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はじめての漢方診療 十五話[WEB動画付] 第2版

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「平易でわかりやすい」と評判の漢方入門書。臨床例をあげながら、漢方医学的診断・治療が丁寧に解説されてゆく。決して漢方理論を振りかざしていないのに、本書を読み終わると漢方医学の理論体系が余すところなく理解できる仕掛けになっている。煎薬でがっちり治したい読者も、西洋医学とエキス製剤を併用したい読者も、どちらも満足の内容。漢方診療をめぐる、よくある質問、よくあるエピソードも加わって、ミツマ先生渾身の改訂。

三潴 忠道
発行 2021年08月判型:B5頁:320
ISBN 978-4-260-04750-0
定価 5,940円 (本体5,400円+税)

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  • 序文
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推薦のことば

 まず本書を通読しての感想は「このような漢方入門の手引きの方法があったのか」という驚きである.類書とは全く異なった極めて斬新な話題の展開であるが,これは著者が様々な形で漢方医学の教育を手がけてきた実践の成果であると思う.ここにたどり着くまでの試行錯誤は計り知れない.身近で共にこの道を歩んできた私にはそれがよくわかる.まさに三潴先生の真摯な努力の賜物である.
 漢方医学は実践の医療体系であり,理論が後から付けられた学問であるとも言える.本書は三潴先生の臨床実践を土台として具体的な問題をとりあげ,極めて平易にわかりやすく話が進められている.しかも,本書を読み終わると漢方医学の理論体系が余すところなく理解できるという仕掛けになっているところが心憎い.
 本書の著者,三潴忠道先生と筆者はともに「千葉大学東洋医学研究会」で漢方医学を学んだ仲間で,師匠は藤平健先生,小倉重成先生である.『傷寒論』『金匱要略』を主軸に教えをいただいたが,両師匠の学問的純粋性を受け継ぎ,その臨床実践と次世代の教育に当たっている点で,筆者は後輩の三潴先生に畏敬の念を常に抱いている.本書を貫いている「すがすがしさ」はこの三潴先生自身の学問的純粋性と決して無縁ではないことに気づくのである.
 漢方医学が医学・薬学教育の場で正式に取り上げられる時代を迎えたが,その教育方法論が実は大きな問題である.「漢方医学」という西洋医学とは全く別のパラダイムを純真な学生諸君に語るとき,大上段に構えて「漢方理論」を振りかざしていくのが最善とは思えない.その意味で,本書の果たす役割は極めて大きいと確信している.「漢方にも興味はあるが,理屈が難しくて」と悩む臨床家にもぜひ一読をお勧めできる名著である.

 2021年8月
 寺澤 捷年
 (富山大学名誉教授)

第2版 著者のことば

 漢方は伝統医学であるため処方や理論に経時的変化が少ないとはいえ,本書の初版を上梓してから早くも十有余年,見直すべき時期だと考えていました.折しも新型コロナウイルス感染症拡大に伴い,多くの行事が中止や延期,あるいはリモートとなりました.会頭を仰せつかった第71回日本東洋医学会学術総会も15か月延期になりました.そこで,系統講演の記録をまとめた本書と講演時の配布資料をもとにした『はじめての漢方診療ノート』とを,同時に見直すこととしました.
 初版を読み返すと最近の経験などから修正したい点,私が頻用しており加えたい処方などもありました.ただし基本的な漢方診療に対する私の認識には変化なく,学生時代からお導きいただいた故・藤平健,小倉重成両先生のお教えに従った漢方臨床の手応えからも確信が持てます.私は最近,新型コロナワクチンの2回目の接種を受け,27時間もたった翌日夜から強い悪寒が出現しました.しかし8時間で麻黄湯を5回,その2時間後に柴胡桂枝湯を1回温服してすっかり回復し,翌日の業務にはまったく支障なく,『傷寒論』通りの効果を再認識できました.
 この書は漢方診療を実践しながら学びやすいように,全体の構成は必ずしも漢方理論の順ではなく,また一話ずつ読めるように内容の繰り返しもあります.その記載には,実際の臨床経験に基づく内容を心掛けたつもりです.全国の医学部に広がる漢方医学教育を,臨床現場での実践に活かすうえでも,本書はお役に立つかと思います.
 私が今あるのは千葉大学,富山大学,飯塚病院と,これまでご指導いただいた先師,先輩,同僚のおかげです.本書の初版刊行は福岡の木村豪雄先生のお力によるものです.第2版は医学書院の藤本さおり氏,高橋友海氏に多大なご尽力をいただきました.皆様に厚く御礼申し上げます.

