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はじめての漢方診療 十五話[DVD付]

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著者が日常診療で実践している漢方の理論と方法をできるだけ脚色なしに伝える本。教科書とは異なり、日常診療に役立つように、また知識が身につくように十五話にまとめている。一般医が漢方を始める際の便宜を考慮し、本文の主な方剤と使用目標を巻末付録とし、さらに腹診の実際をDVDに収め活用できるのも大きな特色である。
シリーズ 総合診療ブックス
三潴 忠道
発行 2005年05月判型:A5頁:304
ISBN 978-4-260-10675-7
定価 5,500円 (本体5,000円+税)
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  • 目次
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序章 一般外来で漢方診療を始めるとき
第一話 これが漢方診療の実際だ
 レクチャー 漢方医学の歴史と基礎知識
 レクチャー 生薬(煎じ薬)の使用の実際
第二話 漢方診断の出発点-陰と陽
 レクチャー 証とは漢方医学的診断のことである-陰と陽ふたたび
第三話 太陽病を究める
 レクチャー かぜ症候群を例に,太陽病をマスターする
 レクチャー 太陽病の漢方製剤を効かせるコツ
        -服用のしかたと養生について
第四話 太陽病から少陽病へ-小柴胡湯をマスターする
 レクチャー 少陽病の診断に役立つ腹診の基本を学ぶ
第五話 柴胡剤の鑑別と運用のコツ-小柴胡湯と比較して
第六話 3つの瀉心湯とその類方
第七話 漢方診療の実際を学ぶ
第八話 於血-血の異常を理解する
 レクチャー 桂枝茯苓丸と当帰芍薬散
 レクチャー その他の臨床に役立つ駆於血剤と運用の実際
第九話 陽明病とその治療
第十話 陰証期のはじまり-太陰病を理解する
第十一話 陰証期とその治療
第十二話 水毒-水の異常を学ぶ(1)
第十三話 水毒-水の異常を学ぶ(2)
第十四話 気の異常を理解する
第十五話 証の変化と方剤の運用
付録
 漢方診療の処方一覧
 DVD 腹診の実際を学ぶ
 索引

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漢方初学者への最適の指南書
書評者: 山口 哲生 (JR東京総合病院・呼吸器内科部長)
 親友の三潴忠道先生が素晴らしい漢方の解説書を書いてくれた。

 実に読みやすい本だ。漢方の解説書というと,陰陽虚実の証の話からはじまって,西洋医学だけをやっている者にはなかなかとっつきづらいものや,症状別・病名別に使える漢方薬を羅列して説明してあるものが多かったが,この本には漢方の考え方と具体的な使い方,診察の仕方が実にわかりやすく書かれてある。読みはじめると,まず入り口としての簡単な解説がある。それからすぐに「これが漢方診療の実際だ」と,どのような患者にどのように使うのかが著効例をあげながら具体的に書かれてある。いかにも患者さんを大切にする三潴先生らしい切り口だ。

 それから漢方の考え方の話,診察の仕方と進んでくるが,べったりとすみからすみまで解説しようというよりは,白い紙に墨汁を落とすように,大切なところに焦点をあてながら,じわじわと話を広げていく。白い頭で読み進むうちに,いつしか墨汁の広がった部分の面積が多くなり,まとまった知識となってくるのを感じることができる。そんな本である。陰陽虚実の考え方はくり返し書いてあり,そのイメージがつかめたら,あとは本のどこからでも墨汁の一点として読み出すことができる。だから読み飽きない。重要な気血水の解説がうしろにまわっていてもそこだけ読むことができるし,大切な解説は繰り返しているのもよい。

 DVDもよい出来だ。待望の「目で見る漢方診療DVD」といえる。

 通読して三潴先生に感じるものは,1つは「本物の漢方の実践」である。「冷え性で力がない」という患者に,「とりあえず補中益気湯か,人参湯か,真武湯でも」という漢方ではない。本書で記されている「陰証期の治療」の四逆湯類の解説には迫力がある。ここまで切り込まないと治せないぞという厳しさがある。これは本物だと感じさせる。そして2つ目は「優しさ」である。1人ひとりの患者さんを大切にしている様子が伝わってくる。DVDで子供の腹診をしている場面などはほのぼのとした彼らしい優しさがにじみ出ている。陰陽の解説で「藤平健先生はこのように言われていた」と言い続けている律儀さも彼らしい。

