小児看護学[2]
小児臨床看護各論 第14版

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  • 『小児看護学[1]』を基盤として、疾患に特有な看護をより実践的に解説しています。
  • 身体系統別または病態別に構成し、各章ともに医師が各疾患の病態・症状・診断・治療などを概説し、看護師が看護総論と主要な疾患の看護を、疾患や治療の経過にそって解説しています。
  • 近年の看護師国家試験に出題された小児疾患(1型糖尿病、食物アレルギー、急性細気管支炎、気管支喘息、髄膜炎、川崎病、肥厚性幽門狭窄症、腸重積症、胆道閉鎖症、ウイルス性胃腸炎、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、ネフローゼ症候群、尿道下裂、硬膜下血腫、脳性麻痺、骨折、急性中耳炎、扁桃炎、熱中症など)を網羅し、詳しく解説しています。
  • 付章の「事例による看護過程の展開」は、看護師国家試験の状況設定問題への対策として活用できます。
  • ​​​​​​​「発展学習」のコラムを設け、発展的な内容を本文と分けて、学習の便をはかりました。
  • 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。

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はしがき

 子どもの健やかな成熟は,人類共通の願いであり,そのために小児看護が果たす役割は大きいといえます。
 少子超高齢社会を迎えて,子どもを取り巻く環境は急速に変化しています。この変化の中で,次代を担う子どもたちは,どのような成熟過程を歩んでいるのでしょうか。小児看護の対象である子どもについて理解を深めるためには,成長・発達の特徴を学ぶことが欠かせません。また,子どもを取り巻く環境として,現代の家族や社会の状況を知る意義は大きいといえます。子どもへの直接的な支援とともに,さまざまな不安や悩みをかかえる家族が安心して育児にあたることのできる環境づくりが,小児看護の重要な役割となっています。
 さらに,病気や障害をもつにいたった子どもと家族は,どのような体験を重ねているのでしょうか。子どもと家族の不安やとまどいははかりしれず,治療や療養上の体験を共有し,その体験が子どもや家族の価値や意向とつながる感覚がもてるように支えることも看護の大切な役割であると思います。このような視点から,子どもの健康問題の経過やおかれている状況,症状からみた看護,コミュニケーションを含む看護技術や代表的な健康問題など,小児看護のより実践的な学習も求められます。
 本書は,子どもを家族の中の存在として位置づけて,子どもと家族が主体となるケアの理念に基づき,一貫して看護の対象となる人々の主観や関係性を共有し,尊重することを基本としています。入院中の子どもだけでなく,家庭や学校などのあらゆる場面で,すべての健康レベルの子どもを対象として,その成熟過程を支えることを小児看護の目標として位置づけています。
 限られた講義・実習時間の中で,効率的に小児看護学の学習ができるように,より専門的な用語や詳細な内容は「発展学習」として示すことで選択的に学べるように構成しました。また,読者が具体的な子どものイメージを描けるように図表を活用し,一部に事例を設定した記述を加えました。
 以下に本書の構成を詳しく示します。
 小児看護学[1]の小児看護学概論では,第1章で現在の子どもと家族の概況や倫理的視点から,小児看護の役割と課題を論じています。第2章では成長・発達の基本的な知識とそれを学ぶ意義を解説しました。第3~5章は発達段階別の構成として,各期の子どもの成長・発達,健康,家族,看護について解説し,栄養の特徴も各発達段階に含めることで子どもの全体像を描けるようにしました。また,第6章では家族の特徴とアセスメントについて,さらに,第7章では子どもと家族を取り巻く社会について,最新の情報を反映しながら論じています。
 小児看護学[1]の小児臨床看護総論では,小児看護学概論の内容をふまえ,病気・障害をもつ子どもと家族の看護について解説しています。第1章では病気・障害をもつ子どもと家族の特徴と看護の役割を概観し,第2章では入院や外来,在宅などの子どもを取り巻く環境や生活の場,さらには災害といった状況に特徴づけられる看護について,事例を設定することで,子どもとその家族の一連の体験として示しました。第3章では疾病の経過から看護の特徴を論じています。経過ごとに事例を設定しました。第4章は子どものアセスメントとして,必要な知識と技術を解説しています。第5章の症状別の看護は,子どもの基本的特性を押さえながら症状のアセスメントと看護を示しました。第6章は検査・処置の目的と具体的な支援の方法を詳細に述べているので,実習に活用しやすく,看護実践能力の向上につながる内容となっています。第7章では障害の概念,障害児と家族の特徴,社会的支援など,障害児看護の基礎的知識を示しました。第8章では子どもの環境要因で生じる問題として「子どもの虐待と看護」について論じました。
 小児看護学[2]では,身体系統別または病態別に構成し,各疾患の病態・症状・診断・治療と看護について整理・解説しています。また,現代の小児保健医療の課題として,「事故・外傷」を取り上げています。今回の改訂では,引き続き各領域の専門家が執筆にあたることで,より新しい医療情報を加えるとともに,看護の基盤の充実とより実践に即した子どもと家族の看護を検討しています。付章の事例による看護過程の展開は,看護師国家試験の状況設定問題への対策としても活用いただけます。
 なお,本書における「障害」の用語は,法律上の表記に基づいて漢字を用いています。
 本書が,小児看護学をはじめて学ぶ方にとって,講義や実習などの学習の支えとなり,また,すでに小児看護を実践されている方においても看護の基礎をあらためて確認いただく資料となれば幸いです。
 それらの過程を通して,1人でも多くの子どもたちが,社会の中でその子らしく生活できること,家族が家族としていられることを願ってやみません。