 2021(令和3)年8月 会津にて
 三潴 忠道

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推薦のことば
第2版 著者のことば
初版 著者のことば
付録WEB動画のご案内

序章 一般外来で漢方診療を始めるとき
 漢方医学はどんな疾患に有効か教えてください.
 一般病院で漢方外来を始めたいのですが,注意点を教えてください.
 漢方の勉強はどのようにすればよいのでしょうか?
 レクチャー 漢方医学の歴史と基礎知識
 漢方医学の歴史上のポイントを示してください.
 日本における漢方の歴史の要点を教えてください.

第一話 これが漢方診療の実際だ
 症例をあげて漢方診療の進め方の特色を解説してください.
 日常的な症例で漢方診療の特色を解説してください.
 本格的な漢方診療の応用例を教えてください.
 レクチャー 漢方薬の分類
 漢方の特徴を漢方薬の性質とからめて解説してください.
 レクチャー 漢方薬の“剤形”,エキス剤の服用法と煎薬の使用の実際
 漢方薬の剤形あれこれ.
 エキス剤とは.その服用法は.
 生薬を煎じて湯液を調製する方法.

第二話 漢方診断の出発点――陰と陽
 漢方では,どのように病気をとらえて,診断を進めていくのですか?
 陽性もしくは陰性の病態とはどのようなものですか?
 病態を判定する指標にはどのようなものがありますか?
 下痢にも陰陽があるそうですが,具体的な症例をあげて解説してください.
 陰証と陽証のポイントをもう一度教えてください.
 陰陽というのは,病態の性質のみならず病気の時期も指しているのですか?
 証は,漢方医学的診断と理解してよいのでしょうか?
 診察のしかたは,西洋医学と違うのですか?
 証は,診断と同時に治療の指示だといわれますが,どういうことでしょうか?

第三話 太陽病を究める――桂枝湯類をマスターする
 太陽病の基本について教えてください.
 脈が浮くというのはどういうことですか?
 太陽病で最も代表的な桂枝湯の使い方を教えてください.
 太陽病の代表的な処方について教えてください.
 太陽病の主な処方と構成生薬について教えてください.
 太陽病かどうかを見極める特徴を,かぜを例に教えてください.
 太陽病の主な症状は何ですか?
 太陽病の他覚所見は何ですか?
 脈はそんなに早く病態を反映するのですか?
 桂枝湯について,もう一度教えてください.
 実証の代表である,麻黄湯について教えてください.
 次に,一番強い実証の大青竜湯について教えてください.
 有名な葛根湯についてコメントしてください.
 桂枝湯以外の虚証の処方について解説してください.
 虚実間もまた,3つの処方に分かれていますが,これはどういうことですか?
 具体的な症例をあげて,太陽病の漢方治療について解説してください.
 レクチャー 太陽病の漢方製剤を効かせるコツ――服用のしかたと養生について
 漢方薬の正しい煎じ方と服用方法について教えてください.
 エキス剤の飲み方にも,何かアドバイスがありますか?

第四話 太陽病から少陽病へ――小柴胡湯をマスターする
 漢方治療の基本的なスタンスを,もう一度教えてください.
 太陽病実証では汗が出ない,虚証では汗が出るといいますが,どういうことなのでしょうか?
 太陽病期を復習してきましたが,次の少陽病期とはどういう時期ですか?
 少陽病期の主な症候について教えてください.
 小柴胡湯の正しい使い方を教えてください.
 小柴胡湯証における自・他覚所見についてまとめてください.
 レクチャー 少陽病の診断に役立つ腹診の基本を学ぶ
 少陽病期の診断には腹部の診察が大切だと言われますが,それはどのように行うのですか?

