健康支援と社会保障制度[3]
社会保障・社会福祉 第22版

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・社会保障制度の全体像を把握しつつ、医療・看護領域と社会福祉の連携について理解を深めることを目ざしたテキストです。
・看護師国家試験にも毎年出題がみられ、医療職がしっかりと理解しておきたい医療保障と介護保障については、とくに多くの紙面を割いて、ていねいに解説しました。
・法律や制度の改正に伴い、毎年の改訂で可能な限り最新のデータを掲載しています。
・臨床現場での事例を掲載し、興味をもって学習できるように工夫しました。
・第8章「社会福祉実践と医療・看護」は、とくに医療現場での多職種連携の実践に結びつく内容となっています。看護職を目ざす学生にぜひ知っておいてほしいトピックスを取り上げています。

*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。

シリーズ 系統看護学講座-専門基礎分野
福田 素生
発行 2021年02月判型:B5頁:320
ISBN 978-4-260-04345-8
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

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はしがき

 私たちは,生まれてから死ぬまでの生活において,個人の努力だけでは対応がむずかしいさまざまな困難に直面する。そうした困難に対し,生活の安定化をはかるとともに国民の最低生活を保障する公的な制度を社会保障制度という。また,社会福祉の制度とは,障害者や要介護高齢者など社会的な援護を要する者が自立した生活を送れるよう生活面でさまざまな支援を行うものである。
 傷病者に対する看護は,病気やけがに苦しむ者を支えるために不可欠のものであるが,看護だけで,そうした困難に直面する者を支えることはできない。傷病のために職を失い,あるいは休職を余儀なくされれば,その間,失うことになる所得をどうするか,治療費をどう捻出するかが大きな悩みになることを考えれば明らかであろう。また,多くの障害者や高齢者は,高い医療ニーズに加え,総合的な存在である1人の人間として,所得を必要とし,衣食住に関する生活面での基本的なニーズや教育,就労などを含む幅広いニーズをもっており,彼らの支援にかかわる制度の全体を知らずに,障害者や高齢者を支えることは不可能になっている。
 社会保障や社会福祉の各制度は,年金,医療,福祉と制度別に分かれ,医療,福祉などのサービスは,相互に連携することなくばらばらに行われることが,かつては少なくなかった。しかし,各サービスを担う専門職の側が一方的に守備範囲と内容を決めるのではなく,1人の人間というトータルな存在である利用者のために,それぞれの専門職が連携し,主人公たる利用者を総合的に支えていくべきだとする認識がようやく高まり,保健,医療,福祉サービスの連携も進められるようになった。そうした状況のなか,看護師にとって「病気ではなく,病人をみる」ためには,社会保障や社会福祉の制度の理解が必須のものの1つになっている。一方,逆に社会保障,社会福祉の専門職にとっても医学や看護の基礎知識が不可欠になっていることは言うまでもない。
 かつて,社会保障や社会福祉の制度は,ともすれば支援を要する特定の者を対象とする選別的な制度であり,多くの人にとって,自分とはあまり関係のないものとしてとらえられがちであった。しかし,高齢化の急速な進行と年金制度の成熟化,介護保険制度の創設などにより,社会保障や社会福祉は,次第に誰もが必ずかかわりをもつ普遍的な制度として意識されるようになった。他方,このままのペースで少子高齢化が進めば,社会保障や社会福祉の負担が急増することから,制度の持続可能性を危ぶむ声もあがっており,社会保障や社会福祉の制度が将来的にも国民生活を支えるものとして機能するかどうかは,いまや国民の最大の関心事の1つとなっている。また,社会保障・社会福祉の内容も,従来の保護を要する児童の保護から一般児童の子育ち・子育て支援へ,要介護高齢者の介護から健康な高齢者の介護予防,生きがい対策へ,傷病の治療から疾病の予防,健康づくりへと拡大,深化しつつある。
 そうしたなかで,人間の健康にかかわる事項に社会のさまざまな立場からかかわることが期待される看護師にとって,社会保障,社会福祉の制度に関する知識,素養は,今後ますます求められるようになる,最も重要なものの1つになってくると思われる。
 本書は,そうした基本認識に立ち,社会保障や社会福祉の制度や政策についての教育や研究に従事している者が集い,協力して改訂,執筆した看護師養成課程のテキストである。最新の動向や知見を盛り込むとともに,執筆にあたってとくに留意したのは以下の諸点である。
 まず,内容的に看護師ととくにかかわりが深く,専門的な知識が求められる医療保障,介護保障の制度については,多くのページを割き,詳しく,かつわかりやすい説明を加えた。また,年金制度をはじめとする所得保障制度についても,その重要性に鑑み多くのページ数を確保し,わかりやすく解説することに腐心した。社会福祉の諸制度などについても,看護師が身につけておくべき素養という観点から内容を吟味し,理解しやすいよう記述することに努めた。
 さらに,読者が本書を第1章から通読しても,また特定の章だけを選んで読んでも十分理解することができるよう,各章間で関連する事項については,相互に連携した記述にするように努め,仮に若干の重複が生じることはあっても,必須の事項が落ちてしまうことがないようとくに意を用いた。
 第22版では,こうした内容構成を維持しながら,統計データの更新を行うとともに,雇用関連法や年金関連法の改正などについて加筆した。また,前版に引き続き「保健師助産師看護師国家試験出題基準 平成30年版」にあわせ,必要な内容を網羅することを目ざしている。
 なお,新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,現在,医療・介護・雇用などの分野でさまざまな特例的・臨時的な措置がとられているが,本書では原則として通常の取り扱いについて説明する。
 こうしてできあがった本書が期待に十分こたえるものになっているかどうかは,読者の評価を待つしかないが,今後とも,いたらない点があれば忌憚のないご指摘をいただき,よりよいテキストにしていければと願っている。
 本書が看護師をめざす方々に十分活用され,わが国の社会保障・社会福祉の発展に多少なりとも貢献することができるとすれば,それは私たち執筆者にとって,望外の幸せである。

