感染症外来の事件簿

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21世紀、世界中で感染症の脅威がなお高まる試練の時代。本邦では大学での「臨床感染症学・抗菌薬学」の空白の弊が指摘されて久しいが、その害は抗菌薬の汎用・濫用に繋がって今日の耐性菌蔓延の状況を生んだ。今こそ正しい知識による改革のとき。本書は、外来でよく見られるコモンディジーズへのアプローチを中心に、プライマリケア現場での感染症外来の診療を縦横に説く実践読本である。
岩田 健太郎
発行 2006年02月判型:A5頁:228
ISBN 978-4-260-00197-7
定価 3,520円 (本体3,200円+税)
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  • 目次
  • 書評

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 本篇のまえに
第1話 感染症外来の流れ〈前篇〉咽頭炎-抗菌薬はなぜ必要か
第2話 感染症外来の流れ〈後篇〉膀胱炎-だれのための診察か
第3話 「せき」-その咳はいつからか
第4話 眼瞼炎-レッドアイからみえるもの
第5話 「下痢」-どこで原因は生じたか
第6話 副鼻腔炎・中耳炎-患者は薬のみにて救うにあらず
第7話 蜂窩織炎-コモンディジーズの落とし穴
第8話 ピロリ菌-だれのための検査か
第9話 STI-外来診療の最難関
第10話 旅行外来-病原菌も世界を巡る
第11話 予防接種-病気のリスクマネジメント
 あとがき

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読者から寄せられた声
書評者: 読者アンケートより抜粋
「どの章でもそうだが、切り口が小気味いい。」

「(「第6話 副鼻腔炎・中耳炎-患者は薬のみにて救うにあらず」について)耳鼻科医として常々他の先生(上司)の抗菌薬処方には疑問があったので」(耳鼻咽喉科)

「(「第9話 STI-外来診療の最難関」について)今後本邦でも増加することが予測されるので」(消化器内科)

「(「第9話 STI-外来診療の最難関」について)患者の利益、というアウトカムを至上のものとする岩田先生のプロフェッショナリズムが最もよく表れていた。勉強になった点は、梅毒の診断法の解説。多くの教科書は検査の種類だけ羅列してあり、検査結果の詳しい解釈は試みられていないため」

「(「第9話 STI-外来診療の最難関」について)臨床医は目の前の患者だけでなくパートナーや社会にも大きな影響力を持てるのだという励ましがとてもよかった」(感染症 Reproducative Health)

「(コラム2)なるほどと、自戒、反省しております」(一般内科、腎臓内科、透析科)

「(コラム8)全く同感で、日本における医学教育、医療指針における感染症コントロールの不真面目さを痛快に指摘している。」(外科、漢方医学)

「『これはごちそうである!』と感じました.由緒正しき野菜かどうか,看板が立派かどうかとかに関係なく,最終的に顧客が幸せを感じる一品を出せるかどうかは,調理人の心意気と腕ですよね」(感染症 Reproducative Health)

「批判を恐れず、先生自身のattitude、policyを明らかにした教科書は、知識だけでなく読む者の思想、行動に大きく影響を与えます。先生の驚異的なproductivityは必ずや日本の臨床現場を徐々に変えて行くことだと信じてやみません」

「既に訂正済みかもしれませんが、第4話p.81の『今回の確定診断は、結膜炎でした』は『眼瞼炎』の誤りではないでしょうか。これまでの自分の診療を恥ずかしく、患者さんには申し訳ないことをしてきたと思いました。日々の診療に追われ自己研鑽が不十分であることを実感しました。先生が多忙の業務の中で常に自己研鑽を行うためにどのような時間管理をされているのかも興味があるところです。」(総合内科)
※編集部注;重版時追訂いたしました。ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。

「(装丁)なぜ真っ赤なのか?」
※編集部注;著者がファンである某サッカー選手のイメージからです。

「岩田先生の夢はなんですか?」
※編集部注:著者インタビューの回答はこちら

※その他、頂戴したご意見・ご投稿はすべて著者にお伝えいたしました。
 アンケートご協力誠にありがとうございました。
common diseasesを集約した感染症外来の実践書
書評者: 五味 晴美 (自治医科大学附属病院感染制御部 講師)
 本書は,米国,英国,中国と多彩で国際的な診療経験,滞在経験をもつ精鋭のプライマリケア医であり,感染症科専門医である著者の良書である。外来での感染症診療の実践的書として非常に有意義であるといえる。著者は帰国後,国内では初,かつユニークで斬新な発想で,「総合診療部」と「感染症科診療」の統合をはかろうとしているが,その著者の試みも本書から垣間見ることができる。

 内容は,外来で遭遇する可能性の高いcommon diseasesに限定されている。外来という限られた時間内に,もっとも効率よく,そして,もれのないhistory takingの方法をわかりやすく解説し,必要な項目,physical examinationの重要性などを,一貫して強調している。この点は,現時点での「医学部教育」「卒後初期研修」でも欠落または不足している重要な点である。

 また,文体が,だれでもが気軽に読めるように,軽いタッチで貫かれており,著者独特のトーンがおもしろい。時間のない研修医が,必要なところを,楽しみながら,かつ,重要なメッセージは明確に受け取るように,「簡潔なことば」で印象づけるように考慮されている。そして,人気の高い亀田総合病院に見学にいけなくても,著者のhands―onteaching(病棟での直接指導)を読書で体験できるように,学生,研修医との会話形式も取り入れられている。全文は移動時間など,細切れの数時間で完読できる長さと分量である点も,時間のない研修医,一般医などにとってはありがたい点であろう。

 全体を通して,それぞれの疾患における「宝石のような診療上のポイント」(clinical pearl)がちりばめられており,著者の実に鋭い臨床的な感覚が手に取るように伝わってくる。

 各章の合間に,コーヒーブレイク的に挿入されているコラムでは,著者による「臨床現場の改革の哲学」「国内の医療状況の問題点」なども紹介され,興味深い。

 一部「平易なメッセージ」を目指しすぎ,学問的に少し誤解が生じるのではないか,と思われる表現もあったが臨床的には問題にはならないと思われる。

 医学部3年生ぐらいから,臨床医,開業医まで,広く「感染症診療」「プライマリケア診療」の全体を眺め,習得するのに必読の書であり,評者も推奨したい。

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