脳卒中の下肢装具 第4版
病態に対応した装具の選択法

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脳卒中の下肢装具療法は種類が多く(短下肢装具:約30種類、長下肢装具、股装具、膝装具など)、患者の病態もさまざまなため、フィッティングは容易でない。本書は装具の機能分類だけでなく、片麻痺患者の身体機能を加味し、個々の状態に適した装具の機能および選定方法を紹介する。今版では、装具の特徴や症例の歩行訓練の様子を動画で示し、より実践的に充実した内容に改訂されている。

渡邉 英夫 / 平山 史朗 / 藤﨑 拡憲
発行 2022年10月判型:A5頁:216
ISBN 978-4-260-05033-3
定価 4,620円 (本体4,200円+税)

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  • 目次
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第4版 序

 本書の初版は2007年10月であり,今回の第4版で15年目となるが,一貫して図,表を多く取り入れ,理解しやすい内容にすることを心掛けてきている。第3版からは4色フルカラーとなり装具の写真が見やすくなり,今回の第4版では新たに動画10点を本文中のQRコードからアクセスできるようにした。具体的には,プラスチック短下肢装具のたわみの判断,膝継手の実際の動き,処方した短下肢装具の装着前と装着後の歩行を動画で実際に示しており,読者のみなさんの理解が一層深まると確信している。

 7章「脳卒中の早期歩行訓練における下肢装具選定法」は,今回新たに執筆した部分であるが,新しいフローチャートから始まり,実際に常備するべき装具の選定法,処方・作製する種々の装具などを写真付きで解説しているので,有用ではないかと期待している。

 14章「脳卒中の長下肢装具(KAFO)」については,大幅に書き直した。最近,脳卒中の早期歩行訓練における長下肢装具の有用性が取り上げられており,病院に常備すべき数種類の長下肢装具を,新製品も含めて取り上げている。

 初版から掲載している,25章「各AFOと足継手の詳細」では,第4版も引き続きわが国で脳卒中片麻痺患者に処方される主な短下肢装具と足継手をまとめて詳しく解説している。第3版出版後に新しく発表された短下肢装具4種類,足継手2種類を加え,販売中止となった6項目を削除した。さらに名称変更などがあり,10項目について修正を行った。

