成人看護学[1]
成人看護学総論 第16版
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- 成人看護学の対象を、変動する社会状況にかかわりながら社会生活を営む「大人」と位置づけ、成人に特徴的な健康生活の様相とそれにかかわる看護を学びます。
- 全体を3部に分けています。まず第1部と第2部では、成人の生活と健康および看護の基本的知識を学び、成人看護学全体を概観できる構成にしています。それをふまえ第3部では、健康レベル別に成人看護の実際と技術をまとめ、その特性を充実した解説で紹介しています。
- 最新の医療状況に即して内容の全面的な見直しを行いました。また、テキストで解説されている理論などが臨床とどう結びついているのか、事例や図解を多数用いて解説しました。
- 各部のはじめにイントロダクションを設け、学生の理解のたすけになるよう工夫をこらしました。
- 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
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序文
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はしがき
現代社会は危機の時代を迎えている。新型コロナウイルス感染症によるパンデミック,たび重なる自然災害,環境破壊,経済不況など,私たちは多重の危機状況下におかれている。たとえば,災害や新型コロナウイルス感染症は,直接的に健康危機をもたらすのみならず,避難生活や活動の制約,社会的孤立,経済状況の悪化など多様で複雑な社会的課題を生む。このような危機の時代を生きる大人は,自身の健康をまもり,生活や環境の変化に対応しつつ,日々仕事に従事し,将来への不安や脅威に立ち向かい,家族の幸せを求め懸命に働き家庭を築きまもっている。ときとして,重圧に押しつぶされそうになりながらも,それを切り抜け,困難を経験知としながら,さらなる課題につぎつぎに立ち向かう力を,大人はどのように身につけていくのだろうか。危機の時代にあっても,社会の一員として,次代を担う人々の幸福と安寧のためにどのように力を尽くそうとするのだろうか。
成人看護学では,このような大人を対象に,その人にとって最適な健康を維持・促進するための看護援助を学ぶ。本書『成人看護学総論』は,成人看護学における基盤となる考え方や理論,援助方法論をまとめたものである。これらを学ぶことにより,大人を対象とする成人看護学全体の地図を手にすることができると期待している。「成人看護学総論」を学び,学習のための地図を手にした者は,具体的な看護を理解するための「成人看護学各論」について,より効果的に学習を進めることができる。
『成人看護学総論』は初版(1968年)からこれまでに15回の改訂が行われ,時代や環境変化を反映した学習内容へと充実がはかられてきた。今回の改訂では,危機の時代を生きる大人の生活や生き方について,最新の情報やデータに基づき変動する社会生活や政策,医療システムの改革の動向を鮮明にとらえ,大人の健康状態や健康問題をダイナミックに理解できるようにした。大人の生活は時代とともにさまがわりしているが,とりわけ危機の時代の変化は目まぐるしく,そのことに影響を受けるであろう大人の健康問題も複雑性や多様性を増している。さらに,医療財政の建て直し,医療従事者不足や偏在化への対応のため,医療制度改革・医療システムの変革が近年大きく進められている。大人を包括的に理解するためには,大人の生活や健康に関する最新の動向をキャッチし,時代を生きる大人の健康生活を多角的にとらえる視点をもつ必要がある。このような背景から,大人の生活と健康に関する基本的な知識を理解の基盤としつつ,大人の多様な健康状態や健康問題に対応するための看護アプローチの基本的考え方や方法を学ぶことが重要と考えた。
その円滑な理解のために,本書を「成人の生活と健康」「成人への看護アプローチの基本」「成人の健康レベルや状況に対応した看護」の3部構成とした。
第1部「成人の生活と健康」では,まずは成人看護学の対象である「大人」について,変動する社会状況に対応しながら生活する姿を最新のデータや情報から概観できるようにした。そのうえで,生涯発達論や他者との相互性,また生活や仕事といった概念に基づいて大人の生活と健康を力動的に,論理的に理解することを目ざした。適切な看護アプローチを行うためには,対象理解が欠かせない。大人とはどのような人たちか,どのような健康問題をかかえるのかを学び,第2部以降の成人看護の実践の学習に取り組んでいってほしい。
第2部「成人への看護アプローチの基本」では,個々人の生活と健康に焦点を合わせ,その人らしくあることができるように看護するための,基本となる考え方や方法論について理解する。ここでいう看護アプローチは,個人のみならず,家族や社会におけるさまざまな集団を看護の対象としてとらえはたらきかけるものである。
第3部「成人の健康レベルや状況に対応した看護」では,大人に特徴的に,また共通してみられる健康状態や健康問題に対する看護を,健康レベル別や治療・医療システムの状況別の切り口でまとめた。あわせて,今回の改訂では,急性期看護や慢性期看護の解説で事例を活用し,より実践がイメージできるよう工夫をこらすとともに,治療・医療システムのさまざまな状況や患者の状態に対応するための理論や具体的な支援方法についても解説を加えている。第1部と第2部で成人看護学の基本を押さえたあとに,第3部で実践的な理論と支援方法について学ぶことで看護への理解を深め,今後の成人看護学各論の学習や,臨床能力の研鑽に役だててほしい。
上記のとおり,各部はそれぞれ関連することで学習効果をもたらすよう配置されている。その構成がわかりやすくなるよう,各部のはじめにイントロダクションを設けたので,成人看護学のなかのどの部分を学んでいるのか,確認するときに適宜活用いただきたい。