第五話 柴胡剤の鑑別と運用のコツ――小柴胡湯と比較して
 太陽病から少陽病までの病気の流れについて,もう一度教えてください.
 小柴胡湯を中心に,柴胡剤について教えてください.
 柴胡剤の構成生薬の特徴について教えてください.
 具体的な症例をあげて,柴胡剤の適応を教えてください.
 補中益気湯と加味逍遙散は柴胡桂枝乾姜湯とほぼ同様の虚証で,主要ではないということですが,よく耳にする処方です.柴胡桂枝乾姜湯とはどのように違いますか?

第六話 3つの瀉心湯とその類方
 “3つの瀉心湯”とは何を指すのですか?
 黄連と黄芩はどんな働きをするのですか?
 半夏瀉心湯に乾姜が入っているのはなぜですか?
 半夏瀉心湯の腹部所見を教えてください.
 3つの瀉心湯はどんなときに使うのですか?
 3つの瀉心湯の鑑別のポイントを教えてください.
 他にも瀉心湯と名がつく方剤がありますか?
 三黄瀉心湯について教えてください.
 黄連解毒湯について教えてください.

第七話 漢方診療の実際を学ぶ
 患者モデルを使って,漢方の診察について具体的に教えてください.
 四診の進め方はこうです.
 患者の証の考察をします.

第八話 瘀血――血の異常を理解する
 「気」「血」「水」とは何を指すのですか?
 血の異常である「瘀血」について教えてください.
 瘀血の臨床的特徴は何でしょうか.特に望診(視診)で注意する点について教えてください.
 瘀血の腹部所見のポイントを教えてください.
 瘀血の診断基準は何ですか?
 瘀血の診察には腹部所見が大切ということでしたが,もう少し詳しく教えてください.
 瘀血の治療薬について教えてください.
 駆瘀血剤が適応となる病態を教えてください.
 桂枝茯苓丸の使い方について教えてください.
 桂枝茯苓丸は婦人科疾患の他にどういう疾患に使いますか?
 当帰芍薬散の使い方について教えてください.
 その他の主な駆瘀血剤について教えてください.
 大黄牡丹皮湯を使いたいのですが,便秘がない場合にはどうしたらよいですか?
 その他にも役に立ちそうな駆瘀血剤はありますか?
 具体的に症例をあげて駆瘀血剤の使い方を解説してください.
 レクチャー 瘀血の腹部症候診察の実際
 患者モデルを使って瘀血の腹部所見をもう一度教えてください.
 レクチャー 瘀血の人の血流像
 瘀血病態は,本当に血液の流れが悪いのでしょうか?
 駆瘀血剤は血流を改善するのですか?

第九話 陽明病とその治療
 陽明病は陽証の1つですが,陰陽と虚実について,もう一度教えてください.
 陽明病の特徴について教えてください.
 『傷寒論』に陽明病はどう記載されていますか?
 陽明病の方剤の代表である大承気湯について教えてください.
 大承気湯の構成生薬を教えてください.
 大承気湯以外の方剤についても教えてください.
 白虎湯類と,その仲間たちについて解説してください.
 具体的な症例をあげて,陽明病の治療について解説してください.

第十話 陰証期のはじまり――太陰病を理解する
 病気のステージ分類について,もう一度教えてください.
 太陰病の特徴を教えてください.
 太陰病の主な症候は何ですか?
 太陰病の治療について教えてください.
 芍薬の働きを教えてください.
 芍薬と甘草を含んだ方剤群について解説してください.
 太陰病期の治療について,症例をあげて解説してください.
 太陰病の実証に適応となる薬方について教えてください.

第十一話 陰証期とその治療
 陰証期について,もう一度解説してください.
 少陰病の主な症候は何ですか?
 少陰病の主な治療方剤について解説してください.
 厥陰病について教えてください.
 熱薬である附子と乾姜の違いは?
 甘草乾姜湯を中心とした陰証期の方剤にはどのようなものがありますか?
 甘草乾姜湯の類方も解説してください.
 陰証の下痢に対する主な方剤について教えてください.
 具体的な症例をあげて,陰証期の治療について解説してください.

