基礎助産学[2]
母子の基礎科学 第6版
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①女性の健康に関する基本的な医学的知識を網羅
性と生殖に関する解剖生理、性の機能と行動、母子感染・性感染症、女性のライフサイクルと健康課題に加えて、女性生殖器と乳房の疾患の章を設け、助産師に必要とされる基本的な医学的知識を網羅して解説してあります。精緻な図を多用し、理解しやすい紙面となっています。
②不妊と生殖補助医療、出生前診断、遺伝カウンセリングの最新情報を収載
不妊や、現在行われている生殖補助医療とその課題について、取り上げています。着床前診断・出生前診断など、急速に広まる遺伝医療と遺伝カウンセリングについて、最新の情報を事例を用いて丁寧に解説します。
*「助産学講座」は株式会社医学書院の登録商標です。
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2021.04.08
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序文
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序
助産師をめぐる動向
わが国においては少子化が進行し,産科医の減少や出産取り扱い施設の閉鎖など,母子を取り巻く厳しい状況がつづいている。家族規模の縮小化と養育機能の低下など,母子・親子関係の根幹が揺らぎ,妊娠・育児を支える家族機能も急速に弱体化しつつある。また,晩婚化・晩産化が進行し,高度生殖補助医療が日常の医療として定着する一方で,ハイリスク妊娠や妊産褥婦の重症ケースが増え,医療の高度化・複雑化が進行している。児童虐待相談件数が激増するなど,育児不安・子どもの虐待を含めた育児をめぐる問題も多様化・深刻化している。さらには,若者の性・生活・社会環境の変化から派生する性感染症・薬物依存・栄養障害や,在日外国人や性的マイノリティに特有な母子保健の課題,女性へのドメスティック・バイオレンスといった,母子や性と生殖に関する課題が山積している。加えて,出生前診断や,精子・卵子・胚・卵巣組織の凍結保存,胎児組織の再生・移植医療への応用などといった生殖補助医療の発展に伴う倫理的問題についての社会的な整備も課題となっている。
このような多種多様なニーズおよび急速な変化に対応するべく,助産師業務も変革をしてきた。国際助産師連盟(ICM)は具体的なケアとして,正常出産をより生理的な状態として推進すること,母子の合併症の発見,医療あるいはその他の適切な支援の利用,救急処置の実施から,女性の健康,性と生殖に関する健康,育児まで,女性とその家族・地域をも含めた生涯にわたるリプロダクティブ・ヘルス/ライツへの支援を明瞭に打ち出した(ブリスベン大会,2005年)。2008年には助産師の倫理綱領を採択し,2019年には基本的助産実践に必須のコンピテンシーを改訂した。また,ICMは助産師教育の世界基準(2010年)で,ダイレクトエントリーの助産師教育課程の最低期間を3年間,看護の基礎教育修了者/医療従事者に関する教育課程の最短期間を18か月間とし,2012年には専門職としての助産師教育のためのモデルカリキュラムの概要を発表した。
わが国においては,2007年には看護職の権限拡大(助産師の場合,会陰切開など)が政府の規制改革会議第2次答申案で出された。2008年には助産師の教育の充実や助産師の資質の向上をはかること(厚生労働省),2010年には助産師教育の内容や質の保証のあり方(文部科学省)が検討された。臨床現場においても,助産師の権限拡大を受けて,産科医不足や妊産褥婦のニーズの多様化・複雑化に対応するために,助産外来や院内助産などが全国に広がってきた。
このような背景をもとに,助産師教育の充実をはかるため保健師助産師看護師法の一部改正(2010年4月施行)が行われ,保健師・助産師の教育年限が6か月から1年以上となった。また,2011年施行の保健師助産師看護師学校養成所指定規則では助産師教育の単位数総計は28単位に,2022年施行の改正指定規則では31単位に増加し,更なる教育の充実が図られることとなった。
