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コアカリ準拠
Dr.ミカミの動画で学ぶ基礎医学
生命科学編

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医学部教育の到達目標である「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に準拠してつくられた新しい基礎医学の教科書。通常の教科書とは異なり、各単元を著者の三上貴浩先生が動画で解説。わかりにくい基礎医学の知識を動画と書籍の両コンテンツをフル活用して徹底的に学ぶことができる。これまでの常識にとらわれない新しい“教科書”のカタチを追求した意欲作がついに登場!

三上 貴浩
発行 2021年04月判型:B5頁:514
ISBN 978-4-260-04305-2
定価 7,150円 (本体6,500円+税)

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 医学の基礎を学ぶあらゆる方々に向けて本書を執筆しました。対象は,医学部,看護学部,薬学部,歯学部の1~4年の学生で,より上級者や彼らを指導する先生方も対象に含まれます。本書は「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に準拠しているため,CBT対策に使えるのはもちろんのこと,基礎医学の深い部分にまで言及しているため,大学の定期試験対策にも耐える内容となっています。また,本書の最大の特徴として,講義動画を充実させました。文章だけだと理解しにくいように思えるかもしれませんが,私の講義動画を必ず先に視聴していただきたいと思います。本書を傍らに置き,私の解説動画を視聴することで,本書の内容が容易に理解できると思います。その後に再度テキストを読めば,理解がさらに深まったことを実感できるはずです。講義動画を視聴する際は,メモ取りなどに専念せず,内容を聴くことにぜひ全力を傾けてください。まず,講義の全体像を把握することが,理解への近道となります。

 執筆に際しては,分野横断的に書くことを心がけました。また,英語の語源に関する記述も充実をさせました。医学用語について,その語源から学ぶことは暗記のうえでも,その単語のバックグラウンドを知るうえでもとても効率的です。たとえば,cholecystectomyは胆囊摘出術の意であるが,cholecyst+ectomy(摘出)から成ります。cholecystは胆囊を意味します(21頁参照)。また,ectomyはect+tomyとさらに分解され,ectはexであり外へを意味し,摘出の「出」に対応します。例えば外胚葉(ectoderm)など。tomyは「切る」ですが,anatomyでも出てきます。以上のことから,まさにectomy=excision(ect=ex,tomy=cis とそれぞれ対応することに注意する)です。ちなみに,外胚葉はectodermですが,中胚葉(mesoderm)と内胚葉(endoderm)も覚えておくとよい。meso が間であるということは,mesenchyma(間質)やmesangium(メサンギウム)でわかるでしょう。

 もう1つの例をあげましょう。橈骨輪状靱帯はannular ligament of radiusといいますが,このannularが輪状を意味します。このおかげで橈骨頭が「自転」して,それに伴い橈骨遠位端が尺骨頭の周りを「公転」するから回内回外運動が可能となるのです。annu-は「回る」ということで,annual やanniversary(1年に一回回ってくる)にも見られます。橈骨はこのようにくるくる回転する骨だからこそ,車軸・放射状を意味するradialに由来するradiusというのです。

独り言のコーナーでは,私が普段からよく聴いている楽曲や趣味の話などについても触れました。これらもただ趣味を紹介したわけではなく,基礎医学の学習内容とリンクし,そこからの連想として記述したものです。

 知識を整理し,それをアウトプットするには「知識の熟成」が必要です。引用・参考文献を100冊以上並べ立てたとしても,そこに書かれた内容をきちんと理解し,自己の知識として熟成させなければ,それはただの受け売りでしかなく,このような突貫工事的な知識は新生血管のように脆弱です。私が100冊以上の書籍を読んだのは学生時代のことで,そこから得た知識は熟成され,かつPapezの回路で取捨選択されてきました。本書はこのようにして残った洗練された知識をそのまま書き出したものです。

 本書が基礎医学を学ぶすべての方々にとって,新たな知識との出会いの場となり,そこで得たものが読者の皆さんのなかでじっくりと熟成されるきっかけとなれば幸いです。

 2021年2月
 三上貴浩

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付録動画をご覧いただくには

1 細胞の構造と機能
2 ゲノム・染色体・遺伝子
3 生物の進化
4 細胞膜
5 細胞骨格と細胞運動
6 組織・各臓器の構造と機能
7 器官の位置関係
8 情報伝達の基本
9 神経による情報伝達の基礎
10 生体防御の機序
11 ホメオスタシス
12 個体の発生
13 生体物質の代謝
14 ウイルスの基本的性状と病原性
15 ウイルス感染に対する生体反応・予防
16 各種のウイルスの特徴と病原性
17 細菌・真菌
18 寄生虫
19 免疫系の一般特性
20 自己と非自己の識別に関与する分子とその役割
21 免疫反応の調整機構
22 疾患と免疫
23 薬理作用の基本
24 薬物の動態
25 薬物の評価
26 治療に用いられる薬物
27 遺伝的多様性と疾患
28 細胞傷害・変性と細胞死
29 代謝障害
30 循環障害,臓器障害
31 炎症と創傷治癒
32 腫瘍