 本書が脳卒中片麻痺者のリハビリテーションに関わる医師,理学療法士,義肢装具士などに役立つことを願っている。

 2022年9月
 著者代表 渡邉英夫

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1 はじめに
2 脳卒中に用いられる主な短下肢装具一覧
3 脳卒中に用いられる主な足継手一覧
4 脳卒中に用いられる下肢装具の種類
  A 短下肢装具(AFO:ankle foot orthosis)
  B 長下肢装具(KAFO:knee ankle foot orthosis)
  C 膝装具(KO:knee orthosis)
  D 股装具(HO:hip orthosis)
5 脳卒中の下肢装具療法
  A 装具装着での歩行訓練の利点
  B 装具装着での歩行訓練での問題点
  C 脳卒中の下肢装具療法の特徴
  D 装具訓練・処方に際して実用的な考え方
  E 早期の歩行訓練でのポイント
6 脳卒中のAFOの全国アンケート調査
  A 回復期リハビリテーション病院で処方されたAFOの種類
  B 回復期リハビリテーション病院における常備している下肢装具の実態調査
7 脳卒中の早期歩行訓練における下肢装具選定法
  A 下肢装具の選定法
  B 脳卒中の早期歩行訓練における常備するべき下肢装具例
  C 脳卒中の歩行用に処方・作製する下肢装具
  D 病態によるAFOの処方
8 脳卒中のAFO選択について検討すべき事項
  A 歩行周期とAFOの望ましい機能
  B 脳卒中の裸足歩行で観察すべき異常とその原因
  C 脳卒中のAFO選択法──平行棒内の裸足歩行から判断する問題点と望ましいAFOの機能──
  D AFOの足継手機能と適応病態
  E 調節式足継手の構造と名称
  F 脳卒中の調節式足継手付きAFOにおける機能と適応
  G 下肢関節の拘縮・変形に対する装具での対応
  H シューホーン型AFOのたわみの種類
  I リジッドAFOの背屈角度とSVA
9 脳卒中に用いられるAFOの分類
  A 足継手の有無による分類
  B 機能面からの分類
  C 足継手付きプラスチックAFOにおける底屈制限の方法
  D 足継手付きプラスチックAFOにおける背屈補助の方法
  E 調節式足継手付きAFOの使い方
  F 脳卒中下肢装具の足部
10 脳卒中の病態からの下肢装具の選定,処方
  A 脳卒中の下肢装具を処方する際の病態チェック表
  B 病態のチェック表の各項目に関する基本的な考え方
11 シューホーン型AFOの使い方
  A シューホーン ブレースの名称は?
  B シューホーン型AFOに含まれるもの
  C シューホーン型AFOの特徴
  D シューホーン型AFOのたわみと適応病態(原則)
  E シューホーン型AFOのトリミングによるたわみの違いと適応
  F シューホーン型AFOの初期背屈角度の違いによる適応
  G シューホーン型AFO処方で考慮すべきこと
  H シューホーン型AFOのチェックアウト
12 ダブルフレキシブルAFOの使い方
  A ダブルフレキシブルAFOの種類
  B ダブルフレキシブルAFOの特徴
  C 背屈設定角度からみたSaga plastic AFOの適応
13 リハビリテーション室に常備すべき訓練用下肢装具
  A 意義
  B 必要な機能
  C 問題点
  D 種類
14 脳卒中の長下肢装具(KAFO)
  A 歩行訓練におけるKAFOの意義
  B 訓練用調節式KAFO
  C 脳卒中のKAFOとして処方,製作する例
15 膝継手(長下肢装具や膝装具用)
  A 輪止め(リングロック)付き膝継手
  B スリーウェイジョイント
  C スペックス(SPEX)膝継手
  D ウルトラ セーフ ステップ膝継手
  E ステップロック膝継手
  F ダイヤルロック膝継手
  G オフセット膝継手
  H クレイン膝継手
  I スイング(Swing)膝継手
  J ロボケミア・ジーエス ニー(RoboChemia® GS Knee®
16 脳卒中の膝装具(KO)
  A 膝装具の意義
  B 常備すべき膝装具
  C 処方する膝装具
17 脳卒中の股装具(HO)
  A 股装具の意義
  B 望ましい股継手の機能
  C 組立式股装具の特徴
18 すぐ装着できる下肢装具
  A 分類
  B 組立式下肢装具
  C 即席下肢装具
19 脳卒中の下肢装具での歩行訓練
  A 脳卒中急性期(発症~約2週間程度)
  B 脳卒中回復期(発症後2週間~2か月程度)
  C 維持期(発症後3か月目以降)
20 脳卒中のAFO歩行でみられる問題点と対処法
21 脳卒中片麻痺に合併しやすい障害への装具による対策
  A 下垂足
  B 尖足
  C 内反足
  D 膝折れ
  E 膝屈曲拘縮
  F 反張膝
  G 鉤爪趾(claw toe)など
  H 痙縮(筋緊張緩和装具の適応例)
  I 痙縮(ボツリヌス療法と下肢装具)
  J 感覚障害
22 脳卒中で臥床中に生じやすい足関節の廃用症候群予防の工夫
23 AFOの装着に関して問題が生じた症例の紹介と解決法
  A 症例1(下腿三頭筋の痙縮増強)
  B 症例2(はさみ肢位歩行の増悪)
  C 症例3(AFOを床に立てると外側に倒れる)
  D 症例4(歩行能力に逆行する訓練)
  E その他の症例
24 脳卒中歩行訓練と装具の選定・適応に関する理学療法士の質問(6病院139名の理学療法士〔PT〕,167問より)
  A 装具治療開始時の問題
  B 足継手付きAFOとプラスチック一体型AFO
  C プラスチックAFO
  D 装具の屋内と屋外使用の問題
  E AFOの選択について
  F 長下肢装具(KAFO)の問題
  G 装具歩行での異常,合併症
  H 装具の除去について
  I 生活期の装具
  J その他
25 各AFOと足継手の詳細
  1 アラードAFO(カーボン製短下肢装具)
  2 ウォークオン シリーズ
  3 ウルトラ セーフ ステップ足継手
  4 愛媛大学式プラスチックAFO
  5 大川原式AFO
  6 大牟田式AFO
  7 オクラホマ足継手
  8 オルソレン ドロップフット ブレース
  9 オルトップAFO
  10 キャンバー足継手
  11 ギャフニー足継手,フレクサーストラップ付きAFO
  12 クレビスフィア アンクルジョイント
  13 ゲイトソリューション,ゲイトソリューション デザイン
  14 シューホーンブレース
  15 ジレット足継手,ジレット背屈補助足継手
  16 ダイナミックAFO
  17 ダイナミックウォーク
  18 タマラック足継手,タマラック背屈補助足継手
  19 ドリーム ブレース,トルク調整型ドリーム ブレース2
  20 ナビゲイト
  21 ニューラビットⅠ型足継手
  22 ネクスギア タンゴ足継手
  23 ファイナー短下肢装具,HFG短下肢装具
  24 福井大学医学部式プラスチックAFO
  25 プロフッター
  26 ヘミスパイラルAFO
  27 ユニバーサル アンクル ジョイント
  28 湯之児式AFO
  29 リーストラップおよび類似装具
  30 両側金属支柱付きAFO(コンベンショナルAFO)
  31 ワイヤー支柱式AFO
  32 APS-AFO,RAPS
  33 C.C.AD足継手付きAFO
  34 CEPA
  35 ENAPLE AFOカーボン製3層式後方支柱付き短下肢装具
  36 FAJO
  37 KU-half AFO,KU-half AFO革紐付き
  38 KU-half AFOゴムバンド付き,KU-half AFO二方向補助
  39 MR fluid ダンパ搭載 短下肢装具
  40 NEURO SWING足継手
  41 ORTHO-AFO
  42 PDC足継手,PDA足継手
  43 Saga plastic AFO
  44 SPS-AFO
  45 TIRR AFO
  46 UD フレックスAFO
  47 WING FORM AFO(Aタイプ,Bタイプ)

