内部障害理学療法学 第2版

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内部障害を引き起こす疾患を循環器疾患、呼吸器疾患、代謝疾患の3つの領域に分け、それぞれ15章で解説を展開する。養成校でのカリキュラムを意識した目次立てで、さらに使いやすい教科書にブラッシュアップした。各章には国家試験に準拠したミニテストも作成し、学習した成果を確認することができる。標準シリーズならではの第一線の執筆陣が、内部障害理学療法学の今を分かりやすく解説!

シリーズ 標準理学療法学 専門分野
シリーズ監修 奈良 勲
編集 高橋 哲也 / 神津 玲 / 野村 卓生
発行 2020年12月判型:B5頁:450
ISBN 978-4-260-04264-2
定価 5,720円 (本体5,200円+税)

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    2021.04.22

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第2版 序

 内部障害理学療法学は,いまや理学療法学の主要専門科目の1つになった.それは高齢化において世界の先頭を行くわが国においては当然の結果と受け止めている.
 2006(平成18)年の診療報酬の改定で「理学療法料」が廃止され,疾患別リハビリテーションの診療報酬体系となった.近年のわが国における理学療法士数の増加は顕著で,すでに「理学療法料」を経験していない理学療法士の数のほうが多くなった.疾患別リハビリテーション体系の導入により,理学療法士には疾患別の専門性を求められるようになった結果,身体全体を多数の要素が集まって,まとまりをもったシステムとしてとらえることが疎かになっていることは否めない.ひとを診る理学療法から,疾患を診る理学療法へ後退した,といっても過言ではない.
 高齢化率が28%を超える超高齢社会のなか,多くの高齢者は複数の疾患,重複した障害を有する.脳梗塞で入院した高齢患者に対して,「私は神経系理学療法が専門(なので,他の疾患や障害のことはわからない)」というのは,あまりにも無責任であろう.無論,慢性心不全の急性増悪で入院した高齢患者に対して,「私は内部障害系理学療法が専門(なので,他の疾患や障害のことはわからない)」というのもありえない.理学療法の基盤となるすべての主要専門科目を修めてこそ,プロフェッションは“ひとを診る理学療法” に昇華することができる.
 内部障害には,心臓機能障害,腎臓機能障害,呼吸器機能障害,膀胱・直腸機能障害,小腸機能障害,ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害,肝臓機能障害がある.内部障害は,その名のとおり身体の内部の臓器機能障害であり,諸臓器は外からは見えず,「わかりにくい」「とらえにくい」と苦手意識をもつ方も少なくないかもしれない.一方,これらはどれも生命にかかわる機能であり,実用的な日常生活活動の実現のために行われる理学療法の可否にもかかわることから,内部臓器障害の理解は自身の理学療法に大きな幅をもたせることができ,大きな安心・自信につながる.
 初版発行から今版までの8年間で,内部障害理学療法学は大きな進化と進歩を遂げた.数多くの論文が発表され,エビデンスが集積された.そのため,今回の企画・編集にあたり,章を厳選し内容を全面的に見直した.第1編には引き続き東北大学医学系研究科内部障害学分野の上月正博教授に御執筆をいただけたため,学術的品格を初版から引き継ぐことができた.今回,循環器,呼吸器,代謝の主要3分野は,実際の授業で使用する際の利便性を考慮し,それぞれ15章で構成し,それら各15 章は編者らが最も信頼するわが国の教育現場や臨床現場のトップリーダーに執筆をお願いしたため,内容の品質も格段に向上した.理学療法士養成校の学生はもちろんのこと,臨床で働く理学療法士の学び直しのバイブルとしても活用していただけるものと自負している.
 2018(平成30)年12月14日,「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(脳卒中・循環器病対策基本法)」が公布された.また,本書の編集中に世界規模で新型コロナウイルス感染症が蔓延し,いまだ終息の糸口がみえず,新たな生活様式(ニューノーマル)への適応や,デジタルトランスフォーメーション(digital transformation; DX)が求められている.理学療法士をとりまく環境は刻々と変化し,理学療法士自身の働き方も大きく変わることも予想されるが,変わらないもの,変わるべきでないものは“症状の正しい観察”を通じた患者の理解であり,身体全体をシステムとしてとらえるために“外からは見えず”とも内部臓器障害を正しく把握し,実用的な日常生活における諸活動の実現のために,安心・安全の理学療法を行うことであると思う.
 内部障害が身体障害者福祉法で認められたのは1967年である.今回,同じ1967年生まれで無二の盟友である神津玲教授と,代謝分野を切り開く時代の寵児,野村卓生教授と一緒に編集できたのは至上の喜びである.

