精神保健福祉 第4版

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・精神保健福祉の歴史(第2章)や関係法規(第3章)などの基礎知識から、精神保健福祉活動全般(第4章)について学べることはもちろん、現在、課題となっている、精神障害者の地域移行支援・地域生活支援についても重点的に学べる内容(第5章・第6章)に刷新しました。
・第5章・第6章では、精神障害者の地域移行支援・地域生活支援とはなにか、どのような展開がなされているのか、各職種はどのように連携するのか、また、そのなかで看護師はどのような役割を持つのかがわかるよう詳細に解説しています。
・第7章では、貧困・障害者虐待・児童虐待・引きこもりといった、精神保健福祉にかかわりの深い社会病理的なテーマを取り上げています。
・図表を多数掲載し、学生がイメージのしやすい紙面となるよう心がけました。

*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 系統看護学講座-別巻
著者代表 末安 民生
発行 2022年02月判型:B5頁:280
ISBN 978-4-260-04218-5
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

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はしがき

発行の序
 本書は,1971(昭和46)年に,原型となる『精神衛生―考え方と諸問題―』が発行されて以来,それぞれの時代における医療・社会の状況を反映して改訂を続けてきた。1990年に『精神保健』とタイトルを改めたのち,さらに2002(平成14)年に装いを新たにして,『精神保健福祉』として初版を発行した。そして,初版発行から20年を迎えた今日,大きく変化しつつある心の健康をめぐる問題を,学生の皆さんが正確にとらえ,看護師としてどのような役割を担うべきなのかを学ぶことができるよう,このたび第4版を出版するはこびとなった。

医療・社会の状況
 近年の医学とその関連分野の進歩は目ざましい。新たな治療法の開発や普及,医療体制の整備が進んだことによって,わが国の平均寿命は男女とも世界トップクラスとなった。しかし,悪性新生物や心疾患,脳血管疾患といった疾患の死亡率はいまだ高く,さらに,糖尿病などの長期にわたって療養を要する生活習慣病も課題である。厚生労働省は2011(平成23)年,精神疾患をこれらに加え「5大疾病」としてその対策に力を注ぐこととした。これは各疾患への対策を医療にのみゆだねるのではなくて,あらゆる生活場面においてその対策に取り組んでいこうとするものである。
 近年では,わが国だけではなく世界においても大きな変化が起きている。インターネットの発達は人々が世界中の情報に同時にアクセスし,多重的につながるという関係を生み出している。それにより人々にとっての情報の意味や位置づけが変化し,コミュニケーションの様相も様変わりした。また,成長型の経済社会から限られた資源を有効に活用し,自然環境との共存を志向する定常型経済社会に移行しなければならないといわれている。
 さらに,2011(平成23)年に発生した東日本大震災は,人の生きる意味や人のつながりについての意識が変わらざるを得ないような衝撃をもたらした。それから10年が経過した現在もなお,避難等によって故郷に戻れない人々がおり,行方不明になったままの肉親への思いは途絶えることなく,人々の心に癒えることのない傷を残している。
 2019(令和1)年12月に初めて感染者が確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,またたくまに世界中に拡大し,わが国でも2020年1月には国内初感染者を確認し,国民生活に影響を及ぼし続けている。2021(令和3)年12月末時点では,国内陽性者数1,733,325名,死亡者数18,393名が確認された。世界を揺るがしているこのウイルスは変異を続け,その対策が,政治経済・地域社会・社会保障などに新たな課題を突き付けており,私たちがこれまで感じることのなかった不安を伴うような新たなストレスを発生させている。
 本書内でも述べているように,精神疾患患者は増加傾向にあり,ストレス,うつ病,自殺,依存症,認知症,虐待などに対する医療や福祉の施策が充実してきている。最近では,コロナ禍での新たなメンタルヘルスケアが試みられている。
 わが国の精神科領域では,2004(平成16)年に公表された「精神保健医療福祉の改革ビジョン」を皮切りに,徐々に社会復帰,地域移行,そして地域生活支援という方向にシフトしつつある。実際に新規患者の入院期間は短縮化傾向にあるが,依然として1年以上の長期入院患者は多く存在し,支援のむずかしさを物語っている。今後も,いかにその人らしさを保ちつつ地域生活への移行を進めるのか,できるだけ入院に頼らない地域医療や訪問看護などのケアの充実はますます重要な課題となるだろう。
 このような社会状況をふまえ,本書ではわが国の精神科領域で重視される,精神障害者の地域生活支援におけるリカバリー(回復)について重点的に扱っている。