索引

動画一覧
 動画① シューホーン型AFOのたわみの種類 ※音声あり
 動画② リングロック膝継手
 動画③ スリーウェイジョイント膝継手
 動画④ スペックス膝継手
 動画⑤ ウルトラ セーフ ステップ膝継手
 動画⑥ ステップロック膝継手
 動画⑦ 症例1 下垂足
 動画⑧ 症例2 膝折れ
 動画⑨ 症例3 尖足
 動画⑩ 症例4 反張膝

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最良の処方を自ら導き出すための必須の書
書評者:大串 幹(兵庫県立リハビリテーション中央病院リハビリテーション科部長)

 医師として,装具処方を行うにあたっては,患者の状態に最も適していて,そして使い続けてもらえる装具の具体的イメージが浮かびあがってこなければならないと思っている。装具処方の経験がまだ浅い時は,可及的にbestをめざし,結局はbetterなところに落ち着つくのではあるが,先輩医師の処方をまねながら,装具の機能を知ること,患者の身体機能を評価すること,最も使用するシチュエーションに適しているかの検討などのプラクティスを繰り返し,経験値を増やしていくしかない。当時は,文献で数多くの装具があることは知っていても,実物を手に入れることは難しいので,金属支柱・ダブルクレンザックのSLBを基本として,自分なりに使いこなせるプラスチックAFOを1つか2つ持っていればよいとも先輩に諭された気がする。その後,新しい種類の装具を使う機会を一つひとつ得て,処方できる装具の種類が増えていったが,実のところそれが真にbetterな処方になっていたのかは常に疑問であった。

 著者代表の渡邉英夫先生は評者の大学時代の恩師であった。装具療法については,整形外科・リハビリテーション医学で丸々1コマ分の講義があり,歩行サイクルと絡めるなどかなり難しい内容であったと記憶している。しかし同時に,装具や日常の道具を患者の状態に合わせるためのたくさんの「工夫」をされており,装具や道具はそれら単独では「もの」に過ぎないが,患者が装着し使うことで,患者の生活にとって不可欠なもの,身体や生活の一部になることが強く感じられた。評者は患者には今も「装具は装う道具です。眼鏡と同じように使っていただきたい」とお話ししている。

