リハビリテーションレジデントマニュアル 第4版
いつもポケットに心強いミカタを。慶應リハのノウハウ満載のマニュアル
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日常のリハビリテーション診療・治療に携行できるポケットサイズで、迷ったときや困ったときに、評価・診断、治療、疾患・障害から検索できる。見逃してはならない重要なポイントを「臨床上のコツ」として集約。臨床でよく使われる評価スケールを付録として収載。リハビリテーション科専門医を目指すレジデントはもちろん、PT・OT・STにも役立つ1冊であり、初期研修医や他科医師が最初に持つテキストとしても最良の1冊。
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
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序文
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第4版序
本書の初版を上梓してから27年が経過しました.お陰様で好評をいただき,版を重ねて今日に至っていますが,前版を出版して以来12年経ち,リハビリテーション医学・医療を取り巻く環境も大きく変化しました.
高齢化社会の到来とともに改定が重ねられてきた医療保険では,疾患ごとに治療法や治療期間が制限され,金太郎飴的な画一医療が施行されるようになり,リハビリテーション医学の分野では患者ごとに匙加減を要する本来の医療の実践が難しくなってしまいました.長期の医療を要する患者については介護保険で扱わざるを得ないシステムとなり,リハビリテーション医療の質が担保されない状況となっています.社会的共通資本である医療に対して,経済優先の舵取りをしたわが国の厚生労働行政とともに,それに追随した学会や医師会,我々リハビリテーション科専門医の責任は非常に大きいと言わざるを得ません.
このような状況の中で,リハビリテーション医学の基本に根ざした医療の実践を行うべく,初心に帰る必要性を痛感していますが,そのためにはリハビリテーション医療の中心を担う医師の養成が何よりも大切といえます.医師臨床研修制度・専門医制度の変遷もあり,どの医学の分野においても専門家を輩出するためには従来とは異なるステップを踏む必要がありますが,一方で,最終的に何科の医師になるにせよリハビリテーションの知識はますます必要不可欠になっているといえます.
今回の改訂では,上記の観点からレジデントに最低限必要と思われるリハビリテーション医学の知識を幅広く簡潔に整理することに努め,最近の新たな治療・トピックスも加えるように意図しました.当然ながらリハビリテーション科専門医を目指すレジデントが本書の1番の読者対象ですが,他科の医師にもリハビリテーション科の役割を理解していただくのに適した内容となっており,コメディカルの皆様にも広く利用していただくことが可能と思っております.
版を重ねるにつれ項目が増え段々と厚くなる傾向にありますが,本版では改めてコンパクトにまとめることに十二分に配慮しました.
皆様の日常臨床において常に携えていただき,活用していただけることを関係者一同期待しております.
2022年3月
木村彰男
目次
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I リハビリテーション医学・医療とは
II リハビリテーション診断・評価
1 関節可動域
2 筋力
3 成長・発達
4 上肢機能
5 歩行
6 バランス障害・体幹機能障害
7 筋緊張異常・不随意運動
8 失語症
9 構音障害
10 意識障害
11 高次脳機能障害
12 精神・心理的問題
13 摂食嚥下障害・栄養障害
14 排泄(排尿・排便)障害
14.1 排尿障害
14.2 排便障害
15 疼痛
16 日常生活動作(活動)
17 神経生理学的検査
18 神経筋の組織化学的検査
19 呼吸機能検査
20 運動負荷試験
III リハビリテーション治療
1 関節可動域訓練
2 筋力増強訓練
3 有酸素運動
4 上肢機能訓練
5 ニューロモデュレーション
6 ロボティクス
7 歩行訓練・応用歩行訓練
8 バランス訓練・体幹機能訓練
9 物理療法
10 痙縮
11 日常生活動作(活動)訓練
11.1 基本動作訓練
11.2 移乗動作訓練
11.3 移動動作訓練
11.4 身のまわり動作訓練
12 自助具
13 義肢(義手・義足)
13.1 義手
13.2 義足
14 装具
