健康支援と社会保障制度[4]
看護関係法令 第54版

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・看護基礎教育で学ぶべき各領域の法令について、看護の視点から、法律の内容だけでなく、なぜこのような法制度になっているのかまでを体系的に解説し、学習のポイントを記述しています。
・看護の中心となる「保健師助産師看護師法」から周辺の法令まで、重要なものを系統だてて解説しているため、法令間の関係や、なにが大事なのかを理解しながら学修を進めることができます。
・看護をとりまく状勢の変化に合わせて毎年改訂し、発行直前までに制定・改正された最新の法令を加え、充実しています。また、学習の便を考え、内容も適宜見直し、わかりやすく記述しています。・最新版では、新型コロナウイルス感染症対策強化のための感染症法や新型インフルエンザ等対策特別措置法など改正内容をはじめ、医療的ケア児支援法や特定石綿被害救済法などの新規立法、医療法や医師法、健康保険法、育児・介護休業法の改正などの最新の動きを網羅しています。
・巻末には、「保健師助産師看護師法」の全文など、必要な法令の関係条文を掲載しています。

*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 系統看護学講座-専門基礎分野
発行 2022年02月判型:B5頁:328
ISBN 978-4-260-04867-5
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

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本書の巻末には,附録として「保健師助産師看護師法」などの条文を掲載しております。第54版におきましては,誌面の都合で冊子体では掲載できなかった「看護師等の人材確保の促進に関する法律」などの看護業務に密接に関係する部分の条文をこのウェブサイトに掲載いたします。

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はしがき

 コロナ禍により大学・学校に登校できず,自宅学修やオンライン授業を受ける困難が生じている。本書では状況に対応すべく,理解しやすいように構成や表現の工夫をしている。コロナ禍を乗りこえて勉学に励まれるよう応援する。
 看護とは,人間の自然治癒力を引き出し,生きる希望と力をつくり,生涯にわたり尊厳をもって輝く人生を送れるよう支援することである。保健師助産師看護師法第5条で,「傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助」という行為の外見を書いているが,それは看護師にしかできない業務独占行為を書いているのであり,看護の定義を書いているわけではない。保健師助産師看護師法では,看護とはなにかを定義していない。同法は行為規制法だからである。この法律だけで看護が決まるのではない。看護は看護学の社会的適用であるので,看護学を修め多くの法を理解して,国民が求める看護がわかる。同様に,医療は医学の社会的適用である。
 保健師助産師看護師法はここ数年で何度も改正されている。大学における看護学教育の明文化,保健師・助産師教育の修業年限を1年以上に延長,臨床研修の努力義務化,養成施設監督権限の都道府県知事への委譲,特定行為研修の開始などである。法といえども時代の要請で変化をとげている。
 看護をはじめ医療は,経済的側面では最大で55兆円近くの産業規模であり,健康保険の対象となる国民医療費ベースだけでも43兆円にもなる,わが国最大の産業である。医療で働く300万人のなかでも最大の集団である180万人の働く看護職の活躍が,医療の質を決め,国民に評価されることになる。

