基礎助産学[1]
助産学概論 第6版
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①充実した解説と資料で、助産師に必要とされる基本知識がまとまっています
「助産とは」「助産師とは」といった定義や助産学における重要な概念はもちろん、倫理・法律・歴史・文化から教育・研究にいたるまで、丁寧な解説と豊富な資料を掲載し助産学を学ぶ第一歩めとして最適な書籍になっています。
②図解を多数用いることで、学生の理解をたすけます
各章とも図表を充実させ、よりわかりやすい紙面となるよう心がけました。とくに、変化の激しい施策・制度に関連する図表は毎年更新を行い、最新の情報を掲載しています。
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序文
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序
助産師をめぐる動向
わが国においては少子化が進行し,産科医の減少や出産取り扱い施設の閉鎖など,母子を取り巻く厳しい状況が続いている。家族規模の縮小化と養育機能の低下など,母子・親子関係の根幹が揺らぎ,妊娠・育児を支える家族機能も急速に弱体化しつつある。また,晩婚化・晩産化が進行し,高度生殖補助医療が日常の医療として定着する一方で,ハイリスク妊娠や妊産褥婦の重症ケースが増え,医療の高度化・複雑化が進行している。児童虐待相談件数が激増するなど,育児不安・子どもの虐待を含めた育児をめぐる問題も多様化・深刻化している。さらには,若者の性・生活・社会環境の変化から派生する性感染症・薬物依存・栄養障害や,在日外国人や性的マイノリティに特有な母子保健の課題,女性へのドメスティック・バイオレンスといった,母子や性と生殖に関する課題が山積している。加えて,出生前診断や,精子・卵子・胚・卵巣組織の凍結保存,胎児組織の再生・移植医療への応用などといった生殖補助医療の発展に伴う倫理的問題についての社会的な整備も課題となっている。
このような多種多様なニーズおよび急速な変化に対応するべく,助産師業務も変革をしてきた。国際助産師連盟(ICM)は具体的なケアとして,正常出産をより生理的な状態として推進すること,母子の合併症の発見,医療あるいはその他の適切な支援の利用,救急処置の実施から,女性の健康,性と生殖に関する健康,育児まで,女性とその家族・地域をも含めた生涯にわたるリプロダクティブ・ヘルス/ライツへの支援を明瞭に打ち出した(ブリスベン大会,2005年)。2008年には助産師の倫理綱領を採択し,2019年には基本的助産実践に必須のコンピテンシーを改訂した。また,ICMは助産師教育の世界基準(2010年)で,ダイレクトエントリーの助産師教育課程の最低期間を3年間,看護の基礎教育修了者/医療従事者に関する教育課程の最短期間を18か月間とし,2012年には専門職としての助産師教育のためのモデルカリキュラムの概要を発表した。
わが国においては,2007年には看護職の権限拡大(助産師の場合,会陰切開など)が政府の規制改革会議第2次答申案で出された。2008年には助産師の教育の充実や助産師の資質の向上をはかること(厚生労働省),2010年には助産師教育の内容や質の保証のあり方(文部科学省)が検討された。臨床現場においても,助産師の権限拡大を受けて,産科医不足や妊産褥婦のニーズの多様化・複雑化に対応するために,助産外来や院内助産などが全国に広がってきた。
このような背景をもとに,助産師教育の充実をはかるため保健師助産師看護師法の一部改正(2010年4月施行)が行われ,保健師・助産師の教育年限が6か月から1年以上となった。また,2011年施行の保健師助産師看護師学校養成所指定規則では助産師教育の単位数総計は28単位に,2022年施行の改正指定規則では31単位に増加し,更なる教育の充実が図られることとなった。
改訂の趣旨
改正された保健師助産師看護師学校養成所指定規則の基本的枠組みを踏襲しつつ,EBMをふまえた基礎的内容と発展的内容を押さえるように,この度,改訂第6版を企画した。そのねらいは,助産学教育の水準を向上させ,助産学の発展・確立に寄与することである。具体的には助産師や助産業務をめぐる今日的動向や課題に対応できる助産師養成の基盤を支えることにある。なお,本講座は第一義には助産師学生の基礎教育テキストであり,助産師国家試験出題基準の内容についても網羅したものとなっている。また,全編において,前回の改訂から現在までの社会・医療・助産学領域の国内外の動向をふまえている。
