リハビリテーションの「質」が上がるカルテの書き方
「何を書けばいいの?」がわかれば「何をすればいいの?」がわかるようになる。
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今日から使える“生きた記載例”満載。カルテは、診療報酬や病院機能評価の根拠となるだけでなく、臨床の質を底上げし、業務効率を高める強力なツールです。カルテを的確に記載すれば、臨床推論は整理され、リハビリテーション方針が明確になり、その結果として、業務効率も患者のアウトカムも確実に向上します。評価が伝わる。思考が見える。臨床が変わる。そんな誰もが読みたくなるようなカルテが書けるようになります!
| 編集 | 平野 明日香 |
|---|---|
| 発行 | 2026年06月判型:B5頁:240 |
| ISBN | 978-4-260-06488-0 |
| 定価 | 4,180円 (本体3,800円+税) |
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はじめに
リハビリテーション医療において、カルテは単なる記録ではありません。それは患者の状態を整理し、臨床判断を支え、チーム医療を前進させるための重要な「思考の記録」となります。しかしながら、臨床現場では次のような声を耳にすることが少なくありません。
「カルテに何を書けばよいのかわからない」
「評価は行っているが、それをどのように文章にまとめればよいのかわからない」
「先輩のカルテは読みやすいけれど、自分の記録とは何が違うのかよくわからない」
このような悩みは、多くの医療職が一度は直面する課題であるといえるでしょう。
カルテ記載の難しさは、単に文章表現の問題ではありません。その背景には、患者の状態をどのように評価し、その評価から何を読み取り、次にどのような介入を行うのかという、臨床思考の整理が十分に言語化されていないことがあります。言い換えれば、「何を書けばよいのか」が理解できれば、「何をすればよいのか」も自然と見えてきます。
本書『リハビリテーションの「質」が上がるカルテの書き方』は、リハビリテーション医療に携わる医療職が、日々の臨床において迷うことなくカルテを記載できるようになることを目的として執筆しました。
本書には、次の3つの特徴があります。
第1に、カルテに記載する内容を疾患別に整理している点です。脳卒中、整形外科疾患、神経筋疾患、呼吸器・循環器疾患など、臨床で日常的に遭遇する主要な疾患を取り上げ、それぞれの病態に応じた評価のポイントとカルテ記載の考え方を解説しています。
第2に、臨床思考を可視化するカルテの書き方を示している点です。評価の結果をどのように解釈し、どのような臨床判断につなげるのか。その思考過程を可視化することによって、カルテは初めて臨床に生きる記録となり、実践的なツールとなります。自分の思考を可視化することで他者と共有するための重要な情報媒体にもなります。読みやすく、意図が明確なカルテは、チーム医療を円滑にし、患者の安全を守ります。
第3に、臨床現場でそのまま活用できる具体的な記載例を豊富に提示している点です。日々のカルテ記載に限らず、申し送り、インシデント発生時の記録、カンファレンス、紹介状作成などの記載例を示しており、臨床場面で活用でき、思考の整理にもつながります。
本書に収載した多くの記載例が、読者のみなさまの日々の臨床のなかで実際に活用され、カルテを書くことが臨床思考を整理する手がかりとなることを願っています。そして、評価が伝わり、思考が見えるカルテを書くことによって、リハビリテーションの実践そのものがより質の高いものへと発展していくことを期待しています。
本書が、臨床現場で患者と向き合いながらカルテ記載に悩む医療職のみなさまにとって、実用的な指針となり、日々の臨床を支える一助となれば幸いです。
2026年4月1日
藤田医科大学病院リハビリテーション部 課長
平野 明日香
目次
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はじめに
第1章 カルテを書く目的──カルテを書くのは何のため?
1 カルテを書く意義って何だろう?
2 カルテは根拠になる
第2章 カルテの基礎知識──まず、これをおさえよう!
1 基本の「き」:SOAPを用いてカルテを記載しよう
2 基本の「ほ」:SOAP以外で重要な項目は何だろう?