第十二話 水毒――水の異常を学ぶ(1)
 水とはどういうものですか?
 水毒はどんな症状を出すのですか?
 水毒の治療に使用する生薬はどのようなものですか?
 駆水剤の最も代表的なものをあげてください.
 めまいやめまい感のするときの方剤を教えてください.
 冷えがあるときに使う方剤をあげてください.
 茯苓と朮についてもう一度説明してください.
 水毒の治療について,具体的に症例をあげて解説してください.

第十三話 水毒――水の異常を学ぶ(2)
 水毒を治療するのには,どのようにアプローチすればよいか,もう一度教えてください.
 皮膚や関節の痛みに対する方剤について教えてください.
 症例をあげて駆水剤の使いかたを教えてください.
 呼吸器症状に対する方剤はありますか?
 アレルギー性鼻炎に対する方剤を教えてください.
 長引く咳嗽に対する方剤を教えてください.
 胃腸症状に対する方剤を教えてください.
 レクチャー 漢方薬の副作用と取り扱い要注意の生薬
 副作用に注意すべき生薬を教えてください.
 本来の作用に注意すべき生薬はこれです.
 その他の注意!

第十四話 気の異常を理解する
 「気」とは何ですか?
 気の異常にはどんなものがありますか?
 気虚の治療について教えてください.
 気うつの治療について教えてください.
 その他の気うつの治療について教えてください.
 気逆の治療について教えてください.
 その他にも気の異常に対する漢方薬はありますか?
 気の異常に対する漢方治療について症例をあげて解説してください.

第十五話 証の変化と方剤の運用
 証は変化する,というのはどういうことですか?
 陰陽と虚実はどう違うのですか?
 気血水の異常も証の座標軸に組み込まれるのですか?
 証の空間を構築する,とはどういうことですか?
 患者さんに現れるさまざまな症候と証の関係について教えてください.
 1人の患者さんに複数の証が存在することがあるらしいのですが,それはどういうことですか?
 漢方を勉強するうえで,アドバイスをください.

あとがき

付録
 健康調査表
 事項索引
 方剤索引

漢方診療 よくある質問
漢方診療 こぼれ話

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漢方の素晴らしい世界へ誘う指南書
書評者:貝沼 茂三郎(富山大学附属病院和漢診療科特命教授)

 私が三潴忠道先生から『はじめての漢方診療 十五話』に書かれている内容について直接講義を受けたのは25年前のことである。当時の資料は現在の『はじめての漢方診療ノート』に掲載されている図表の一部が印刷されたものであり,三潴先生の診療が終わってから連夜直接講義を受けたことを今でも懐かしく覚えている。そして現在,私が漢方に傾倒するための基礎をしっかりと築くことができたのはこの連日の講義のおかげである。そのため,その時の講義内容が『はじめての漢方診療 十五話』という形で書籍になってから私は自身が行う勉強会のテキストとして本書を使用し,自分一人で読んだ回数も含めると相当な回数,この書籍にはお世話になってきた。そこで今回第2版ではどのように改訂されたのかわくわくしながら第2版を拝読した。

 通読してみてまず感じたことは初版では文面になく,勉強会で三潴先生から教えていただいたことが第2版では随所によりわかりやすく解説として加筆されていた。さらにA5判からB5判への変更,小見出し,キーワード,まとめがつくなどのレイアウトの変更もあり,解説者がいなくても独学で内容をより深く理解できるようになったと感じる。また三潴先生は漢方を広めるために西洋医学的な診断ならびに客観的な評価を重視しているが,その点が第2版でも反映されている。具体的には時代の流れに合わせて,また各専門領域の医師が見ても漢方薬の有用性を客観的に評価することができるよう,症例をいくつか差し替えている。この改訂もまたこれから漢方を学ぶものにとってはその理解を深めるために重要なことであると考える。

 一方,陰陽から始まる漢方の基本的な考え方に対する柱の部分はまったく変更しておらず,三潴先生が故・藤平健先生や小倉重成先生から学んだ教えに対する確信,ブレのなさを感じた。また本書は初心者向けではあるが,三潴先生の頻用処方の中から第2版で追加されている方剤も多数あり,また新しく加わった“漢方診療こぼれ話”も非常に読み応えがあり,臨床経験が豊富な医師にとっても新たな発見ができ,きっと日常臨床に役立つ内容であると考える。