本巻(基礎助産学[1]助産学概論)では,助産学をはじめて学ぶ学生のテキストとして,助産学の基礎となる必須の内容を盛り込むことはもちろん,拡大・複雑化している専門職としての助産師のあり方をよりわかりやすく学ぶことができるよう,記述・図解に工夫を凝らした。構成は前版に引きつづき,「助産の概念」「助産師の定義と業務」「助産学を支える理論と研究」「助産師と倫理」「母子保健の動向」「助産の歴史と文化」「助産師と教育」にまとめ,「諸外国の助産・助産師の変遷」「多様な文化への理解」といった,国家試験出題基準の項目に加えて,「地域社会における助産師の役割」など今後の助産師に求められる役割を見すえた加筆を行った。
執筆は各領域の最前線で先進的教育や活動を行っている専門家に依頼した。記載形式は読者が理解しやすいように図表を多く取り入れ,見やすさ・使いやすさを工夫している。助産師学生の教科書としてのみならず,臨床や地域で活躍する助産師の皆様の指導書として,本書を広く活用していただければと,せつに願っている。
なお,本講座は,我妻堯・前原澄子編集による初版を1991年に発行して以来,今回の改訂で第6版を重ねるにいたった。ここに改めて本講座にかかわってこられた編著者各位に深謝したい。
2022年1月
編者ら
目次
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第1章 助産の概念
A 助産の概念
1 助産の起源
2 出産の変遷
3 助産の定義
4 助産の意義・本質
5 助産の対象
6 助産の将来
B 助産に関係する概念
1 リプロダクティブヘルス/ライツ
2 ジェンダー(社会的・文化的につくられた性)
3 性差医療
第2章 助産師の定義と業務
A 助産師の定義と関連する法律
1 わが国の法のおもな種類と階層構造
2 わが国の助産師の定義と関連法規・諸制度
3 国際助産師連盟による助産師の定義
B 助産師の業務・責任と関連する法律
1 保健師助産師看護師法からみた助産師の業務と義務・罰則
2 医療法と助産所
3 その他の助産師の業務にかかわる関連法規・諸制度
C わが国におけるこれからの助産師の役割・働き方
1 周産期医療体制のあり方と助産師
2 医師の働き方改革を進めるためのタスクシフト・タスクシェアと助産師の役割
3 地域における助産師の役割
4 助産師としてのアイデンティティの形成と自律
第3章 助産師を支える理論と研究
A 助産学を構成する理論
1 助産実践を支える理論
2 助産学における対象を理解するための理論
3 助産学に関連する学問領域と探究方法
B 研究と助産師
1 助産学における研究
2 助産学研究の実際
第4章 助産師と倫理
A 倫理的判断を支える諸概念
1 生命倫理と助産師
2 倫理原則
3 ケアの倫理
B 倫理的な助産実践を支える諸規定
1 ICMによる助産師の国際倫理綱領
2 日本助産師会による助産師の倫理綱領
3 日本助産師会が示す「倫理的感応力」
C 助産実践にかかわる倫理的課題と意思決定支援
1 周産期医療における倫理的課題とその特徴
2 倫理的課題に対する助産師による意思決定支援
第5章 母子保健の動向
A 母子保健の歴史
1 明治時代の母子保健(1868~1912年)
2 大正時代の母子保健(1912~1926年)
3 昭和初期~第二次世界大戦以前の母子保健(1926~1945年)
4 第二次世界大戦以後の昭和の母子保健(1946~1989年)
5 平成時代以降の母子保健(1989年~)
6 母子健康手帳の変遷にみる妊産婦ケアの歴史
7 母子保健活動を支える人的資源
B 母子保健の動向と諸制度
1 わが国の母子保健の水準
2 現在のおもな母子保健施策
3 母子保健の基盤整備
第6章 助産の歴史と文化
A 古代から江戸時代までの助産の変遷
1 奈良時代まで(~794年)
2 平安時代(794~1185年)
3 鎌倉時代・室町時代(1185~1573年)
4 安土桃山時代(1573~1603年)
5 江戸時代(1603~1868年)
B 明治~現在までの助産の変遷
1 明治時代(1868~1912年)
2 大正時代(1912~1926年)
3 昭和時代(1926~1989年)
4 平成時代以降(1989年~)
C 諸外国の助産の変遷
1 17世紀まで
2 18~19世紀
3 20~21世紀
D 助産の文化論
1 多様な文化における助産
2 わが国の助産習俗
第 7 章 助産師と教育
A わが国における助産師教育
1 わが国における助産師教育の変遷
2 助産師の卒後教育
B 諸外国における助産師教育
1 諸外国における助産師教育とその特徴
2 卒後教育
付章
索引