「臨床外科看護各論」を活用され,看護に必要な最先端の外科的疾患の病態と治療を理解し,患者が望む安心で安全な看護を行ううえでの基礎的知識を十分に身につけられることを願っている。また執筆にあたっては,ベッドサイドで実際に役だつ内容を,つねに念頭において記載されており,本書が臨床外科看護の必携書となれば編集者として望外の喜びである。

改訂のねらい
 本書は,1980年に初版が発行されてから,実に40年以上を経過している。その間,定期的に改訂を行ってきた。
 第10版では,これまでの編集方針を踏襲しつつ,今日の外科的治療法の進歩により対応することを目ざした。医学の項では,新たに第一線で治療にあたられている先生方のご参画をいただき,最新の外科的治療を,多数のイラストと症例写真を用いながら解説した。同時に,疾患とその外科的治療が患者に及ぼす影響を理解するために必要な基礎的事項として,解剖生理,検査,共通する手術方法を,各節の冒頭に整理してまとめている。
 看護の項においては,新たに胃瘻造設術,ヘルニアの手術,脊髄腫瘍摘出術,甲状腺がんの手術を受ける患者の看護の項を新設した。また,実習などで学生の皆さんがロボット支援手術を受ける患者に出会う機会も増えていることから,column「ロボット支援手術と看護」を掲載した。
 紙面デザインも刷新し,新しく側注(NOTE)を設けた。発展的な知識や補足的な説明を記述するなど,初学者の理解の助けとなるように各執筆者が工夫を凝らしている。
 今回の改訂でも,これまでご活用いただいた教育現場からの多くのご質問やご意見を参考にさせていただいた。本書をより良いテキストにしていくため,今後とも忌憚のないご意見をお寄せいただければ幸いである。

 2022年12月
 編者

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序章 はじめに (北川雄光・江川幸二)

第1章 肺および胸部 (池田徳彦・神野浩光・江川幸二・山田紋子)
 I 肺・胸部の疾患
  A 肺および気管支の疾患
  B 胸膜の疾患
  C 縦隔の疾患
  D 胸部外傷
  E 乳腺の疾患
 II 肺・胸部疾患患者の看護
  A 肺切除術を受ける患者の看護
  B 胸部外傷患者の看護
  C 乳房の手術を受ける患者の看護
  D 乳房再建術を受ける患者の看護

第2章 心臓および脈管系 (田口眞一・志水秀行・尾原秀明・石橋曜子)
 I 心臓・脈管系の疾患
  A 心臓の疾患
  B 血管の疾患
  C リンパ系の疾患
 II 心臓・脈管系疾患患者の看護
  A 心臓手術を受ける患者に共通する看護
  B 主要な心臓手術を受ける患者の看護
  C 血管手術を受ける患者の看護

第3章 消化器および腹部 (竹内裕也・北川雄光・櫻谷美貴子・比企直樹・長谷川博俊・内藤 剛・和田則仁・篠田昌宏・北郷 実・太田正之・武田利和・大家基嗣・吉田 昌・佐藤正美)
 I 消化器・腹部の疾患
  A 食道の疾患
  B 胃・十二指腸疾患
  C 小腸・結腸・腹膜の疾患
  D 直腸・肛門の疾患
  E ヘルニア
  F 肝臓・肝外胆道系の疾患
  G 膵臓の疾患
  H 脾臓の疾患
  I 門脈の疾患
  J 副腎の疾患
  K 急性腹症
  L 腹部外傷
 II 消化器・腹部疾患患者の看護
  A 開腹術を受ける患者の看護
  B 腹腔鏡下手術を受ける患者の看護
  C 消化管手術を受ける患者の看護
  D 肝切除術を受ける患者の看護
  E 胆囊・胆道の手術を受ける患者の看護
  F 膵臓の手術を受ける患者の看護
  G 副腎摘除術を受ける患者の看護

第4章 脳および神経 (堀口 崇・中村 聡・石川雅之・朝本俊司・林みよ子)
 I 脳・神経の疾患
  A 脳の疾患
  B 脊髄の疾患
  C 末梢神経の疾患
 II 脳・神経疾患患者の看護
  A 開頭術を受ける患者の看護
  B 脳室ドレナージ術を受ける患者の看護
  C 脳室-腹腔短絡術(V-Pシャント術)を受ける患者の看護
  D 頭部外傷患者の看護
  E 脊髄腫瘍摘出術を受ける患者の看護

第5章 頭部および頸部の疾患 (小澤宏之・齋藤慶幸・大釜徳政)
 I 頭部・頸部の疾患
  A 口腔・咽頭・喉頭・鼻副鼻腔・頸部の疾患
  B 甲状腺・副甲状腺(上皮小体)の疾患
 II 頭部・頸部疾患患者の看護
  A 顔面外傷患者の看護
  B 口腔・咽頭・喉頭・鼻腔・副鼻腔がん患者の看護
  C 甲状腺がん患者の看護

第6章 小児の外科 (渡辺稔彦・彦坂 信・藤野明浩・木村成卓・堀口 崇・宮谷 恵・樋口伊佐子・半田浩美・二宮啓子)
 I 小児の外科疾患
  A 小児外科の基礎知識
  B 顔面・口唇口蓋疾患
  C 呼吸器・消化器および一般的な外科疾患
  D 先天性心疾患
  E 脳・神経疾患
 II 小児の外科患者の看護
  A 新生児期手術患者の看護
  B 乳幼児期手術患者の看護
  C 主要な手術を受ける小児の看護

索引

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