疾病のなりたちと回復の促進[4]
微生物学 第14版

もっと見る

・大きく3部構成となっています。第1部では、病原微生物がどのような生物的特徴や病原性・感染機構を持っているか、第2部では、病原微生物の感染のしくみと、ヒトがそれをいかに防いでいるか、という点を概括的に学びます。そして第3部では、各種の細菌・ウイルス・真菌について、ヒトに引きおこす感染症とともに詳しく学んでいきます。
・本書は、微生物の持つ病原性(感染力)というものを、生物としての微生物の営みとしてとらえ、それと同次元でヒトの感染防御機構を説明します。両者の巧みなかけ引きや相互の進化の様子がよく理解されます。
・各論では医療の専門職として知っていなければならない病原微生物を網羅し、事典としても使えるような詳細な情報を盛り込んでいます。
・今改訂では、付章として新たに寄生虫学も収載しました。臨床上重要な寄生虫について、その性質と病原性を学べます。

*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 系統看護学講座-専門基礎分野
南嶋 洋一 / 吉田 眞一 / 永淵 正法 / 齋藤 光正 / 大野 真治
発行 2022年01月判型:B5頁:376
ISBN 978-4-260-04702-9
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次

開く

はしがき

 人類はいま,新型コロナウイルスの脅威にさらされています。2019年後半に出現したこのウイルスの感染者は,2021年10月の時点で,世界全体ですでに約2億4千万人に達し,死亡者は480万人をこえています。国内でも感染者は約172万人,死亡者は1万8千人をこえています。その感染予防対策として,私たちは,3密(密閉空間・密集場所・密接場面)を避け,フィジカルディスタンス(人と人との距離)を保ち,マスクをし,手指をよく消毒するなど,行動の制限を強いられています。このような状況下で,皆さんは「微生物とは病原体であり,病気をおこす悪者,人類の敵である」との認識を強くしていることでしょう。
 しかし,私たちは日々微生物がつくってくれたさまざまな食品を食べて生きています。また,私たちが出す排泄物は,微生物がきれいにしてくれています。私たちの腸内には,約千種 ・百兆個の細菌がすみついています。これらの常在菌は私達の健康維持に役だっており,その乱れは種々の病気につながります。同様に,腟内の常在菌が腟内を酸性にして病原菌の感染からまもってくれています。このように,私たちと共生する微生物の「功」にも目を向けてみてください。私たちに寄生して感染症をおこす,微生物の「罪」だけではなく。
 世界に目を向けると,新顔と古顔の感染症(新興感染症と再興感染症)が出現し,国境をこえて広がり,また抗菌薬がきかない薬剤耐性菌が増加しています。これらの状況に対して,私たちヒトの健康と動物の健康は相互に依存しており,さらに両者が存在する生態系(環境)の健康ともつながっているという「ワンヘルス」の理念のもと,さまざまな取り組みが進められています。事実,ヒトの感染症の半数以上が動物由来感染症です。
 私たちは生まれ出ると同時に微生物と出会います。生きることは,微生物と付き合うことです。病原微生物に対処するには,相手の正体を知り,それを迎え撃つ私たちのからだのまもりの仕組みを理解することが不可欠です。古くから,「彼を知り己を知らば,百戦して危うからず」「彼を知らず己を知らざれば,たたかう毎に必ず危うし」(孫子)という言葉があります。
 感染症という疾患には,その病因である病原微生物が肉眼で見えない,増える,ヒトからヒトへ広がる,というほかの疾患には見られない特徴があります。皆さん,本書を通じて,目に見えない病原微生物を「見える化」しましょう。
 20世紀,人類は抗生物質という「魔法の弾丸」を手にしました。しかし,それを乱射した結果,耐性獲得という細菌側の逆襲にあい,今世紀に入り「抗菌薬無効時代の到来」が危惧されています。人間は抗菌薬で細菌を殺そうとします。一方,細菌はその薬を無効にして生き残ろうとします。人間の新薬の開発と細菌の耐性獲得・拡散の間の終わりなきたたかい(いたちごっこ)が続いています。人類は,このたたかいに勝たなければなりません。現に,薬剤耐性菌による死亡者は2050年には世界で1千万人に達し,悪性腫瘍(がん)による死亡者を超えると予測されています。
 医療施設には,感染源となる患者と,高齢者や基礎疾患をもつ感染しやすい別の患者さんが,同一空間にいます。両者に接触する皆さんには,医療従事者が媒介する感染をおこさないための知識と技術を修得し,各種のマニュアルを遵守しながら細心の注意を払うことが求められます。感染の制御は医療従事者の必須業務なのです。医療従事者1人の無知と無視が,ほかのすべての人の努力をむだにしてしまいます。まず,相手が感染症の患者さんであろうとなかろうと,誰にでも,どこででも,いつでも行う手指衛生(手洗いと手指消毒)を「魔法の習慣」にしましょう。
 「看護」の字は,目で観察し,手でケアを行い,患者さんを護まもる,という意味があるとされます。彼のナイチンゲールNightingale, F. も,その著書『病院覚え書』に「病院がそなえているべき第一の必要条件は,病院は病人に害を与えないことである」という言葉を残しています。