看護に必要な法令の理解
 看護職が質の高い看護を提供するには,まず社会人として充実した豊かな人生を送り,職業人として任務を十分に果たさなければならない。そのためには高い教養をもち,深い専門的知識とすぐれた技術・技能を身につけるとともに,わが国の保健医療福祉に関する諸制度の概要とそれを規定する諸法令を理解しなければならない。社会において看護が大きな位置を占め,保健師・助産師・看護師がどういう役割を受けもっているかを正しく認識する必要がある。看護など医療の仕事は,人間の生命に直接関係するだけに,医療に携わる人の資格や業務内容が法律で厳格に規定されている。看護に従事する者が,国民の健康を守り,職責を正しく遂行するために,看護関係法令の理解が必要である。
 本書は,看護に携わる者にとって最も重要な法である保健師助産師看護師法から説き,順次周辺に広げ,医事や保健衛生,社会保険,社会福祉,労働などの関係法令を重要度に応じて解説している。
 学修にあたっては,これら法令を単に知識として学ぶだけではなく,なぜこのような内容になっているのか,看護との関係はどうなのかについて,他の科目で学んだこと,あるいは日常生活や実習での経験,さらに書籍・テレビ・新聞・インターネットなどからの情報とも関連づけて理解してほしい。巻末の附録に,保健師助産師看護師法・関係政省令・通知を掲載している。また,保健医療関係法のうち看護業務に密接に関係する部分の条文については,医学書院のウェブサイトにおける本書のページに掲載している。勉学の参考にされたい。
 法律というと,日常生活とはかけ離れたもの,難解なものという印象があり,敬遠されがちである。実際には,法律は私たちの日常生活そのものであり,知らず知らずのうちに,法から守られ,法を守っている。法とは,基本的には誰もが守ることができる,ごく当たり前のこと,自然な内容であり,そうむずかしいことではない。読者の研鑽に期待したい。
 いま,日本では,利用者の視点を中心にして,ノーマライゼーションとリハビリテーションの理念のもとに,コロナ禍を克服しつつ,医療など社会保障の施策が展開されている。2020年は年間出生数が84万人となり,同年の合計特殊出生率は1.34(概数)であるが,厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の人口推計によると,基調として年間出生数が100万人程度,合計特殊出生率は1.44で推移し,少子化が進むことが予測される。
 相対的に高齢化も進展し,現在は65歳以上の高齢者が3600万人で,高齢化率は全人口の29%に,75歳以上の後期高齢者は15%にまで達し,2020年の平均余命は女性87.74歳,男性81.64歳と,ともに世界最高水準である。なお,2020年は年間死亡数が137万人で出生数を上まわり,日本は少子高齢化とともに人口減少社会に突入している。
 また2025年には,戦後の1947年から1949年にかけて生まれたベビーブーム世代が後期高齢者となる。この人口構成の劇的な変化とコロナ禍が日本の社会保障に多大な影響を及ぼす。このような状況において社会保障を担う看護の役割は増大している。

看護と社会保障制度の改革
 社会の変化に応じ国中で日本の将来が考えられており,国会や厚生労働省社会保障審議会などでは,社会保障から社会のあり方まで社会保障と税の一体改革として幅広く議論した結果がまとめられ,日本の新しい姿に向かって進もうとしている。
 医療の分野では医療制度改革が推進中で,給付と負担の適正化により安定的な医療保険制度の構築を目ざし,感染症に対応しながら利用者の視点を中心に働き方改革もあわせて医療提供体制の改革が利用者主役と医療安全を基本に進められている。
 福祉の分野では,少子高齢化時代の介護を社会全体で支えるために介護保険が始まって久しく,関係者の尽力によって順調に進んでいるが,地域包括ケアシステムの構築と介護人材の確保が課題である。さらに利用者主役を進めるために,障害をもつ方々へのサービスが障害の種別をこえて提供されようとするなど,社会福祉の基礎構造改革が進められている。社会を根本から見すえて,子育て支援を充実し,働き方を見直し,男女共同参画と地域共生社会の実現のために,国をあげて体制整備の最中である。

看護の発展のために
 このような動きのなかで,社会保障制度を守り,誰もが普遍的にサービスを受けられる現行制度を安定的に維持していくことに,いささかの揺るぎもない。医療でも,利用者主役・地域主義・地方分権については最優先の課題として取り組まれているところである。利用者が,病院や施設,在宅の区別なく,本人の個性に応じた多様なサービスを受けるために,地域包括ケアと地域共生社会という概念が普及している。福祉や教育,街づくりなど関連施策と連携をとり,医療が総合的に推進されなければならない。医療安全や地域連携で看護職に国民が期待しているいまは,看護の発展のチャンスである。
 医療をはじめ,日本の社会保障は,基本的に誰もが最高水準のサービスを受けられるという,諸外国に比べて遜色のない制度であり,内容・人員・設備水準も向上してきている。これを利用者が実感できるようにしたい。
 これからは利用者本位のサービスを展開し,そのために自己評価・利用者評価・第三者評価をふまえ,とくにサービス向上の中核は安全であることを認識して利用者に接しなければならない。国中で安全やリスクマネジメントが大きく叫ばれ,将来の様相はかわっていくであろう。日常の勤務のなかで,仕事を効率化し,楽にすることは利用者のためでもある。評価の導入で,努力が報われ,利用者満足度の高いシステムができる。社会の変革と制度の改革は自分自身と看護が飛躍する機会である。
 看護は文化である。看護を見れば一国の文化水準がわかる。いままさに国民が看護への期待を高め,その役割が増大している。期待が高いから不満も大きいのである。現在おこっている改革の流れは看護職のための機会拡大でもある。いままでできなかったことが,できるようになるだろう。