14.1 上肢装具
14.2 下肢装具
14.3 体幹装具
15 座位保持装置・車いす
16 歩行補助具(杖・歩行器)
17 失語症
18 構音障害
19 意識障害
20 高次脳機能障害
21 精神・心理的問題のケア
22 摂食嚥下障害・栄養障害
23 排泄(排尿・排便)障害
23.1 排尿障害
23.2 排便障害
24 疼痛
IV 主な疾患のリハビリテーション診療
1 脳卒中
2 脳外傷
3 脊髄損傷
4 脳性麻痺
5 二分脊椎
6 発達障害(神経発達症)
7 Parkinson病・パーキンソン症候群
7.1 Parkinson病
7.2 パーキンソン症候群
8 脊髄小脳変性症(SCD)
9 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
10 多発性硬化症(MS)
11 筋ジストロフィー
12 末梢神経損傷
13 顔面神経麻痺
14 多発性神経炎
15 ポストポリオ症候群(PPS)
16 ジストニア
17 悪性腫瘍(がん)
18 切断
19 リウマチ性疾患/膠原病
19.1 関節リウマチ(RA)
19.2 多発性筋炎(PM)・皮膚筋炎(DM)
19.3 全身性エリテマトーデス(SLE)
20 脊椎疾患
21 骨粗鬆症
22 肩関節疾患(肩関節周囲炎・肩手症候群)
22.1 肩関節周囲炎
22.2 肩腱板断裂
22.3 肩手症候群
23 骨折
23.1 骨折総論
23.2 大腿骨頚部骨折・転子部骨折
24 スポーツ傷害(スポーツ障害・外傷)
24.1 スポーツ傷害総論
24.2 テニス肘(上腕骨外側上顆炎)
24.3 野球肘(離断性骨軟骨炎など)
24.4 膝前十字靱帯損傷
24.5 足関節靱帯損傷・アキレス腱断裂
25 変形性関節症
25.1 変形性股関節症
25.2 変形性膝関節症
25.3 変形性足関節症
26 脊柱側弯症
27 心疾患
27.1 急性心筋梗塞
27.2 心不全
28 閉塞性動脈硬化症(ASO)
29 呼吸器疾患
29.1 急性の呼吸器疾患
29.2 慢性の呼吸器疾患
30 糖尿病
31 腎機能障害・肝機能障害
31.1 腎機能障害
31.2 肝機能障害
32 熱傷
33 複合性局所疼痛症候群(CRPS)
34 リンパ浮腫
35 精神疾患
35.1 統合失調症
35.2 その他の精神科関連の障害
36 フレイル・サルコペニア・ロコモ
36.1 フレイル
36.2 サルコペニア
36.3 ロコモ
37 廃用症候群(不動・不活動)
38 転倒予防
39 認知症
40 褥瘡
41 深部静脈血栓症(DVT)
42 緩和ケアにおけるリハビリテーション診療
V 地域生活とリハビリテーション医療
1 在宅リハビリテーション
2 福祉行政
3 福祉用具
4 災害時のリハビリテーション医療
VI リハビリテーション医療における医療倫理・感染対策・医療安全
1 医療倫理
2 医療安全
3 感染対策
付録 リハビリテーション医療に必要な基礎知識
1 筋の名称
2 神経とその支配分布
3 脳の解剖と機能局在
4 NIH Stroke Scale
5 関節可動域表示ならびに測定法
6 神経伝導検査正常値表,筋電図正常値表
7 正常歩行・異常歩行
8 日常生活動作(活動)評価法
索引
書評
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いまだから必要なリハビリテーションが凝縮された一冊
書評者:山口 智史(順大先任准教授・理学療法学)
神経疾患,整形外科疾患,内部疾患,悪性腫瘍など多種多様な疾患において,どのようなリハビリテーションが必要なのか? 最良のリハビリテーションを提供するには,どのような知識が必要なのか? 本書では,そういった不安や疑問を,日本のリハビリテーション医学・医療を牽引してきた慶大リハビリテーション医学教室に携わるリハビリテーション専門医が明確にポイントを示しながら,図表とともにわかりやすく解説している。
監修を務める木村彰男先生が序文で述べられているように,近年の医学・医療では,医療制度の改定により,疾患ごとの治療法や治療期間が制限され,画一的な医療が提供されるようになった。これはリハビリテーション医学・医療においても同様であり,日常生活動作の早期獲得のみを目的とした,生活動作の反復練習を主体としたリハビリテーションを目の当たりにすることがある。当然,生活動作の反復は重要であり,日常生活の自立度を高めるために必要である。しかしながら,リハビリテーション医学・医療の治療は,動作反復だけでよいのだろうか?