 2021年1月
 著者ら

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第1章 社会保障制度と社会福祉
 A 社会保障制度
  ①社会保障の概念
  ②社会保障の目的
  ③社会保障の機能
  ④社会保障の体系
  ⑤社会保障の内容
  ⑥社会保障給付費
  ⑦少子高齢化と社会保障制度
 B 社会福祉の法制度
  ①社会福祉の法制度の歴史的展開
  ②社会福祉サービスの内容とサービス提供のしくみ
  ③社会福祉法と福祉6法
  ④社会福祉の財政
  ⑤社会福祉の組織と実施体制
  ⑥社会福祉の従事者と担い手

第2章 現代社会の変化と社会保障・社会福祉の動向
 A 現代社会の変化
  ①人口の変化
  ②地域社会の変化
  ③家族・個人の変化
  ④経済状況の変化
  ⑤雇用状況の変化
 B 社会保障・社会福祉の動向
  ①わが国の社会保障制度の動向
  ②保健医療の動向
  ③社会福祉の動向

第3章 医療保障
 A 医療保障制度の沿革
 B 医療保障制度の構造と体系
  ①医療保障制度の類型
  ②わが国の医療保障制度の特徴
 C 健康保険と国民健康保険
  ①保険者と対象者
  ②給付と患者負担
  ③費用負担
 D 高齢者医療制度
  ①制度創設の経緯と目的
  ②医療費の適正化と特定健康診査など
  ③前期高齢者医療費の財政調整
  ④後期高齢者(長寿)医療制度
 E 保険診療のしくみ
  ①保険医療機関と保険医
  ②診療報酬と薬価基準
  ③診療報酬の審査支払
 F 公費負担医療
 G 国民医療費

第4章 介護保障
 A 介護保険制度創設の背景と介護保障の歴史
  ①介護保険制度創設の背景
  ②介護保障の歴史
  ③介護保険制度の実施状況とその後の制度改正
 B 介護保険制度の概要
  ①制度の基本理念
  ②保険者
  ③被保険者
  ④要介護・要支援の認定
  ⑤保険給付
  ⑥介護保険の財政
  ⑦介護保険事業計画など
  ⑧利用者の権利擁護
 C 介護保険制度の課題と展望
  ①被保険者の範囲の見直し
  ②その他の課題