3 基本の「ん」:SOAPの実物を見て型を知ろう
4 カルテの基本で素朴な疑問:何を書けばよいだろう?
5 SBAR:申し送りの型を知ろう
第3章 日常のカルテ──効率よく過不足なく記録するコツは?
1 開始時・終了時のカルテは何が違うの?
2 開始時の記載ポイント
[COLUMN] ICFをカルテ記載に活用するとは?
3 終了時の記載ポイント
4 日常のカルテの素朴な疑問
第4章 インシデント発生時のカルテ──トラブルを防ぐ書き方とは?
1 インシデント発生に伴う責任
2 インシデントの種類とカルテの書き方
3 クレーム発生時のカルテの書き方
4 インシデント発生時のカルテの素朴な疑問
第5章 施設別のカルテ──施設特性に合わせた記載のコツとは?
1 入院機能のある病院:医療保険
2 整形外科クリニック:医療保険
3 訪問系施設:医療保険/介護保険
4 通所介護施設(デイサービス):介護保険
5 入所系施設:介護保険
第6章 疾患別のカルテ──疾患特性に合わせた記載のコツとは?
1 脳卒中:急性期
2 脳卒中:回復期
3 脊髄損傷
4 パーキンソン病
5 ギランバレー症候群
6 筋萎縮性側索硬化症
7 多発性硬化症
8 下肢骨折
9 変形性股関節症による人工股関節全置換術後
10 下肢切断
11 慢性閉塞性肺疾患
12 誤嚥性肺炎
13 虚血性心疾患:急性心筋梗塞
14 心不全
15 糖尿病
16 関節リウマチ
17 がん:回復的・緩和的
18 早産低出生体重児
19 脳性麻痺児
第7章 その他の書類の書き方──必要な情報をおさえるコツとは?
1 カンファレンス記録
2 リハビリテーション総合実施計画書
3 リハビリテーションサマリー
4 紹介状
索引
書評
開く
カルテは,リハビリテーションの質を映す鏡である
書評者:平塚 健太(公益社団法人函館市医師会函館市医師会看護・リハビリテーション学院理学療法学科・学科長)
カルテに何を書けばよいのか?
この問いは,若手セラピストに限ったものではない。経験を重ねても,患者の病態をどのように捉え,評価結果をどう解釈し,今後の方針へどう結び付け,どこまでカルテに残すべきかに迷う場面は少なくない。カルテは診療報酬や指導・監査のための書類であると同時に,患者の変化を捉え,支援の方向性をチームで共有し,臨床判断を支える重要な記録である。本書『リハビリテーションの「質」が上がるカルテの書き方』は,多くのセラピストが日々感じていながら,十分に整理されてこなかったこの問いに,実践的に応える一冊である。
本書の特徴は,カルテ記載の基本を押さえながら,その背景にある情報整理や臨床思考の過程を具体的に示している点にある。第1章・第2章では,カルテを書く目的やSOAP,SBARといった基本が整理されている。第3章では,介入時期による記載の違いが示され,記録量や略語の使い方など,日常的に迷いやすい疑問への回答が提示される。第4章ではインシデントやクレーム発生時の記録に踏み込み,カルテ記載が患者の安全対策だけでなく,セラピスト自身を守る手段であることを教えてくれる。
圧巻は,第5章・第6章の施設別・疾患別の記載のコツである。入院,クリニック,訪問,通所,入所といった場に応じた記録の要点に加え,脳卒中,脊髄損傷,神経筋疾患,運動器疾患,心不全,がん,小児領域などが幅広く扱われている。リハビリテーションの対象が多様化する中で,疾患ごとの特性に応じて記録の焦点を変える必要があることを,豊富な記載例を通じて実感できる構成となっている。
本書の実践的価値は,カルテ記載がリハビリテーションの質を支える重要な要素であることを示す点にある。よいカルテとは,単に読みやすい記録ではなく,患者の状態,セラピストの判断,今後の方針が一貫して伝わる記録である。日々の記録を整理することは,自身の評価や介入の根拠を問い直すことでもある。本書はその意味を,具体的な場面に即して気付かせてくれる。