改訂の方針
 新型コロナウイルス感染症関係の法改正はもとより,看護に関係する法令のなかでも資格法と医療改革関連法について,看護制度発展のための一連の改正を網羅しているほか,地域包括ケアなどを内容とする医療と介護を一体とした改革や,医師確保のための医療法などの改正,働き方改革関係の改正なども加え内容を大きく充実させた。法律の見出しの大きさを違え,なにが重要かがわかるようにし,見出しについても工夫している。学修の便を考え,附録として法令と条を巻末とウェブサイトに掲載している。
 諸改正については,読者が卒業したときにも役だつように将来に照準を合わせた長期的な記述としている。これからも引きつづき利用者の視点で内容の充実に努めていきたい。読者のご鞭撻をお願いするものである。
 なお以上の観点から原則として,法令の内容は2022年2月1日現在をもとにし,2022年に施行されるものを記した。記述方法,用字・用例については本シリーズの編集方針によっている。ただし,法令上の重要な表現については例外もある。

 2022年1月
 森山幹夫

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第1章 法の概念
 A 法の概念
 B 衛生法
  1 衛生法の概念
  2 衛生法の沿革
  3 衛生法の分類
 C 厚生労働行政のしくみ

第2章 看護法
 A 保健師助産師看護師法
  1 目的
  2 定義
  3 保健師助産師看護師法の構造と附属法令
  4 免許
  5 試験
  6 学校・養成所
  7 業務
  8 研修
  9 義務
  10 医療過誤
  11 罰則
  12 沿革
 B 看護師等の人材確保の促進に関する法律

第3章 医事法
 A 医療法
 B 医療関係資格法
  1 医師法
  2 歯科医師法
  3 薬剤師法
  4 医療関係資格法
  5 保健衛生福祉資格法
 C 医療を支える法
  1 医療・介護の提供体制に関する法
  2 移植医療に関する法
  3 地域振興における看護の役割に関する法
  4 人の死に関する法
  5 緊急時の看護・医療に関する法

第4章 保健衛生法
 A 共通保健法
  1 地域保健法
  2 健康増進法
 B 分野別保健法
  1 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
  2 母子保健法
  3 母体保護法
  4 学校保健安全法
  5 個別対策法
 C 感染症に関する法
  1 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
  2 新型インフルエンザ等対策特別措置法
  3 予防接種法
  4 検疫法
 D 食品に関する法
 E 環境衛生法
  1 営業
  2 環境整備

第5章 薬務法
 A 薬事一般に関する法律
  医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律
 B 人などの組織を用いた医療関連法
  安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律
 C 薬害被害者の救済など
  独立行政法人医薬品医療機器総合機構法
 D 麻薬・毒物などの法

第6章 社会保険法
 A 医療・介護の費用保障
  1 健康保険法
  2 国民健康保険法
  3 高齢者の医療の確保に関する法律
  4 介護保険法
 B 年金
  1 国民年金法
  2 厚生年金保険法

第7章 福祉法
 A 福祉の基盤
  1 社会福祉法
  2 生活保護法
  3 福祉の共通的事項に関する法
 B 児童分野
  1 児童福祉法
  2 個別の児童法
 C 高齢分野
  1 老人福祉法
  2 個別の高齢者法
 D 障害分野
  1 障害者基本法
  2 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律
  3 個別の障害者法
 E 手当

第8章 労働法と社会基盤整備
 A 労働法
  1 労働基準法
  2 労働安全衛生法
  3 労働者災害補償保険法
  4 雇用保険法
  5 育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
  6 適正な労働の確保に関する法
 B 社会基盤整備など

第9章 環境法
 A 環境保全の基本法
 B 公害防止の法
 C 自然保護法

附録 看護関係法令
 保健師助産師看護師法
 保健師助産師看護師法施行令
 保健師助産師看護師法施行規則
 保健師助産師看護師学校養成所指定規則

索引

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