 2020年10月
 高橋哲也

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I 序論
 1 内部障害とは
  A 定義
  B 歴史
  C 内部障害者数の推移
  D 障害者認定と等級

II 循環器障害の理学療法
 なぜ理学療法士が循環器障害のことを学ぶのか
 1 循環器の解剖
  A 心臓の構造と役割
  B 脈管の構造と役割
 2 循環器の生理学
  A 心拍出量
  B 血圧
  C 運動時の循環生理
  D 酸素搬送系の理解
 3 疾病の理解①:虚血性心疾患について
  A 疫学,定義,分類
  B 成因と病態生理
  C 典型的な症状とサイン
  D 検査・診断・治療,重症度分類
  E 理学療法
 4 疾病の理解②:心不全について
  A 心不全の定義,分類,疫学
  B 成因と病態生理
  C 典型的な症状とサイン
  D 診断,検査,治療
  E 理学療法
 5 疾病の理解③:末梢動脈疾患
  A 末梢動脈疾患の定義,分類
  B 成因と病態生理
  C 典型的な症状とサイン
  D 診断,検査,治療と重症度分類
  E 理学療法(予防を含める)
 6 循環器疾患の画像評価①
  A 胸部X線
  B 胸部CT
 7 循環器疾患の画像評価②
  A 心エコー図の基本
  B 冠動脈造影の基本
 8 心電図①
  A 刺激伝導系
  B 基本波形
  C 心電図の装着
  D 心拍数の数え方
  E 心電図を読むポイント①——虚血と􄼷塞
 9 心電図②
  A 心電図を読むポイント②——不整脈
  B 心電図を読むポイント③——ブロック
  C 不整脈発生時の症状——なぜ理学療法士が心電図を読めなければならないのか?
  D ペースメーカや植え込み型除細動器について
 10 フィジカルアセスメントと循環器疾患の身体機能・構造の評価
  A 脈拍,血圧測定
  B 視診,触診
  C 聴診
  D 身体計測・体組成
  E 筋力
 11 循環器疾患の活動と参加の評価
  A FSS-ICU,PFIT,ADL評価
  B NYHA心機能分類
  C 6分間歩行試験
  D QOL,精神,心理評価
  E サルコペニア,フレイルの評価
 12 運動負荷試験と理学療法
  A 運動負荷試験の位置づけ
  B 運動負荷試験の目的
  C 運動負荷試験の禁忌
  D 運動負荷試験の種類
  E 運動負荷試験の方法
  F 心肺運動負荷試験の基本
  G 運動負荷試験の結果から運動プログラムを作成する
 13 急性期の理学療法
  A 理学療法の禁忌,開始基準
  B 進行基準
  C 理学療法の実際
  D ICU-AW,フレイルの影響
  E 理学療法の効果・エビデンス
 14 回復期の理学療法
  A 運動療法の禁忌
  B 運動前後のメディカルチェックと運動中の監視項目
  C 運動療法の実際①——ウォームアップ
  D 運動療法の実際②——有酸素運動
  E 運動療法の実際③——レジスタンストレーニング
  F 理学療法の効果
 15 包括的な心臓リハビリテーション
  A 再発予防のための患者指導
  B 心疾患と心理,認知
  C 再発予防のための患者指導
  D 身体活動のメッツ(METs)表

III 呼吸器障害の理学療法
 なぜ理学療法士が呼吸障害のことを学ぶのか
 1 呼吸器系の解剖
  A 呼吸器系の構造とその特徴
  B 駆動系の構造:胸郭と呼吸筋
  C 気道系の構造
  D 肺実質系の構造
  E 体表解剖について
 2 呼吸器系の生理
  A 換気
  B ガス交換(拡散,血流)
  C 運動時の呼吸器系(換気)の応答と適応
  D 運動時の循環,末梢骨格筋との関連性
 3 呼吸機能障害と活動制限
  A 呼吸機能障害の特徴
  B 換気障害
  C ガス交換障害
  D 呼吸困難
  E 呼吸機能障害における運動機能障害
 4 呼吸機能障害の評価①
  A 評価総論:呼吸機能障害の評価にあたって
  B 情報収集
  C 医療面接
  D バイタルサインと身体所見
  E 呼吸器症状の評価:呼吸困難,喀痰,咳嗽
 5 呼吸機能障害の評価②
  A 呼吸機能検査
  B 動脈血液ガス検査
  C 血液,生化学,細菌学的検査
  D 胸部画像の評価
 6 呼吸機能障害の評価③
  A 運動機能の評価
  B 運動耐容能の評価
  C 日常生活活動の評価
  D 健康関連QOLの評価
 7 呼吸理学療法
  A 呼吸理学療法の位置づけ,定義,目的
  B 呼吸理学療法の構成手段と方法論
  C 呼吸理学療法実施と効果判定検討のための評価
  D 呼吸理学療法の実際:症例提示
 8 運動療法
  A 慢性呼吸器疾患における運動制限因子とその機序
  B 運動療法の意義
  C 運動療法のための評価と運動処方
  D 運動療法の実際
  E 運動処方と運動療法の実際:症例提示
 9 日常生活活動とセルフマネジメント
  A 慢性呼吸器疾患におけるADL制限の原因と特徴
  B ADLにおける呼吸困難調整の考え方と実際
  C ADLにおける環境整備
  D 教育指導とセルフマネジメント
 10 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  A COPDの疫学,病態,臨床的特徴
  B 基本的治療と管理
  C COPDの機能障害と理学療法評価
  D COPDに対する理学療法アプローチ
 11 間質性肺疾患
  A 間質性肺疾患の疫学,病態,臨床的特徴
  B 基本的治療と管理(ガイドライン)
  C 間質性肺疾患(ILD)の機能障害と理学療法評価
  D ILDに対する理学療法アプローチ
 12 高齢者肺炎
  A 高齢者肺炎の疫学,病態,臨床的特徴
  B 高齢者肺炎の基本的治療と管理
  C 高齢者肺炎の理学療法評価
  D 高齢者肺炎に対する理学療法アプローチ
 13 呼吸器合併症
  A 合併症としての呼吸器疾患
  B 術後などにおける呼吸器合併症
  C 理学療法評価とポイント
 14 胸腹部外科周術期
  A 胸腹部手術とその周術期管理の概要と特徴
  B 術前理学療法における評価と治療の実際
  C 術後理学療法における評価と治療の実際
 15 急性呼吸不全:呼吸管理
  A 急性呼吸不全の病態とその評価
  B 治療と管理の概要(酸素療法など,呼吸管理を含む)
  C 理学療法評価と治療の実際——呼吸機能障害へのアプローチ
  D 理学療法評価と治療の実際——運動機能障害へのアプローチ

