地域理学療法学 第5版
地域理学療法の未来に夢を持ち、学生が将来の展望を描くために
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理学療法士養成施設における「地域理学療法学」の講義に最適なテキストの改訂第5版。2020年に改正された「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」の内容に準拠し、地域における臨床実習時の心構えや具体的な事例など、臨床実習にも役立つ内容をより充実させている。これからの将来を担う学生に地域理学療法のフィールドの多様さ・広さを示し、学生が地域理学療法の未来に夢が持て、将来の展望を描くための充実の1冊。
シリーズ | 標準理学療法学 専門分野 |
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シリーズ監修 | 奈良 勲 |
監修 | 牧田 光代 |
編集 | 金谷 さとみ / 原田 和宏 |
発行 | 2022年11月判型:B5頁:296 |
ISBN | 978-4-260-05007-4 |
定価 | 5,280円 (本体4,800円+税) |
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序文
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第5版序
本書の初版が2003年に発行されてから約20年が経ち,このたび第5版を刊行することになった.その間,高齢化をはじめとする社会変化,制度の変遷などにより,地域理学療法も大きく様変わりしている.なかでも,2006年の介護保険制度改正から徐々に始まった介護予防の取り組みの継続は地域に根づき,大きな成果を上げたことは印象深い.これは,職能団体のみならず,全国すべての理学療法士がいだく介護予防への熱意が生んだ賜物である.本書も改訂ごとに介護予防の枠を広げて対応してきた.近年は,感染症のパンデミック,地球規模の温暖化などが地域理学療法に少なからず影響を及ぼしている.地域社会,医療の動向などのさまざまな影響を受けつつ,これからも新たな地域理学療法を模索していかなければならない.
近年活躍している総合診療専門医は,患者の特定臓器に着目せず,地域在住のあらゆる年齢,性別の患者の健康問題に向き合って治療を行う.制度などによりある程度は分割されているが,地域理学療法も同じような側面をもつのではないだろうか.地域には,さまざまな対象者が混在し,疾患別,病期別では説明できないことが多い.つまり,地域理学療法は対象者とその生活を多角的にとらえ,家族や地域社会にまで視野を広げる,まさしく「理学療法」の取り組みである.
そして,地域理学療法は実践であるとともに学問でもある.ドラスティックな変化を続ける社会のなかで,養成校教育においてもこれからの地域理学療法の視点を議論することは大切な責務となる.第5版では,理学療法士を目指す学生が現在の実践内容にとらわれることなく,未来志向のなかで心豊かに学び創造性を養い,多様なキャリア形成に向けて走り始めることができるように構成を見直した.
本書の一貫したテーマは,対象者を患者もしくは利用者としてだけではなく,地域で生活する主体者としてとらえる視点を提供することである.他方,第5版では絶えず変化し多様化していく地域における理学療法士の専門性の活かし方,ないしは地域理学療法が学問として担うべき社会的課題の解決や社会貢献への可能性というビジョンを含めたことが新たな特徴である.
第5版の構成の意図を汲み,執筆の労をとっていただいた諸氏に深く感謝申し上げる.
2022年8月
金谷さとみ
原田 和宏
目次
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I 地域理学療法総論
1 地域リハビリテーションの背景
A 地域リハビリテーションの歴史と定義
B 地域リハビリテーションと人権
C 近年における地域リハビリテーション
2 地域理学療法の変遷
A 地域理学療法の定義
B 社会の変遷
C 地域における理学療法士の活動の変遷
3 地域理学療法の対象
A 保健事業と理学療法
B 学校保健領域における理学療法
C 職域保健領域における理学療法
D 地域保健領域(特に介護予防)における理学療法
E 公的保険外における理学療法
4 地方自治と行政理学療法士
A 地方自治と行政
B 行政理学療法士
C 理学療法士の専門性をどのように活かすか
D 今後の展望
5 地域包括ケアシステム
A 地域包括ケアシステムの導入背景
B 地域包括ケアシステムの変遷
C 地域包括ケアシステムにおけるプロセス
II 地域理学療法に関連する法制度
1 理学療法士をとりまく制度
A 社会保障制度
B 医療に関する制度
C 保健衛生に関する制度
D 福祉分野における制度の概要
E 地域におけるさまざまな制度
F 障害者権利条約について
2 障害者を対象とした制度における各種サービス
A 障害者総合支援法――障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律
B 障害者総合支援法の具体的なサービス・事業,実施体制,実施機関
3 障害児を対象とした学校教育,特別支援
A 特別支援教育とは
B 教育における理学療法士のかかわり
C 切れ目のない支援
D 共生社会に向けたインクルーシブ教育の推進
4 高齢者を対象とした制度における各種サービス
A 介護保険制度の制定
B 介護保険制度利用の流れ
C 介護保険サービスの体系
III 対象者を多方面からとらえる
1 対象者をとりまくさまざまな職種
A 職能的観点からの分類
