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看護教員のための学校経営と管理 第2版

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東京都立看護専門学校7校の校長会が「看護学校のあり方」などさまざまなプロジェクトにおいて話し合い作成してきた資料をもとにした、学校の管理運営に関する参考書の改訂版。学生はもちろん教員の能力向上や倫理的対応や情報・リスク管理にも言及。第2版においては、入学生の確保や進路指導について追加し、さらに新カリキュラムへの対応も一部盛り込んでいる。看護専門学校のすべての教員が直面する課題を網羅した必読書。
編集 中山 富子
発行 2020年03月判型:B5頁:220
ISBN 978-4-260-04141-6
定価 3,300円 (本体3,000円+税)

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第2版の序

 本書の初版が発行されて10年余りが過ぎました。この間,少子超高齢社会への人口・疾病構造の変化等を見すえて,社会保障制度改革が進められ,地域包括ケアシステムの推進に向け,適切な医療提供体制の整備が求められています。療養の場の変化にともない,看護職員には,働く場の拡大とともに多様化・複雑化する対象のニーズに応えていくために,多職種と連携して適切な保健・医療・福祉を提供することが期待されています。こうした状況を受け,この度10年ぶりに看護基礎教育の見直しが行われ,2022(令和4)年度から新たなカリキュラムが施行されることになりました。
 そのような折,初版,増補版を執筆された網野寛子先生から私,中山に本書を引き継いでもらいたいというお話をいただきました。正直,私にできるだろうかと悩みましたが,看護専門学校の学校経営や管理に関するテーマは,その現場で働いている者だからこそ書くことができるのではないかと考え,2018(平成30)年度の東京都立看護専門学校校長会のメンバーに相談しました。都立看護専門学校の学校経営や管理に関するさまざまな取り組みを紹介することによって,専門学校で働く看護教員のお役に立つなら書いてみようとメンバー全員の賛同を得ることができました。そして,網野先生はじめ諸先輩方が築いてこられた都立看護専門学校の組織運営を一層発展させるべくして取り組んできた内容や成果等を織り交ぜ,本書の発刊に至りました。
 初版,増補版からは,以下の部分を変更,更新しました。第1,2章の専門学校の経営と管理,組織運営では,近年の看護専門学校を取り巻く状況や応募者の動向,3つのポリシー,予算と管理,組織運営では,教職員の人材育成とメンタルヘルス等を盛り込みました。第3章のカリキュラム編成では,新カリキュラムに向けて立ち上げた都立看護専門学校の看護教育の充実検討プロジェクトチームの検討経過を紹介しました。第5章の教育と倫理では,多様化する学生への倫理的な対応やアカデミックハラスメントについても記載しました。第7章の学習支援は,国家試験を中心にしたものだけでなく,合理的配慮を必要とする学生への支援も盛り込みました。第8,9章のリスク(危機)管理,情報管理では,リスク(危機)管理マニュアルの策定,学生の健康に関するリスク(危機)管理,サイバーセキュリティ対策,個人情報の取り扱い,情報セキュリティ事故対応 ソーシャルメディアの利用における注意等,現代社会に求められるリスク(危機)や情報管理を取り上げました。そして,新たに第10章では,看護専門学校のおかれている状況をふまえた入学生確保の実際や,最近の就職事情をふまえた進路支援について,都立看護専門学校の現状と取り組みを詳記しました。
 本書が看護専門学校で働く管理者や看護教員のお役に立つことができれば,執筆者一同,何よりの喜びです。
 発刊に際し,都立看護専門学校の運営を支援していただいている東京都福祉保健局医療政策部の皆様,これまでの都立看護専門学校の発展に寄与してくださった先輩教職員の皆様,ともに汗を流す仲間である現職の教職員の皆様に厚く御礼申し上げます。また,実習を受け入れていただいている実習施設の皆様,カリキュラム運営を支えていただいている外部講師の皆様にも心から感謝申し上げます。
 最後になりましたが,執筆から発刊まで,多くの助言やご支援をいただいた医学書院看護出版部の大野学さん,制作部の内田純さんに心より感謝いたします。

 2020年2月
 執筆者を代表して 中山 富子

なお本書の本文では,「東京都立看護専門学校」を「都立看学」と,「看護専門学校」を「専門学校」と表記いたします。

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第2版の序
初版の序

第1章 専門学校の経営と管理の概要
 専門学校を取り巻く状況
 応募者の動向
 ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシー
 専門学校における予算と管理

第2章 専門学校の組織運営
 組織体制
 組織目標と自己申告制度
 職員の人材育成
 専門学校における会議
 学生との良好な信頼関係の構築
 専門学校に勤める教職員のストレスケア
 施設・設備面への対応

第3章 カリキュラム編成
 時代の変化とカリキュラム
 学校の特色を活かしたカリキュラム
 カリキュラム編成のプロセス
 カリキュラムの管理・運営
 課外の活動と潜在的カリキュラム,正課教育と準正課教育
 カリキュラムの評価
 カリキュラムに関わる予算
 カリキュラム見直しのサイクルを早める