改訂内容
 第4版では内容を見直し,新たな執筆陣のもとで,看護師に必要となる最新の精神保健福祉に関する知識と実践をまとめた。わが国の精神科領域が入院医療中心から地域生活中心へとかわっていった歴史的変遷と,それに伴って著しく変化する法制度,さらに,それらを土台にして看護師が行う精神保健福祉活動全般について十分に解説を加えた。とくに,上述したように,近年大きな課題となっている,退院促進を含めた地域移行支援・地域生活支援の展開については大きく取り扱っている。また,現代社会とかかわりが深い精神保健福祉上の問題については,紙幅の都合上,そのすべてを網羅することはできないものの,児童虐待や引きこもりなど注目すべきいくつかのテーマを取り上げている。
 これら各章の内容については,地域における支援が重要となっていることを念頭におき,人と人との支え合い,人と人とのつながりの視点をもって全体をまとめた。なかには看護師の業務をこえた内容についても解説を加えているが,多様化するメンタルヘルスの問題に対し看護師の役割は広がりを見せている。そのため,看護業務の限界を知りながら,どのようなことを専門職である多職種に依頼し連携していくのかといった,精神保健福祉活動の全体像を把握するためにも必要な知識だととらえていただきたい。本書を熟読された読者の皆さんが,精神保健福祉のまなざしを身につけ現場で活躍されることを願ってやまない。

 2021年12月
 著者ら

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第1章 人々の暮らしと精神保健福祉
 A 人は人に支えられながら生きている
  1 赤ん坊が育つとき,大人も成長する
  2 自分と向き合うための相談相手を探す
  3 安心できる人とのつながりを得る
 B 現代のわが国における精神的な健康の問題
  1 自分自身への不満足,将来への不安
  2 自殺
  3 働く人のメンタルヘルス
  4 人格の発達とメンタルヘルス
 C 精神保健福祉の概要
  1 精神的健康と保健・福祉
  2 共生社会とノーマライゼーション
  3 精神保健福祉活動の対象とそのとらえ方
  4 精神保健福祉活動の全体像
 D 本書で学ぶこと

第2章 精神保健福祉の歴史
 A わが国の精神保健福祉の変遷
  1 法制度の変遷――病院中心から地域生活中心へ
  2 第二次世界大戦後の入院患者に対する看護の特徴,社会復帰の取り組み
  3 精神障害者の理解に向けた取り組み
 B 諸外国の精神保健福祉改革

第3章 精神保健福祉に関する法律と施策
 A 精神障害者支援にかかわる法律
  1 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
  2 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律
 B 施策の動向
  1 精神保健医療福祉の改革ビジョン
  2 障害者制度改革としての精神科医療の見直し
  3 精神科病院の構造改革
  4 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築

第4章 精神保健福祉活動の展開に必要な知識と技術
 A 精神障害の予防のために――一次予防
  1 精神保健福祉に関する啓発と教育
  2 精神保健福祉に関する支援システム
 B 早期の対応と地域生活をつなぐために――二次予防
  1 地域における早期支援の重要性と課題
  2 危機的状況に対する早期介入
  3 早期支援に活用できる社会資源
  4 危機のタイプに応じた早期支援
 C 能力の再構築と再発防止のために――三次予防
  1 精神科リハビリテーションとリカバリー
  2 リカバリーを支えるためのストレングスモデル
  3 リカバリーを支えるための援助方法

第5章 地域移行支援・地域生活支援の基礎
 A 地域移行支援・地域生活支援の重要性
  1 精神障害者の現状
  2 精神科医療における長期入院の課題
 B 地域移行支援・地域生活支援の基礎知識
  1 活用できる社会資源
  2 アウトリーチ
  3 家族支援
  4 精神障害者の就労支援
  5 ピアサポート
  6 地域における精神障害者への危機介入

第6章 地域移行支援・地域生活支援の展開
 A 早期退院支援と退院後の地域生活支援
  1 精神医療における早期退院支援の特徴
  2 入院時の支援
  3 退院準備期の支援
  4 退院直前期の支援
  5 退院後の地域生活支援
  6 高齢精神障害者への支援
 B 長期入院患者の地域移行支援・地域生活支援の展開
  1 支援開始期の支援
  2 退院導入期の支援
  3 退院準備期の支援
  4 退院後の地域生活支援
 C 地域生活の中断を防ぐための支援の展開
  1 地域との連携
  2 医療機関での支援

第7章 特定の状況に対する精神保健福祉
 A 貧困と精神保健福祉
  1 貧困と精神障害のかかわり
  2 貧困・低所得に対する社会保障制度
  3 事例
 B 障害者虐待と精神保健福祉
  1 障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律の概要
  2 障害者虐待の現状
  3 施設等における障害者虐待の防止と対応
  4 医療機関における虐待の防止
 C 物質依存と精神保健福祉
  1 物質乱用・依存の動向
  2 物質依存とはどのような病気か
  3 物質依存の治療と回復
 D 子ども虐待と精神保健福祉
  1 子ども虐待とは
  2 子ども虐待による影響
  3 子ども虐待に関連する事項
  4 虐待家族への支援
 E 引きこもり・不登校と精神保健福祉
  1 引きこもり
  2 不登校

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