 2019年10月
 著者ら

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第1章 染色体異常・胎内環境により発症する先天異常と看護 (西野郁子・名越 廉)
 A 看護総論
  1 出生前の看護
  2 出生後の看護
  3 成長・発達過程のなかでの看護
 B おもな疾患
  1 染色体異常概論
  2 常染色体異常
  3 性染色体異常
  4 胎芽病と胎児病
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 ダウン症候群の子どもの看護
  2 18トリソミー症候群の子どもの看護

第2章 新生児の看護 (茂本咲子・名越 廉)
 A 看護総論
 B おもな疾患
  1 新生児の疾患
  2 低出生体重児の疾患
  3 成熟異常
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 低出生体重児の看護
  2 新生児仮死がみとめられる子どもの看護
  3 高ビリルビン血症の新生児の看護

第3章 代謝性疾患と看護 (出野慶子・宮本茂樹)
 A 看護総論
 B おもな疾患
  1 新生児マススクリーニング
  2 先天代謝異常症
  3 代謝性疾患
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 1型糖尿病をもつ子どもの看護
  2 2型糖尿病をもつ子どもの看護

第4章 内分泌疾患と看護 (出野慶子・宮本茂樹)
 A 看護総論
 B おもな疾患
  1 下垂体疾患
  2 甲状腺疾患
  3 副甲状腺疾患
  4 副腎疾患
  5 性腺の異常
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 下垂体疾患の子どもの看護
  2 先天性副腎過形成症の子どもの看護
  3 甲状腺疾患の子どもの看護

第5章 免疫疾患・アレルギー疾患・リウマチ性疾患と看護 (浅野みどり・坂本龍雄)
 A 看護総論
 B おもな疾患
  1 アレルギー学総論
  2 アレルギー疾患
  3 原発性免疫不全症
  4 リウマチ性疾患
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 食物アレルギーの子どもの看護
  2 気管支喘息の子どもの看護
  3 若年性特発性関節炎の子どもの看護

第6章 感染症と看護 (篠木絵理)
 A 看護総論
  1 子どもの感染に関する基本的知識
  2 病期別の一般的看護
  3 感染症をもつ子どもの看護のポイント
 B おもな疾患
  1 微生物総論
  2 ウイルス感染症
  3 細菌感染症
  4 真菌感染症
  5 その他の病原体による感染症
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 麻疹の子どもの看護
  2 風疹の子どもの看護
  3 水痘の子どもの看護
  4 流行性耳下腺炎(ムンプス)の子どもの看護
  5 急性灰白髄炎(ポリオ)の子どもの看護
  6 髄膜炎(ウイルス性または細菌性)の子どもの看護
  7 百日咳の子どもの看護
  8 ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の子どもの看護
  9 結核の子どもの看護

第7章 呼吸器疾患と看護 (西野郁子・黒崎知道)
 A 看護総論
 B おもな疾患
  1 呼吸器疾患の診断の手順
  2 先天性喘鳴
  3 上気道の疾患
  4 気管支・肺・胸膜疾患
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 かぜ症候群の子どもの看護
  2 肺炎の子どもの看護

第8章 循環器疾患と看護 (半田浩美・岩島 覚)
 A 看護総論
 B おもな疾患
  1 総論
  2 先天性心疾患
  3 後天性心疾患
  4 心臓律動の異常
  5 突然死
  6 小児家族性高コレステロール血症
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 ファロー四徴症の子どもの看護
  2 川崎病の子どもの看護

第9章 消化器疾患と看護 (田中千代・岩井 潤)
 A 看護総論
 B おもな疾患
  1 口腔疾患
  2 頸部囊胞・瘻孔
  3 横隔膜の疾患
  4 食道の疾患
  5 胃・十二指腸の疾患
  6 小腸・大腸の疾患
  7 腹膜・腹壁の疾患
  8 肝臓・胆道の疾患
  9 急性膵炎
  10 急性乳幼児下痢症,急性胃腸炎
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 形態異常のある疾患の子どもの看護
  2 その他の消化器疾患の子どもの看護

第10章 血液・造血器疾患と看護 (松岡真里・梶原道子)
 A 看護総論
 B おもな疾患
  1 貧血
  2 出血性疾患
  3 好中球の量的質的異常
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 貧血のある子どもの看護
  2 出血傾向のある子どもの看護
  3 輸血療法を必要とする子どもの看護
  4 再生不良性貧血の子どもの看護
  5 血友病をもつ子どもの看護

