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レジデントのための専門科コンサルテーション
マイナーエマージェンシーに強くなる

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レジデントにとってメジャー科以外の専門科は、すべてを初期研修中にローテートできないため、知識も不十分になりがちで、なかでも、各科の医師へのコンサルトのタイミングを図るのが難しいという悩みを抱えている。

本書は12の専門科について「いつ、どのようにコンサルトすべきか」が理解できるとともに、学びにくい専門科の知識や自力で対応できる技術を修得できる。巻末には、デキるレジデントになるための座談会も収載。

編著 山本 健人
発行 2021年10月判型:A5頁:264
ISBN 978-4-260-04680-0
定価 3,960円 (本体3,600円+税)

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  • 序文
  • 目次
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はじめに

 メジャー内科・外科を除く専門科は、その全てを初期研修中にローテートできないため、医学知識のみならず各科の診療体制に関する知識も不十分になりがちです。なかでも、各科医師へのコンサルトが難しい、という悩みは研修医につきものでしょう。
 たとえば鼻出血は、大半は研修医が自力で対応可能な疾患ですが、一定の条件を満たせば耳鼻咽喉科へのコンサルトが必要になります。同様に視力障害や眼外傷などに出会った際、一定の条件を満たせば緊急対応が必要になりますが、当然全例で眼科にコンサルトが必要なわけではありません。これを研修医が適切に見分けるのは、なかなか難しいでしょう。
 また、各科当直がないことの多い専門科の場合、休日・夜間における診療体制はオンコールとなっているのが一般的です。緊急時は院外にいる医師に電話をかける必要がある点で、研修医にとって心理的にコンサルトのハードルが高いといえるでしょう。研修医が自力で対応可能な病態であるのにコールして「こんなことで呼ぶな」と叱られるリスクがある一方で、コールが遅れると患者に実害が及ぶリスクもあるからです。
 一方で、各科外来の医師が研修医から紹介された患者を診療し、紹介の方法や行われた処置に多少の問題があることに気づいても、わざわざ電話をかけて注意することは少ないでしょう。「まだ研修医だし、このくらいは許容するか」と思うのが現実です。結果的に、研修医がフィードバックを受けることはなく、「自分が紹介した患者のその後」を知ることはないままなのです。
 このように、「いつ、どのように専門科にコンサルト(紹介)すべきか」を理解しておくことは研修医にとって必須のはずですが、体系的に教育を受けることはありません。研修医が各自、手探りで学習しているのが現状です。
 そこで本書では、研修医にとって「自力で対応可能な範囲」と「コンサルトすべき範囲」の見分けかた、病態に応じたコンサルトの方法、専門科に引き継ぐまでに研修医がやっておくべきことなどを体系的にまとめました。
 総論では、コンサルトの方法論、コミュニケーションの取りかた、スムーズに協力を得る技術を解説します。コンサルトのタイミングやコンサルト先の選択が正確でも、伝えかたが上手くなければ迅速に協力を得ることはできません。ここで重要なのは、自分の意図を的確にプレゼンする技術です。
 各論では、各専門科の医師に「自科を呼ぶべきシチュエーション」や「研修医が知っておくべき自科の知識」について解説してもらいました。たとえコミュニケーションに長けていても、コンサルトするタイミングや方法を誤れば患者に不利益を与える可能性があります。専門性の高い知識まで知っている必要はないものの、研修医レベルでも知っておいたほうがよい基礎知識は早いうちに頭に入れておく必要があるでしょう。
 各論は、私が研修医に扮して各専門科の医師にインタビューすることで、現場で手とり足とり教えてもらうかのように解説を読めるつくりにしました。私自身、ローテートしなかった専門科の知識は、いまだ「研修医レベル」です。実際、いまでも現場で「もっと勉強していれば」と思うことは、しばしばあるのです。この課題感こそが本書を著した目的なのですが、幸か不幸か「研修医レベルの質問ができること」が強みとなり、入門的かつ意外に学べない知識が簡潔にまとまったと思います。
 ぜひ本書を有効活用し、専門科の知識を学んでいただければ幸いです。

 2021年9月
 山本健人

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はじめに

総論 研修医が身につけたいコンサルトのテクニック (山本健人)
  1 症例報告スタイルはNG
  2 手術適応に関するコンサルト
  3 コンサルトする相手に応じてプレゼンを変える
  4 コンサルト前に注意すべきこと
  5 コンサルト後に注意すべきこと
  6 将来コンサルタントになったときのために
  7 メールでの相談で注意すべきこと

