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救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイド

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急性期の終末期看護では、突然終末期におちいった患者が意思決定をしなければならない難しさや、短時間で患者や家族との信頼関係を築く必要があることなど、特有の悩みと困難さをともなう。患者・家族のQOL(Quality of Life)とQOD(Quality of Death)を向上させ、よりよい終末期看護を実践するために、看護師が実践する終末期看護の概念を多角的側面で整理し、臨床現場で活用できる具体的なケアを提案する。

監修 一般社団法人 日本クリティカルケア看護学会 / 一般社団法人 日本救急看護学会
編集 立野 淳子 / 山勢 博彰 / 山勢 善江 / 山本 小奈実
発行 2020年12月判型:A4頁:120
ISBN 978-4-260-04221-5
定価 3,960円 (本体3,600円+税)

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はじめに

1 本書の目的と意義
 救急・集中ケア領域では、あらゆる治療を尽くしても救命困難な患者が存在し、その中には発症から死までの時間が切迫している患者も少なくない。この領域に携わる看護師は、患者の救命を第一に考えケアに集中しつつも、刻々と変化する病態が終末期へと移行するのを意識し始めたときから、可能な限り患者がその人らしい最期を迎えられるよう、患者とその家族への看護を実践している。
 救命に圧倒的な比重がある救急・集中ケア領域においても、「集中治療領域における終末期患者家族のこころのケア指針」(日本集中治療医学会)、「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン~3学会からの提言~」(日本救急医学会・日本集中治療医学会・日本循環器学会)などの終末期に関する指針が示されるようになった。しかし、臨床現場で日々の看護に活用できる実践的なガイドは存在しなかった。
 そこで、救急・集中ケア領域の終末期患者と家族のQOL(Quality of Life)/QOD(Quality of
Death)を向上させることを目的として、日本救急看護学会と日本クリティカルケア看護学会では「救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイド」を作成した。本ガイドは、救急・集中ケア領域の終末期看護を構成する概念として「全人的苦痛緩和」、「意思決定支援」、「悲嘆ケア」、「チーム医療推進」、「組織体制整備」の5つを設定し、それぞれの概念ごとに看護実践の目標から具体的な行動例までを提示し、臨床場面でそのまま活用できるプラクティスガイドとした。
 このガイドによって、救急・集中ケアを受ける患者と家族がより良い死を迎え、終末期看護の質が向上することを目指している。

2 本書の構成
 本プラクティスガイドは、ケアに関する根拠や重要概念の解説をすることによって、単なる実践マニュアルではなく、救急・集中ケアにおける終末期看護をより深く理解できるような構成とした。
 「I.救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイド」の第1部および第2部では、救急・集中ケア領域における終末期ガイドラインの変遷や本ガイド作成の経緯をはじめ、本ガイドの目的や、ここで用いる終末期看護の5つの概念と概念間の関係を説明している。救急・集中ケア領域の終末期では、看護師は患者や家族の身体的、心理・社会的、スピリチュアルな苦痛を捉え「全人的苦痛緩和」に努め、患者自身の終末期に対する思いを引き出し、短期間での「意思決定支援」を行う。また、患者や家族との信頼関係を構築しつつ感情表出を促し、複雑性悲嘆に陥ることがないよう予期悲嘆の段階から「悲嘆ケア」を行う。これら3つの「直接的ケア」は、多職種が連携する「チーム医療」で支えられており、さらに、チーム医療は、救急・集中ケアの当該部署のみならず施設全体の「組織体制」によって支えられている。
 第2部の「2.行動例」では、本ガイドで用いる終末期看護の5つの概念ごとに、目的、目標、項
目、内容、実践の場でそのまま活用できる具体的な行動例を示した。例えば、2つ目の概念である「意思決定支援」の目的は、患者・家族が治療やケアを選択・意思決定できるように支援することであり、そのために①意思決定支援に必要な情報収集・アセスメントをし、問題を抽出できる、②患者・家族とともに最善の選択を検討し、意思決定を支援できる、③意思決定後の患者・家族の心理的負担を軽減できる、という3つの目標を設定した。この目標を達成するためには何をなすべきかを、項目・内容・行動(例)として示している。
 「II.救急・集中ケアにおける終末期看護を支える理論と考え方(解説編)」は本プラクティスガイドの解説編と位置づけ、本ガイドの中で扱う重要な概念(宗教による死生観の違い、日本人のスピリチュアリティなど)や、救急・集中ケアにおける終末期ケアに必要な基本的な理論、5つの概念ごとの行動例を導く根拠となった先行研究や活用可能なアセスメントツールを解説した。

