進化する病院マネジメント
医療と経営の質がわかる人材育成を目指して

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この10年間,わが国の医療界には,病院の機能分化,情報化の進展,患者権利意識の向上,クリニカルパスを含む医療標準化,成果主義をめぐる議論,新病院会計準則への移行など,さまざまな動きがあった。しかし,それで病院が大きく「進化」したかと言えば“YES”とは言い難い。国に先んじて,「患者第一主義」で実践することが真の「医療改革」に繋がる。
川渕 孝一
発行 2004年09月判型:A5頁:376
ISBN 978-4-260-24080-2
定価 3,300円 (本体3,000円+税)
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  • 目次
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序章 日本版ホスピタリストに求められるリーダーシップ
第1章 外部環境の変化と病院マネジメント-「患者中心の医療」にどう対応するか
第2章 病院経営戦略とバランスト・スコアカード(BSC)-戦略にBSCは有用か
第3章 病院組織-組織はどうすれば活性化するか
第4章 患者のマネジメント-実践的病院マーケティングとは
第5章 人材育成のマネジメント-人はどうすれば動くのか
第6章 内部プロセスのマネジメント-病院をシステムとしてどう捉えるか
第7章 お金のマネジメント-病院をいかにファイナンスすればよいか
第8章 病院のリスクマネジメント
INDEX

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質の高い医療提供を行うためのマネジメントをめざす
書評者: 江藤 かをる (エデュネット協会)
 本書は“勢い”を持った本である。この勢いは著者の思いの強さから生まれている。思いとは「病院マネジメントは科学である」ことを理解し,質の高い医療提供を行うためのマネジメントをめざす「日本版ホスピタリスト」を養成したい,というものであると評者は理解する。この強い思いが,本書の勢いを生み出している。

 本書は,マネジメントの理論や考え方を一般論として紹介しているのではない。本書の特徴は,企業や病院での成功例や実例を用い,理論を生かした効果的・実践的なマネジメントを読者にわかりやすく説いている点にある。多方面からの統計や調査結果を主張の根拠としている点も高く評価できる。

 本書は以下の章から構成されている。

 序章:日本版ホスピタリストに求められるリーダーシップ,第1章:外部環境の変化と病院マネジメント―「患者中心の医療」にどう対応するか,第2章:病院経営戦略とバランスト・スコアカード(BSC)―戦略にBSCは有効か,第3章:病院組織―組織はどうすれば活性化するか,第4章:患者のマネジメント―実践的病院マーケティングとは,第5章:人材育成のマネジメント―人はどうすれば動くのか,第6章:内部プロセスのマネジメント―病院をシステムとしてどう捉えるか,第7章:お金のマネジメント―病院をいかにファイナンスすればよいか,第8章:病院のリスクマネジメント。

 第2章で登場する「バランスト・スコアカード(BSC)」は戦略的な管理手法として大変有効であると思われるが,著者はBSCを日本の医療にあてはめたのみでなく,実践可能な形にして具体的に読者に紹介している。例えば,第5章の職員の動機づけ,第6章の医薬品・診療材料等の科学的在庫管理方法,待ち時間短縮,電子カルテ導入などには,興味をそそられる内容が多岐にわたって述べられている。

 「患者中心」の視点から医療機関のサービス改革に取り組んでいる評者としては,第4章もぜひ多くの医療者に理解していただきたい項目である。

 ダメ経営者・ダメ管理者の典型を「KKDH」と呼ぶ。KKDHとはK―勘,K―経験,D―度胸,H―はったり,を指す。理論的な根拠や戦略を伴わないKKDHでは経営や管理に行き詰まる。KKDHに陥らず著者のいう「日本版ホスピタリスト」をめざす方や,何とか現状を変えたいと思っている医療者には,部門を問わずぜひお薦めしたい1冊である。きっと「そうだ,そうだ」と共感する記述やぜひ試してみようと思う箇所に数多く出会えることであろう。


悩める看護管理者をナビゲートする病院経営ハンドブック (雑誌『看護管理』より)
書評者: 花岡 夏子 (麻生飯塚病院副院長・看護部長)
 医療の果たす使命は,提供する医療の質を高め,患者が安全,安心,納得を得ることである。少子高齢化の社会と長く低迷する経済状況のなか,本来の医療のあるべき姿が問われ,医療提供体制の改革が求められている。多発する医療事故に対し,医療安全体制の醸成や医療機関の機能分化・情報提供の推進が求められ,また国立大学病院や国立病院・療養所の独立行政法人化への転換や統廃合,「日本版DRG」といわれるDPC(Diagnosis Procedure Combination)の導入が始まった。

◆課題解決の指南書である

 このような状況下で,どこの病院も生き残りをかけ,さまざまな改革を行なっているが,改革には強い意思とともに迷い,苦しみが伴うものである。

 本書は,病院経営のノウハウ,リスクマネジメント,人材育成,業務の煩雑さや慢性的なスタッフ不足から生じるメンタルヘルスケアなど多くの課題解決に必要な知恵を与えてくれる。看護管理者のみならず,病院のすべての職種が利用できる指南書である。10年前に出版されてから今日までに,実に7刷の実績があるが,これは多くの人たちに読まれたことの証である。本書は特に,変化しつつある医療界に焦点をあてている。新しい考え方である「病院マネジメントは科学である」を力説し,理論の紹介と具体的な体験や研究から根拠を示してわかりやすく説明している。

 序章では“日本版ホスピタリスト”に求められるリーダーシップとして,病院でのマネジメントの必要性や病院管理者層の役割などを述べている。第1章では,外部環境の変化と病院マネジメントについて,病院の歴史を通し現状と将来像について,多くの資料を提示し細かに分析している。第2章では,こうした外部環境の変化のなかで,病院をどのように再構築し,経営戦略を展開していけばよいのか,医療版バランスト・スコアカード(BSC)を例に挙げて説明している。第3章は,いかにすれば病院組織は活性化するかをテーマに,効果的・効率的な組織運営のあり方が示されている。

 第4~7章では医療版BSCを(1)顧客の視点(病院マーケティング),(2)学習と成長の視点(人材育成マネジメント),(3)内部プロセスの視点(システム設計),(4)財務の視点(お金のマネジメント)の4つの視点で述べている。最終章ではリスクマネジメントに病院はどう対応すべきかについて,考え方やベンチマークに重点をおき,客観的にまとめられている。また各章の最後には活用できる多くの文献が紹介されている。

◆管理システムの思考を養おう

 当院では13年前からTQM(トータル・クオリティ・マネジメント)活動を行なっているが,本書を読んで,この活動の意図するもの,意義や根拠が改めて整理することができた。組織の強みや病院の特性についてさらに理解が深まり,筆者の苦手なマーケティングや財務についても知識が増え,管理システムの思考が養われたと感じる。リーダーとしてマネジメントするうえで,大きな財産となった。

 病院運営において,看護管理者が難問を抱えたときや迷ったときにヒントやヒラメキを与えてくれ,大きく道に迷わずに済みそうな一冊である。

(『看護管理』2005年2月号掲載)

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