B ICFの観点からの分類
C 連携のポイント
2 地域における連携
A 地域連携における関係機関
B 地域連携におけるさまざまなサポート
C 地域連携における理学療法士の役割
3 退院支援と地域理学療法
A 入院患者に対する退院支援
B 退院支援の対象となる患者
C 情報収集の方法
D 退院支援における理学療法士の役割
E 医療機関と地域との連携
F 退院支援を意識した理学療法士の視点
4 障害者のケアマネジメント
A 障害福祉サービスとケアマネジメント
B 障害者のケアマネジメントのポイント
C 理学療法士に求められること
5 要介護(支援)高齢者のケアマネジメント
A ケアマネジメントの機能
B 関係機関との連携
C 介護予防
D これからのケアマネジメント
IV 生活者としての評価と理学療法
1 地域全体に向けた健康支援
A 地域生活者の健康
B 予防医学の視点
C 健康教育
2 骨関節系疾患の障害構造の視点
A 慢性化しやすい骨関節系疾患
B 二次的機能障害のバリエーション
C 機能的改善や維持に関する因子
3 中枢神経系疾患の障害構造の視点
A 脳卒中による機能障害
B 機能的改善や維持に関する因子
C 慢性期の障害構造の再構築
4 認知症の症候をとらえる視点
A 増加する認知症高齢者
B 認知症の疾患をとらえる
C 認知症治療の概要
D 疾患別タイプと特徴
E 認知症の症候をとらえる
F 認知症の評価
G 認知症理学療法の実際
5 終末期の支援
A 終末期とは
B 在宅における終末期の理学療法
6 生活者における障害の評価
A 地域における生活者としてとらえる視点
B 生活者の行動変容に向けた動機づけ
7 生活者を長期的に支援するために
A 生活者に対する自立支援
B 長期にわたる予防的支援
8 身体活動量の向上
A 不活動状態
B 身体活動量と姿勢に応じた活動
C 対象者の生活自立度と身体活動量の増加
D 立位動作や歩行が不可能な対象者
9 IADL評価の重要性
A IADLが重要な理由
B ADL・IADLの概念と歴史
C IADL評価
D 地域理学療法の目標
V 地域理学療法の展開
1 障害児・者の理学療法の展開① 出生から学校卒業まで
A 小児期に発症する障害の理解と理学療法の考え方
B 出生時から就学までの理学療法
C 就学後から学校卒業までの理学療法
D 障害児施設における理学療法士の専門性
E 地域での支援体制と理学療法士のかかわり
2 障害児・者の理学療法の展開② 障害児を対象とした地域活動
A 障害福祉サービスにおける専門職の拡大
B 理学療法士の専門性を活かした地域支援
3 障害児・者の理学療法の展開③ 成人:治療の狭間など
A 成人した障害者の生活とさまざまな施設の機能
B 成人障害者の理学療法の実際
C 成人障害者の理学療法における制度の問題点
4 難病の理学療法の展開
A 難病患者の地域理学療法の実際
B 他職種との連携
5 要介護(支援)高齢者の理学療法の展開① 訪問
A 訪問における理学療法の展開
6 要介護(支援)高齢者の理学療法の展開② 通所
A 介護保険における通所サービスの位置づけと変遷
B 通所リハビリテーションと通所介護の機能と役割の違い
C 通所リハビリテーションの提供プロセスと理学療法士の役割
7 要介護(支援)高齢者の理学療法の展開③ 高齢者施設
A 介護老人保健施設とは
B 介護老人保健施設での理学療法の展開
8 ヘルスプロモーション:ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチ
A ヘルスプロモーションと健康増進
B ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチ
C 要介護状態の予防に対する理学療法士の取り組み
VI 地域理学療法の実際――事例を通して
1 脳性麻痺(小児)
2 難病(成人)
3 訪問
4 通所
5 施設
6 介護予防の取り組み事例① 個人事業主
7 介護予防の取り組み事例② 都道府県理学療法士会
VII これからの社会と地域理学療法
1 新しい時代の地域理学療法
A これからの社会や地域
B 専門性の活かし方の視点
2 これからの社会資源とデータヘルス
A Society5.0
B スマートシティ
C DXを用いた医療
D 健康・医療分野のデータヘルス
E シビックテック
F 健康・医療分野でICTを活用する意義
G ICTテクノロジーとの協働
H 2040年の地域包括ケアシステムにおけるICTテクノロジー活用の重要性
3 地域理学療法を生かす知識
A 多様化社会
B 生涯現役社会
C 課題の解決に役立つ実践的な地域理学療法の視点
4 健康の社会的決定要因
A 健康の社会的決定要因――転倒を例に
B 地域間の健康格差――転倒が多い地域がある
C これからの理学療法士に求められること
D 地域における健康施策の企画段階からかかわるメリット
5 これからの地域理学療法に役立つ視点
A リエイブルメント
B 人の心の動きを理解し,目標達成に必要な行動を喚起する
6 海外の地域理学療法を支える① 国際的協働の例
A 日本の理学療法士が海外で活躍する道
7 海外の地域理学療法を支える② 医療専門職育成の例
A 医療のビジネスモデル化
B マラウイ共和国
C カンボジア王国
TOPIC
【TOPIC1】障害者とスポーツ
【TOPIC2】転倒予防の研究
【TOPIC3】自動車運転に対する支援
【TOPIC4】災害時の地域理学療法
付録
付録1 「地域理学療法学」の授業計画案
付録2 地域理学療法実習案――何をどのように学ぶのか
索引
更新情報
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