第5章 所得保障
 A 所得保障制度のしくみ
  ①所得保障制度の役割
  ②各所得保障制度の特徴
 B 年金保険制度
  ①年金保険制度の概要と役割
  ②年金の財政方式――積立方式と賦課方式
  ③わが国の年金保険制度のしくみ
  ④年金保険制度の歴史
  ⑤年金保険制度の課題
 C 社会手当
  ①児童手当
  ②児童扶養手当・特別児童扶養手当
  ③障害者手当
 D 労働保険制度
  ①雇用保険制度
  ②労働者災害補償保険制度

第6章 公的扶助
 A 貧困・低所得問題と公的扶助制度
  ①貧困・低所得の概念
  ②貧困・低所得者の生活問題
  ③貧困・低所得者と社会福祉制度
 B 生活保護制度のしくみ
  ①生活保護制度の目的・原理・原則
  ②生活保護の種類と方法
  ③生活保護基準
  ④生活保護の費用
  ⑤生活保護の実施
 C 低所得者対策
  ①社会手当制度
  ②生活福祉資金貸付制度
  ③公営住宅制度
  ④生活困窮者自立支援制度
 D 近年の動向
  ①貧困・低所得者をめぐる問題
  ②生活保護制度の動向
  ③貧困・低所得者対策の見直し

第7章 社会福祉の分野とサービス
 A 高齢者福祉
  ①高齢者の状況
  ②高齢者福祉の施策
  ③老人保健事業
 B 障害者福祉
  ①障害者の定義と実態
  ②障害者福祉の理念
  ③障害者福祉制度の変遷
  ④新たな法体系の整備
  ⑤障害者福祉の関連施策
 C 児童家庭福祉
  ①児童と育ちの環境としての家庭生活の現状
  ②児童にかかわる法と施策
  ③少子化対策と子育て支援
  ④児童虐待対策
  ⑤子どもの人権と貧困対策

第8章 社会福祉実践と医療・看護
 A 社会福祉援助とは
  ①援助とは
  ②社会福祉援助の法的規定
  ③「生活(ライフ)」の三側面
  ④社会福祉援助技術の分類
 B 個別援助技術(ケースワーク)
  ①生活支援の特徴
  ②生活支援の展開過程
  ③ナラティブ・アプローチ
 C 集団援助技術(グループワーク)
  ①集団の特性
  ②集団援助の独自性
  ③集団援助の展開過程
 D 間接援助技術と関連援助技術
  ①間接援助技術
  ②関連援助技術
 E 社会福祉援助の検討課題
  ①倫理上のディレンマ
  ②エンパワメント
  ③アドボカシー
  ④セルフヘルプ・グループ
 F 連携の重要性
  ①戦後医療を取り巻く変化と社会福祉との関係
  ②医療提供システムの変化と新たな連携の課題
 G 社会福祉実践と医療・看護との連携
  ①医療ソーシャルワーカーとは
  ②医療・看護・福祉の連携の実際
 H 連携の場面とその方法
  ①職種間連携とは
  ②医療機関における連携
  ③地域包括ケアシステムにおける他機関との連携
  ④連携の方法

第9章 社会福祉の歴史
 A 社会福祉の歴史の見方
 B イギリスの社会福祉の歴史
  ①イギリスの社会福祉の時期区分
  ②救貧法による自助と治安対策の時代(1601年~1830年代)
  ③自助の強化と国家干渉の時代(1830年代~1940年代)
  ④社会保障の確立と転回の時代(1940年代~1980年代)
 C 日本の社会福祉の歴史
  ①日本の社会福祉の時期区分
  ②自助と慈善事業の時代:救貧事業のはじまり(1870年代~1910年代)
  ③防貧の視点の登場:公的な整備が始まり,対象が拡大する時期(1910年代~1945年)
  ④社会保障の確立:社会福祉の登場(1945年~1973年)
  ⑤自助と自己責任の時代:国家の役割の縮小(1974年~2000年)

日本社会福祉近現代史年表
索引

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