IV 内分泌代謝疾患・腎疾患・肝疾患の理学療法
 なぜ理学療法士が代謝障害のことを学ぶのか
 1 解剖とホルモン
  A 膵臓・肝臓・腎臓の解剖生理
  B 内分泌腺とホルモン
 2 代謝系の生理・生化学
  A 3大栄養素と代謝
  B 糖質代謝とホルモンの働き
  C 脂質代謝,アミノ酸代謝とホルモンの働き
  D 運動時のエネルギー代謝
  E 運動による代謝改善のメカニズム
 3 代謝系疾患の診断と病態評価
  A 糖尿病の診断と病態評価
  B 肝疾患の診断と病態評価
  C 腎障害の診断と病態評価
  D 肥満症・メタボリックシンドロームの診断と病態評価
 4 糖尿病
  A 糖尿病の疫学
  B 糖尿病の基本治療とガイドライン
 5 糖尿病の合併症
  A 糖尿病合併症の病因論の基本
  B 急性合併症と慢性合併症
  C 糖尿病性神経障害と運動機能
  D その他の糖尿病合併症と運動機能
 6 2型糖尿病に対する運動療法
  A 2型糖尿病の運動療法
  B 標準的な理学療法評価と理学療法
  C 合併症を有する患者への理学療法評価と理学療法
  D 事例に基づく理学療法の実際
 7 1型・小児・高齢糖尿病に対する運動療法
  A 1型糖尿病に対する理学療法評価と理学療法
  B 小児糖尿病に対する理学療法評価と理学療法
  C 高齢者糖尿病に対する理学療法評価と理学療法
 8 糖尿病性足病変①
  A 足部の解剖学と運動学
  B 歩行時の足部の運動力学
  C 糖尿病性足病変の発症要因と増悪要因
  D 糖尿病患者における足部への力学的負荷
 9 糖尿病性足病変②
  A 糖尿病性足病変のリスクアセスメント
  B フットウェアの選択と適応の基本
  C 運動機能障害への理学療法
  D 歩行障害への理学療法
 10 腎障害①
  A 慢性腎臓病の疫学とガイドライン
  B 保存期CKD患者に対する運動療法と身体活動
  C 標準的な保存期CKD患者に対する理学療法評価と理学療法
  D 事例に基づく理学療法の実際
 11 腎障害②
  A 人工透析の疫学とガイドライン
  B 人工透析患者に対する運動療法と身体活動の効果
  C 標準的な理学療法評価と理学療法
  D 事例に基づく理学療法の実際
 12 肝障害
  A 肝障害の疫学とガイドライン
  B 肝疾患患者に対する運動療法と身体活動の効果
  C 標準的な理学療法評価と理学療法
  D 事例に基づく理学療法の実際
 13 肥満症
  A 肥満症の疫学とガイドライン
  B 肥満症患者に対する運動療法と身体活動の効果
  C 標準的な理学療法評価と理学療法
  D 事例に基づく理学療法の実際
 14 メタボリックシンドローム
  A 疫学とガイドライン
  B メタボリックシンドローム患者に対する運動療法と身体活動の効果
  C 標準的な理学療法評価と理学療法
  D 事例に基づく理学療法の実際
 15 療養指導の理論と技法
  A 慢性疾患を有する患者の心理と行動
  B 療養指導に必要な理論とアプローチ法
  C 患者の心理と行動の評価
  D 療養指導モデル

索引

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<特別付録ミニテスト(国家試験準拠)>

各章振り返りのミニテストはこちらです。ご自由にご活用下さい。

 

<講義用/実習用モデル・シラバス>

本書を用いた講義用、実習用のモデル・シラバスはこちらです。ご自由にご活用下さい。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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    2021.04.22