 本書は,機能分類に基づく装具の実践使用法事典としての特長を持つ。装具選択において,ある装具の効果を他装具と比較する文献はあっても,機能分類で検索できる百科事典的な文献はなかった。果たして2007年に上梓された本書初版はまさに待ちに待った画期的なもので,これまでのbetter処方からbest処方へと導いてくれるハンドブックであった。世界中の多様なデザインの装具・継手を知ることができ,検索だけでなくむしろこの装具を必要とする病態を想像し,いつか役立てたいという野望を抱かせた。このたび,最適な処方をめざし続けている人へ向けての第4版が刊行された。ベスト・フィッティングをめざし続けてこられたのは紛れもなく渡邉先生ご自身ではないだろうか。本書には先生の作られた工夫たっぷりの装具も載せられている。先生は新しい装具には目がなく,強い探求心を持たれていることがわかる。何より版を重ねるごとに仲間となる臨床の実践者である共著者を得て,先生のノウハウが遺伝子となり,確実に彼らへと受け継がれている。本書を手にすることで,先生の知識,経験,装具への愛を共著者と同じように受け継ぐことができる。これまでもこれからも工夫によって新しい装具が生まれ,そして消えていく。技術や材料が進化することで装具の形や使い方は変わっていくかもしれないが,本書は今の時代に活かされ活きた装具の記録として次の世代への贈り物になると信じている。


数多(あまた)の下肢装具を理解しベストな選択を行うための一冊
書評者:遠藤 正英(桜十字グループ福岡事業本部リハビリテーション統括)

 脳卒中片麻痺患者の下肢装具は入院中から退院後まで必要なものであり,近年では『脳卒中治療ガイドライン』にも掲載され,臨床場面で多く使用されるようになった。しかし,筆者が就職した2004年当時の理学療法は,下肢装具の使用に積極的ではなく,どちらかといえば「下肢装具の使用は理学療法士の敗北」と揶揄されていた。筆者が就職した施設は,湯之児式装具を開発された浅山滉先生がいらっしゃったので,何の抵抗もなく下肢装具を使用することができた。しかし職員の中には,下肢装具の使用を嫌う者も多く存在し,冷ややかな目で見られていたのを思い出す。そのような世の中だったため,下肢装具を学ぶにも参考となる書籍が少なく苦労した。

 下肢装具は,非常に多くの種類と機能,適応や使い方など多くの学びを必要とするため,初学者だけでなく,経験者においても壁にぶつかりやすい分野である。筆者も日本義肢装具学会学術大会に毎年参加し,下肢装具を知ることに努めたが,臨床での使用には難渋していた。そんな時,本書と出会うことができた。きっかけは,当院に出入りしていた義肢装具士に本書初版を紹介されたことであった。ハンドブックサイズで,多くの種類の下肢装具を写真付きで紹介し,機能や特徴に至るまで説明してあった。いまだに手にした時の衝撃は忘れることができず,バイブルとして暇さえあれば読み返したものである。本書のおかげで多くの種類の下肢装具の特徴を理解し,目の前の患者に適した選定をするための知識を得ることができた。

 今回の第4版も初版から良いところを引き継ぎ,時代にあった内容を追加している。筆者が初版の時から最も参考にしている章は,第25章の「各AFOと足継手の詳細」であり,他の書籍には類を見ない数の短下肢装具の機能を網羅してある。臨床において下肢装具の選択に悩むのは日常茶飯事である。数ある下肢装具の中から最適なものを選ぶには,下肢装具を多く知っているほうが有利である。下肢装具は実物を手に取ることでより理解できるが,その数が多いため,一朝一夕にできることではない。しかしながら,本書を読めば多くの種類の下肢装具をまるで実際に手に取ったように理解をすることができる。臨床で下肢装具にかかわる方々の選択の幅を広げてくれることは間違いない。さらに第4版からはQRコードからアクセスして動画を観ることができたり,近年,重要視されている長下肢装具の紹介が一新されたりしている。ここまでの種類の短下肢装具をまとめるには,日々弛まぬ努力の積み重ねと,長年の経験を積み重ねた著者代表の渡邉英夫先生にしか成し得ないものだと思う。

 多くの臨床家が本書を手に取り,患者の個々の状態に応じて下肢装具のベストフィッティングをめざすことを切に願う。

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