第11章 悪性新生物と看護 (松岡真里・丸 光惠・石田也寸志)
 A 看護総論
  1 診断時の看護
  2 治療を受ける子どもの看護
  3 入院から退院,自宅での生活への移行時期の看護
  4 再燃・再発時の看護
  5 長期フォローアップにおける看護
 B おもな疾患
  1 総論
  2 造血器腫瘍
  3 脳腫瘍
  4 その他の固形腫瘍
  5 トータルケア
  6 日本小児がん研究グループ(JCCG)
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 白血病の子どもの看護
  2 神経芽腫の子どもの看護

第12章 腎・泌尿器および生殖器疾患と看護 (丸 光惠・上村 治・吉野 薫)
 A 看護総論
  1 腎疾患の急性期の看護
  2 腎疾患の慢性期の看護
  3 泌尿器疾患総論
 B おもな疾患
  1 先天性腎尿路異常(CAKUT)
  2 糸球体疾患
  3 尿細管間質疾患
  4 慢性腎臓病(CKD)
  5 急性腎障害(AKI)
  6 腎尿路疾患の診断に用いられる検査
  7 腎尿路疾患と生活管理
  8 末期腎不全と腎代替療法
  9 その他の腎疾患
  10 その他の尿路疾患
  11 生殖器・外性器の疾患
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 腎疾患をもつ子どもの看護
  2 泌尿・生殖器疾患をもつ子どもの看護

第13章 神経疾患と看護 (荒木暁子・田邉雄三・伊達裕昭)
 A 看護総論
 B おもな疾患
  1 小児神経疾患の背景と特徴
  2 神経系の先天異常
  3 痙攣性疾患
  4 中枢神経系の血管性疾患
  5 脳性麻痺
  6 神経皮膚症候群
  7 急性神経疾患
  8 筋疾患
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 痙攣のある子どもの看護
  2 脳性麻痺の子どもの看護
  3 水頭症・二分脊椎の子どもの看護
  4 進行性神経筋疾患の子どもの看護
  5 中途障害の回復過程とリハビリテーション

第14章 運動器疾患と看護 (新家一輝・西須 孝)
 A 看護総論
  1 牽引中の子どもの看護
  2 ギプス装着中の子どもの看護
  3 手術を要する子どもの看護
 B おもな疾患
  1 発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)
  2 先天性内反足
  3 先天性筋性斜頸
  4 脊柱側彎症
  5 骨折
  6 その他
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 発育性股関節形成不全の子どもの看護
  2 先天性内反足の子どもの看護
  3 先天性筋性斜頸の子どもの看護
  4 特発性脊柱側彎症の子どもの看護
  5 骨折した子どもの看護

第15章 皮膚疾患と看護 (齊藤千晶・森脇真一)
 A 看護総論
 B おもな疾患
  1 母斑
  2 魚鱗癬
  3 汗疹
  4 湿疹・皮膚炎群
  5 蕁麻疹
  6 伝染性軟属腫
  7 尋常性疣贅
  8 細菌性皮膚疾患
  9 皮膚真菌症
  10 疥癬
  11 シラミ症
  12 虫刺症
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 母斑を有する子どもの看護
  2 アトピー性皮膚炎の子どもの看護

第16章 眼疾患と看護 (石川紀子・柿原寛子)
 A 看護総論
 B おもな疾患
  1 小児眼科診療の背景と特徴
  2 小児の眼科検査
  3 おもな疾患
  4 補助具・補装具
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 眼科的検査を受ける子どもと家族の看護
  2 斜視の手術を受ける子どもと家族の看護

第17章 耳鼻咽喉疾患と看護 (石川紀子・峯田周幸)
 A 看護総論
 B おもな疾患
  1 先天性難聴
  2 外耳の疾患
  3 中耳の疾患
  4 鼻および副鼻腔の疾患
  5 咽頭の疾患
  6 喉頭の疾患
  7 乳幼児の聴力検査法
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 中耳炎の子どもの看護
  2 扁桃摘出術を受ける子どもの看護

第18章 精神疾患と看護 (塩飽 仁・井上由紀子・生地 新)
 A 看護総論
  1 子どもの心の反応とその特徴
  2 情報収集とアセスメント
  3 治療および支援方法
  4 治療・支援の評価
 B おもな疾患
  1 総論
  2 発達障害(神経発達症群)
  3 神経症圏の疾患
  4 統合失調症と双極性障害・抑うつ障害群
  5 その他の行動上の障害
 C 疾患をもった子どもの看護
  1 不安が強く不登校となった神経症の子どもの看護
  2 注意欠如・多動症および自閉スペクトラム症の子どもの看護
  3 発達障害をもちながら,ほかの疾患の療養が必要な子どもの看護

第19章 事故・外傷と看護 (富岡晶子・前田留美)
 A 看護総論
  1 子どもの事故の特徴
  2 子どもの発達段階に応じた事故防止
 B おもな事故・外傷と看護
  1 不慮の事故総論
  2 頭部外傷
  3 誤飲・誤嚥
  4 溺水
  5 熱傷
  6 熱中症

付章 事例による看護過程の展開 (丸 光惠・奈良間美保)
 A 1型糖尿病の子どものケア
  1 患者についての情報
  2 看護過程の展開
 B 鎖肛をもつ子どものケア
  1 患者についての情報
  2 看護過程の展開

索引

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