改訂の趣旨
改正された保健師助産師看護師学校養成所指定規則の基本的枠組みを踏襲しつつ,EBMをふまえた基礎的内容と発展的内容を押さえるように,この度,改訂第6版を企画した。そのねらいは,助産学教育の水準を向上させ,助産学の発展・確立に寄与することである。具体的には助産師や助産業務をめぐる今日的動向や課題に対応できる助産師養成の基盤を支えることにある。なお,本講座は第一義には助産師学生の基礎教育テキストであり,助産師国家試験出題基準の内容についても網羅したものとなっている。
折しも,平成29(2017)年4月,「保健師助産師看護師国家試験出題基準 平成30年版」が公表された。基礎助産学においては,「女性生殖器と乳房の疾患」や「婦人科の炎症性疾患」といった項目が加わり,不妊症・不育症や遺伝・出生前診断についての項目が整理された。これを受けて,本巻『助産学講座2 基礎助産学[2]母子の基礎科学』では,「女性生殖器と乳房の疾患」の章ならびに「婦人科の炎症性疾患」の項目を追加し,「周産期における遺伝医学・遺伝カウンセリング」「女性のライフサイクル各期におこるおもな疾患」についても全面的に見直しを行った。さらに「生殖補助医療」については内容の更新と記述のさらなる充実をはかった。
なお,それぞれの学習内容を効率よく学ぶことができるよう,助産学講座シリーズ内の構成の見直しを行った結果,第5版まで本巻で扱っていた「リプロダクションに関する検査」は,『助産学講座6 助産診断・技術学Ⅱ[1]妊娠期』で統合して扱うこととした。
執筆者は各領域の最前線で活躍している教育者や実践家に依頼した。記載形式は読者が理解しやすいように図表を多く取り入れ,見やすさ・使いやすさを工夫している。助産師学生の教科書としてのみならず,臨床や地域で活躍する助産師の皆様の指導書として,本書を広く活用していただければと願っている。
なお,本講座は,我妻堯・前原澄子編集による初版を1991年に発行して以来,今回の改訂で第6版を重ねるにいたった。ここに改めて本講座にかかわってこられた編著者各位に深謝したい。
2020年12月
編者ら
目次
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第1章 リプロダクションに関する解剖・生理
A 母性の身体的特徴
1 形態と機能における男女差(性差)
2 性器の形態的特徴
3 性機能の発達と加齢変化
B 生殖生理に関する視床下部――下垂体系機能
1 視床下部――下垂体系の役割
2 視床下部――下垂体系の形態
3 視床下部ホルモン
4 下垂体ホルモンの種類と作用
5 フィードバック機構
6 月経周期におけるホルモン分泌の変動
7 性周期の調節機構
C 卵巣機能
1 卵巣の形態と卵巣周期
2 卵巣の機能
3 卵巣と卵子の発生
4 排卵の診断と予知
5 排卵の誘発と抑制
6 卵巣機能検査法
D 妊娠の成立と不妊
1 妊娠の成立
2 不妊症
E 胎児胎盤機能
1 胎盤の形成と形態
2 胎盤における物質交換
3 胎盤におけるホルモン産生
F 乳房の構造と乳汁分泌
1 乳房の構造
2 妊娠・分娩と乳汁の分泌
3 乳汁分泌の機序
4 プロラクチンの分泌亢進
第2章 性の行動と機能
A 性の分化と発達
1 多様な性
2 典型的性分化と非典型的性分化
3 からだの性と心の性
4 セクシュアリティとジェンダー
5 性欲論とセクシュアリティの発達
6 思春期の性
B 性交と性反応
1 性行動における種差別主義と性差別
2 生殖と性交の分離
3 女性の性反応
4 男性の性反応
C 性機能不全と性別違和(性別不合)
1 疾病分類における位置づけ
2 性機能不全
3 パラフィリア障害群(性嗜好障害)
4 性同一性障害・性別違和・性別不合
第3章 周産期の遺伝医療と遺伝カウンセリング
A 遺伝医学の重要性
1 遺伝医学の歴史と医療
2 遺伝医療の特徴と助産師