第4章 医療安全への取り組み
 臨地実習における安全性の確保
 医療安全に関する意識の醸成
 青梅看護専門学校における「安全教育」の教育内容
 臨地実習におけるインシデント・アクシデントの報告と共有
 看護学生の体調管理
 医療安全に関する予算措置
 医療安全を自らの手で守れる看護師の育成を目指して

第5章 教育と倫理
 看護における倫理の必要性
 学校や教員に求められる倫理性
 多様化する学生への対応
 アカデミックハラスメント
 学生に対する看護倫理教育
 専門学校における倫理

第6章 専任教員に求められる能力
 都立看学における研修体系の整備過程
 教育実践能力
 看護実践能力
 研究能力
 コミュニケーション能力
 マネジメント能力
 キャリアアップ研修
 授業評価による授業改善の取り組み
 専任教員の資質向上に関わる予算の確保
 看護教育は人なり

第7章 学習支援
 入学生の傾向と学習支援の必要性
 成績が振るわない学生への支援
 合理的配慮を必要とする学生への支援
 精神疾患がある学生への対応
 国家試験対策
 少人数担当制度の活用
 系統的な初年次教育の必要性
 看護師になる夢の実現への支援を通して,教員としての成長がある

第8章 リスク(危機)管理
 さまざまなリスク(危機)に備える
 健康に関するリスク(危機)管理
 事故防止のために心がけること
 できることから始める

第9章 情報管理
 ICTのベネフィットとリスク
 サイバーセキュリティ対策
 個人情報の取り扱い
 情報セキュリティ事故対応
 ソーシャルメディアの利用における注意
 情報リテラシーを高める

第10章 入学生確保・進路支援
 入学生確保を取り巻く現状
 入学生確保に向けた取り組み
 組織的な就職支援計画
 専門学校における個々の学生に応じた就職・進学支援
 入学生確保・進路支援に関わる予算の確保

資料
 巻末資料
 索引

COLUMN
 評価は常に難しい
 3年生のプライドと団結力
 インフルエンザ罹患に対する対応
 まずできるところから,教員研修に取り組んでみよう
 雨が降ると涙が出る
 重要情報の消失防止

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自校の活動に置き換えて、教育の向上をめざそう(雑誌『看護教育』より)
書評者: 鳥井元 純子 (大阪府看護学校協議会会長/美原看護専門学校学校長)
 本書の初版を読んだとき、都立の看護専門学校は互いに連携を取り合い、定期的に校長会をもつことで、教育の透明性、健全性、遵法性を高め、併せて説明責任を果たし管理責任の明確化を図ることで、平等な教育の実施、学力の向上を実現したのだと思った。そして、その実践過程がわかりやすく書かれていたことから、全国の看護専門学校の管理者や看護教員のバイブルに近い存在となることが容易に想像できた。

 私が大阪府看護教員養成講習会で「看護学校経営」の講義を担当するようになったのも、この初版が刊行された頃であった。看護学校の経営や管理について系統立てて構成された本書の初版は受講生にもとても理解しやすく、以来参考文献の最初に記載するようにした。また、教務主任養成講習会の「看護学校経営」においても同様に活用してきた。

 第5次指定規則改正を前に発行された第2版は、初版・増補版をふまえながら、より具体的に取り組みが示されており、管理者、専任教員それぞれの立場で、看護学校の経営と管理とは自分たちが実践していくものであると、より実感させられる内容になっている。そう、管理者のための、ではなく、まさに表題のごとく「看護教員のための」という言葉がぴったりとあてはまる内容であるとあらためて感じる。

 本書の序文に「本書が看護専門学校で働く管理者や看護教員のお役に立つことができれば」とあるように、都立という組織のなかだけではなく、どの学校においても活用してほしいと考え続けておられ、わが国の看護教育の向上への助力を惜しまない精神がとてもすばらしいと感じた。特に第3章ではカリキュラム編成についてその考え方、編成の過程、都立看護学校のカリキュラム構成、評価まで非常にわかりやすく記されていて、看護教育カリキュラムの改正に向けて作業に取り組むときの道標にもなるのではないかと考える。さらに第8、9章においては、リスク管理や情報管理について近年の課題をふまえ、具体的で細やかな視点での対応などが記されており、各看護学校においても取り組みの参考にできると考える。

 都立の看護専門学校の実践をそれぞれの学校での看護教育に置き換え、自校ではどのように考えるかの指標にしたり、各校が連携をとりつつ看護教育を考えるときの共通の教材になると思える。

 今回のカリキュラム編成にあたり、本書が多くの看護教員の必読の書であり、学校経営と管理は決して管理者だけが取り組むものではなく、看護教員にこそ意識して実践することが必要だと伝えてくれる重要な1冊であるという思いをさらに強くした。第2版も、私のそばで常に刺激を与え続けてくれる大切な本である。

(『看護教育』2020年10月号掲載)

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