第I章では,この問いに答えるように「リハビリテーション医学・医療」について,重要な定義が記載されている。リハビリテーション医学は,運動障害(dysmobility)を来す疾患・病態の診断・評価・治療を専門とする医学の一分野であり,臓器・疾患別ではなく,運動障害をシステムとしてとらえる。さらに運動障害の原因は,(1)神経・筋・骨格系(運動実行系),(2)呼吸・循環系(エネルギー供給系),(3)生活環境に分けられる。そのいずれかに問題がある場合には,疾患横断的に,リハビリテーション医学・医療の対象となる。そして治療として,廃用を予防するとともに,機能回復的アプローチにより,障害の的確な評価に基づいて,機能を最大限まで回復し,代償的なアプローチにより日常生活の自立度を高める。このリハビリテーションの治療概念は,医学・医療の進歩により,新しい治療が開発されたとしても,リハビリテーション医学・医療の根幹だと考える。
第II章では,リハビリテーション医学・医療を実践するための診断と評価が障害や動作レベルに分類され説明されている。さらに,第III章では,具体的な治療方法について記載されるとともに,治療後の効果判定にまで言及されており,より実践的な視点を学ぶことができる。第IV章では,リハビリテーション医学・医療の対象となることが多い疾患別の診断と評価,リハビリテーション治療がわかりやすく説明されている。第V章では,在宅リハビリテーション,行政や福祉用具の知識,さらに災害リハビリテーションにまで触れられている。
本書はポケットサイズで,物足りない内容なのではないかと考える方もいるかもしれないが,前述のように重要なポイントが全ての項目で端的にまとめられてあり,本当に必要な知識が記載されている。本書は,リハビリテーション科専門医をめざす研修医や医師,他科の医師,理学療法士,作業療法士だけでなく,養成校の学生においても必要な知識を提供してくれる一冊と言えるだろう。
歴史ある慶應リハの叡智の結集ここにあり
書評者:安保 雅博(東京慈恵会医大主任教授・リハビリテーション医学)
1990年に大学を卒業しリハビリテーション医学を志した当時の私にとって最大の問題は,臨床に根ざしたリハビリテーション医学に関する良い教科書がほとんどなかったということでした。当然ながらマニュアル的なものは皆無でありました。焦った血気盛んな若いときの私は,リハビリテーション医学をどのように勉強したらいいのかと上司にしつこく相談していました。上司からは「自分が勉強したやり方で良かったらどうぞ」と言われ,おおよそ100編のバイブル的な英語論文をA4表裏にまとめてある全て英語の手書きのファイルを渡され,「コピーしてもいいけどしっかりこれを読んで,もちろん原著も読んで同じようにまとめて勉強するようにしなさい」と言われたのを昨日のことのように覚えています。
本書の初版発行は1994年でした。「こんなにまとまったものが作られて出版されたんだ」と当時やけに感動しました。もちろん,すぐに日常臨床や認定医試験,専門医試験対策に大活躍させたことはいうまでもありません。この度,第4版として出版された本書を手に取りながら,1994年の初版に比べると随分厚くなり,ちょっと重くなったけど,内容が充実したなと思いました。
リハビリテーション医学・医療の対象はとても幅広いものです。赤ん坊から超高齢者まで。超急性期から生活期まで。予防医学の領域から障害軽度,重度まで。治療はいうまでもなくケア的な要素も必要。ADLの評価やQOLの評価も必要。また,他の科の医師と大きく違い,行政的な知識もとても必要。本書は,こんな幅広い要望に対して,見事に全6章と付録で構成して答えを示してくれています。これほどの要点を凝縮させて,まとめ上げているのはなかなか見事であると感じます。「歴史ある慶應リハの叡智の結集ここにあり」と言っても過言ではありません。
第I章は総論として,「リハビリテーション医学・医療とは」について,わかりやすく整理されています。第II章は「リハビリテーション診断・評価」,第III章は「リハビリテーション治療」,第IV章は「主な疾患のリハビリテーション診療」として42の項目を掲げています。第II章から第IV章まで注目すべきポイントがまとめられ,臨床上のコツもそれぞれについて挙げられ,読み手に親切かつ有意義な構成になっています。第V章は「地域生活とリハビリテーション医療」,第VI章は「リハビリテーション医療における医療倫理・感染対策・医療安全」,付録は「リハビリテーション医療に必要な基礎知識」が続きます。
執筆を担当された先生方は,現在,わが国の第一線で研究や診療に従事し,国内外の法制度を熟知されている方ばかりであります。本書は,医師を始めとして,リハビリテーションにかかわる全ての専門職の皆さまの座右の書として,ご活用していただけると思います。