3 本書の使い方
 本ガイドは単なるマニュアルではなく、救急・集中ケアにおける終末期看護を構成する5つの概念を抽出し、概念毎に救急・集中ケアの専門家の知識と経験、先行研究による裏付けをし、臨床の場で根拠をもとに実践することができるよう構成したプラクティスガイドである。
 読者は、どこから読み始めることも可能である。ベッドサイドですぐに使いたいときには「I - 第2部-2.行動例」(8ページ)の概念毎の目的・目標から行動例を参考にすることができる。また、救急・集中ケアにおける終末期の自己学習、および部署内でのカンファレンスや事例検討・勉強会では、「II.救急・集中ケアにおける終末期看護を支える理論と考え方(解説編)」と「I - 第2部-2.行動例」を照らし合わせながら読み進めることによって、根拠のある実践を考えていくこともできる。
 救急・集中ケア領域の終末期患者と家族への質の高いケアが実践できるよう、本書を役立ててもらえれば幸いである。

 2020年11月吉日
 編者一同

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I 救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイド
 第1部 救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイドの概要
  1 救急・集中ケアにおける終末期患者と家族の特徴
  2 プラクティスガイド作成の経緯
  3 プラクティスガイドの目的
  4 プラクティスガイドの構成
  5 プラクティスガイドの使用者
  6 プラクティスガイドの活用方法
  7 救急・集中ケアにおける終末期看護の全体像とケアの5概念
 第2部 救急・集中ケアにおける終末期看護の役割と実際
  1 救急・集中ケアの終末期看護における看護師の基本的役割と対応
  2 行動例
 救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイドQ&A

II 救急・集中ケアにおける終末期看護を支える理論と考え方(解説編)
 1 終末期看護の基盤となる考え方・理論・概念
  1 終末期の考え方
  2 救急・集中治療における終末期に必要な基本的理論
  3 家族を理解するための理論やモデル
  4 直接ケアに必要な理論やモデル・概念
 2 終末期における看護の役割
  1 救急・集中ケアにおける終末期医療の目標
  2 救急・集中ケアにおける看護師の役割
  3 終末期における看護師の直接ケアを効果的に提供するために必要なチーム医療の推進と組織体制の整備
  4 終末期看護における思考プロセス
  5 終末期看護における基本的対応
 3 全人的苦痛緩和
  1 全人的苦痛緩和
  2 目標1.患者・家族の全人的苦痛について情報収集・アセスメントし、問題を抽出できる
  3 目標2.患者が体験している全人的苦痛を緩和できる
  4 目標3.家族が体験している苦痛を緩和できる
 4 意思決定支援
  1 意思決定支援
  2 目標1.意思決定支援に必要な情報収集・アセスメントをし、問題を抽出できる
  3 目標2.患者・家族とともに最善の選択を検討し、意思決定を支援できる
  4 目標3.意思決定後の患者・家族の心理的負担を軽減できる
 5 悲嘆ケア
  1 悲嘆ケア
  2 目標1.患者・家族の悲嘆状況について情報収集・アセスメントし、問題を抽出できる
  3 目標2.患者が体験している喪失感や死に向かう苦痛・ストレスを和らげることができる
   目標3.家族が体験している患者との死別過程に伴う苦痛やストレスを和らげることができる
 6 チーム医療推進
  1 チーム医療推進
  2 目標1.チーム医療の状況について情報収集・アセスメントし、問題を抽出できる
  3 目標2.医療チームで問題解決方法の検討と役割分担を明確にするように調整できる
 7 組織体制整備
  1 組織体制整備
  2 目標1.組織体制について情報収集・アセスメントし、問題を抽出できる
  3 目標2.直接ケアとチーム医療を推進できる
  4 目標3.終末期ケアを行うための部署の体制を整備できる

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