索引

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学びのハードルを下げる,基礎医学のYouTube版!?
書評者:大木 隆生(東京慈恵医大教授・外科学)

 本書は医・歯・薬・看護学部に入学し基礎医学を学び始めた学生を念頭に執筆された教科書であるが,あらためて基礎医学を学び直したい臨床医,研究者に加えてコメディカル,さらには自然科学に興味のある意欲的な高校生も対象になる名著である。

 目次立ては文部科学省が示した「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に準拠しており,医学部教育において活用しやすく実践的な組み立てとなっている。しかし,本書の最大の特徴は,コア・カリキュラムを網羅する総再生時間が147時間にも及ぶ著者の解説動画である。動画では各項目が詳しく,わかりやすく解説されており,書籍と動画が一体となった,新しいタイプの教科書の形を提案している。

 いかに書籍の内容が優れていても多くに読んでもらえなければ価値が半減するが,同書の新しい取り組みは基礎医学のYouTube版ともいえ,活字離れが著しい現代っ子にとって学びのハードルを下げる効果は絶大と考えられる。また,とっつきの悪い基礎医学の複雑な用語解説についても,学識高い著者ならではの語源にさかのぼっての解説は興味深く,記憶に残りやすくなるような工夫がちりばめられている。こうした工夫は基礎医学の門戸を広げるのに大いに役立つであろう。

 若者の“基礎医学離れ”が叫ばれて久しいが,大げさではなく将来の日本の国力に影を落とす由々しき事態である。本書は従来の重厚長大ゆえに若者に敬遠されがちだった基礎医学の教科書をさまざまな工夫で克服しており,より多くの人材が基礎医学の魅力に取りつかれることが期待できる。

 今回,自分も数十年ぶりに本書で基礎医学の勉強をしたが,感動した。


学問を楽しむためのガイドブックと神講義
書評者:佐藤 洋一(岩手医大名誉教授・解剖学/医学教育学)

 俊英の基礎医学者である三上貴浩先生が,これまでになく面白い本を上梓された。生命科学の基礎を「医学教育モデル・コア・カリキュラム」準拠で学問体系横断的にまとめており,しかも解説講義の動画付きなのである。もっとも,出版されている多くの細胞生物学の本やCBT対策本は科目横断的に書かれているし,動画を組み合せた出版物もかなりある。

 では何がユニークなのだろうか。

 何と言っても,小難しい事象を論理立てて,しかも多分野をリンクさせた本(と講義)なのである。本文は,余剰を切り取った簡潔な記述である。一方,これと対極にあるのが,語源や関連疾患などを述べている「独り言」というコラムである。博学な知識をひけらかすのではなく,三上先生が「ねえ,これって面白くない?」と語りかけている。CBTに出題されることのないであろう道草エピソードは本書の大きな魅力である。また,動画はプレゼンソフトを使って仕上げたものではなく,文章と手書きを組み合せたものである。私たちは,ともすればきれいなプレゼン画像を眺めただけで全て理解したと思いがちであるが,自分の脳の中にある思考を定着させるにはある程度の時間がかかるものである。プレゼンソフトを使った画像とハンドアウトで行う授業に比べ,手書き・板書を主体とした授業では単位時間当たりに教示する知識量が格段に少なくなる。しかし知識を納得して身につけるには,手で書く板書のスピードが適している。科学の修得には知識量よりは思考過程が重要であるが,板書の方が思考過程もよくわかる。「こっちからこっちに」とか「~だから」というライブ感のある言葉が理解を助ける。手書きの図は,きれいではないが,味がある。私も,ついつい三上先生が図を書くのに合わせてペンを走らせた。一方的な伝達講義にならないで視聴者を巻き込む効果が手書きにはある。まさしく神講義と言ってよい。

 とはいえ,難点がないわけではない。まずこの本(講義)の読者層(視聴者層)が限られるのではないか,という点である。初年次には生物学の基礎ができていない学生も多く,彼らにとってはこれまで聞いたことのないさまざまな用語が次々に出てくるのでついていけないのではなかろうか。また,医学部の基礎研究室の大部分の教員は医学部以外の学部出身者が多いためか,病態生理なども含めた生命科学全般の見識を備えた人は減少し,当然のことながら,知識を統合化した本書を教科書として使いこなす教員はまれであろう。また,CBT対策本としては,知識を詰め込むことに汲々としている学生にとって,道草エピソードはうっとうしいだけであろう。もっとも,動画講義は道草エピソードがあまりないので,基礎生命科学を俯瞰的にまとめて見直す良い教材のように思える。多方面の学問領域を統合していることから,「バラバラな知識が有機的に結びついた」と実感する学生も多いに違いない。