 三潴先生は「守・破・離」とよく言われる。これから漢方を学ぼうとする先生方は本書に記載されていることを倣い,何度も繰り返し実践し修め,そして新しい発見があれば『はじめての漢方診療ノート』に加筆し,まずは自分なりの漢方医学に対する土台をしっかりと固めてほしい。本書は読者の皆さんを漢方の素晴らしい世界へ誘う指南書と確信する。


三潴流漢方奥義の書第2版を推薦する
書評者:田原 英一(飯塚病院東洋医学センター漢方診療科部長)

 三潴忠道先生は2021年,コロナ禍で延期された日本東洋医学会の会頭も務められ,大変お忙しい最中,名著“十五話”註)の第2版を出版された。本書は漢方診療の基礎を学ぶのに最適もしくは最高の一冊である。その一つの理由は,三潴先生の臨床を余すところなく公開し,いわば三潴漢方という太い柱に沿って,漢方診療が語られている点にある。

 その基本はいわゆる古方に属しながら,一方で現代の疾病構造を見据えた柔軟な診療体系を公開している。一般に西洋医学のみを学んだ者にとって,漢方の概念,臨床は難解で,一冊の本を読んだくらいでは,なかなか身につかないであろう。漢方の手引き書として,多くの著者による,さまざまな意見や考え方が錯綜するものや,単一著者ではあるが,公開されている情報が簡素過ぎて物足りないものを手に取ったことがあるが,本書は簡単すぎず,難しすぎず,それでいて骨のあるブレない一冊である。

 本書は第2版となっており,それだけでその評価が高いことが既にわかるが,その一つの要因に,誤字脱字が非常に少なく,校正によほどの力が割かれているのではないかと想像する。第2版では初版より行の間隔が空いて文字の圧迫感から解放されている。初めて出てきた見慣れない漢字には振り仮名がふられ,漢字アレルギーを生まないような工夫がされている。

 本書の構成は十五話になっているが,陰陽,特に六病位の病態理解に重点を置き,中でも三潴漢方の真骨頂である,柴胡剤と駆血剤の解説では半端ない力が注がれている。また血,水という目に見えるものを先に解説し,目に見えない気を最後に解説している順は他書では見られない。さらに本書ではほどよいタイミングで前の記載の振り返りがある点が復習効果を高めている,特に診察法や問診などについては繰り返し記載され,診察法の習熟に重点が置かれている。では初心者向けの本かというと,意外とエキス剤にもないとんでもない処方が鑑別処方として挙げられ,診療の幅がエキス漢方にとどまらない。例えば茯苓四逆湯などは基本,煎じ薬しかないのに,人参湯と同じくらいのスペースが割かれている。第2版となって,新しい記載はないのか? 実は私は小半夏加茯苓湯のところで新しい記載を発見した。初版にはない追加記載が随所に見られ,初版をお持ちの方もぜひ第2版を手元に置いていただきたい。三潴先生の似顔絵も初版より年齢を加え,「仏のオーラが出ている」と隣の診察室の女医は言っているので,ぜひ見比べていただきたい。漢方診療こぼれ話は臨床家向けの味わい深い話の百味箪笥である。また所々で敬愛してやまない藤平健先生,小倉重成先生のエピソードが紹介され,脈々と受け継がれる漢方診療の学統のぬくもりを感じさせられる。

 同時出版の『はじめての漢方診療ノート 第2版』は診察法中の解説にカラー写真がふんだんに追加掲載され,私も一枚ご協力させていただいた。記入スペースが多いのも初版以来の本書の特徴であり,臨床家である三潴先生のセンスを感じる。本書を手に取った読者はぜひどこに何が書かれているか暗記するほどに読み込んで,三潴流漢方の使い手になって欲しい。なお,三潴漢方の実践を経験したい方はいつでも,会津か飯塚に来られたし。

註)『はじめての漢方診療 十五話』2005年,医学書院刊

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