 少しほめすぎのきらいもあるが,本書が,特にこれから漢方を学ぼうとする者にとって,最適の指南書であることは間違いない。

明解な解説書
書評者: 齋藤 康 (千葉大教授・病態制御治療学/細胞治療学)
 本書の著者,三潴忠道先生は筆者が研修医の頃に一緒に働いた内科の仲間である。彼の医療に対する取り組みの姿勢は,患者さんの訴えや症状をきわめて丁寧に診るというものであったが,それは本書を見て一貫して変わらないと改めて感心した。

 本書ではまず漢方医学がどんな時にその役割が発揮できるかということから始まり,実に丁寧に日常の疑問を解き明かし,それから1つひとつの漢方薬をどのように使っていくかということを,質問に答える形で症例を提示し,かつ,実際の症状や所見を多くの写真で示して説明している。

 本書は全体が15話になっていて,まず「外来診療を始めるとき」から説き起こし,陰と陽の基本の解説を症状や実際の症例で,あるいは実際の漢方薬の効果を交えて説明がなされており,かつその間に漢方薬の歴史や考え方を含めて解説している。西洋医学を学んできた医師あるいは医療従事者が持つような疑問を,丁寧に取り上げてわかりやすく解説がなされている。その他には柴胡剤,瀉心湯,お血,水毒,気の異常などについて,すべて疑問として著者に投げかけられた問題点に対して豊富な経験を通して解説している。

 本書は漢方の専門家ではないわれわれが気軽に漢方薬に頼りたい時,またこのようなことを漢方ではどう考えるのかという疑問について知りたい時に大変役に立つ。漢方独特の難解な漢字も少なく,読者の理解を助けるさまざまな工夫がなされているのも特色である。漢方をこれから学ぶ初心者にも,あるいは漢方診療を始めようとする医師,さらに広く漢方を利用したいと思う方などが活用できる解説書として推薦したい。

入門から上級有段者への充実の“漢方指南書”
書評者: 丸山 征郎 (鹿児島大学医歯学総合大学院大学血管代謝病態解析学)
◆漢方では「証」という治療目標の把握が中核である

 臨床医学は【診察】⇒【診断(病名決定)】⇒【治療】という3つのステップを踏む。しかし漢方には,このうちの【診断】のプロセスがない。その理由は,漢方が成立した時代には,現在のような臓器を単位とする疾患概念がまだ確立していなかったということと,診断の根拠となる検査法がなかったことが主たる原因であろうと思われる。

 さらに大きな理由は,漢方では疾患を,生体本来のあるべき姿からの歪みとして全体像の把握に主眼を置くからであろうと思われる。漢方においては,医療者が五感を駆使してつかんだ治療目標(いわゆる「証」)に拠って治療を展開する。このように,漢方では,「証」の把握こそが中核となるのである。しかしこの「証」は,典型的なアナログ情報であり,数値化できる線形情報ではないので,臨床実践の中で,経験を積み重ね,勘を磨いて先鋭化されてゆく。この漢方の旅のなかで,もちろん「師」や「同僚」が存在すれば,上達が早くなってくることは当然のことである。

◆漢方学習の優れた指南書が上梓された

 しかし,師や同僚もいないことが多い。それらの場合には,指南書が必要である。本書は格好の指南書である。著者の三潴忠道氏は,寺澤捷年氏(現千葉大学教授)の高弟の一人であり,福岡県飯塚市の麻生飯塚病院の東洋医学センター長として,日本の漢方をリードしている新進気鋭の漢方医である。氏はかの千葉大学東洋医学研究会の出身で,藤平 健,小倉重成という大先達の手ほどきも受けた輝かしい経歴を持っている。

 本書では日常診療を材料とし,それについて漢方病理所見を押さえ,処方を決定してゆく。タイトルのごとく,初心者が漢方に入門していく時に非常に役に立つ内容となっているが(腹診のレッスンのDVDも付いている),日常臨床で頻用される処方はほとんど網羅されており,それが漢方の論理に従って解説されているので,これまで漢方を勉強してきた経験者にも大いに役立つ内容となっている。

 筆者は,本書に目を通しながら,まるで,ポリクリや臨床講義を受けているような錯覚に襲われた。臨場感があるのである。内容は深く,それでいながら現実的,実践的な内容となっている。われわれは出色の漢方指南書を得たというべきであろう。

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