 であればこそ,本書(講義)は学体系にのっとった基礎医学をある程度学んだ学生が,臨床医学を学び始める時期に読む(見る)教材として最適であろう。基礎生命科学は学問の深化とともに細分化したが,臨床医学では,それらを統合化しなければならない。もちろん,研究の最先端を走ろうと思ったら,やはり多方面の知識の応用が求められる。差し迫った試験がなく,精神的に余裕のある学生にとっては,本書の道草エピソードが将来の医学者を培ってくれる素地となるに違いない。教養課程が減らされている今の医学教育において,この道草エピソードは貴重なサプリメントとなる。一般的なCBT対策本にあきたらない知的好奇心に富んだ学生にこそ読んで(見て)もらいたい本と講義である。そして,一読(一見)して学問の楽しさに目覚めてくれればしめたものである。地盤沈下の著しい日本の基礎生命科学研究を救ってくれる人材が生まれるのだから。

 末筆ながら,道草エピソードを一つ。書評を頼まれて断れない事情があった。三上先生から大正15年の『日本医師会雑誌』をいただいていたのである(本書p.102の「独り言」参照)。三上先生が,有名な解剖学者のお名前とともに私の妻の祖父の名前が雑誌の医師会員名簿にあったことから,わざわざ持ってこられたのである。妻も喜んでいたが,地域医療の変遷を講義する立場にあった私にとっても,住民当たりの医師数の数を算定するのに役立った。そういった恩義があるにもかかわらずピリ辛の書評となったのは,私もお返しに関正次先生の名著『現代組織学と器官微視解剖』(杏林書院,1963)を差し上げたのでイーブンの関係だと思ってる,というわけではない。

 本書が改訂を重ねて,関先生の本と同じような名著となるように,強く希求するからに他ならない。


若き医師の“人生”が詰まった意欲作
書評者:上 昌広(医療ガバナンス研究所理事長)

 「処女作に,その作家の全てが詰まっている」。

 以前,評者の本を担当した編集者から言われた言葉だ。評者は診療・研究の傍ら,月に20報程度の連載と,年間に1冊程度の本を出版している。連載を始めたのは2006年,単行本の処女作は2012年に出版した『復興は現場から動き出す』(東洋経済新報社)だ。当時,43歳だった私は,福島での医療支援活動に加え,これまでの人生経験を盛り込んだ。

 『コアカリ準拠 Dr.ミカミの動画で学ぶ基礎医学――生命科学編』は三上貴浩医師の処女作だ。彼の人生が詰まっている。

 三上医師は2017年に東大医学部を卒業した。「PhD・MD Course」を選択したため,初期臨床研修は行わず,そのまま基礎医学の研究の世界に進んだ。現在,岩手医大の解剖学講座に勤務している。埼玉県出身で,東京の私立海城高校卒業の三上医師は,「人見次郎教授に誘われ,縁もゆかりもない岩手県に飛び込みました」と言う。

 私は,これまで大勢の医学生や若手医師を指導してきたが,この手の腹が据った人物は大きく成長することが多い。処女作である本書を読めば,そのことを実感する。

 私が感心するのが,日進月歩の基礎医学の世界を,彼なりの視点で捉え直し,自分自身の言葉で語っていることだ。前書きには「執筆に際しては,分野横断的に書くことに心掛けました。また,英語の語源に関する記述も充実をさせました」とある。

 本文中に数多く設けられている「Advance」や「独り言」という欄には,三上医師が重視するポイントが紹介されている。例えば,「第14章 ウイルスの基本的性状と病原性」の「独り言」では「capsomere(非対称)がたくさん結合してcapsid(対称)が形成される。capsidは螺旋対称か正二十面対称のいずれかである」と記載されている。このような語源を知ることで,先人たちがウイルスをどのように捉えてきたか,その歴史に触れることができる。

 医学教科書といえば,従来のものに最新の情報を付け加えただけの無味乾燥なものが多いが,三上医師は独自の考察を加えることで,この本を意義深いものにしている。

 三上医師が想定する主たる読者は基礎医学を学ぶ医学生だ。彼は「本書は『医学教育モデル・コア・カリキュラム』に準拠しているため,CBT対策に使えるのはもちろんのこと,基礎医学の深い部分にまで言及しているため,大学の定期試験対策にも堪える内容」となっていると説明する。

 私は1980年代に基礎医学を学んだ。基礎医学がなじみにくい学問であることは,今も昔も変わらないだろう。人生を基礎医学にささげると決意した若き医師の「処女作」は自信を持ってお薦めできる1冊である。ぜひ,お読みいただきたい。

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