以上,『成人看護学総論』の学習のねらいを記した。本書によって,成人看護学の学習が深められることを願うものである。
最後に,今後ともさらに本書の充実をはかり,内容を継続的に洗練し,よりよいテキストの追求に努めたい。そのために,読者の皆様からの忌憚のないご意見をお寄せいただければ幸いである。
2021年11月
著者ら
目次
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第1部 成人の生活と健康
第1章 成人と生活
A 対象の理解――大人になること,大人であること
1 生涯発達の特徴
2 各発達段階の特徴
B 対象の生活――働いて生活を営むこと
1 生活を営むこと
2 仕事をもち,働くこと
3 家族からとらえる大人
4 人生をたどること
第2章 生活と健康
A 成人を取り巻く環境と生活からみた健康
1 成人を取り巻く環境と生活の状況
2 成人の健康の状況
3 健康の維持・促進を目ざした生活
B 生活と健康をまもりはぐくむシステム
1 保健・医療・福祉システムの概要
2 保健・医療・福祉システムの連携
第2部 成人への看護アプローチの基本
第3章 成人への看護アプローチの基本
A 生活のなかで健康行動を生み,はぐくむ援助
1 大人の健康行動のとらえ方
2 行動変容を促進する看護アプローチ
B 症状マネジメント
1 症状と徴候
2 症状マネジメントの基盤となる考え方
3 効果的な症状マネジメントを導く看護アプローチ
C 健康問題をもつ大人と看護師の人間関係
1 医療における人間関係
2 患者と看護師の人間関係
D 人々の集団における調和や変化を促す看護アプローチ
1 集団(グループ)のもつ意味
2 看護における集団へのアプローチの種類と目的
3 看護における集団へのアプローチの基本
E チームアプローチ
1 チームアプローチの種類
2 チームアプローチの要素と機能
3 患者中心のチームアプローチと看護師の役割
F 看護におけるマネジメント
1 看護の質の保証
2 リスクマネジメント
3 ケアマネジメント
G 看護実践における倫理的判断
1 医療の場における倫理的課題
2 倫理的判断の基盤となるもの
3 倫理的課題へのアプローチ
H 意思決定支援
1 医療におけるむずかしい決断とは
2 意思決定とは
3 意思決定の過程
4 意思決定支援
5 意思決定過程における看護師の役割
6 意思決定過程に関与する要因
7 意思決定支援の新しいアプローチ
I 家族支援
1 システムとしてとらえる家族
2 家族機能
3 家族アセスメント
4 家族支援の実際
第3部 成人の健康レベルや状態に対応した看護
第4章 ヘルスプロモーションと看護
A ヘルスプロモーションと看護
1 ヘルスプロモーション
2 個人の主体的な健康づくり
3 健康増進のための環境づくり
B ヘルスプロモーションを促進する看護の場と活動
1 地域社会におけるヘルスプロモーションを促進する看護
2 職場におけるヘルスプロモーションを促進する看護
第5章 健康をおびやかす要因と看護
A 健康バランスの構成要素
B 健康バランスに影響を及ぼす要因
1 ライフスタイルと健康問題
2 ストレスと健康生活
C 生活行動がもたらす健康問題とその予防
1 就業・労働形態の変化がもたらす健康問題
2 飲酒がもたらす健康問題
3 喫煙と健康問題
4 身体活動量の低下と運動不足
5 肥満
6 生活環境衛生と健康
7 感染症
8 引きこもり,うつ病,ネット依存などの新たな健康問題
第6章 健康生活の急激な破綻とその回復を支援する看護
A 健康の急激な破綻
1 生命の危機状態
2 急性期にある人が受ける医療
3 急性期にある人の特徴
B 急性期にある人の看護
1 健康破綻による危機状況と危機にある人々への支援
2 急性期の治療過程にある患者の看護
第7章 慢性病とともに生きる人を支える看護
A 慢性病とともに生きる人を理解する
1 慢性病と慢性病をもつ人の特徴
2 慢性病とともに生きること
B 慢性病とともに生きる人を支える
1 セルフケアおよびセルフマネジメントへの支援
2 生活の再構築への支援
第8章 障害がある人の生活とリハビリテーション
A 障害がある人とリハビリテーション
1 障害とは
2 障害がある人の障害の認識過程
3 障害がある人のリハビリテーション
B 障害がある人とその生活を支援する看護
1 障害がある人とその生活を支援する看護の特徴
2 看護の実際
第9章 人生の最期のときを支える看護
A 人生の最期のときにおける医療の現状
1 延命医療から患者の自己決定を重視した医療へ
2 人生の最期のときにおける緩和ケア
B 人生の最期のときを過ごしている人の理解
1 人間にとっての死
2 全人的苦痛(トータルペイン)
3 死とともに生きること
C 人生の最期のときを支える看護
1 看護の目的
2 援助者の態度
3 人生の最期のときを支える看護師の役割・機能
第10章 さまざまな健康レベルにある人の継続的な移行支援
A 移行支援の基礎知識
1 移行と移行支援
2 療養の場の移行支援が必要とされる背景
3 療養の場の移行を支える看護アプローチの特徴
B 継続的な移行を支える支援の実際
1 生命の危機状況を脱し,病とともに生活する人の療養の場の移行支援
2 人生の最期のときにある人の療養の場の移行支援
第11章 新たな治療法,先端医療と看護
A 新たな治療法・医療処置の開発・普及
1 移植・再生医療
2 臨床試験(治験)
3 遺伝医療・ゲノム医療
B 新たな治療法や医療処置を受ける患者・家族の看護
1 新たな治療法の選択における問題
2 看護方法の開発
巻末資料 用語解説
索引
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