一方で,本書を単なる記載例集として用いるだけでは,その価値を十分に引き出すことはできない。記載例を参考にするだけでなく,なぜその情報を残す必要があるのか,それがどのような判断や支援につながるのかを読み解くことで,本書の価値はぐっと深まる。卒前に学んだ知識と,臨床実習や卒後に求められる実践的な思考との間には,ギャップが生じやすい。その橋渡しをカルテ記載が担ってくれる点に,臨床実践にとどまらない本書の教育的価値がある。
カルテ記載に悩む若手セラピストはもちろん,指導に携わる中堅・管理者,卒前教育を担う教員にも薦めたい。臨床と教育の双方で思考を共有するための共通言語としても,本書の意義は大きい。本書は,カルテを「書かなければならないもの」という義務感から解放し,リハビリテーションの質を映す鏡として捉え直させてくれる実践書である。
「書けない」という現場の困りごとに正面から向き合う一冊
書評者:村永 信吾(医療法人鉄蕉会亀田総合病院リハビリテーション事業管理部・部長)
カルテは,日々の臨床の記録であると同時に,セラピストの思考過程そのものを映し出す鏡です。一方,診療そのものは時間内にこなせても,いざカルテ記載となると何を書くべきか手が止まり,記録に時間を取られてしまう――これは新人セラピストの多くが経験する悩みではないでしょうか。本書は,まさにこの「書けない」という現場の困り事に正面から向き合い,カルテ記載の基本から実践までを丁寧に導いてくれる一冊といえます。
本書は,全7章240ページからなり,カルテを書く目的やカルテの基礎知識といった,誰もが一度は抱く素朴な疑問をわかりやすく整理しています。その上で,日常診療における記載のコツから,インシデント発生時の記録の残し方,さらには入院施設,外来単独施設,訪問系施設,通所介護施設,入所系施設といった施設特性に応じた記載のコツが体系的に解説されています。
中でも本書の白眉といえるのが,疾患特性に合わせた記載のコツに多くの紙面を割いている点です。まず疾患ごとのカルテ記載のポイントと具体的な記載例を示しながら,その疾患で押さえておくべき基本情報やリスク管理上のポイント,日々の記録の書き方,さらにはカルテを通してリハビリテーション診療の方向性をどのように組み立てていくかまでが,一連の流れとして提示されています。とりわけICF(国際生活機能分類)の視点とカルテ記載を結び付け,セラピストの思考過程を記録として可視化する手法を示している点は秀逸であり,単なる「書き方の型」を教える本にとどまらない奥行きを感じさせます。
さらに本書は,カンファレンス記録やリハビリテーション総合実施計画書,退院サマリー,紹介状といった,日々のカルテ記載の先にある文書群にも目を向けています。質の高い医療を推進する上では,取り組みのプロセスが明確であり,かつそのプロセスをあとから追跡できることが求められます。このようにカルテは単なる記録の集積ではなく,疾患特性への理解やセラピストとしての思考過程を学ぶ教材であり,同時に自身の臨床判断プロセスや実施プロセスを示すことで,訴訟などのリスクから自分自身を守るための証明書でもあります。本書は,こうしたカルテの多面的な役割を踏まえた上で,その記録をいかに効率的かつ確実に残すかを指南してくれる,実務に直結した一冊でもあります。
本書は,新人セラピストにとっては「何を書けばよいか」の道標として,指導者にとっては後輩への指導内容を整理する手引きとして,そして組織にとっては記載方法を標準化して施設全体のカルテの質を高めるための土台として,多層的に活用できるように仕上がっています。カルテ記載に悩む全てのセラピスト,そして組織としての記録の質の向上をめざす管理者に,ぜひ手に取っていただきたい一冊です。