各論
 1章 耳鼻咽喉科 (執筆協力 前田陽平)
  1 鼻の疾患
  2 のどの疾患
  3 耳の疾患
  4 外傷
  5 自力での対処法を覚えておくべき病態
 2章 眼科 (執筆協力 沼 尚吾)
  1 結膜充血
  2 急性緑内障発作
  3 網膜の疾患
  4 眼外傷
 3章 皮膚科 (執筆協力 大塚篤司)
  1 薬疹
  2 皮膚の感染症
  3 皮膚の悪性腫瘍
 4章 整形外科 (執筆協力 水野正一郎)
  1 骨折・脱臼
  2 頚椎捻挫
  3 感染
 5章 精神科 (執筆協力 亀井士郎・山崎真平)
  1 せん妄
  2 不眠
  3 自殺企図への対応
  4 その他の精神疾患
 6章 泌尿器科 (執筆協力 水野 桂)
  1 泌尿器科領域の感染症
  2 急性陰囊症
  3 外傷
  4 自力で対応してよい病態
 7章 形成外科 (執筆協力 岡田愛弓)
  1 顔面の外傷
  2 皮下血腫
  3 熱傷
  4 褥瘡
  5 縫合のポイント
 8章 乳腺外科 (執筆協力 木川雄一郎)
  1 Oncologic Emergency
  2 がんに伴うさまざまな問題
  3 局所進行例への対応
  4 感染
 9章 歯科 (執筆協力 柴田 育)
  1 齲蝕
  2 歯周病
  3 外傷
  4 前癌病変
  5 医科と歯科の関わり
 10章 放射線科 (執筆協力 豊永拓哉)
  1 検査の申し込み
  2 検査
  3 レポート
  4 IVR(interventional radiology)
 11章 病理診断科 (執筆協力 市原 真)
  1 検体提出の方法
  2 診断のピットフォール
  3 治療のピットフォール
  4 研修医が知っておくべき病理医の「活用法」
 12章 麻酔科 (執筆協力 武田親宗)
  1 手術の申し込み
  2 麻酔科ローテート中に学ぶこと

座談会 デキるレジデントになるために
 (出席 市原 真/大塚篤司/前田陽平/山本健人=司会)
  1 こんなコンサルトは困る!
  2 これができればデキレジ!
  3 非志望科をローテートするときの心構え
  4 私の研修医時代の失敗談(コンサルト関連で)
  5 研修医今昔

索引

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“盗んだバイク”で走り出す本
書評者:倉原 優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)

 若手医師に限った話ではないが,臨床医を続ける以上「専門科にコンサルトすること」と「患者に病状説明すること」は避けて通れない。その技術は,一朝一夕で身につくものではなく,他の医療従事者や多くの患者と真っ向からぶつかり合い,削られ,磨かれ,叩かれ,鉄は強くなる。不幸にも,コンサルトや病状説明が不得手な指導医のもとで育ってしまうと,自身も苦手意識を持ってしまい,後輩にノウハウと伝えられないという負の循環が生まれかねない。うまく叩かれなければ,鉄はただの鉄のままだ。

 医師が独り立ちするころ,コンサルトや病状説明に関して,誰しも己の能力不足を痛感するだろう。この書籍を読んだときに,「放射線科」「麻酔科」「病理診断科」が入ってくるとは予想していなかった。ともすれば「doctor’s doctor」と呼ばれるこれらの診療科は,依頼さえすれば,あとはどうにかやってくれると誤解されがちな診療科でもある。とりわけ電子カルテが台頭している現代,以前のように顔を突き合わせて議論百出されることが減っているように思う。臨床情報がなくしては議論すらできないし,著者が書かれているように,じかに顔を見て話さないとわからない部分はあると思う。これは自分への戒めでもある。

 この本の真骨頂は,「研修医が身につけたいコンサルトのテクニック」という冒頭わずか17ページにある。ここに書かれてあるのは,コンサルトのお作法である。その価値基準がずれてしまっていると,修正されることなく一生を過ごすことになる。「この医師にはコンサルトしたくない」と若手医師に思われないためにも,自分のコンサルトスタイルをここで見直していただきたい。

 忙しい急性期の診療科では,どちらかといえばこういったノンバーバルな技術は「見て盗め」という風潮があるように思う。私も研修医時代にそういった科をスーパーローテートしたことがあるが,そもそも盗む方法などわからず,見よう見まねでいざ実践しようにも,“盗んだバイク”が走らないということは往々にしてあった。若手医師が見て盗むためには,指導医に見せる技術も問われる。屋根瓦式に若手医師にこれを受け継いでもらう好循環を生むためには,苦労したであろう中堅医師が書いたコンサルテーションスキルの書籍が望まれていた。経験すべき苦労は買ってでもすべきである。しかし,経験しなくてよい苦労などないほうがよいのだ。この書籍が自分の研修医時代にあれば,どれほどよかっただろう。

 なお,唐突に尾崎豊の歌詞のフレーズを出したが,著者を交えた医学書院のWebセミナーでこの比喩を出したためであることを付け加えておく。

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