B 染色体の異常による疾患とその検査
1 染色体の基礎知識
2 染色体異常
3 染色体解析法
C 遺伝子と遺伝子解析法
1 遺伝子の構造と機能
2 エピジェネティック制御
3 遺伝子変異と遺伝的多型
4 遺伝子解析法
D 遺伝性疾患
1 メンデル遺伝病(単一遺伝子病)
2 非メンデル遺伝病
E 出生前診断
1 出生前診断の概念・目的・倫理
2 出生前診断におけるガイドライン・見解
3 検査精度
4 非確定的検査
5 確定的検査
6 出生前診断における遺伝カウンセリングの実際
7 着床前遺伝子診断
F 助産師と遺伝カウンセリング
1 遺伝カウンセリングを受ける女性
2 出生前診断における助産師の役割
3 遺伝看護の提供
4 助産師と遺伝カウンセリングの共通するケア
第4章 生殖補助医療
A 生殖補助医療の実際
1 人工授精
2 精子処理法
3 卵巣刺激法
4 体外受精とその関連技術
5 凍結保存
6 卵管不妊のカテーテル治療
7 着床前遺伝子診断
8 精巣または精巣上体からの精子の回収
B 生殖補助医療の問題点
1 体外受精に関する副作用
2 生殖補助医療に関する倫理・社会面での諸問題
3 不妊症・不育症への支援
第5章 母子と免疫
A 免疫学概論
1 液性免疫と細胞性免疫
2 免疫担当細胞
3 免疫に関与する因子
B 母体の免疫学的特性
1 妊娠の成立と維持
2 妊娠中の母体の免疫能
3 不育症
4 母児間血液型不適合妊娠
C 胎児の免疫学的特性
1 胎生期の免疫系の発達
2 先天感染
D 新生児の免疫学的特性
1 新生児の免疫能
2 免疫能に影響を及ぼす新生児特有の因子
3 新生児感染症の特徴
4 予防接種
第6章 母子と感染
A 母子感染総論
1 母子感染と母子感染症
2 母子感染の機序
3 母子感染の診断・治療と予防
B 母子感染各論
1 風疹ウイルス
2 単純ヘルペスウイルス(HSV)
3 サイトメガロウイルス(CMV)
4 水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)
5 トキソプラズマ-ゴンディイ
6 梅毒トレポネーマ
7 パルボウイルスB19
8 B型肝炎ウイルス(HBV)
9 C型肝炎ウイルス(HCV)
10 ヒトT細胞白血病ウイルス-1(HTLV-1)
11 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
12 ヒトパピローマウイルス(HPV)
13 クラミジア-トラコマティス
14 B群溶血性レンサ球菌(GBS)
15 カンジダ属
第7章 婦人科感染症
A 婦人科の炎症性疾患
1 外陰炎・腟周囲炎
2 腟炎
3 尿道炎・膀胱炎・腎盂腎炎
4 子宮頸管炎
5 骨盤内炎症性疾患(PID)
B 性感染症
1 性感染症総論
2 性器ヘルペス
3 尖圭コンジローマとHPV感染症
4 HIV感染症・エイズ(AIDS)
5 性器クラミジア感染症
6 淋菌感染症
7 梅毒
8 腟トリコモナス症
9 ケジラミ症
10 疥癬
第8章 女性のライフサイクル各期におこるおもな疾患
A 思春期・成熟期の疾患
1 性器の奇形・異常
2 早発思春期と遅発思春期
3 無月経
4 月経異常
5 月経困難症
6 月経前症候群(PMS)と月経前不快気分障害(PMDD)
7 やせ,体重減少性無月経
8 肥満
9 多囊胞性卵巣症候群(PCOS)
B 更年期・老年期の疾患
1 閉経・更年期障害
2 メタボリックシンドローム
3 骨粗鬆症・フレイル
4 萎縮性腟炎
5 骨盤臓器脱
6 排尿障害
第9章 女性生殖器と乳房の疾患
A 子宮と付属器の疾患とその検査
1 子宮腫瘍
2 卵巣腫瘍
3 子宮内膜症
4 検査法
B 乳房の疾患とその検査
1 乳がん
2 乳腺症
3 乳腺炎
4 乳房の検査法
索引
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。
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