基礎助産学[4]
母子の心理・社会学 第6版
もっと見る
①ライフサイクル各期における女性の心理的特徴と課題を解説
第1章では、親準備性の発達、キャリア発達と就労継続、妊娠・出産をめぐる諸問題(不妊治療、人工妊娠中絶、周産期喪失と悲嘆など)、性的発達と性被害・性教育、マタニティブルーズ、更年期うつなど、ライフサイクル各期における身体的変化とその心理的受容、心理的課題について丁寧に解説しました。
②母子関係、父子関係、夫婦関係の心理的発達と課題を詳説
第2章では、母性・父性の発達、愛着形成、マターナルアタッチメントなどについて、心理学的立場から丁寧に解説しました。さまざまな状況で子育てをする母親の心理的特徴や、立ち会い出産などにおける父親への支援のほか、児童虐待、DVといった精神病理の要因についても取り上げます。
③現代社会における家族・母親・父親の機能と役割、発達課題を解説
第3章では、「家族」の機能と役割、第4・5 章では、現代社会の母親・父親・子育ての社会的課題について、歴史的な背景を踏まえて学びます。結婚・離婚・出産にかかわる法律や、国際結婚、ひとり親家庭、ステップファミリー、養子縁組、性的多様性などについても取り上げました。
- 「助産学講座」は株式会社医学書院の登録商標です。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 序文
- 目次
序文
開く
序
助産師をめぐる動向
わが国においては少子化が進行し,産科医の減少や出産取り扱い施設の閉鎖など,母子を取り巻く厳しい状況が続いている。家族規模の縮小化と養育機能の低下など,母子・親子関係の根幹が揺らぎ,妊娠・育児を支える家族機能も急速に弱体化しつつある。また,晩婚化・晩産化が進行し,高度生殖補助医療が日常の医療として定着する一方で,ハイリスク妊娠や妊産褥婦の重症ケースが増え,医療の高度化・複雑化が進行している。児童虐待相談件数が激増するなど,育児不安・子どもの虐待を含めた育児をめぐる問題も多様化・深刻化している。さらには,若者の性・生活・社会環境の変化から派生する性感染症・薬物依存・栄養障害や,在日外国人や性的マイノリティに特有な母子保健の課題,女性へのドメスティック・バイオレンスといった,母子や性と生殖に関する課題が山積している。加えて,出生前診断や,精子・卵子・胚・卵巣組織の凍結保存,胎児組織の再生・移植医療への応用などといった生殖補助医療の発展に伴う倫理的問題についての社会的な整備も課題となっている。
このような多種多様なニーズおよび急速な変化に対応するべく,助産師業務も変革をしてきた。国際助産師連盟(ICM)は具体的なケアとして,正常出産をより生理的な状態として推進すること,母子の合併症の発見,医療あるいはその他の適切な支援の利用,救急処置の実施から,女性の健康,性と生殖に関する健康,育児まで,女性とその家族・地域をも含めた生涯にわたるリプロダクティブ・ヘルス/ライツへの支援を明瞭に打ち出した(ブリスベン大会,2005年)。2008年には助産師の倫理綱領を採択し,2019年には基本的助産実践に必須のコンピテンシーを改訂した。また,ICMは助産師教育の世界基準(2010年)で,ダイレクトエントリーの助産師教育課程の最低期間を3年間,看護の基礎教育修了者/医療従事者に関する教育課程の最短期間を18か月間とし,2012年には専門職としての助産師教育のためのモデルカリキュラムの概要を発表した。
わが国においては,2007年には看護職の権限拡大(助産師の場合,会陰切開など)が政府の規制改革会議第2次答申案で出された。2008年には助産師の教育の充実や助産師の資質の向上をはかること(厚生労働省),2010年には助産師教育の内容や質の保証のあり方(文部科学省)が検討された。臨床現場においても,助産師の権限拡大を受けて,産科医不足や妊産褥婦のニーズの多様化・複雑化に対応するために,助産外来や院内助産などが全国に広がってきた。
このような背景をもとに,助産師教育の充実をはかるため保健師助産師看護師法の一部改正(2010年4月施行)が行われ,保健師・助産師の教育年限が6か月から1年以上となった。また,2011年施行の保健師助産師看護師学校養成所指定規則では助産師教育の単位数総計は28単位に,2022年施行の改正指定規則では31単位に増加し,更なる教育の充実が図られることとなった。
改訂の趣旨
