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Dr.ミカミの国試で学ぶ診断学

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医師国家試験で出題された症例問題をベースに、出題されやすい「症候」を抽出。それらについて、過去問を使いながら診断にたどり着くためのプロセスを分かりやすく示す。症候別に注目すべき所見や徴候を「診断Tree」にまとめ、診断のためのキーポイントを示しながら、俯瞰的に診断の道筋を提示していく。また、そのTreeを活用しながら、実際に出題された問題を解き、解説を加える。国試に学んだ診断術をまとめた一冊。

三上 貴浩
発行 2021年10月判型:B5頁:456
ISBN 978-4-260-04634-3
定価 4,950円 (本体4,500円+税)

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 現代は人工知能の時代です。診断も自動化されつつあります。
 本書は診断に至るまでの過程を樹形図(本書では“診断Tree”と呼んでいます)として記し,考えの道筋をたどれるようにしました。
 特定の一症状をとっても,同じような症状をきたす多数の疾患が鑑別にあがります。そしてその病態の主座は全く異なる臓器であったりします。1つの症状について,多臓器横断的に考えなければならないのです。
 本書は重要な症候・所見から,鑑別すべき疾患にたどりつくまでの解法の1つを提示しました。この解法は決して1つではありません。患者のどの症候・所見に注目するかによって,同じ症例問題が本書の異なる箇所に出てくることがあるのがよい証拠です。実際には1人の患者のさまざまな症候・所見から,同時にさまざまな疾患の可能性を考えていくものと思います。本書はそのうち,あえて最初に注目すべき症候・所見を1つあげて,それをとっかかりに進めています。
 ここで断っておかなければいけないのは,本書は実地臨床を第一に意識したものではないという点です。といいますのも,実地臨床における診断で重要な考えとして,検査結果や所見の感度・特異度,疾患の頻度などの疫学的観点があります。そのような内容については先達の書かれた多くの名著に譲ることとして,本書ではほぼ言及していません。本書が重きをおいたのは病態学であり,たとえマイナーな疾患であっても他の疾患と同じく平等に考慮しました。
 医師が一生に一度出会うかどうかの珍しい疾患は,common diseasesの「ウマ」に対して「シマウマ」と呼ばれ,実地臨床においては最初に想起すべきではないといわれます1。しかし,これは決してこれらの疾患を学ぶことが無意味であるということではありません。それは,一生に一度あるかないかの遭遇に備えてそれを学ぶことは重要だからというわけではなく,希少疾患の病態の知識は他のcommon diseasesの病態を考えるうえで大いに参考になるからです。「シマウマ」を学ぶことで「ウマ」についてより深く知ることができるというのは,あたかも生理学を学んだ後に病理学を学ぶことで,その対比によって生理学のより深い知識が得られるのと同じです。
 鑑別に際して最初から「シマウマ探し」をすることは非効率ですが,「シマウマ」の存在を常に念頭におくことは肝要です。そして実地臨床はさておき,医学という純粋な学問追求においては,1頭の「シマウマ」と1頭の「ウマ」を観察するほうが,1,000頭の「ウマ」を観察するより遥かに多くのことを物語ってくれるのです。本書では,シマウマの想起を後回しにすることに焦点をおくのではなく,その珍しいシマウマからいかに多くの知識を得られるかということに焦点をおきました。ましてやシマウマが希少だからといってその存在を無視してしまうのはもっての外です。
 「シマウマ」をたくさん教えるような医学教育は間違っているとの声を多く聞きますが,果たしてそうでしょうか。いつの間にか本質が「実地臨床ではシマウマを最初に想起すべきではない」ということから,「シマウマを教える医学教育は誤っている」ということに曲解されてしまってはいないでしょうか。多くの種類の「シマウマ」を学んだうえで,「ウマ」がどのようなものかが理解できます。1頭の「ウマ」の理解には1,000頭の「シマウマ」の理解が必要です。その点で「シマウマ」を教える医学教育は全く正しいものと考えます。卒後などにある程度慣れてくれば専らウマを注意していればよいですが,それもシマウマの存在を知っているといないとでは大きな違いを生みます。
 本書が診断学に関する読者の皆さんの考えを広げ,学びを深めるきっかけとなれば幸甚です。

 2021年9月
 三上貴浩

1 たとえば,本書ではシマウマ疾患として,McCune‒Albright症候群,偽性副甲状腺機能低下症,Waardenburg症候群,Hand‒Schüller‒Christian症候群,von Hippel‒Lindau病などをあげています。本書のスタンスとして,他のcommon diseasesと差別することなく平等に並列させています。

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イントロダクション
 1 多発性齲歯の診断
 2 酸塩基平衡異常の診断

腎・体液のバランス
 3 尿の変色の診断
 4 尿量減少の診断
 5 多尿の診断
 6 浮腫の診断
 7 胸腹水の診断

呼吸器系
 8 呼吸困難の診断
 9 チアノーゼの診断
 10 咳嗽の診断

神経系
 11 運動障害と筋萎縮の診断
 12 感覚障害の診断
 13 複視・眼瞼下垂の診断
 14 味覚・嗅覚障害の診断
 15 不随意運動の診断

耳鼻科系
 16 難聴・めまいの診断

血液系
 17 表在出血傾向の診断
 18 リンパ節腫脹の診断
 19 貧血の診断

循環器系
 20 高血圧の原因の診断
 21 立ちくらみの診断
 22 失神の診断
 23 心雑音の診断
 24 動悸の診断
 25 心電図異常の診断

消化器系
 26 黄疸の診断
 27 便秘の診断

産婦人科系
 28 無月経の診断
 29 不妊の診断

疼痛(アレルギー・免疫・膠原病を含む)
 30 関節痛の診断
 31 胸痛の診断
 32 腰痛の診断

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