 本書は,職業教育上必須の微生物学的知識を,平易に説明し,感染症の最新情報を加えて,系統的に提供することを意図して執筆しました。みなさんは,微生物とはどのようなものか,私たちにどのような病気をおこすのか,それに対して私たちはどのように対処すべきか,という3つの側面から,それらを学びとってください。本書が,皆さんと微生物との新たな出会いの場となり,皆さんが微生物学という学問の理解を深めて,その知識を医療の現場で生かしていってくれることを願っています。

 2021年11月
 著者ら

開く

第1部 微生物学の基礎
 第1章 微生物と微生物学
  A 微生物の性質
  B 微生物と人間
  C 微生物学の対象と目的
  D 微生物学の歩み
 第2章 細菌の性質
  A 細菌の形態と特徴
  B 培養環境と栄養
  C 細菌の遺伝
  D 細菌の分類
  E 常在細菌叢
 第3章 ウイルスの性質
  A ウイルスの特徴
  B ウイルスの構造と各部分の機能
  C ウイルスの増殖
  D ウイルスの分類
 第4章 真菌の性質
  A 真菌の形態と特徴
  B 真菌の増殖
  C 真菌の分類と命名法
  D 栄養と培養

第2部 感染とその防御
 第5章 感染と感染症
  A 微生物感染の機構
  B 感染の成立から発症後の経過まで
  C 細菌感染の機構
  D ウイルス感染の機構
  E 真菌感染の機構
 第6章 感染に対する生体防御機構
  A 免疫にかかわる細胞,組織および臓器
  B 自然免疫のしくみ
  C 獲得免疫のしくみ
  D 粘膜免疫のしくみ
  E 感染の徴候と症状
 第7章 滅菌と消毒
  A バイオハザードとバイオセーフティ
  B 滅菌・消毒の意義と定義
  C 熱による滅菌・消毒
  D 放射線・紫外線による滅菌・消毒
  E ガス滅菌
  F 濾過除菌
  G 消毒薬
 第8章 感染症の検査と診断
  A 病原体を検出する方法
  B 生体の反応から診断する方法
 第9章 感染症の治療
  A 抗菌薬(抗細菌薬)
  B 抗ウイルス薬
  C 抗真菌薬 
  D その他の治療法
 第10章 感染症の現状と対策
  A 感染症の変遷
  B 感染症の現状と問題点
  C 感染症への対策

第3部 おもな病原微生物
 第11章 病原細菌と細菌感染症
  A グラム陽性球菌
  B グラム陰性球菌
  C グラム陰性好気性桿菌
  D グラム陰性通性桿菌
  E カンピロバクター属,ヘリコバクター属
  F グラム陽性桿菌
  G 抗酸菌と放線菌
  H 嫌気性菌
  I スピロヘータ
  J マイコプラズマ
  K リケッチア目
  L クラミジア科
 第12章 病原ウイルスとウイルス感染症
  A DNAウイルス
  B RNAウイルス
  C ウイルスの臨床的分類
  付 プリオンとプリオン病
 第13章 病原真菌と真菌感染症
  A 深在性真菌症をおこす真菌
  B 深部皮膚真菌症をおこす真菌
  C 表在性真菌症をおこす真菌
 付章 寄生虫と衛生動物
  A 寄生虫学総論
  B 原虫
  C 蠕虫
  D 衛生動物

索引

タグキーワード

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。