改正された保健師助産師看護師学校養成所指定規則の基本的枠組みを踏襲しつつ,EBMをふまえた基礎的内容と発展的内容を押さえるように,この度,改訂第6版を企画した。そのねらいは,助産学教育の水準を向上させ,助産学の発展・確立に寄与することである。具体的には助産師や助産業務をめぐる今日的動向や課題に対応できる助産師養成の基盤を支えることにある。なお,本講座は第一義には助産師学生の基礎教育テキストであり,助産師国家試験出題基準の内容についても網羅したものとなっている。
本巻(基礎助産学[4]母子の心理・社会学)では,女性の性と生殖の健康に関する課題に対し継続的に支援できるよう,女性の心理・社会的課題についてライフサイクルごとにまとめた。また,母性・父性を育むことを支援する能力を養うために,母性・父性の発達やその精神病理について心理学的な側面から解説し,さらに,母性・父性・家族についての考え方の歴史的変遷や現代における課題について,社会・文化的な側面から解説した。
加えて,2022年3月に公表された「保健師助産師看護師国家試験出題基準令和5年版」において新たに追加された「虐待」や「性の多様性」といったテーマについて,心理学的・社会学的側面からの記述を充実させた。
執筆者は各領域の最前線で先進的教育や活動を行っている専門家に依頼した。記載形式は読者が理解しやすいように図表を多く取り入れ,見やすさ・使いやすさを工夫している。助産師学生の教科書としてのみならず,臨床や地域で活躍する助産師の皆様の指導書として,本書を広く活用していただければと,せつに願っている。
なお,本講座は,我妻堯・前原澄子編集による初版を1991年に発行して以来,今回の改訂で第6版を重ねるにいたった。ここに改めて本講座にかかわってこられた編著者各位に深謝したい。
2022年11月
編者ら
目次
開く
第1章 女性のライフサイクル各期における心理・社会的課題
A 女性のライフサイクルと心理・社会的課題
1 女性の生涯発達における心理・社会的課題
2 女性のライフサイクルの時代による変化と支援
3 家族関係の形成と子どもの発達
B 思春期・青年期女性の発達と心理・社会的課題
1 身体発育・性的成熟とその心理的受容
2 対人関係の発達
3 アイデンティティの発達
4 親準備性の発達
5 思春期・青年期の女性を取り巻くさまざまな課題
C 成人期初期・中期女性の発達と心理・社会的課題
1 自立の達成
2 恋愛と結婚
3 妊娠・出産をめぐる諸問題
4 職業発達と就労実現・継続
5 周産期のメンタルヘルス
D 更年期・老年期女性の発達と心理・社会的課題
1 中年期女性の発達と心理・社会的課題
2 老年期女性の発達と心理・社会的課題
3 更年期・老年期女性のメンタルヘルス
第2章 家族関係の発達と課題
A 母子関係の形成と課題
1 母性の発達過程
2 妊娠期の母子関係
3 新生児期・乳児期の母子関係
4 幼児期・児童期の母子関係
5 思春期・青年期の母子関係
6 母子関係の病理
7 さまざまな状況で子育てする母親の心理
B 父子関係の形成と課題
1 父性の発達過程
2 父子関係と子どもの発達
3 父親のリスク要因と家族への影響
4 父親支援の現状と課題
C 夫婦関係と子どもの発達
1 夫婦関係の形成と発達
2 夫婦不和と子どもの発達
3 離婚の問題
4 夫婦関係と個人の病理
D 家族内のサブシステムと地域のなかの家族
1 家族内のサブシステム
2 社会のなかの家族
3 支援が必要な家族へのサポート
第3章 家族と社会
A 家族の機能と役割
1 家族の定義
2 家族を分析する基本概念
3 家族の機能
4 家族の役割と家族の発達課題
B 家族の変化――近代家族から現代家族へ
1 近代家族の成立
2 近代家族から現代家族へ
C 多様化するライフコースと家族
1 結婚・離婚の動向
2 女性の就労状況の変化
3 多様化する家族
4 家族の多様化と格差の拡大
D 家族とケアのゆくえ
1 ケアと家族
2 男女共同参画社会の形成とワークライフバランス
E 家族と法
1 戦後日本における家族法の歴史
2 現行の家族法の基本的ルールと問題点
3 家族法の現代的課題
第4章 母親・父親と社会
A 母親と社会
1 社会的存在としての母親
2 歴史のなかの母親
3 近代化のなかの母親
4 現代の母親
B 父親と社会
1 歴史のなかの父親
2 現代社会の父親
C 現代社会における多様な「親」のあり方
1 「親」とはなにか
2 現代社会の多様な「親子」のきずな保障
第5章 子どもと社会
A 社会のなかの子ども
1 昔の子どもと子育て
2 近代社会における「子ども」の発見
3 戦後の社会変化と子どもの価値
B 現代日本の子ども
1 子どもの人権と家族
2 現代日本の子どもの課題
索引
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。